JP2768103B2 - 内燃機関のエアクリーナ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、内燃機関のエアクリ
ーナ、特に内燃機関のブローバイガス処理用新気通路が
ダストサイドに連通しているとともに、該新気通路に対
しスポンジ製ブローバイフィルタを備えたエアクリーナ
の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】内燃機関のブローバイガス処理装置は、
一般に、エアクリーナから取り出した新気をシリンダヘ
ッドカバーを経由してクランクケース内に導き、この新
気によってクランクケース内を掃気するとともに、新気
とともに押し出されたブローバイガスを、流量制御弁を
介して機関吸気系の絞弁下流側例えば吸気マニホルドに
戻す構成となっている。従って、この種のブローバイガ
ス処理装置を備えた内燃機関用のエアクリーナにあって
は、そのダストサイド側もしくはクリーンサイド側にブ
ローバイガス処理用新気通路の一端が接続された形とな
るが、ダストサイド側に上記新気通路を接続する場合に
は、新気への塵埃の混入を防ぐために、該新気通路の開
口端に、エアクリーナ用フィルタエレメントとは別にス
ポンジ等で形成したブローバイフィルタを設ける必要が
ある。

【０００３】例えば、実開昭６１−１４４２５７号公報
には、環状のフィルタエレメントを用いたものにおい
て、外周側のダストサイドにブローバイガス処理用新気
通路を接続するとともに、その開口端を覆うように上面
が開口した小型のフィルタ室を形成し、ここにスポンジ
製ブローバイフィルタを挿填した構成が示されている。
このものでは、上記ブローバイフィルタの上端面がダス
トサイド内で十分に大きく開放された形となっており、
上方に位置するエアクリーナカバーとの間に十分な間隔
が与えられている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、前述したよ
うなブローバイガス処理装置においては、周知のよう
に、ブローバイガス発生量が多く、しかも絞弁の前後差
圧が小さくなる高負荷運転時には、ブローバイガスが新
気通路を逆流してエアクリーナ内に流入し、ここから機
関燃焼室へ導入されるようになる。そのため、ブローバ
イガスに含まれているオイル成分がブローバイフィルタ
に付着し、運転状態によっては該ブローバイフィルタが
オイルでかなり濡れた湿潤状態となる。

【０００５】このようにブローバイフィルタが湿潤状態
となった場合に、上記従来の構成では、エアクリーナ内
の圧力変動に伴って、ブローバイフィルタからオイルが
油滴となってエアクリーナ内に飛散し易い。従って、エ
アクリーナのダストサイド側の下面に通常設けられてい
る水抜き孔から汚れたオイルが滴下し、周囲を汚損して
しまうことがあった。しかも、ダストサイド内に飛散し
たオイルは塵埃と混合して泥状となり、上記水抜き孔を
閉塞してしまう虞れがある。

【０００６】また、上記従来の構成では、ブローバイフ
ィルタがフィルタ室に単に上方から挿入されているに過
ぎず、振動等により徐々に抜け出て脱落してしまうこと
もある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明に係る内燃機関
のエアクリーナは、ボディとカバーとからなるケーシン
グと、略平板状に形成され、かつ上記ケーシング内をダ
ストサイドとクリーンサイドとに仕切るように配設され
るフィルタエレメントと、上記ケーシング内のダストサ
イドに連通したブローバイガス処理用新気通路と、ケー
シング内側面に筒状に形成されたフィルタケース部に挿
填され、かつ上記ブローバイガス処理用新気通路の開口
端を覆うとともに、大気に開放される端面が上記フィル
タエレメントのダストサイド側の外郭面に近接して配置
されてなるブローバイフィルタとを備えたことを特徴と
している。

【０００８】

【作用】ブローバイガス処理用の新気は、ケーシング内
のダストサイドからブローバイフィルタを通過してブロ
ーバイガス処理用新気通路へ取り込まれ、該新気通路を
介して機関へ導入される。また、高負荷運転時には、新
気通路をブローバイガスが逆流し、そのブローバイガス
に含まれていたオイル成分はブローバイフィルタに吸収
される。

【０００９】そして、ブローバイフィルタがオイルで湿
潤状態となったとすると、圧力変動によりブローバイフ
ィルタからオイルが飛散しようとすることがあるが、こ
の場合に、ブローバイフィルタの端面がフィルタエレメ
ントの外郭面に近接しているので、オイル成分が直ちに
フィルタエレメントの濾材に吸収される。従って、ケー
シング内にオイル成分が飛散することがない。

【００１０】

【実施例】以下、この発明の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明する。

【００１１】このエアクリーナ１は、図示せぬ気化器も
しくはスロットルチャンバの上面に直接に載置固定され
る形式のもので、エアクリーナ１の外殻を構成するケー
シング２は、比較的硬質な合成樹脂からなり、図３に示
すように、上方から見て略矩形をなしているとともに、
図１に示すように、下部のボディ３と上部のカバー４と
に分割形成されている。

【００１２】図５および図６は、下部のボディ３を示し
ている。このボディ３は、上面が開口した平皿状をなす
もので、略平坦な底部５を有し、かつ長手方向の一端と
なる一方の側壁６が比較的高く立ち上がっているととも
に、該側壁６を貫通するような形で、外気導入口７が設
けられている。長手方向の他端側では、側壁８が非常に
低く形成されており、かつ長手方向の略中央まで、その
低い側壁８が連続している。そして、長手方向の略中央
付近から略三角形に立ち上がった側壁９が設けられてお
り、その先端が上記側壁６に連続している。これらの側
壁６，８，９の上端には、シール部材１０（図１，図４
参照）を装着するための溝１１ａを有するフランジ部１
１が設けられている。

【００１３】また上記の側壁６および側壁９に囲まれた
一側部には、図５に示すように、パッキン収容溝１２が
矩形に凹設されている。この矩形のパッキン収容溝１２
は、１２ａ〜１２ｄの４辺からなるが、その１辺１２ａ
は側壁６の上端部内側に沿って形成され、かつ互いに対
向する２辺１２ｂ，１２ｃが側壁９の上端部内側に沿っ
て形成されている。そして、ケーシング２中央寄りの残
りの１辺１２ｄは、底部５を横切るように形成されてい
る。つまり、このパッキン収容溝１２は、側壁９の上端
縁と同様に底部５の面に対し傾斜した状態に形成されて
いる。また、底部５のパッキン収容溝１２外側部分に空
気出口１３が開口形成されている。この空気出口１３
は、図示せぬ気化器もしくはスロットルチャンバに直接
に接続される。なお、パッキン収容溝１２に囲まれた底
部５の適宜位置に、水抜き孔１４が形成されている。

【００１４】上記ボディ３の一側部に収容されるフィル
タエレメント１７は、図１に示すように、濾紙等の濾材
１７ａを多数回折り返し、かつフレーム１７ｂにより囲
って矩形の平板状のユニットに一体化したものであっ
て、その下面側の外側縁にはウレタンゴム等からなるエ
レメントパッキン１８が全周に亙って設けられている。
このエレメントパッキン１８は、フレーム１７ｂより外
周側に突出しており、上述したパッキン収容溝１２に嵌
合する略台形の断面形状を有している。また、上記エレ
メントパッキン１８の上面には、断面Ｌ字形をなす矩形
の金属製リテーナ１９が嵌め込まれている。このリテー
ナ１９は、フィルタエレメント１７の全周に亙って連続
したフレーム状をなしている。そして、このように構成
されたフィルタエレメント１７は、図１に示すように、
エレメントパッキン１８をボディ３のパッキン収容溝１
２に嵌合させた状態で収容されている。つまり、ボディ
３の底部５に対し傾斜した姿勢で収容されるようになっ
ている。なお、このフィルタエレメント１７の濾材１７
ａは、濾紙等に適宜な油を含浸させた湿式タイプのもの
が用いられている。

【００１５】また、ボディ３の上面開口部を覆うカバー
４は、図７にも示すように、略平坦な上部壁２０および
側壁２１を有し、かつ側壁２１の下端に、シール部材１
０を受けるシール嵌合溝２２が全周に亙って形成されて
いる。そして、このカバー４は、上述したボディ３側の
部分的に高くなった側壁６，９に対応して一側部が略三
角形に切り欠かれたようになっている。つまり、フィル
タエレメント１７収容位置に対応する部分では、シール
嵌合溝２２がフィルタエレメント１７と平行となるよう
に傾斜している。そして、シール嵌合溝２２の内周側の
突起片２３が、フィルタエレメント１７のリテーナ１９
を上方から押圧するようになっている（図１，図４参
照）。

【００１６】ケーシング２を構成するボディ３およびカ
バー４は、両者の接合部に沿って外側面に配設された計
６個のクランプ２４によって互いに締付固定されてい
る。このクランプ２４は、図４，図２に示すように、ボ
ディ３側面に一体に形成されたクランプ支持部２４ａ
と、該クランプ支持部２４ａに下端が回動可能に支持さ
れたバネ性を有する金属板からなるクランプ片２４ｂ
と、カバー４側面に一体に形成され、かつクランプ片２
４ｂの上端部と係合する係止部２４ｃとからそれぞれ構
成されている。このクランプ２４を締め付けた状態にお
いては、外側縁のシール部材１０がボディ３，カバー４
間で挟圧され、ケーシング２内外がシールされる。ま
た、上記のクランプ２４の締付によって同時にエレメン
トパッキン１８がパッキン収容溝１２とカバー４の突起
片２３との間で挟圧され、フィルタエレメント１７周囲
がシールされる。なお、底部５のパッキン収容溝１２ｄ
に対応する部分では、エレメントパッキン１８がクラン
プ２４の締付力の分力によりパッキン収容溝１２ｄの側
面に押し付けられることによってシール性能が得られ
る。

【００１７】上記のように傾斜した姿勢で収容されたフ
ィルタエレメント１７によって、ケーシング２内は、図
１に示すように、外気導入口７に連通するダストサイド
２５と、空気出口１３に連通するクリーンサイド２６と
に仕切られている。そして、そのダストサイド２５内に
連通するように、ボディ３の一方の側壁９に、ブローバ
イガス処理用新気通路２７を構成するコネクタ２８が取
り付けられている（図２，図８参照）。なお、このブロ
ーバイガス処理用新気通路２７の図示せぬ先端は、内燃
機関のシリンダヘッドカバーに接続される。

【００１８】上記側壁９の内側面には、図１，図５に示
すように、上記ブローバイガス処理用新気通路２７の開
口端２７ａを覆うようにフィルタケース部２９がボディ
３と一体に形成されている。このフィルタケース部２９
は、上端が開口した偏平な筒状をなし、かつその内側の
下部には上下方向に沿って複数本のリブ３０が形成され
ている。またフィルタケース部２９の上端部は、パッキ
ン収容溝１２の内周縁と同一の高さまで伸びており、パ
ッキン収容溝１２と同様に傾斜している。そして、この
フィルタケース部２９内には、ポリエステル繊維を積層
して形成したブローバイフィルタ３１が上方から挿填さ
れており、該ブローバイフィルタ３１がブローバイガス
処理用新気通路２７の開口端２７ａを覆っている。この
ブローバイフィルタ３１の下端は、上記リブ３０によっ
て支持され、フィルタケース部２９底面との間に、オイ
ル成分等を溜める適宜な空間が確保されている。また、
ブローバイフィルタ３１の上端面３１ａは、フィルタケ
ース部２９の上端に沿うように傾斜面となっている。す
なわち、大気に開放される上端面３１ａが、図１に示す
ように、フィルタエレメント１７のダストサイド２５側
の外郭面１７ｃと平行となっており、かつ該外郭面１７
ｃに殆ど接する程度に近接している。

【００１９】上記実施例の構成によれば、低中負荷運転
時には、ダストサイド２５内の空気の一部がブローバイ
フィルタ３１を介してブローバイガス処理用新気通路２
７へ取り込まれ、該新気通路２７を通して機関のシリン
ダヘッド，クランクケーズへと新気が導入される。な
お、ブローバイフィルタ３１の上端面３１ａがフィルタ
エレメント１７に覆われているが、濾材１７ａは凹凸に
折曲されており、しかも空気の通流が可能であるので、
新気の取り込みは何ら支障なく行われる。一方、機関の
高負荷運転時には、ブローバイガス処理用新気通路２７
をブローバイガスが逆流し、エアクリーナ１を介して機
関燃焼室へ導入される形となる。このとき、ブローバイ
ガスに含まれていたオイル成分は、ブローバイフィルタ
３１に吸収され、かつフィルタケース部２９の底部に溜
められる。そして、フィルタケース部２９内に多量のオ
イルが溜まり、圧力変動によりブローバイフィルタ３１
から溢れ出るような状態になったとすると、該ブローバ
イフィルタ３１の上端面３１ａがフィルタエレメント１
７に広く近接していることから、そのオイル成分が直ち
に濾材１７ａに吸収される。従って、ケーシング２内に
はオイルが飛散することがなく、周囲の汚損や水抜き孔
１４の目詰まりが防止される。なお、濾材１７ａは、オ
イル成分を吸収するが濾過性能を阻害することはない。
また、ブローバイフィルタ３１が上方からフィルタエレ
メント１７により押さえられるので、振動等によるブロ
ーバイフィルタ３１の脱落も確実に防止される。

【００２０】

【発明の効果】以上の説明で明らかなように、この発明
に係る内燃機関のエアクリーナにおいては、ブローバイ
ガス処理用新気通路に対するブローバイフィルタが多量
のオイル成分を含んだ場合に、そのオイル成分がフィル
タエレメントの濾材に吸収され、エアクリーナのケーシ
ング内に飛散することがない。従って、水抜き孔からの
滴下による周囲の汚損や水抜き孔の目詰まりを防止でき
る。また、ブローバイフィルタのフィルタケース部から
の脱落も確実に防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明に係るエアクリーナの一実施例を示す
図３のＡ−Ａ線に沿った断面図。

【図２】このエアクリーナの正面図。

【図３】同じく平面図。

【図４】図３のＢ−Ｂ線に沿った要部の断面図。

【図５】ボディのみの平面図。

【図６】図５のＣ−Ｃ線に沿ったボディのみの断面図。

【図７】カバーのみの断面図。

【図８】図２のＤ−Ｄ線に沿った要部の断面図。

【符号の説明】

２…ケーシング ３…ボディ ４…カバー １７…フィルタエレメント ２７…ブローバイガス処理用新気通路 ２９…フィルタケース部 ３１…ブローバイフィルタ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ボディとカバーとからなるケーシング
   と、略平板状に形成され、かつ上記ケーシング内をダス
   トサイドとクリーンサイドとに仕切るように配設される
   フィルタエレメントと、上記ケーシング内のダストサイ
   ドに連通したブローバイガス処理用新気通路と、ケーシ
   ング内側面に筒状に形成されたフィルタケース部に挿填
   され、かつ上記ブローバイガス処理用新気通路の開口端
   を覆うとともに、大気に開放される端面が上記フィルタ
   エレメントのダストサイド側の外郭面に近接して配置さ
   れてなるブローバイフィルタとを備えたことを特徴とす
   る内燃機関のエアクリーナ。