JP2762944B2 - 電子ビーム加工機用カソード動作温度設定方法およびこの方法を用いた電子ビーム加工機 - Google Patents
電子ビーム加工機用カソード動作温度設定方法およびこの方法を用いた電子ビーム加工機Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子ビーム加工機用カ
ソードの動作温度設定方法およびこの方法を用いた電子
ビーム加工機に関し、特に、エミッションの安定性の向
上およびカソードの長寿命化を可能とするカソードの動
作温度設定方法および電子ビーム加工機に関する。
ソードの動作温度設定方法およびこの方法を用いた電子
ビーム加工機に関し、特に、エミッションの安定性の向
上およびカソードの長寿命化を可能とするカソードの動
作温度設定方法および電子ビーム加工機に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、電子ビーム加工機用カソードの
熱陰極としては、酸化物、ホウ化ランタン、高融点金属
等が使用されている。例えば、電気学会技術報告(II
部)第147号(社団法人電気学会編 1983年4月
発行)第1頁から第42頁に開示されているように、金
属等の溶融、接合、孔あけおよびアニール等の加工を行
う電子ビーム加工機におけるカソードの熱陰極として、
タングステンまたはタンタル等の高融点金属あるいはホ
ウ化ランタンがよく用いられている。
熱陰極としては、酸化物、ホウ化ランタン、高融点金属
等が使用されている。例えば、電気学会技術報告(II
部)第147号(社団法人電気学会編 1983年4月
発行)第1頁から第42頁に開示されているように、金
属等の溶融、接合、孔あけおよびアニール等の加工を行
う電子ビーム加工機におけるカソードの熱陰極として、
タングステンまたはタンタル等の高融点金属あるいはホ
ウ化ランタンがよく用いられている。
【0003】しかしながら、このような材料により形成
されたカソードは、仕事関数の大きさやイオン衝撃性に
対する耐久性の観点から、カソードから放出される電子
ビームの安定性や、カソードの寿命に対して種々の問題
を残していた。例えば、タングステンカソードでは、そ
の動作温度が非常に高温であることが問題であり、ま
た、LaB6カソードではイオン衝撃性に弱く、ビーム
電流が非常に不安定であることが問題となっていた。そ
こで、本発明者は、新規の物質からなるカソード、つま
り、2400℃以上の融点を有する金属、または、その
金属を主成分とする合金、または、その金属の炭化物、
または、その金属のホウ化物、または、ジルコニウムの
炭化物、または、ジルコニウムのホウ化物のうち選ばれ
た少なくとも1種の耐イオン衝撃性高融点耐熱物質と、
ランタン、イットリウム、セリウム、セシウムから選ば
れた少なくとも1種のホウ化物または酸化物から選ばれ
た低仕事関数を有する電子放射物質とを熱間等方加圧処
理等により一体化することによって得られる物質からな
るカソードを発明することによって、従来から用いられ
ているカソードの問題点を解決することに成功した。
されたカソードは、仕事関数の大きさやイオン衝撃性に
対する耐久性の観点から、カソードから放出される電子
ビームの安定性や、カソードの寿命に対して種々の問題
を残していた。例えば、タングステンカソードでは、そ
の動作温度が非常に高温であることが問題であり、ま
た、LaB6カソードではイオン衝撃性に弱く、ビーム
電流が非常に不安定であることが問題となっていた。そ
こで、本発明者は、新規の物質からなるカソード、つま
り、2400℃以上の融点を有する金属、または、その
金属を主成分とする合金、または、その金属の炭化物、
または、その金属のホウ化物、または、ジルコニウムの
炭化物、または、ジルコニウムのホウ化物のうち選ばれ
た少なくとも1種の耐イオン衝撃性高融点耐熱物質と、
ランタン、イットリウム、セリウム、セシウムから選ば
れた少なくとも1種のホウ化物または酸化物から選ばれ
た低仕事関数を有する電子放射物質とを熱間等方加圧処
理等により一体化することによって得られる物質からな
るカソードを発明することによって、従来から用いられ
ているカソードの問題点を解決することに成功した。
【0004】カソードから電子を放出させるには、この
カソードを所望の温度に加熱する必要がある。ここで、
従来のカソード温度設定方法について図4、図5、図6
および図7を参照して説明する。図4は、従来の電子ビ
ーム加工機の構成を示す概略図である。図5は、カソー
ドの加熱方法を説明する斜視図である。図6は、従来の
方法によって、WC−LaB6(タングステンカーバイ
ド−6ホウ化ランタン)カソードの動作温度を設定する
手順を説明するフローチャートである。また、図7は、
空間電荷制限領域を説明する概念図である。
カソードを所望の温度に加熱する必要がある。ここで、
従来のカソード温度設定方法について図4、図5、図6
および図7を参照して説明する。図4は、従来の電子ビ
ーム加工機の構成を示す概略図である。図5は、カソー
ドの加熱方法を説明する斜視図である。図6は、従来の
方法によって、WC−LaB6(タングステンカーバイ
ド−6ホウ化ランタン)カソードの動作温度を設定する
手順を説明するフローチャートである。また、図7は、
空間電荷制限領域を説明する概念図である。
【0005】まず、一般的な電子ビーム加工機の構成に
ついて説明する。電子ビーム加工機は、コラム(電子銃
室)1およびチャンバ(ワーク加工室)2の2つの真空
容器を備えており、それぞれの真空容器には独立した真
空排気系3および4が取り付けられている。また、コラ
ム1とチャンバ2は、コラムバルブ5を介して接続され
ており、このコラムバルブ5を閉じることにより、両者
を真空的に遮断することができる。コラム1内には、一
般的な電子銃を構成するカーボンヒータ6、WC−La
B6カソード7、ウェネルト電極8およびアノード9が
配置されており、WC−LaB6カソード7とウェネル
ト電極8との間にはバイアス電圧10が印加される。つ
まり、ウェネルト電極8には、WC−LaB6カソード
7よりも負の電圧が印加される。また、図5に示すよう
に、WC−LaB6カソード7は2枚のカーボンヒータ
6に挟まれて取り付けられている。そして、一方のカー
ボンヒータ6から他方のカーボンヒータ6へ、ヒータ加
熱電源11を用いて電流(以下、カソード加熱電流とす
る)を流すことによってカーボンヒータ6を加熱し、こ
の2つのカーボンヒータ6からの熱伝導によりWC−L
aB6カソード7は加熱される。WC−LaB6カソー
ド7の加熱温度は、カソード加熱電流の電流値を変化さ
せることによって調整される。電子ビーム12のビーム
電流値は、WC−LaB6カソード7とウェネルト電極
8との間に印加されるバイアス電圧10を変化させるこ
とによって調整される。ここで、バイアス電圧10が低
いほど電子ビーム12が出力されやすく、逆にバイアス
電圧10が大きいほど電子ビーム12が出力されにくく
なり、バイアス電圧10を所定値以上にすると電子ビー
ム12が出力されなくなる(以下、この状態をビームO
FFとする)。ビーム電流は、WC−LaB6カソード
7からアースに流れた電流をビーム電流計13により計
測することによって測定される。WC−LaB6カソー
ド7から出射された電子ビーム12は、加速電圧14に
より加速され、レンズ系15によりチャンバ2内に配置
されたワーク16上に集束照射されて、そのワーク16
を加工する。チャンバ2内のワーク16の交換は、バイ
アス電圧10を大きくしてビームOFFさせ、コラムバ
ルブ5を閉じてチャンバ2とコラム1とを遮断した後、
チャンバ2を大気に開けて行われる。ワーク交換後、チ
ャンバ2内の真空を引き、チャンバ2内が所定の真空度
に達するとコラムバルブ5を開にしてビーム照射を再開
する。この動作を数十秒から数分ごとに繰り返すことに
より次々にワーク16の加工を行うことができる。
ついて説明する。電子ビーム加工機は、コラム(電子銃
室)1およびチャンバ(ワーク加工室)2の2つの真空
容器を備えており、それぞれの真空容器には独立した真
空排気系3および4が取り付けられている。また、コラ
ム1とチャンバ2は、コラムバルブ5を介して接続され
ており、このコラムバルブ5を閉じることにより、両者
を真空的に遮断することができる。コラム1内には、一
般的な電子銃を構成するカーボンヒータ6、WC−La
B6カソード7、ウェネルト電極8およびアノード9が
配置されており、WC−LaB6カソード7とウェネル
ト電極8との間にはバイアス電圧10が印加される。つ
まり、ウェネルト電極8には、WC−LaB6カソード
7よりも負の電圧が印加される。また、図5に示すよう
に、WC−LaB6カソード7は2枚のカーボンヒータ
6に挟まれて取り付けられている。そして、一方のカー
ボンヒータ6から他方のカーボンヒータ6へ、ヒータ加
熱電源11を用いて電流(以下、カソード加熱電流とす
る)を流すことによってカーボンヒータ6を加熱し、こ
の2つのカーボンヒータ6からの熱伝導によりWC−L
aB6カソード7は加熱される。WC−LaB6カソー
ド7の加熱温度は、カソード加熱電流の電流値を変化さ
せることによって調整される。電子ビーム12のビーム
電流値は、WC−LaB6カソード7とウェネルト電極
8との間に印加されるバイアス電圧10を変化させるこ
とによって調整される。ここで、バイアス電圧10が低
いほど電子ビーム12が出力されやすく、逆にバイアス
電圧10が大きいほど電子ビーム12が出力されにくく
なり、バイアス電圧10を所定値以上にすると電子ビー
ム12が出力されなくなる(以下、この状態をビームO
FFとする)。ビーム電流は、WC−LaB6カソード
7からアースに流れた電流をビーム電流計13により計
測することによって測定される。WC−LaB6カソー
ド7から出射された電子ビーム12は、加速電圧14に
より加速され、レンズ系15によりチャンバ2内に配置
されたワーク16上に集束照射されて、そのワーク16
を加工する。チャンバ2内のワーク16の交換は、バイ
アス電圧10を大きくしてビームOFFさせ、コラムバ
ルブ5を閉じてチャンバ2とコラム1とを遮断した後、
チャンバ2を大気に開けて行われる。ワーク交換後、チ
ャンバ2内の真空を引き、チャンバ2内が所定の真空度
に達するとコラムバルブ5を開にしてビーム照射を再開
する。この動作を数十秒から数分ごとに繰り返すことに
より次々にワーク16の加工を行うことができる。
【0006】次に、この電子ビーム加工機によるカソー
ド動作温度の設定方法について図6のフローチャートに
沿って説明する。
ド動作温度の設定方法について図6のフローチャートに
沿って説明する。
【0007】まず、コラム1内を所定の真空度(例え
ば、10-6Torr台)まで真空引きを行い(S1
0)、電子銃に各電圧(ヒータ加熱電圧やバイアス電圧
等)を印加するために図示せぬ高圧電源をONし(S2
0)、WC−LaB6カソード7を通常の動作温度(1
500〜1800℃程度)よりも低い温度(例えば、1
400℃程度)に設定する(S30)。次に、チャンバ
2内を所定の真空度(例えば、10-2Torr台)まで
真空引きを行った(S40)後、コラムバルブ5を開に
し(S50)、電子ビーム12の照射を開始する(S6
0)。そして、WC−LaB6カソード7の温度を徐々
に、例えば、20℃ずつ上昇させていく(S70)。こ
のWC−LaB6カソード7の温度の上昇にともなって
ビーム電流も増加するが、カソード7がある温度以上に
なるとビーム電流が飽和する。そして、カソード7の温
度をこのビーム電流が飽和するまで上昇させる(S8
0)。最終的に、このビーム電流が飽和し始めたときの
カソード7の温度をカソード7の動作温度として設定し
ていた(S90)。
ば、10-6Torr台)まで真空引きを行い(S1
0)、電子銃に各電圧(ヒータ加熱電圧やバイアス電圧
等)を印加するために図示せぬ高圧電源をONし(S2
0)、WC−LaB6カソード7を通常の動作温度(1
500〜1800℃程度)よりも低い温度(例えば、1
400℃程度)に設定する(S30)。次に、チャンバ
2内を所定の真空度(例えば、10-2Torr台)まで
真空引きを行った(S40)後、コラムバルブ5を開に
し(S50)、電子ビーム12の照射を開始する(S6
0)。そして、WC−LaB6カソード7の温度を徐々
に、例えば、20℃ずつ上昇させていく(S70)。こ
のWC−LaB6カソード7の温度の上昇にともなって
ビーム電流も増加するが、カソード7がある温度以上に
なるとビーム電流が飽和する。そして、カソード7の温
度をこのビーム電流が飽和するまで上昇させる(S8
0)。最終的に、このビーム電流が飽和し始めたときの
カソード7の温度をカソード7の動作温度として設定し
ていた(S90)。
【0008】カソード7の温度の上昇にともなってビー
ム電流が増加していくのは、
ム電流が増加していくのは、
【0009】 Jth=AeT2exp(−φ/kT) …(1)
【0010】で表されるように、カソード7の温度の上
昇によりカソード7からの放出電流密度が増加するため
である。ここで、Jth:放出電流密度、Ae:熱電子
放出定数、T:カソード温度、φ:仕事関数、k:ボル
ツマン定数であり、Aeとφはカソード7を形成する金
属の種類やそのカソード7の電子放出表面の状態によっ
て変わる。また、カソード7からアースに流れるビーム
電流が増加していくと、逆に、カソード7から放出され
た電子自身の電荷によりビーム電流が抑制されてしま
い、結局、カソード7の温度がある温度を越えるとビー
ム電流が増加しなくなり飽和することになる。そして、
図7に示すように、ビーム電流がカソード温度の上昇に
伴って増加していく領域を温度制限領域、カソード温度
を上げてもこのカソード自身から放出される電子の電荷
(つまり、電子ビーム自身の電荷)によりビーム電流が
飽和してしまう領域を空間電荷制限領域という。
昇によりカソード7からの放出電流密度が増加するため
である。ここで、Jth:放出電流密度、Ae:熱電子
放出定数、T:カソード温度、φ:仕事関数、k:ボル
ツマン定数であり、Aeとφはカソード7を形成する金
属の種類やそのカソード7の電子放出表面の状態によっ
て変わる。また、カソード7からアースに流れるビーム
電流が増加していくと、逆に、カソード7から放出され
た電子自身の電荷によりビーム電流が抑制されてしま
い、結局、カソード7の温度がある温度を越えるとビー
ム電流が増加しなくなり飽和することになる。そして、
図7に示すように、ビーム電流がカソード温度の上昇に
伴って増加していく領域を温度制限領域、カソード温度
を上げてもこのカソード自身から放出される電子の電荷
(つまり、電子ビーム自身の電荷)によりビーム電流が
飽和してしまう領域を空間電荷制限領域という。
【0011】このように、従来のカソード温度設定方法
では、徐々にカソード温度を上昇させながら、温度制限
領域から空間電荷制限領域へ変わり始めるときのカソー
ドの温度を検出し、その温度を動作温度として設定する
というものであった。また、従来の方法において、温度
制限領域から空間電荷制限領域への変化点を検出するに
あたり、カソード温度を徐々に上昇させたが、実際に
は、ある温度から徐々に下降させても検出することがで
きる。
では、徐々にカソード温度を上昇させながら、温度制限
領域から空間電荷制限領域へ変わり始めるときのカソー
ドの温度を検出し、その温度を動作温度として設定する
というものであった。また、従来の方法において、温度
制限領域から空間電荷制限領域への変化点を検出するに
あたり、カソード温度を徐々に上昇させたが、実際に
は、ある温度から徐々に下降させても検出することがで
きる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従来のカソード温度設
定方法により設定されたカソードの動作温度は、空間電
荷制限領域にあるために、安定したビーム電流が得られ
ると考えられていた。さらに、このカソード動作温度
は、空間電荷制限領域となるカソード温度のうち最も低
温である温度であるために、カソード材の蒸発が抑えら
れ、カソードの長寿命化も図られると考えられていた。
定方法により設定されたカソードの動作温度は、空間電
荷制限領域にあるために、安定したビーム電流が得られ
ると考えられていた。さらに、このカソード動作温度
は、空間電荷制限領域となるカソード温度のうち最も低
温である温度であるために、カソード材の蒸発が抑えら
れ、カソードの長寿命化も図られると考えられていた。
【0013】しかしながら、WC−LaB6カソードを
用いた電子ビーム加工機において、従来の方法でそのカ
ソード動作温度を設定すると、電子ビーム照射によるワ
ーク加工時に電子放出(以下、エミッションとする)が
不安定になるという問題点が生じた。この現象は、図7
の実線で示されるWC−LaB6カソードのエミッショ
ン特性に基づいて空間電荷制限領域でカソードが動作す
るように温度を設定したにもかかわらず、実際のワーク
加工時には、そのエミッション特性が図7の破線に変わ
ってしまい、結果として、WC−LaB6カソードが温
度制限領域で動作することによって生じる。このエミッ
ション特性の変化は、前述の(1)式において、熱電子
放出定数Aeおよび仕事関数φの劣化、特に仕事関数φ
値の増大が原因となっている。仕事関数φはカソード表
面の状態により変化することが知られており、ワーク加
工時に発生するガスやチャンバ側からコラム側へ流入す
る残留ガスなどによりWC−LaB6カソードの表面が
汚染されて仕事関数φが劣化する。そして、仕事関数φ
が劣化したために、カソードのエミッション能力がふら
つき、結果として、そのエミッション能力のふらつきが
ビーム電流のふらつきに現れてしまっていた。特に、チ
ャンバ内に酸素を流入させた場合に顕著なエミッション
の劣化が観測された。
用いた電子ビーム加工機において、従来の方法でそのカ
ソード動作温度を設定すると、電子ビーム照射によるワ
ーク加工時に電子放出(以下、エミッションとする)が
不安定になるという問題点が生じた。この現象は、図7
の実線で示されるWC−LaB6カソードのエミッショ
ン特性に基づいて空間電荷制限領域でカソードが動作す
るように温度を設定したにもかかわらず、実際のワーク
加工時には、そのエミッション特性が図7の破線に変わ
ってしまい、結果として、WC−LaB6カソードが温
度制限領域で動作することによって生じる。このエミッ
ション特性の変化は、前述の(1)式において、熱電子
放出定数Aeおよび仕事関数φの劣化、特に仕事関数φ
値の増大が原因となっている。仕事関数φはカソード表
面の状態により変化することが知られており、ワーク加
工時に発生するガスやチャンバ側からコラム側へ流入す
る残留ガスなどによりWC−LaB6カソードの表面が
汚染されて仕事関数φが劣化する。そして、仕事関数φ
が劣化したために、カソードのエミッション能力がふら
つき、結果として、そのエミッション能力のふらつきが
ビーム電流のふらつきに現れてしまっていた。特に、チ
ャンバ内に酸素を流入させた場合に顕著なエミッション
の劣化が観測された。
【0014】前述の従来のカソード温度設定方法では、
コラムおよびチャンバの真空引きが完了した後、コラム
バルブを開けてビーム照射を開始し、徐々にカソード温
度を上げながら、カソード動作温度を設定していた。通
常、コラム真空度は10-6Torr台で、また、チャン
バの真空度は10-2Torr台で真空引きを完了しコラ
ムバルブを開としていたが、カソード動作温度設定中
は、コラムやチャンバに空気等が流入することはない。
したがって、チャンバとコラムとの真空度の差によりチ
ャンバからコラム内に流入する空気によって、カソード
表面は一旦汚染されるが、カソード動作温度設定が終了
するまで、少なくとも数10秒間から数分間、コラムや
チャンバ内に新たに空気等が流入することはないので、
カソード表面は加熱されることによって次第に浄化され
る。その結果、WC−LaB6カソードの表面がそれほ
ど汚染されず仕事関数φが劣化していない状態で動作温
度の設定がなされることになる。つまり、図7の実線で
示すエミッション特性に基づいてカソードの動作温度が
設定されていた。
コラムおよびチャンバの真空引きが完了した後、コラム
バルブを開けてビーム照射を開始し、徐々にカソード温
度を上げながら、カソード動作温度を設定していた。通
常、コラム真空度は10-6Torr台で、また、チャン
バの真空度は10-2Torr台で真空引きを完了しコラ
ムバルブを開としていたが、カソード動作温度設定中
は、コラムやチャンバに空気等が流入することはない。
したがって、チャンバとコラムとの真空度の差によりチ
ャンバからコラム内に流入する空気によって、カソード
表面は一旦汚染されるが、カソード動作温度設定が終了
するまで、少なくとも数10秒間から数分間、コラムや
チャンバ内に新たに空気等が流入することはないので、
カソード表面は加熱されることによって次第に浄化され
る。その結果、WC−LaB6カソードの表面がそれほ
ど汚染されず仕事関数φが劣化していない状態で動作温
度の設定がなされることになる。つまり、図7の実線で
示すエミッション特性に基づいてカソードの動作温度が
設定されていた。
【0015】これに対し、実際のワーク加工において
は、実用上、数十秒ごとに次々と新たなワークを加工す
る必要がある。したがって、数十秒間隔でワークの交換
が行われることになり、ワークを交換するたびに、コラ
ム内の真空度とチャンバ内の真空度との差圧分だけ、コ
ラム側にチャンバ内の新たな残留気体が流入することに
なる。このように、ワークを交換する度に、コラム内に
酸素を含む気体が流入するために、その気体によるカソ
ード表面の汚染を浄化するための時間を確保する事がで
きない。その結果、仕事関数φが劣化した状態のエミッ
ション特性(図7の破線)の温度制限領域でカソードを
動作させることになりエミッションを不安定にさせてい
た。
は、実用上、数十秒ごとに次々と新たなワークを加工す
る必要がある。したがって、数十秒間隔でワークの交換
が行われることになり、ワークを交換するたびに、コラ
ム内の真空度とチャンバ内の真空度との差圧分だけ、コ
ラム側にチャンバ内の新たな残留気体が流入することに
なる。このように、ワークを交換する度に、コラム内に
酸素を含む気体が流入するために、その気体によるカソ
ード表面の汚染を浄化するための時間を確保する事がで
きない。その結果、仕事関数φが劣化した状態のエミッ
ション特性(図7の破線)の温度制限領域でカソードを
動作させることになりエミッションを不安定にさせてい
た。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに、本発明の電子ビーム加工機用カソード動作温度設
定方法では、電子銃室を十分に真空に引いた後、その電
子銃室に酸素を含む気体を間欠的に導入しながらカソー
ドにバイアス電圧を印加してこのカソードを動作させ、
そのときのカソードから放出される電子ビームの状態変
動が所望の範囲内になるように、カソードの動作温度を
調整するというものである。そして、電子銃室に酸素を
間欠的に導入するのは、電子銃室内を被加工物が頻繁に
交換される加工時の環境に近づけ、加工時の状態に合わ
せたカソードの動作温度の設定を行うためである。
めに、本発明の電子ビーム加工機用カソード動作温度設
定方法では、電子銃室を十分に真空に引いた後、その電
子銃室に酸素を含む気体を間欠的に導入しながらカソー
ドにバイアス電圧を印加してこのカソードを動作させ、
そのときのカソードから放出される電子ビームの状態変
動が所望の範囲内になるように、カソードの動作温度を
調整するというものである。そして、電子銃室に酸素を
間欠的に導入するのは、電子銃室内を被加工物が頻繁に
交換される加工時の環境に近づけ、加工時の状態に合わ
せたカソードの動作温度の設定を行うためである。
【0017】さらに、本発明において、カソードとし
て、2400℃以上の融点を有する金属、または、その
金属を主成分とする合金、または、その金属の炭化物、
または、その金属のホウ化物、または、ジルコニウムの
炭化物、または、ジルコニウムのホウ化物のうち選ばれ
た少なくとも1種の耐イオン衝撃性高融点耐熱物質と、
ランタン、イットリウム、セリウム、セシウムから選ば
れた少なくとも1種のホウ化物または酸化物から選ばれ
た低仕事関数を有する電子放射物質とを熱間等方加圧処
理等により一体化することによって得られる物質を用い
ることにより、タングステンカソードよりも動作温度を
低く設定でき、さらに、LaB6カソードよりもイオン
衝撃等に強いため、ビーム電流の経時変化を小さくする
ことができる。
て、2400℃以上の融点を有する金属、または、その
金属を主成分とする合金、または、その金属の炭化物、
または、その金属のホウ化物、または、ジルコニウムの
炭化物、または、ジルコニウムのホウ化物のうち選ばれ
た少なくとも1種の耐イオン衝撃性高融点耐熱物質と、
ランタン、イットリウム、セリウム、セシウムから選ば
れた少なくとも1種のホウ化物または酸化物から選ばれ
た低仕事関数を有する電子放射物質とを熱間等方加圧処
理等により一体化することによって得られる物質を用い
ることにより、タングステンカソードよりも動作温度を
低く設定でき、さらに、LaB6カソードよりもイオン
衝撃等に強いため、ビーム電流の経時変化を小さくする
ことができる。
【0018】
【実施例】次に、本発明の一実施例について図面を参照
して詳細に説明する。
して詳細に説明する。
【0019】図1は、本発明の第1の実施例の手順を示
すフローチャートであり、図2は、本発明のカソード動
作温度設定方法を実施する電子ビーム加工機の構成を示
す概略図である。
すフローチャートであり、図2は、本発明のカソード動
作温度設定方法を実施する電子ビーム加工機の構成を示
す概略図である。
【0020】本実施例のカソード動作温度設定方法は、
ワーク加工時の環境を考慮したものであって、図7の破
線で示すエミッション特性における空間電荷制限領域で
動作するようにカソードの動作温度を設定するものであ
る。
ワーク加工時の環境を考慮したものであって、図7の破
線で示すエミッション特性における空間電荷制限領域で
動作するようにカソードの動作温度を設定するものであ
る。
【0021】図2に示す本実施例の電子ビーム加工機の
構成の大部分が、図4に示す従来の電子ビーム加工機の
構成と同様であるため、その重複部分の説明は省略す
る。
構成の大部分が、図4に示す従来の電子ビーム加工機の
構成と同様であるため、その重複部分の説明は省略す
る。
【0022】本実施例の電子ビーム加工機の構成は、カ
ソード動作温度設定時に、コラム1に空気等を導入する
ためのコラムリークバルブ17と、チャンバ2に空気等
を導入するチャンバリークバルブ18とを備えており、
特に、これらのリークバルブ17および18は、バイア
ス電圧10の変動幅に応じて、コラム1またはチャンバ
2内を所望の真空度に設定するためのものであり、この
ようなリークバルブ17および18は、従来の電子ビー
ム加工機には備えられていない。
ソード動作温度設定時に、コラム1に空気等を導入する
ためのコラムリークバルブ17と、チャンバ2に空気等
を導入するチャンバリークバルブ18とを備えており、
特に、これらのリークバルブ17および18は、バイア
ス電圧10の変動幅に応じて、コラム1またはチャンバ
2内を所望の真空度に設定するためのものであり、この
ようなリークバルブ17および18は、従来の電子ビー
ム加工機には備えられていない。
【0023】次に、WC−LaB6カソード動作温度の
設定方法について図1に示すフローチャートに沿って説
明する。なお、以下の説明では、ビーム電流が予め設定
された値で一定となるように自動的にバイアス電圧が調
整されるものとする。
設定方法について図1に示すフローチャートに沿って説
明する。なお、以下の説明では、ビーム電流が予め設定
された値で一定となるように自動的にバイアス電圧が調
整されるものとする。
【0024】まず、コラム1内を所定の真空度(例え
ば、10-6Torr台)まで真空引きを行い(S10
1)、電子銃に各電圧(ヒータ加熱電圧やバイアス電
圧)を印加するために図示せぬ高圧電源をONし(S1
02)、WC−LaB6カソード7を通常の動作温度
(1500〜1800℃程度)よりも低い温度(例え
ば、1400℃程度)に設定する(S103)。次に、
チャンバ2内を所定の真空度(例えば、10-2Torr
台)まで真空引きを行った(S104)後、コラムバル
ブ5を開にし(S105)、電子ビーム12(ビーム電
流一定)の照射を約30秒間行い、その後ビームの出力
を停止する(S106)。また、ビーム照射時のバイア
ス電圧10の変動を観察する(S107)。観察された
バイアス電圧10の変動が約30%以上である場合に
は、コラムバルブ5を閉じる(S108)とともに、カ
ソード7の温度を所定温度(例えば、20℃)上昇させ
る(S109)。
ば、10-6Torr台)まで真空引きを行い(S10
1)、電子銃に各電圧(ヒータ加熱電圧やバイアス電
圧)を印加するために図示せぬ高圧電源をONし(S1
02)、WC−LaB6カソード7を通常の動作温度
(1500〜1800℃程度)よりも低い温度(例え
ば、1400℃程度)に設定する(S103)。次に、
チャンバ2内を所定の真空度(例えば、10-2Torr
台)まで真空引きを行った(S104)後、コラムバル
ブ5を開にし(S105)、電子ビーム12(ビーム電
流一定)の照射を約30秒間行い、その後ビームの出力
を停止する(S106)。また、ビーム照射時のバイア
ス電圧10の変動を観察する(S107)。観察された
バイアス電圧10の変動が約30%以上である場合に
は、コラムバルブ5を閉じる(S108)とともに、カ
ソード7の温度を所定温度(例えば、20℃)上昇させ
る(S109)。
【0025】ここで、ビーム電流を一定としたとしても
バイアス電圧10が変動してしまうと、カソード7近傍
の電位分布が変わりビーム軌道が変わるためにワーク1
6上に照射されるビームの電流密度分布が変化してしま
う。そして、このビームの電流密度分布の変化が、ワー
ク加工(例えば、溶接加工)に要求される条件に影響を
与えることになる。本実施例では、このビーム電流密度
分布の変化が溶接等に要求される条件(例えば、溶接幅
あるいはとけ込み深さ等の安定性)に不具合を与えない
程度のバイアス電圧の変動を約30%と設定した。ただ
し、高い精度が要求されるような加工を行う場合には、
このバイアス電圧の変動幅を5%以下に設定してもよ
く、逆に、ほとんど加工精度が要求されないような加工
を行う場合には、バイアス電圧の変動幅を50%程度に
設定してもよい。
バイアス電圧10が変動してしまうと、カソード7近傍
の電位分布が変わりビーム軌道が変わるためにワーク1
6上に照射されるビームの電流密度分布が変化してしま
う。そして、このビームの電流密度分布の変化が、ワー
ク加工(例えば、溶接加工)に要求される条件に影響を
与えることになる。本実施例では、このビーム電流密度
分布の変化が溶接等に要求される条件(例えば、溶接幅
あるいはとけ込み深さ等の安定性)に不具合を与えない
程度のバイアス電圧の変動を約30%と設定した。ただ
し、高い精度が要求されるような加工を行う場合には、
このバイアス電圧の変動幅を5%以下に設定してもよ
く、逆に、ほとんど加工精度が要求されないような加工
を行う場合には、バイアス電圧の変動幅を50%程度に
設定してもよい。
【0026】また、S109でカソード7が上昇される
温度は20℃に限られたものではなく、ビーム電流の安
定性や温度設定に費やせる時間等を考慮して所望の温度
に設定することができる。
温度は20℃に限られたものではなく、ビーム電流の安
定性や温度設定に費やせる時間等を考慮して所望の温度
に設定することができる。
【0027】図1に戻って説明を続けると、カソード7
の温度を上昇させた後、チャンバリークバルブ18によ
りチャンバ2内に空気を導入する(S110)。これ
は、チャンバ2内およびコラム1内をワーク交換時の環
境と同様の状態にすることを目的としてなされるもので
ある。そして、チャンバ2内に空気導入後、チャンバ2
内の真空引き(S104)を行い、コラムバルブ5を開
け(S105)、ビーム照射して(S108)、その間
のバイアス電圧10の変動を再び観察する(S10
7)。この動作が、S107において観察されるバイア
ス電圧10の変動が30%以下になるまで繰り返され、
このバイアス電圧10の変動が30%以下になった時点
でカソード動作温度の設定を終了する(S111)。
の温度を上昇させた後、チャンバリークバルブ18によ
りチャンバ2内に空気を導入する(S110)。これ
は、チャンバ2内およびコラム1内をワーク交換時の環
境と同様の状態にすることを目的としてなされるもので
ある。そして、チャンバ2内に空気導入後、チャンバ2
内の真空引き(S104)を行い、コラムバルブ5を開
け(S105)、ビーム照射して(S108)、その間
のバイアス電圧10の変動を再び観察する(S10
7)。この動作が、S107において観察されるバイア
ス電圧10の変動が30%以下になるまで繰り返され、
このバイアス電圧10の変動が30%以下になった時点
でカソード動作温度の設定を終了する(S111)。
【0028】ここで、本実施例では、カソード7から放
出される電子ビーム12のビーム電流を一定にした状態
におけるバイアス電圧10の変動に基づいてカソード7
の温度を調節しているが、逆に、バイアス電圧10を一
定にした状態におけるビーム電流の変動が所望の範囲内
か否かによってカソード温度を調節するようにしてもか
まわない。ただし、バイアス電圧10の変動30%とビ
ーム電流の変動30%とは全く対応していないので、ビ
ーム電流の変動によりカソード温度を調節する場合に
は、そのビーム電流変動の許容範囲幅を新たに設定する
必要がある。
出される電子ビーム12のビーム電流を一定にした状態
におけるバイアス電圧10の変動に基づいてカソード7
の温度を調節しているが、逆に、バイアス電圧10を一
定にした状態におけるビーム電流の変動が所望の範囲内
か否かによってカソード温度を調節するようにしてもか
まわない。ただし、バイアス電圧10の変動30%とビ
ーム電流の変動30%とは全く対応していないので、ビ
ーム電流の変動によりカソード温度を調節する場合に
は、そのビーム電流変動の許容範囲幅を新たに設定する
必要がある。
【0029】また、本実施例において、カソード動作温
度設定処理中にチャンバ内には空気を導入したが、実際
には、WC−LaB6カソードの仕事関数を劣化させる
原因が酸素であるので、酸素ガスをチャンバに導入して
も良い。この場合には、チャンバリークバルブには酸素
供給装置を取り付ける必要がある。なお、空気の1/5
が酸素の流入であることを考えると、酸素の流入量は空
気の流量と比べて1/5倍程度で良いことになる。
度設定処理中にチャンバ内には空気を導入したが、実際
には、WC−LaB6カソードの仕事関数を劣化させる
原因が酸素であるので、酸素ガスをチャンバに導入して
も良い。この場合には、チャンバリークバルブには酸素
供給装置を取り付ける必要がある。なお、空気の1/5
が酸素の流入であることを考えると、酸素の流入量は空
気の流量と比べて1/5倍程度で良いことになる。
【0030】次に、本発明の第2の実施例について図2
および図3を参照して説明する。
および図3を参照して説明する。
【0031】図3は、本発明の第2の実施例の処理手順
を示すフローチャートであり、第2の実施例の処理手順
のうちS201〜S207は、図1におけるS101〜
S107の処理手順と同様であるので、その重複部分の
説明は省略する。
を示すフローチャートであり、第2の実施例の処理手順
のうちS201〜S207は、図1におけるS101〜
S107の処理手順と同様であるので、その重複部分の
説明は省略する。
【0032】つまり、ビーム照射時のバイアス電圧10
の変動幅が30%以上であった場合に、まず、カソード
7の温度を所定温度(例えば、20℃)上昇させる(S
208)。次に、コラム1内の真空度が1〜2×10-5
Torrになるように、コラム1内にコラムリークバル
ブ17により直接空気を流入する(S209)。空気流
入後、再び、S204〜S207の処理によりバイアス
電圧10の変動幅を観察する。この処理が、前述と同様
に、バイアス電圧10の変動幅が30%以下になるまで
繰り返され、このバイアス電圧10の変動幅が30%以
下になった時点でカソード動作温度の設定処理を終了す
る(S210)。
の変動幅が30%以上であった場合に、まず、カソード
7の温度を所定温度(例えば、20℃)上昇させる(S
208)。次に、コラム1内の真空度が1〜2×10-5
Torrになるように、コラム1内にコラムリークバル
ブ17により直接空気を流入する(S209)。空気流
入後、再び、S204〜S207の処理によりバイアス
電圧10の変動幅を観察する。この処理が、前述と同様
に、バイアス電圧10の変動幅が30%以下になるまで
繰り返され、このバイアス電圧10の変動幅が30%以
下になった時点でカソード動作温度の設定処理を終了す
る(S210)。
【0033】この第2の実施例では、コラムバルブを閉
じる必要がないために、処理が簡略化されるとともに、
カソード温度設定に要する時間も短縮できる。
じる必要がないために、処理が簡略化されるとともに、
カソード温度設定に要する時間も短縮できる。
【0034】上記第1及び第2の実施例では、バイアス
電圧の変動幅が所定の範囲内になるまで、コラムへの空
気流入およびカソード温度の上昇を繰り返しているが、
逆に、最初のカソードの温度を動作温度よりも高く設定
し、バイアス電圧の変動幅が所定の範囲内になるまで、
カソード温度を徐々に下降させ、ビーム電流が飽和状態
から減少し始める時点の温度にカソードを設定してもよ
い。ただし、カソード温度を上昇させていく場合も、下
降させていく場合も、図7の破線で示す温度制限領域と
空間電荷制限領域との境界近傍にカソード温度を設定す
るようにする。
電圧の変動幅が所定の範囲内になるまで、コラムへの空
気流入およびカソード温度の上昇を繰り返しているが、
逆に、最初のカソードの温度を動作温度よりも高く設定
し、バイアス電圧の変動幅が所定の範囲内になるまで、
カソード温度を徐々に下降させ、ビーム電流が飽和状態
から減少し始める時点の温度にカソードを設定してもよ
い。ただし、カソード温度を上昇させていく場合も、下
降させていく場合も、図7の破線で示す温度制限領域と
空間電荷制限領域との境界近傍にカソード温度を設定す
るようにする。
【0035】また、本実施例では、カソードとしてWC
−LaB6カソードを用いた場合について説明したが、
本発明はこれに限定されるものではない。本実施例は、
2400℃以上の融点を有する金属、または、その金属
を主成分とする合金、または、その金属の炭化物、また
は、その金属のホウ化物、または、ジルコニウムの炭化
物、または、ジルコニウムのホウ化物のうち選ばれた少
なくとも1種の耐イオン衝撃性高融点耐熱物質と、ラン
タン、イットリウム、セリウム、セシウムから選ばれた
少なくとも1種のホウ化物または酸化物から選ばれた低
仕事関数を有する電子放射物質とを熱間等方加圧処理等
により一体化することによって得られるカソード、La
B6カソードまたはタングステンカソードなど他の物質
からなる熱陰極を用いた電子ビーム加工機に対しても非
常に有効である。特に、仕事関数がチャンバ内やコラム
内の残留気体の影響により変化しやすいLaB6を含む
カソードの動作温度を設定する場合に最適である。
−LaB6カソードを用いた場合について説明したが、
本発明はこれに限定されるものではない。本実施例は、
2400℃以上の融点を有する金属、または、その金属
を主成分とする合金、または、その金属の炭化物、また
は、その金属のホウ化物、または、ジルコニウムの炭化
物、または、ジルコニウムのホウ化物のうち選ばれた少
なくとも1種の耐イオン衝撃性高融点耐熱物質と、ラン
タン、イットリウム、セリウム、セシウムから選ばれた
少なくとも1種のホウ化物または酸化物から選ばれた低
仕事関数を有する電子放射物質とを熱間等方加圧処理等
により一体化することによって得られるカソード、La
B6カソードまたはタングステンカソードなど他の物質
からなる熱陰極を用いた電子ビーム加工機に対しても非
常に有効である。特に、仕事関数がチャンバ内やコラム
内の残留気体の影響により変化しやすいLaB6を含む
カソードの動作温度を設定する場合に最適である。
【0036】
【発明の効果】本発明のカソード動作温度設定方法によ
れば、カソード動作温度設定時に間欠的に酸素を含む気
体がコラムに流入されるために、カソード表面が実際の
加工時とほぼ同じ条件でカソード動作温度を設定でき
る。したがって、加工時に安定したエミッションが得ら
れる温度(空間電荷制限領域)の中で最も低温に設定す
ることが可能となり、エミッションの安定性を向上させ
るとともにカソードの長寿命化を実現できる。
れば、カソード動作温度設定時に間欠的に酸素を含む気
体がコラムに流入されるために、カソード表面が実際の
加工時とほぼ同じ条件でカソード動作温度を設定でき
る。したがって、加工時に安定したエミッションが得ら
れる温度(空間電荷制限領域)の中で最も低温に設定す
ることが可能となり、エミッションの安定性を向上させ
るとともにカソードの長寿命化を実現できる。
【図1】本発明のカソード動作温度設定方法の第1の実
施例の処理手順を示すフローチャートである。
施例の処理手順を示すフローチャートである。
【図2】本発明の電子ビーム加工機の一実施例の構成を
示す概略図である。
示す概略図である。
【図3】本発明のカソード動作温度設定方法の第2の実
施例の処理手順を示すフローチャートである。
施例の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】従来の電子ビーム加工機の構成を示す概略図で
ある。
ある。
【図5】一般的な電子ビーム加工機におけるカソードの
加熱方法を説明する斜視図である。
加熱方法を説明する斜視図である。
【図6】従来のカソード動作温度設定方法の処理手順を
示すフローチャートである。
示すフローチャートである。
【図7】エミッション特性、特に、空間電荷制限領域を
説明するグラフである。
説明するグラフである。
1 コラム 2 チャンバ 3 コラム真空排気系 4 チャンバ真空排気系 5 コラムバルブ 6 カーボンヒータ 7 WC−LaB6カソード 8 ウェネルト電極 9 アノード 10 バイアス電圧 11 ヒータ加熱電圧 12 電子ビーム 13 ビーム電流計 14 加速電圧 15 レンズ系 16 ワーク 17 コラムリークバルブ 18 チャンバリークバルブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01J 37/06 H01J 37/248 H01J 37/30 H01J 37/31
Claims (6)
- 【請求項1】 電子銃室を十分に真空に引いた後、その
電子銃室に酸素を含む気体を間欠的に導入しながらカソ
ードにバイアス電圧を印加してこのカソードを動作さ
せ、そのときの前記カソードから放出される電子ビーム
の状態変動が所望の範囲内になるように、前記カソード
の動作温度を調整することを特徴とする電子ビーム加工
機用カソード動作温度設定方法。 - 【請求項2】 前記電子ビームの状態変動は、前記電子
ビームのビーム電流値を一定とした状態における前記バ
イアス電圧の変動であることを特徴とする前記請求項1
に記載の電子ビーム加工機用カソード動作温度設定方
法。 - 【請求項3】 前記電子ビームの状態変動は、前記バイ
アス電圧を一定とした状態における前記電子ビームのビ
ーム電流の変動であることを特徴とする前記請求項1に
記載の電子ビーム加工機用カソード動作温度設定方法。 - 【請求項4】 前記カソードは、2400℃以上の融点
を有する金属、または、その金属を主成分とする合金、
または、その金属の炭化物、または、その金属のホウ化
物、または、ジルコニウムの炭化物、または、ジルコニ
ウムのホウ化物のうち選ばれた少なくとも1種の耐イオ
ン衝撃性高融点耐熱物質と、ランタン、イットリウム、
セリウム、セシウムから選ばれた少なくとも1種のホウ
化物または酸化物から選ばれた低仕事関数を有する電子
放射物質とを加熱・加圧処理により一体化することによ
って得られる物質により構成されることを特徴とする前
記請求項1に記載の電子ビーム加工機用カソード動作温
度設定方法。 - 【請求項5】 真空排気系を備える電子銃室と、 前記電子銃室内に配置され、所定温度以上に加熱される
ことにより電子を放出するカソードと、 前記カソードとの間にバイアス電圧が印加されることに
よりそのカソードから電子を放出させる電極と、 真空排気系を備え、加工すべきワークが載置される加工
容器と、 前記カソードから放出される電子ビームのビーム電流を
一定にした状態における前記バイアス電圧の変動を検出
する検出手段と、 前記検出手段により検出された前記バイアス電圧の変動
に基づいて前記電子銃室内に酸素を含む気体を導入する
手段と、 前記検出手段により検出された前記バイアス電圧の変動
に基づいて前記カソードの温度を調節する手段とを備え
ることを特徴とする電子ビーム加工機。 - 【請求項6】 真空排気系を備える電子銃室と、 前記電子銃室内に配置され、所定温度以上に加熱される
ことにより電子を放出するカソードと、 前記カソードとの間にバイアス電圧が印加されることに
よりそのカソードから電子を放出させる電極と、 真空排気系を備え、加工すべきワークが載置される加工
容器と、 前記バイアス電圧を一定にした状態における前記カソー
ドから放出される電子ビームのビーム電流の変動を検出
する検出手段と、 前記検出手段により検出された前記ビーム電流の変動に
基づいて前記電子銃室内に酸素を含む気体を導入する手
段と、 前記検出手段により検出された前記ビーム電流の変動に
基づいて前記カソードの温度を調節する手段とを備える
ことを特徴とする電子ビーム加工機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1161595A JP2762944B2 (ja) | 1995-01-27 | 1995-01-27 | 電子ビーム加工機用カソード動作温度設定方法およびこの方法を用いた電子ビーム加工機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1161595A JP2762944B2 (ja) | 1995-01-27 | 1995-01-27 | 電子ビーム加工機用カソード動作温度設定方法およびこの方法を用いた電子ビーム加工機 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08203457A JPH08203457A (ja) | 1996-08-09 |
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