JP2752357B2 - 時効硬化型オーステナイト系工具鋼 - Google Patents
時効硬化型オーステナイト系工具鋼Info
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- JP2752357B2 JP2752357B2 JP62036625A JP3662587A JP2752357B2 JP 2752357 B2 JP2752357 B2 JP 2752357B2 JP 62036625 A JP62036625 A JP 62036625A JP 3662587 A JP3662587 A JP 3662587A JP 2752357 B2 JP2752357 B2 JP 2752357B2
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- Hard Magnetic Materials (AREA)
- Moulds For Moulding Plastics Or The Like (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、プラマグ成形用型などの冷間型や熱間成形
用金型材として、優れた被切削性を備えた非磁性高強度
の新しい時効硬化型オーステナイト系工具鋼に関するも
のである。 〔従来の技術〕 従来プラマグ成形用型など被磁性で高強度を要求され
る冷間型や昇温温度の特に高い熱間成形型用途には、中
C−Mn−Ni−Cr−W(Mo)−V系時効硬化型オーステナ
イト系工具鋼が使用されてきているが、問題点として
は、非加工性が悪く、複雑形状の型の場合、型加工が困
難なことや、多大の加工工数を要することにあり、従
来、成分、熱処理面から解決への検討が行なわれたが、
問題点の解決は困難であった。 〔発明が解決しようとする問題点〕 本発明鋼は、固溶化処理後の予備時効処理状態におい
て優れた被切削性を有し、この状態で型加工後時効硬化
処理を施すことにより、HRC40以上の高い硬さを得る非
磁性高硬度の時効硬化型オーステナイト鋼に関するもの
である。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明鋼は、中C−Mn−Ni−Cr−W(Mo)−V−Cu−
Al系を成分とする合金であり、固溶化処理後の予備時効
処理において、オーステナイト基地中にNi−Al、Fe−Cu
金属間化合物を析出し、延性を適度に減じ良好な被切削
性をもたらすとともに、600℃以上での時効硬化処理に
おいて、HRC40以上の高硬度に硬化する時効硬化型オー
ステナイト鋼であり、また適宜快削性を与えるSの添加
を行ない、予備時効処理における被切削性の優れた基地
との相互効果により大きな被切削性の改善効果を得るも
のである。また、Coの添加により析出硬化にともなう最
高硬度を特に高めるものである。 〔実施例〕 第1表に本発明鋼の実施例と比較鋼の化学組成および
被切削性を示す。試料は断面寸法50mm×50mmの角材で、
1150℃油冷後530℃前後で10hの予備時効処理(HRC33〜3
5)を行なった後、8mmφのドリルによる孔あけ加工(深
さ20mm)を行ない、孔あけ可能限界個数を比較鋼のそれ
を100として指数で表わしたものである。 本発明鋼は、従来鋼に対し明らかに優れた被切削性を
備えていることがわかる。これは基地中へのFe−Cu、Ni
−Al金属間化合物の微細析出による適度の延性の低減効
果を基本とするもので、S添加により、さらに被切削性
の明確な向上効果が認められる。比較鋼Sは、Cu、Alを
含まず、S添加のみにより被切削性の向上をはかったも
のであるが、十分な効果は得られない。SはCu、Alとの
複合添加により、十分な効果をもたらすものである。な
お、時効硬化元素としてVは不可欠であるが、一部Moあ
るいはWで置換することにより、被切削性をより大きく
改善される。 第2表に本発明鋼の時効硬化処理(700〜750℃×5h)
における最高硬さを示す。本発明鋼は従来鋼よりも時効
硬化処理における最高硬さが高く、これは、特にCo添加
による固溶化処理時のオーステナイト基地中へのV、
W、Mo、Cr等炭化物形成元素の固溶量が多く、時効硬化
処理時の基地中への特殊炭化物の析出量の増加およびCo
の固溶自体による強化の両者によるものである。 第3表に本発明鋼のフェライト粉末中における回転型
粉体摩耗試験における耐摩耗性を示す。 試験片寸法は、4mm t×10mm w×80mm lで、中央に軸
孔を有し、回転軸に取付けた後、フェライト粉末中で15
40rpmで10h回転させた場合の摩耗減量(体積)を求め、
従来鋼のそれを100として指数で示したものである。本
発明鋼は、従来鋼と同等以上の耐摩耗性を示し、特にCo
添加の本発明鋼L、Mの場合、時効硬さの上昇とあいま
って耐摩耗性が大幅に優れている。 VをMo、Wで置換の場合、W、Mo量によっては、耐摩
耗性はやや減少するが、同じ重量のVの場合よりも炭化
物の量は増大するので、その減少傾向は大きくはなく、
置換量を適量にバランスすることにより耐摩耗性の低下
を防ぐことができる。 第4表に本発明鋼の透磁率を示す。いずれも透磁率1.
01未満で非磁性である。 次に本発明鋼の成分限定の理由を示す。 Cは、Ni、Mn、Coとともにオーステナイト形成元素と
して本発明鋼の組織を安定なオーステナイト組織に保つ
とともに、V、W、Mo、Crとの間に固溶化処理後の時効
硬化処理において、特殊炭化物を析出させ、高い時効硬
さをもたらすために、また、V、W、Mo、Crなどととも
に残留炭化物を形成し、耐摩耗性を高めるために添加さ
れる。低すぎるとフェライト生成をまねいたり、十分な
時効硬さが得られなくなるので0.40%以上とし、高すぎ
ると偏析を増大させたり、巨大炭化物を生成して、被切
削性や靭性を損うので0.70%以下とする。 Siは、本発明鋼の耐酸化性を高めるために添加され
る。多量の添加は必要なく、多すぎると熱伝導性を低下
させるため1.40%以下とする。 Mnは、C、Ni、Coとともに本発明鋼の組織をオーステ
ナイト組織に保つために添加され、また特殊炭化物の析
出による析出最高硬さを高めとするために添加される。
多すぎると被切削性を低下させ、また、靭性や耐酸化性
も低下させるので15.00以下とし、低すぎるとフェライ
トの生成や時効処理における最高硬さを低下させるた
め、5.00%以上とする。 NiはC、Mn、Coとともに本発明鋼の組織をオーステナ
イト組織に保ち、また優れた靭性を保持するために、ま
た予備時効処理においてAlとの間にNi−Al金属間化合物
を析出し、基地の靭性を適当に減じ、良好な被切削性を
与えるために、さらに、時効硬化における最高硬さを高
めるために添加される。多量の添加は必要なく、C、M
n、Al量との関係において、上記効果を最高度に得るた
めの十分な量として上限を10.00%とし、低すぎると上
記添加の効果が得られないので5.00%以上とする。 Crは本発明鋼の耐酸化性および耐食性を高め、また炭
化物を形成して固溶化加熱時の結晶粒の粗大化の抑制の
ために添加される。多すぎると粗大な炭化物を生成し、
靭性を減少させ、また高温強度の低下やフェライトの生
成をまねくので14.00%以下とし、低すぎると上記添加
の効果が得られないので7.00%以上とする。 MoおよびWは炭化物を形成し、固溶化加熱時の結晶粒
の粗大化を抑制し、時効硬化処理時に微細な特殊炭化物
を析出し、高い時効硬さと高温強度を得るために、また
残留炭化物を形成し、耐摩耗性を高め、また耐食性を高
めるために添加される。耐摩耗性、高温強度については
Wの方が有利で、一方靭性、被切削性については、Moの
方が有利であり、目的、用途により使い分けられる。M
o、Wは上記目的のため添加されるが、多すぎると粗大
な炭化物を形成し、靭性を低下させるので1/2W+Moで5.
00%以下とし、低すぎると上記添加の効果が得られない
ので0.80%以上とする。 Vは炭化物を形成し、固溶化加熱時の結晶粒の粗大化
を抑制し、時効硬化処理時に微細な特殊炭化物を析出
し、特に高い時効硬さを得るために、また極めて硬い残
留炭化物を形成し、高い摩耗性を形成するための極めて
重要な添加元素である。多すぎると粗大な炭化物を形成
して靭性を低下させ、またフェライトの生成をまねくの
で2.50%以下とし、低すぎると上記添加の効果が得られ
ないので1.20%以上とする。 Cuは固溶化処理後の予備時効処理において、Feとの間
に微細な金属間化合物を形成、析出し、基地の延性を適
度に減じ、良好な被切削性を得るための、また耐食性を
高めるための極めて重要な元素である。また、時効硬化
処理時の最高硬さを上げるために添加される。多すぎる
と熱間加工性を減ずるので4.00%以下とし、低すぎると
上記添加の効果が得られないので0.60%以上とする。 Alは、固溶化処理後の予備時効処理において、Niとの
間にNi−A金属間化合物を形成、析出し、基地の延性を
適度に減じ、良好な被切削性を得るための極めて重要な
元素である。また、時効硬化処理時の最高硬さを高める
ために添加される。多すぎると熱間加工性を減じ、フェ
ライトの生成をまねくので4.00%以下とし、低すぎると
上記添加の効果が得られないので0.60%以上とする。 Coは、固溶化処理時にオーステナイト基地中へのCr、
W、Mo、V系各炭化物の固溶度を高め、時効硬化処理時
の微細な特殊炭化物の析出量を増加させて時効最高硬さ
を高め、また基地に固溶すること自体によっても時効最
高硬さを高めるために添加される。多すぎると被切削性
および靭性を低下させるので7.00%以下とし、低すぎる
と上記添加の効果が得られないので2.00%以上とする。 SはMnとの間に硫化物を形成し、本発明鋼の被切削性
を大幅に向上させるために添加される。 Sの効果はFe−Cu、Ni−Al金属間化合物の析出による
被切削性の向上した基地との相乗効果により大きな被切
削性の改善をもたらすものである。多すぎると熱間加工
性を減じ、また靭性を過度に減じるので0.15%以下と
し、低すぎると上記添加の効果が得られないので0.04%
以上とする。 〔発明の効果〕 以上に示すように、本発明はプラマグ成形型、その他
非磁性で高い硬さと耐摩耗性を要求される工具用途に適
用し、従来鋼の問題点であった非切削性が大幅に改善さ
れているため、加工工数の大幅な削減や複雑形状の精密
加工が可能となり、型加工の合理化が得られ、また、特
に高い硬さと耐摩耗性が得られる時効硬化型オーステナ
イト系工具鋼に関するものである。また昇温温度の特に
高い熱間型用途に適用し、へたり、摩耗が生じにくく、
長寿命を得ることができる。
用金型材として、優れた被切削性を備えた非磁性高強度
の新しい時効硬化型オーステナイト系工具鋼に関するも
のである。 〔従来の技術〕 従来プラマグ成形用型など被磁性で高強度を要求され
る冷間型や昇温温度の特に高い熱間成形型用途には、中
C−Mn−Ni−Cr−W(Mo)−V系時効硬化型オーステナ
イト系工具鋼が使用されてきているが、問題点として
は、非加工性が悪く、複雑形状の型の場合、型加工が困
難なことや、多大の加工工数を要することにあり、従
来、成分、熱処理面から解決への検討が行なわれたが、
問題点の解決は困難であった。 〔発明が解決しようとする問題点〕 本発明鋼は、固溶化処理後の予備時効処理状態におい
て優れた被切削性を有し、この状態で型加工後時効硬化
処理を施すことにより、HRC40以上の高い硬さを得る非
磁性高硬度の時効硬化型オーステナイト鋼に関するもの
である。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明鋼は、中C−Mn−Ni−Cr−W(Mo)−V−Cu−
Al系を成分とする合金であり、固溶化処理後の予備時効
処理において、オーステナイト基地中にNi−Al、Fe−Cu
金属間化合物を析出し、延性を適度に減じ良好な被切削
性をもたらすとともに、600℃以上での時効硬化処理に
おいて、HRC40以上の高硬度に硬化する時効硬化型オー
ステナイト鋼であり、また適宜快削性を与えるSの添加
を行ない、予備時効処理における被切削性の優れた基地
との相互効果により大きな被切削性の改善効果を得るも
のである。また、Coの添加により析出硬化にともなう最
高硬度を特に高めるものである。 〔実施例〕 第1表に本発明鋼の実施例と比較鋼の化学組成および
被切削性を示す。試料は断面寸法50mm×50mmの角材で、
1150℃油冷後530℃前後で10hの予備時効処理(HRC33〜3
5)を行なった後、8mmφのドリルによる孔あけ加工(深
さ20mm)を行ない、孔あけ可能限界個数を比較鋼のそれ
を100として指数で表わしたものである。 本発明鋼は、従来鋼に対し明らかに優れた被切削性を
備えていることがわかる。これは基地中へのFe−Cu、Ni
−Al金属間化合物の微細析出による適度の延性の低減効
果を基本とするもので、S添加により、さらに被切削性
の明確な向上効果が認められる。比較鋼Sは、Cu、Alを
含まず、S添加のみにより被切削性の向上をはかったも
のであるが、十分な効果は得られない。SはCu、Alとの
複合添加により、十分な効果をもたらすものである。な
お、時効硬化元素としてVは不可欠であるが、一部Moあ
るいはWで置換することにより、被切削性をより大きく
改善される。 第2表に本発明鋼の時効硬化処理(700〜750℃×5h)
における最高硬さを示す。本発明鋼は従来鋼よりも時効
硬化処理における最高硬さが高く、これは、特にCo添加
による固溶化処理時のオーステナイト基地中へのV、
W、Mo、Cr等炭化物形成元素の固溶量が多く、時効硬化
処理時の基地中への特殊炭化物の析出量の増加およびCo
の固溶自体による強化の両者によるものである。 第3表に本発明鋼のフェライト粉末中における回転型
粉体摩耗試験における耐摩耗性を示す。 試験片寸法は、4mm t×10mm w×80mm lで、中央に軸
孔を有し、回転軸に取付けた後、フェライト粉末中で15
40rpmで10h回転させた場合の摩耗減量(体積)を求め、
従来鋼のそれを100として指数で示したものである。本
発明鋼は、従来鋼と同等以上の耐摩耗性を示し、特にCo
添加の本発明鋼L、Mの場合、時効硬さの上昇とあいま
って耐摩耗性が大幅に優れている。 VをMo、Wで置換の場合、W、Mo量によっては、耐摩
耗性はやや減少するが、同じ重量のVの場合よりも炭化
物の量は増大するので、その減少傾向は大きくはなく、
置換量を適量にバランスすることにより耐摩耗性の低下
を防ぐことができる。 第4表に本発明鋼の透磁率を示す。いずれも透磁率1.
01未満で非磁性である。 次に本発明鋼の成分限定の理由を示す。 Cは、Ni、Mn、Coとともにオーステナイト形成元素と
して本発明鋼の組織を安定なオーステナイト組織に保つ
とともに、V、W、Mo、Crとの間に固溶化処理後の時効
硬化処理において、特殊炭化物を析出させ、高い時効硬
さをもたらすために、また、V、W、Mo、Crなどととも
に残留炭化物を形成し、耐摩耗性を高めるために添加さ
れる。低すぎるとフェライト生成をまねいたり、十分な
時効硬さが得られなくなるので0.40%以上とし、高すぎ
ると偏析を増大させたり、巨大炭化物を生成して、被切
削性や靭性を損うので0.70%以下とする。 Siは、本発明鋼の耐酸化性を高めるために添加され
る。多量の添加は必要なく、多すぎると熱伝導性を低下
させるため1.40%以下とする。 Mnは、C、Ni、Coとともに本発明鋼の組織をオーステ
ナイト組織に保つために添加され、また特殊炭化物の析
出による析出最高硬さを高めとするために添加される。
多すぎると被切削性を低下させ、また、靭性や耐酸化性
も低下させるので15.00以下とし、低すぎるとフェライ
トの生成や時効処理における最高硬さを低下させるた
め、5.00%以上とする。 NiはC、Mn、Coとともに本発明鋼の組織をオーステナ
イト組織に保ち、また優れた靭性を保持するために、ま
た予備時効処理においてAlとの間にNi−Al金属間化合物
を析出し、基地の靭性を適当に減じ、良好な被切削性を
与えるために、さらに、時効硬化における最高硬さを高
めるために添加される。多量の添加は必要なく、C、M
n、Al量との関係において、上記効果を最高度に得るた
めの十分な量として上限を10.00%とし、低すぎると上
記添加の効果が得られないので5.00%以上とする。 Crは本発明鋼の耐酸化性および耐食性を高め、また炭
化物を形成して固溶化加熱時の結晶粒の粗大化の抑制の
ために添加される。多すぎると粗大な炭化物を生成し、
靭性を減少させ、また高温強度の低下やフェライトの生
成をまねくので14.00%以下とし、低すぎると上記添加
の効果が得られないので7.00%以上とする。 MoおよびWは炭化物を形成し、固溶化加熱時の結晶粒
の粗大化を抑制し、時効硬化処理時に微細な特殊炭化物
を析出し、高い時効硬さと高温強度を得るために、また
残留炭化物を形成し、耐摩耗性を高め、また耐食性を高
めるために添加される。耐摩耗性、高温強度については
Wの方が有利で、一方靭性、被切削性については、Moの
方が有利であり、目的、用途により使い分けられる。M
o、Wは上記目的のため添加されるが、多すぎると粗大
な炭化物を形成し、靭性を低下させるので1/2W+Moで5.
00%以下とし、低すぎると上記添加の効果が得られない
ので0.80%以上とする。 Vは炭化物を形成し、固溶化加熱時の結晶粒の粗大化
を抑制し、時効硬化処理時に微細な特殊炭化物を析出
し、特に高い時効硬さを得るために、また極めて硬い残
留炭化物を形成し、高い摩耗性を形成するための極めて
重要な添加元素である。多すぎると粗大な炭化物を形成
して靭性を低下させ、またフェライトの生成をまねくの
で2.50%以下とし、低すぎると上記添加の効果が得られ
ないので1.20%以上とする。 Cuは固溶化処理後の予備時効処理において、Feとの間
に微細な金属間化合物を形成、析出し、基地の延性を適
度に減じ、良好な被切削性を得るための、また耐食性を
高めるための極めて重要な元素である。また、時効硬化
処理時の最高硬さを上げるために添加される。多すぎる
と熱間加工性を減ずるので4.00%以下とし、低すぎると
上記添加の効果が得られないので0.60%以上とする。 Alは、固溶化処理後の予備時効処理において、Niとの
間にNi−A金属間化合物を形成、析出し、基地の延性を
適度に減じ、良好な被切削性を得るための極めて重要な
元素である。また、時効硬化処理時の最高硬さを高める
ために添加される。多すぎると熱間加工性を減じ、フェ
ライトの生成をまねくので4.00%以下とし、低すぎると
上記添加の効果が得られないので0.60%以上とする。 Coは、固溶化処理時にオーステナイト基地中へのCr、
W、Mo、V系各炭化物の固溶度を高め、時効硬化処理時
の微細な特殊炭化物の析出量を増加させて時効最高硬さ
を高め、また基地に固溶すること自体によっても時効最
高硬さを高めるために添加される。多すぎると被切削性
および靭性を低下させるので7.00%以下とし、低すぎる
と上記添加の効果が得られないので2.00%以上とする。 SはMnとの間に硫化物を形成し、本発明鋼の被切削性
を大幅に向上させるために添加される。 Sの効果はFe−Cu、Ni−Al金属間化合物の析出による
被切削性の向上した基地との相乗効果により大きな被切
削性の改善をもたらすものである。多すぎると熱間加工
性を減じ、また靭性を過度に減じるので0.15%以下と
し、低すぎると上記添加の効果が得られないので0.04%
以上とする。 〔発明の効果〕 以上に示すように、本発明はプラマグ成形型、その他
非磁性で高い硬さと耐摩耗性を要求される工具用途に適
用し、従来鋼の問題点であった非切削性が大幅に改善さ
れているため、加工工数の大幅な削減や複雑形状の精密
加工が可能となり、型加工の合理化が得られ、また、特
に高い硬さと耐摩耗性が得られる時効硬化型オーステナ
イト系工具鋼に関するものである。また昇温温度の特に
高い熱間型用途に適用し、へたり、摩耗が生じにくく、
長寿命を得ることができる。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.重量比で、C 0.40〜0.70%、Si 1.40%以下、Mn 5.
00〜15.00%、Ni 5.00〜10.00%、Cr 7.00〜14.00%、V
1.20〜2.50%、これにCu 0.60〜4.00%、Al 0.60〜4.0
0%の1種または2種、残部Feおよび通常の不純物より
なる時効硬化型オーステナイト系工具鋼。 2.重量比で、C 0.40〜0.70%、Si 1.40%以下、Mn 5.
00〜15.00%、Ni 5.00〜10.00%、Cr 7.00〜14.00%、
W、Mo単独または複合で1/2W+Mo 0.80〜5.00%、V 1.2
0〜2.50%、これにCu 0.60〜4.00%、Al 0.60〜4.00%
の1種または2種、残部Feおよび通常の不純物よりなる
時効硬化型オーステナイト系工具鋼。 3.重量比で、C 0.40〜0.70%、Si 1.40%以下、Mn 5.
00〜15.00%、Ni 5.00〜10.00%、Cr 7.00〜14.00%、V
1.20〜2.50%、Co 2.00〜7.00%、これにCu 0.60〜4.0
0%、Al 0.60〜4.00%の1種または2種、残部Feおよび
通常の不純物よりなる時効硬化型オーステナイト系工具
鋼。 4.重量比で、C 0.40〜0.70%、Si 1.40%以下、Mn 5.
00〜15.00%、Ni 5.00〜10.00%、Cr 7.00〜14.00%、
W、Mo単独または複合で1/2W+Mo 0.80〜5.00%、V 1.2
0〜2.50%、Co 2.00〜7.00%、これにCu 0.60〜4.00
%、Al 0.60〜4.00%の1種または2種、残部Feおよび
通常の不純物よりなる時効硬化型オーステナイト系工具
鋼。 5.重量比で、C 0.40〜0.70%、Si 1.40%以下、Mn 5.
00〜15.00%、Ni 5.00〜10.00%、Cr 7.00〜14.00%、V
1.20〜2.50%、S 0.04〜0.15%、これにCu 0.60〜4.00
%、Al 0.60〜4.00%の1種または2種、残部Feおよび
通常の不純物よりなる時効硬化型オーステナイト系工具
鋼。 6.重量比で、C 0.40〜0.70%、Si 1.40%以下、Mn 5.
00〜15.00%、Ni 5.00〜10.00%、Cr 7.00〜14.00%、
W、Mo単独または複合で1/2W+Mo 0.80〜5.00%、V 1.2
0〜2.50%、S 0.04〜0.15%、これにCu 0.60〜4.00%、
Al 0.60〜4.00%の1種または2種、残部Feおよび通常
の不純物よりなる時効硬化型オーステナイト系工具鋼。 7.重量比で、C 0.40〜0.70%、Si 1.40%以下、Mn 5.
00〜15.00%、Ni 5.00〜10.00%、Cr 7.00〜14.00%、V
1.20〜2.50%、Co 2.00〜7.00%、S 0.04〜0.15%、こ
れにCu 0.60〜4.00%、Al 0.60〜4.00%の1種または2
種、残部Feおよび通常の不純物よりなる時効硬化型オー
ステナイト系工具鋼。 8.重量比で、C 0.40〜0.70%、Si 1.40%以下、Mn 5.
00〜15.00%、Ni 5.00〜10.00%、Cr 7.00〜14.00%、
W、Mo単独または複合で1/2W+Mo 0.80〜5.00%、V 1.2
0〜2.50%、Co 2.00〜7.00%、S 0.04〜0.15%、これに
Cu 0.60〜4.00%、Al 0.60〜4.00%の1種または2種、
残部Feおよび通常の不純物よりなる時効硬化型オーステ
ナイト系工具鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62036625A JP2752357B2 (ja) | 1987-02-19 | 1987-02-19 | 時効硬化型オーステナイト系工具鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62036625A JP2752357B2 (ja) | 1987-02-19 | 1987-02-19 | 時効硬化型オーステナイト系工具鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS63203753A JPS63203753A (ja) | 1988-08-23 |
JP2752357B2 true JP2752357B2 (ja) | 1998-05-18 |
Family
ID=12475006
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP62036625A Expired - Lifetime JP2752357B2 (ja) | 1987-02-19 | 1987-02-19 | 時効硬化型オーステナイト系工具鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2752357B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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1987
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