JP2769432B2 - 永久磁石式磁力運搬器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、垂直中間平面に対して
対称であり、非磁性要素によって互いに結合された二つ
の磁極片をもった固定部、及び固定部の二つの磁極片の
間の水平軸周りに回転自在に取付けられた円筒形のロー
タを有し、ロータが、軟鋼製の二つの対向部片の間に挿
入された永久磁石を有し、操作装置によって“作動”角
度位置と“休止”角度位置の間を回転移動可能である永
久磁石式磁力運搬器に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】このような永久磁石式磁力運搬器では、
二つの磁極片のそれぞれの下端部は、“作動”位置で強
磁性材料の物体を引付けることができる作動極を形成
し、そのとき物体を横切って、ロータの永久磁石によっ
て作り出される磁界の力線が閉じられる。これに対し
“休止”位置では、これらの力線は、磁性極のみを横切
って短絡して閉じられ、このことは磁性極を不作動にす
る。したがって強磁性金属部片の捕捉、移動及び据付が
できる、そのような金属部片の運搬に適した装置が作ら
れ、この装置は、それを使用する起重機に懸垂される。

【０００３】上記した種類の磁力運搬器はすでに知られ
ているが、経済的理由が今日もなお建設業者を、むしろ
固定永久磁石を可動永久磁石（後者はロータ内に取付け
られる）に組合わせた磁力運搬器を作るようにさせてい
る。対応する製品は、比較的重くてかさばるものにとど
まっている。この種の製品の例として、フランス国特許
第２５２３９４０号及び第２６７５２９９号、又はヨー
ロッパ特許出願第００９０７４６号、又はドイツ国特許
出願第２７０４１１８号を引用できる。公知の製品は、
垂直中間平面に対して一般に完全に対称である。

【０００４】単位体積当り大きなエネルギーをもった
“ネオジム−鉄−硼素”のようなある種の永久磁石の最
近のコスト低下は、一層簡単で軽いが十分に強力な、ロ
ータにのみ磁石を有する磁力運搬器を計画でき、一方、
固定部は、ロータのどちらの側にも位置でき、非磁性要
素によって互いに接続された、接近した二つの磁極片に
限定される。

【０００５】しかしながら、ここで従来の考え方が保持
されるならば、全体は平行六面体の空間内に含まれる。
したがって、二つの磁極片のそれぞれの作動極は比較的
接近している。これは、比較的大きな寸法の物体の捕捉
にとって不利となることは明らかであり、装置の基部
は、安全性の要求に対してあまりにも狭い範囲である。
さらに磁力運搬器自身は、不十分な安定性を有し、特に
取付けレバーによって行われる“作動−休止”転換操作
時に、前後動効果に対して阻止することが困難である。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、簡単で経済
的な製品であるが、強力で大寸法の物体の運搬に適し、
前後動効果に対して容易に阻止できる磁力運搬器を供給
することによって、これらの欠点を除くことを目的とし
ている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】このため導入部で示され
た種類の、本発明による永久磁石式磁力運搬器は、固定
部の二つの磁極片が互いに下方で離れて行き、“作動”
位置で作動極を構成する磁極片の各下端部（９）間の距
離がこうして大きくなり、かつロータが非対称構造を有
し、ロータの軟鋼製の二つの部片が等しくない。したが
ってロータの非対称性は、固定部の二つの磁極片を、磁
力運搬器の幅がその基部で大きくなるように配置でき、
これは比較的大寸法の物体の捕捉には有利である。した
がってこの形状は、“作動”位置と“休止”位置の間の
装置の転換時における前後動の阻止を改良する。

【０００８】本発明の好ましい一実施態様では、磁力運
搬器の固定部の二つの磁極片は、その頂部とその下部
で、小さい幅の上部連結板と大きい幅の下部連結板の、
２枚の水平な非磁性連結板によって互いに結合される。
固定部が、二つの磁極片及び２枚の連結板に対して固定
され、ロータの軸受を支えるさらに２枚の梯形の非磁性
閉鎖フランジを有するのが有利である。したがって本発
明による磁力運搬器全体は、梯形断面で同時にコンパク
トであり、運搬器の機能によく適合し美的な特徴的な形
状を有する。

【０００９】本発明の他の態様によれば、ロータの軟鋼
製の二つの対向部片が、円の切片の形状をした、比較的
大きい一方と比較的小さい他方との不均等な断面を有す
る。軟鋼製のこれら二つの部片の間に挿入される永久磁
石は、“希土”型の磁石、特に“ネオジム−鉄−硼素”
磁石であるのが有利である。完全に対称構造のロータを
もった従来製品において運搬角度が９０度に等しいとき
に、永久磁石式ロータの非対称性が、９０度以下の角度
でその水平軸周りのロータ回転によって、“作動”位置
から“休止”位置への移行を可能にすることは注目され
よう。

【００１０】補足的特徴によれば、運搬の“作動−休
止”を操作するために設けられた操作装置は、ロータと
ともに回転させられ、内部にはばねによって外方向に押
付けられた押し棒を滑動可能に取付けられている握りを
もった、半径方向の管を固定部の外側に有し、押し棒が
指又は止めピンを支え、該指又は止めピンが、前記管の
少なくとも一つの長手方向の孔を横切り、“作動”角度
位置のロータを割出すための、少なくとも一つの切欠き
を有する円形輪郭の固定中空部内に係合される。前記中
空部は、固定部の閉鎖フランジの一方の外面における中
空区域であるのが好ましい。

【００１１】したがって実現された運搬装置は、簡単で
操作が容易であり、押し棒の端部を単に押すだけで、
“休止”位置の方へ回動させるために対応する切欠きか
ら止めピンをはずすことによって、“作動”位置のロー
タを解錠できる。いずれにせよ本発明は、限定のない例
として本発明の永久磁石式磁力運搬器の一実施態様を示
した添付の略図を参照しながら、以下になされる記載に
よって一層明らかになるであろう。

【００１２】

【実施例】図面に示された磁力運搬器は、二つの磁極片
１、２及び２枚の連結板３、４を含む固定部を有し、こ
の固定部は水平軸６周りに回転可能に取付けられた円筒
形のロータ５を収容する。図１及び図２がさらに詳しく
示すように、軟鋼製の二つの磁極片１、２は垂直中間平
面７に対して対称に配置される。二つの磁極片１、２
は、互いに下方で離れて行き、それらの上部８は比較的
接近し、互いに離されたそれらの下端部９は同一平面１
０に位置する。

【００１３】長方形で比較的狭い上部連結板３は、二つ
の磁極片１、２のそれぞれの上部に１１で溶接される。
水平に延びるこの上部連結板３の中央には、持上げ環１
２が固定される。長方形で比較的幅広の下部連結板４
は、二つの磁極片１、２のそれぞれの下端部９のわずか
に上方の１３で磁極片に溶接される。この下部連結板４
は、水平面１０のわずかに上方に水平に延びる。

【００１４】２枚の連結板３、４は、非磁性のステンレ
ス鋼で作られる。これも非磁性金属で作られた梯形閉鎖
フランジ１４、１５は、固定部のどちらの側でも、二つ
の磁極片１、２に対して、また２枚の連結板３、４に対
して垂直位置に溶接される（図３及び図４も参照）。

【００１５】磁極片１、２、連結板３、４及び閉鎖フラ
ンジ１４、１５によって形成された組立体は空洞を限定
し、空洞内には円筒形ロータ５が収容されている。二つ
の磁極片１、２の内面は、円筒形ロータ５の周縁と適合
するように配置され、磁極間隙１８を形成した円筒形凹
所区域１６、１７を有する。２枚の閉鎖フランジ１４、
１５は、ロータ５の両端部に設けられた２本の回転軸２
１、２２の水平軸６周りの回転を中心決めし、案内する
軸受の役をするそれぞれの環１９、２０を有する。

【００１６】ロータ５自身は、軟鋼製の第１部片２３及
び軟鋼製の第２部片２４を有し、それらの間に永久磁石
２５が挿入される。このロータ５は非対称構造を有し、
軟鋼製の第１部片２３は比較的小さい円の切片の形状を
した断面を有し、軟鋼製の第２部片２４は、図１から図
３が示すように半円よりもわずかに大きく広がってい
る、比較的大きい円の切片の形状をした断面を有する。
軟鋼製の二つの対向部片２３、２４の間に挿入された永
久磁石２５は、ネオジム−鉄−硼素磁石のような“希
土”型磁石である。これらすべての磁石２５の磁化方向
はロータ５の回転軸６に直角であり、その結果、これら
の磁石２５によって作り出される磁界の力線２６は軟鋼
製の二つの部片２３、２４を横切る。

【００１７】図１が示すように、“休止”位置では、ロ
ータ５は、軟鋼製の第１部片２３が上方に位置し、一
方、軟鋼製の第２部片２４が下方に位置するように角度
的に位置決めされ、磁石２５は水平面内にある。これら
の磁石２５によって作り出される磁界の力線２６は、そ
のとき二つの磁極片１、２を横切って“短絡”状態で閉
じられる。これらの磁極片１、２の下端部９によって及
ぼされる吸引力はゼロである。

【００１８】図２が示すように、“作動”位置では、ロ
ータ５は異なる角度位置を占め、その位置では磁石２５
は、垂直中間平面７に対して鋭角αを形成する傾斜面内
に位置する。したがって、ロータ５の軟鋼製の第１部片
２３は磁極片１の凹所区域１６の面に位置し、ロータ５
の軟鋼製の第２部片２４は他方の磁極片２の凹所区域１
７の面に位置する。したがって二つの磁極片１、２は、
それぞれの下端部９によって一方は“北”で他方は
“南”の二つの作動極を形成する。強磁性材料製の部片
２７は、これらの作動極によって引付けられ、そのとき
力線２６は、磁極片１、引付けられる部片２７及び磁極
片２によって閉じられる。

【００１９】“休止”位置から“作動”位置に、及びそ
の逆に移行するために、磁力運搬器は、符号２８によっ
てその全体を示され、図３及び図４に図示された操作装
置を備えている。ロータ５の回転軸の一方２１には、止
めピン３０によって回転軸２１に回転接続されたボス２
９が、運搬器の固定部の外側に取付けられている。ボス
２９は半径方向の管３１を支持し、この管の周りには操
作握り３２が固定されている。

【００２０】管３１の内部には、ばね３４によって外方
に付勢された棒３３が滑動可能に取付けられ、棒３３の
外端部３５は、押しボタンを形成するために管３１の外
にわずかに突出る。棒３３はその内端部付近に、管３１
の壁面の長手方向の孔３７を通り、閉鎖フランジ１４の
外側面の中空部３８内に係合される止めピン３７を支え
る。

【００２１】さらに詳しくは図４が示すように、中空部
３８は、全体として円形であるが、ロータ５の“作動”
位置に対応するあらかじめ定められた角度位置に設けら
れた切欠き４０をもった輪郭を有する。切欠き４０への
止めピン３６の係合は、ロータ５の“作動”位置割り出
しを保証する。この位置を離れるには、ばね３４の力に
対抗して滑動させるために、切欠き４０から止めピン３
６を引張り出すように棒３３の外端部３５を押さえるの
が好ましい。“休止”位置の割出しは、それが不要なの
で設けられていない。

【００２２】もちろん本発明は、例として上に述べられ
てきたこの永久磁石式磁力運搬器の一実施例のみに限定
されるものではなく、むしろ同一原理を尊重するすべて
の実施及び応用の変形を含むものである。したがって、
特に磁力運搬器のいろいろな部品の形状の詳細、又はロ
ータ内に組込まれる磁石の種類、又はさらに“作動−休
止”転換装置の構造に関する改良によって、本発明の範
囲から遠ざかるものではない。

【図面の簡単な説明】

【図１】“休止”位置にある、本発明による磁力運搬器
の垂直断面図。

【図２】“作動”位置にある、図１の磁力運搬器の垂直
断面図。

【図３】図１の線 III−III によるこの磁力運搬器の長
手方向断面図。

【図４】“作動−休止”転換装置に接続された閉鎖フラ
ンジの、図３の矢印Ｆによる正面図。

【符号の説明】

１、２ 磁極片 ３、４ 非磁性要素（連結板） ５ ロータ ６ 水平軸 ７ 垂直中間平面 ８ 磁極片１、２の頂部 ９ 同下端部 １０ 水平面 １１、１３ 溶接部 １２ 持上げ環 １４、１５ 非磁性要素（閉鎖フランジ） １６、１７ 円筒形凹所区域 １８ 磁極間隙 １９、２０ 環（軸受） ２１、２２ ロータ５の回転軸 ２３、２４ 軟鋼製の対向部片 ２５ 永久磁石 ２６ 磁界の力線 ２７ 強磁性材料部片 ２８ 操作装置 ２９ ボス ３０、３６ 止めピン ３１ 半径方向の管 ３２ 握り ３３ 押し棒 ３４ ばね ３５ 押し棒３３の外端部 ３７ 長手方向の孔 ３８ 固定中空部 ３９ 固定中空部３８の円形輪郭 ４０ 円形輪郭３９の切欠き

Claims (8)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 垂直中間平面（７）に対して対称であ
   り、非磁性要素（３、４、１４、１５）によって互いに
   結合された二つの磁極片（１、２）をもった固定部、及
   び固定部の二つの磁極片（１、２）の間の水平軸（６）
   周りに回転自在に取付けられた円筒形のロータ（５）を
   有し、ロータ（５）が、軟鋼製の二つの対向部片（２
   ３、２４）の間に挿入された永久磁石（２５）を有し、
   操作装置（２８）によって“作動”角度位置と“休止”
   角度位置の間を回転移動可能である永久磁石式磁力運搬
   器において、固定部の二つの磁極片（１、２）が互いに
   下方で離れて行き、“作動”位置で作動極を構成する磁
   極片の各下端部（９）間の距離がこうして大きくなるこ
   と、ロータ（５）が非対称構造を有し、ロータの軟鋼製
   の二つの部片（１３、１４）が等しくないことを特徴と
   する永久磁石式磁力運搬器。
2. 【請求項２】 固定部の二つの磁極片（１、２）が、そ
   の頂部（８）及び下部（９）で、小さな幅の上部連結板
   （３）と大きな幅の下部連結板（４）の水平な２枚の非
   磁性連結板（３、４）によって互いに結合されることを
   特徴とする請求項１記載の永久磁石式磁力運搬器。
3. 【請求項３】 固定部が、二つの磁極片（１、２）及び
   ２枚の連結板（３、４）に対して垂直に固定され、ロー
   タ（５）の軸受（１９、２０）を支える２枚の梯形の非
   磁性閉鎖フランジ（１４、１５）を有することを特徴と
   する請求項２記載の永久磁石式運搬器。
4. 【請求項４】 ロータ（５）の軟鋼製の二つの対向部片
   （２３、２４）が、円の切片の形状をした、比較的大き
   い一方と比較的小さい他方との不均等な断面を有するこ
   とを特徴とする請求項１から３のいずれか１項に記載の
   永久磁石式磁力運搬器。
5. 【請求項５】 ロータ（５）の永久磁石（２５）が、
   “希土”型磁石であることを特徴とする請求項１から４
   のいずれか１項に記載の永久磁石式運搬器。
6. 【請求項６】 ロータ（５）の永久磁石（２５）が、
   “ネオジム−鉄−硼素”型磁石であることを特徴とする
   請求項５記載の永久磁石式磁力運搬器。
7. 【請求項７】 操作装置（２８）が、ロータ（５）とと
   もに回転させられ、内部にはばね（３４）によって外方
   向に押付けられた押し棒（３３）を滑動可能に取付けら
   れている握り（３２）をもった、半径方向の管（３１）
   を固定部の外側に有し、押し棒（３３）が指又は止めピ
   ン（３６）を支え、該指又は止めピンが、前記管（３
   １）の少なくとも一つの長手方向の孔（３７）を横切
   り、“作動”角度位置のロータ（５）を割出すための、
   少なくとも一つの切欠き（４０）を有する円形輪郭（３
   ９）の固定中空部（３８）内に係合されることを特徴と
   する請求項１から６のいずれか１項に記載の永久磁石式
   運搬器。
8. 【請求項８】 前記中空部が、固定部の閉鎖フランジの
   一方（１４）の外面における中空区域（３８）であるこ
   とを特徴とする請求項３及び７の組合わせによる永久磁
   石式運搬器。