JP2762662B2 - 水素吸蔵Ni―Zr系合金 - Google Patents

水素吸蔵Ni―Zr系合金

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JP2762662B2 JP2066172A JP6617290A JP2762662B2 JP 2762662 B2 JP2762662 B2 JP 2762662B2 JP 2066172 A JP2066172 A JP 2066172A JP 6617290 A JP6617290 A JP 6617290A JP 2762662 B2 JP2762662 B2 JP 2762662B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、MgZn2型結晶構造、すなわち六方晶C14型
結晶構造をもち、特に密閉型Ni−水素蓄電池の負極活物
質として用いるのに適した水素吸蔵Ni-Zr系合金に関す
るものである。
〔従来の技術〕
一般に、密閉型Ni−水素蓄電池が、水素吸蔵合金を活
物質として用いてなる負極と、Ni正極と、さらにセパレ
ータおよびアルカリ電解液で構成され、かつ前記負極を
構成する水素吸蔵合金には、 (a) 室温付近での水素吸蔵・放出能が大きい。
(b) PCT曲線における室温付近の温度でのプラトー
圧に相当する平衡水素解離圧が比較的低い(5気圧以
下)。
(c) アルカリ電解液中で耐食性および耐久性(耐劣
化性)がある。
(d) 水素酸化能(触媒作用)が大きい。
(e) 水素の吸蔵・放出の繰返しに伴う微粉化が起り
難い。
(f) 無(低)公害である。
(g) 低コストである。
以上(a)〜(g)の性質を具備することが望まれ、
さらにこのような性質を具備した水素吸蔵合金を負極の
活物質として用いてなる密閉型Ni−水素蓄電池は、大き
な放電容量、長い充・放電サイクル寿命、すぐれた急速
充・放電特性、および低自己放電などの好ましい性能を
発揮するようになることも良く知られるところである。
したがって、特に密閉型Ni−水素蓄電池の負極を構成
する活物質として用いるのに適した水素吸蔵合金の開発
が盛んに行なわれ、例えば特開昭61-45563号公報に記載
されるMgZn2型結晶構造、すなわち六方晶C14型結晶構造
をもった水素吸蔵合金はじめ、多数の水素吸蔵合金が提
案されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、すでに提案されているいずれの水素吸蔵合金
も密閉型Ni−水素蓄電池の負極活物質として用いる場合
に要求される上記の性質をすべて満足して具備するもの
ではなく、より一層の開発が望まれているのが現状であ
る。
〔課題を解決するための手段〕
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に
密閉型Ni−水素蓄電池の負極活物質として用いるのに適
した水素吸蔵合金を開発すべく研究を行なった結果、重
量%で(以下%は重量%を示す)、 Zr:10〜37%、 Ti :5〜30%、 Mn:5〜30%、 Fe :1〜30%、 Pd:0.005〜5%、 W :0.01〜15%、 を含有し、さらに必要に応じて、 Cu:0.1〜16%、 Cr :0.05〜10%、 を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成を有す
る水素吸蔵Ni-Zr系合金は、MgZn2型結晶構造(六方晶C1
4型結晶構造)をもち、密閉型Ni−水素蓄電池の負極活
物質として用いる場合に要求される上記(a)〜(g)
の性質を十分満足した状態で具備し、したがってこれを
負極活物質として用いた密閉型Ni−水素蓄電池は、大き
なエネルギー密度と電気容量をもち、かつ長いサイクル
寿命を示すようになるほか、自己放電が小さくなり、さ
らに高率充・放電特性にもすぐれ、無公害および低コス
トと合わせて、すぐれた性能を発揮するようになるとい
う研究結果を得たのである。
この発明は、上記研究結果にもとづいてなされたもの
であって、以下に上記水素吸蔵Ni-Zr系合金の成分組成
を上記の通りに限定した理由を説明する。
(a) ZrおよびTi これらの成分には、共存した状態で合金に望ましい水
素吸蔵・放出特性を具備せしめると共に、室温における
平衡水素解離圧(プラトー圧)を、例えば5気圧以下に
低下させる作用があるが、その含有量がそれぞれZr:10
%未満およびTi:5%未満では前記作用に所望の効果が得
られず、一方Zrの含有量が37%を超えると、放電容量の
水素解離圧依存の点では問題はないが、水素吸蔵・放出
能が低下するようになり、またTiの含有量が30%を超え
ると、平衡水素解離圧が例えば5気圧以上に上昇するよ
うになり、大きな放電容量を確保するためには高い水素
解離圧を必要とするようになって蓄電池として好ましく
ないものとなることから、その含有量を、それぞれZr:1
0〜37%、Ti:5〜30%と定めた。
(b) Mn Mn成分には、水素吸蔵・放出能を向上させ、かつアル
カリ電解液中での合金の耐食性および耐久性を向上させ
るほか、蓄電池の負極活物質として用いた場合に自己放
電を抑制する作用があるが、その含有量が5%未満では
前記作用に所望の効果が得られず、一方その含有量が30
%を越えると、水素吸蔵・放出特性が損なわれるように
なることから、その含有量が5〜30%と定めた。
(c) Fe Fe成分には、水素化物を一段と安定化し、もって蓄電
池性能の安定化に寄与する作用があるほか、Niの一部代
替成分として用いてもNiによってもたらされる作用効果
が損なわれることがないので、経済性を考慮して含有さ
れるが、その含有量が1%未満では前記作用に所望の効
果が得られず、一方その含有量が30%を越えると、水素
吸蔵能が低下するようになることから、その含有量を1
〜30%と定めた。
(d) Pd Pd成分には、水素吸蔵能を一段と増大させ、もってNi
−水素蓄電池の負極活物質として用いた場合に放電容量
を増加させて、その使用寿命の著しい延命化に寄与する
作用があるが、その含有量が0.005%未満では前記作用
に所望の効果が得られず、一方その含有量が5%を越え
ると、前記作用に低下傾向が現われるようになることか
ら、その含有量を0.005〜5%と定めた。
(e) W W成分には、アルカリ電解液中での合金の耐食性を一
段と向上させると共に、耐久性も向上させ、さらに蓄電
池の負極活物質としての実用に際して自己放電を抑制す
る作用があるが、その含有量が0.01%未満では前記作用
に所望の効果が得られず、一方、その含有量が15%を越
えると、水素吸蔵・放出特性が損なわれるようになるこ
とから、その含有量を0.01〜15%と定めた。
(f) Cu Cu成分には、水素吸蔵・放出量の増大および平衡水素
圧の適正化を一段と促進する作用があるので、必要に応
じて含有されるが、その含有量が0.1%未満では前記作
用に所望の向上効果が得られず、一方その含有量が16%
を越えると、水素吸蔵・放出量の低下を招き、放電容量
が低下するようになることから、その含有量を0.1〜16
%と定めた。
(g) Cr Cr成分には、水素吸蔵・放出能を低下させることな
く、アルカリ電解液中での耐食性を一段と向上させる作
用があるので、必要に応じて含有されるが、その含有量
が0.05%未満では前記作用に所望の向上効果が得られ
ず、一方その含有量が10%を越えると、水素吸蔵・放出
能が低下するようになることから、その含有量を0.05〜
10%と定めた。
〔実施例〕
つぎに、この発明の水素吸蔵Ni-Zr系合金を実施例に
より具体的に説明する。
通常の高周波誘導溶解炉を用い、Ar雰囲気中にてそれ
ぞれ第1表に示される成分組成をもったNi-Zr系合金溶
湯を調製し、銅鋳型に鋳造してインゴットとした後、こ
のインゴットをAr雰囲気中、900〜1000℃の範囲内の所
定温度に5時間保持の条件で焼鈍し、ついでジョークラ
ッシャを用い、粗粉砕して直径:2mm以下の粗粒とし、さ
らにボールミルを用いて微粉砕して350mesh以下の粒度
とすることによりいずれもMgZn2型結晶構造をもった本
発明水素吸蔵合金1〜24、 比較水素吸蔵合金1〜11、および従来水素吸蔵合金をそ
れぞれ製造した。
ついで、この結果得られた各種の粉末状水素吸蔵合金
を活物質として用い、まず、これにポリビニールアルコ
ール(PVA)の2%水溶液を添加してペースト化した
後、95%の多孔度を有する市販のNiウイスカー不織布に
充填し、乾燥し、さらに加圧して、平面寸法:42mm×35m
mにして、厚さ:0.60〜0.65mmの形状(活物質充填量:約
2.8g)とし、これの一辺にリードとなるNi薄板を溶接に
より取付けて負極を製造し、一方正極として同寸法のNi
焼結板を2枚用意し、これを前記負極の両側に配置し、
30%KOH水溶液を装入することにより密閉型Ni−水素蓄
電池を製造した。
なお、この結果得られた各種の蓄電池を、いずれも開
放電池とし、かつ正極の容量を負極の容量より著しく大
きくすることにより負極の容量を測定し易くした。
また、上記比較水素吸蔵合金1〜11は、いずれも構成
成分のうちのいずれかの成分含有量(第1表に※印を付
す)がこの発明の範囲から外れた組成をもつものであ
る。
つぎに、これらの各種の蓄電池について、充放電速
度:0.2C、充電電気量:負極容量の130%の条件で充・放
電試験を行い、1回の充電と放電を1サイクルとし、12
0サイクル後、240サイクル後、および360サイクル後に
おける放電容量をそれぞれ測定した。
また、さらに第1表に示される組成をもった各種の粉
末状水素吸蔵合金を用い、平面サイズを90mm×40mm、厚
さ:0.60〜0.65mmとして、容量:1450〜1500mAh(活物質
充填量:約6g)とする以外は、上記の充・放電試験で用
いた蓄電池の負極板と同一の条件で負極板を製造し、一
方正極板は、95%の多孔度を有するNiウイスカー不織布
に水酸化ニッケル〔Ni(OH)2〕を活物質として充填
し、乾燥し、さらにプレス加工した後、リードを取付け
て、平面寸法:70mm×40mm、厚さ:0.65〜0.70mmの形状
(容量:1000〜1050mAh)とすることにより製造し、この
結果得られた負極板と正極板を、セパレータを介してう
ず巻き状にした状態で、電解液と共にケース(これは
端子と兼用)の中に収容した構造の密閉型Ni−水素蓄電
池とした。なお、この蓄電池においては、正極容量より
負極容量を大きくして正極律則の蓄電池を構成した。
また、これらの蓄電池に対する自己放電試験は、まず
室温で0.2C(200mA)で7時間充電し、ついで蓄電池を4
5℃に温度セットしてある恒温槽中に開路状態(電池に
負極をかけない状態)で、1週間および2週間放置し、
放置後、とり出して、室温で0.2C(200mA)放電を行な
い、容量残存率を求めることにより行なった。
さらに、同じく第1表に示される成分組成をもった各
種の水素吸蔵合金について、一般にHuey試験と呼ばれて
いる方法を用い、試験片を上記のインゴットより切り出
してプラスチック樹脂に埋め込み、腐食面をエメリーペ
ーパー#600で研磨仕上げした状態で、コールドフィン
ガー型コンデンサー付三角フラスコに装入し、沸騰した
30%KOH水溶液中に240時間保持の条件でアルカリ電解液
腐食試験を行ない、試験後の腐食減量を測定した。これ
らの測定結果を第1表に示した。
〔発明の効果〕
第1表に示される結果から、本発明水素吸蔵合金1〜
24は、いずれも従来水素吸蔵合金に比して、アルカリ電
解液に対してすぐれた耐食性を示し、さらにこれを密閉
型Ni−水素蓄電池の負極活物質として用いた場合、蓄電
池は高容量をもつようになり、従来水素吸蔵合金を用い
た蓄電池に比して充・放電サイクルを繰り返した場合の
容量低下が著しく小さいという好ましい結果を示すこと
が明らかであり、一方比較水素吸蔵合金1〜11に見られ
るように、構成成分のうちのいずれかの成分含有量でも
この発明の範囲から外れると、本発明水素吸蔵合金に比
して、アルカリ電解液に対する耐食性、並びにこれを蓄
電池の負極活物質として用いた場合の蓄電池の放電容量
および自己放電のうちの少なくともいずれかの特性が劣
ったものになることが明らかである。
上述のように、この発明の水素吸蔵Ni-Zr系合金は、
アルカリ電解液に対する耐食性にすぐれているほか、特
に密閉型Ni−水素蓄電池の負極活物質として用いた場合
に、負極活物質に要求される特性をすべて十分満足する
状態で具備しているので、蓄電池の自己放電が著しく低
減し、さらに長いサイクル寿命に亘って大きな放電容量
が確保されるようになるなど工業上有用な特性を有する
のである。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Zr:10〜37%、 Ti :5〜30%、 Mn:5〜30%、 Fe :1〜30%、 Pd:0.005〜5%、 W :0.01〜15%、 を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有することを特徴とするMgZn2型結晶構造を
    もった水素吸蔵Ni-Zr系合金。
  2. 【請求項2】Zr:10〜37%、 Ti :5〜30%、 Mn:5〜30%、 Fe :1〜30%、 Pd:0.005〜5%、 W :0.01〜15%、 を含有し、さらに、 Cu:0.1〜16%、 を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有することを特徴とするMgZn2型結晶構造を
    もった水素吸蔵Ni-Zr系合金。
  3. 【請求項3】Zr:10〜37%、 Ti :5〜30%、 Mn:5〜30%、 Fe :1〜30%、 Pd:0.005〜5%、 W :0.01〜15%、 を含有し、さらに、 Cr:0.05〜10%、 を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有することを特徴とするMgZn2型結晶構造を
    もった水素吸蔵Ni-Zr系合金。
  4. 【請求項4】Zr:10〜37%、 Ti :5〜30%、 Mn:5〜30%、 Fe :1〜30%、 Pd:0.005〜5%、 W :0.01〜15%、 を含有し、さらに、 Cu:0.1〜16%、 Cr :0.05〜10%、 を含有し、残りがNiと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)を有することを特徴とするMgZn2型結晶構造を
    もった水素吸蔵Ni-Zr系合金。
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