JP2745951B2 - 片面溶接における裏ビード制御方法 - Google Patents

片面溶接における裏ビード制御方法

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JP2745951B2 JP4096477A JP9647792A JP2745951B2 JP 2745951 B2 JP2745951 B2 JP 2745951B2 JP 4096477 A JP4096477 A JP 4096477A JP 9647792 A JP9647792 A JP 9647792A JP 2745951 B2 JP2745951 B2 JP 2745951B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速回転アーク溶接に
おいて、裏ビードを安定に形成するための片面溶接にお
ける裏ビード制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アーク溶接による初層溶接等の片面溶接
において、安定した裏ビードを形成するための裏ビード
制御方法として、例えば特開昭64−15278号公報
に示すようなものがある。同公報に示された裏ビード制
御方法の概要を図10〜図12に示す。図において、
1,2は溶接されるべき母材であり、溶接継手のための
例えば狭開先3が形成されている。4はセラミックス等
の絶縁性裏当材で、裏ビード形成用の溝5が設けられ、
その溝面の中央にはアルミ箔等の導電性材料6が貼りつ
けられている。この絶縁性裏当材4を狭開先3の下部を
覆うように母材1,2の裏面に密着させる。7は導電性
材料6と母材1,2間の電圧Vd を検出するための電圧
計である。また、10は電極ワイヤ、11はアーク、1
2は溶接ビード、13は溶融池、14は裏ビードであ
る。この裏ビード制御方法は、シールドガス雰囲気下で
連続送給される電極ワイヤ10の先端からアーク11を
発生させ、狭開先3を初層溶接する場合において、その
溶接中、絶縁性裏当材4上の導電性材料6がアーク11
に接触し、導電性材料6と母材1,2との間に電圧Vd
を発生させるため、この電圧Vd を電圧計7により検出
し、検出された電圧Vd があらかじめ設定された基準値
と一致するように溶接パラメータ、例えば溶接速度を制
御することにより、裏ビード14の幅を均一に制御しよ
うとするものである。すなわち、検出電圧Vd が基準値
より小さければ溶接速度を上げ、検出電圧Vd が基準値
より大きければ溶接速度を下げるというように常に適正
な溶接速度を保つように制御するものである。なお、導
電性材料6はアーク11または溶融金属に接触すると溶
けていくような性質のものである。また、絶縁性裏当材
4としてセラミックスのものを使用するのは、裏ビード
の成形性や裏ビードとの剥離性、あるいは取扱性などが
優れているからである。
【0003】ところで、上記の電圧Vd は、アーク11
の発生点と溶融池13の先端位置間の相対距離lと相関
関係がある。すなわち、図13(a)に示すように溶接
速度が小さいときは、溶融池13の中間部上でアーク1
1が発生しているので、溶込み不足を生じ、アーク熱が
裏側まで十分に伝わらないため、裏ビード14が良好に
出ない。また、アーク11が導電性材料6に接していな
いためVd の信号も出ない。つまりVd =0となる。一
方、図13(c)のように溶接速度が過大のときは、ア
ーク11が溶融池13の先端より先行するため、裏ビー
ド14が出過ぎたり、裏ビード幅が極端に大きくなった
り小さくなったりするとともにVd も大となる。溶接速
度が適正のときは、図13(b)のようにアーク11は
溶融池13の先端部近傍で発生しているので、裏ビード
14が良好に出ており、またVd も中程度の明確な値を
示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の裏ビード制御方
法は、上述のようにアークとの接触により発生する絶縁
性裏当材の導電性材料と母材間の電圧Vd を検出し、溶
接速度を制御するものであるから、アルミ箔等を貼りつ
けた特殊の裏当材が必要であるだけでなく、スパッタに
よりアルミ箔を溶かしたり、アルミ箔が剥離して母材と
接触したりするおそれがあり、そうなるとVd の出力電
圧信号が得られなくなる。また、アルミ箔の絶縁が必要
なため、裏当材の取扱いが難しい。さらに、電圧Vd
は、上述のようにアークの発生点と相対的な溶融池の先
端位置と相関関係があるため、溶接速度が遅くなるとV
d の信号が出ない場合があり、逆に溶接速度が速すぎる
と局部的に裏ビード幅が不均一になるなど、制御の安定
性・確実性に欠けるといった課題があった。また、一般
的なバッキング法、例えばフラックスと銅板等の裏当金
を使用する裏ビード制御方法は公知である(特開昭64
−15280号、特開昭61−180677号)が、こ
れらの制御方法でも溶接中該裏当金と母材間の電圧Vd
を検出するものであるから、アークが確実に裏当金に達
しない限り電圧Vd は発生しないので、キーホール溶接
で裏ビードを出す方式のものにしか適用することができ
ない。結局、裏当材が何であれ、上記のように母材との
間の電圧Vd を検出する方式では制御性が良くないもの
であり、開先精度の変化にも十分に対応することができ
ない。
【0005】本発明は、上記のような課題を解決するた
めになされたもので、普通のバッキング法でよく、上記
のように裏当材(導電性材料付きのものを含む)と母材
間の電圧Vd を用いるのではなく、高速回転アーク溶接
のもとでのアーク電圧差または溶接電流差Sd を用いる
ことにより、簡単で、制御性の良い裏ビード制御方法を
得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明に係る片面溶接における裏ビード制御方法
は、母材の裏側に裏当材を当てがい、母材の表側から高
速回転アーク溶接により片面溶接し、裏ビードを形成す
る方法において、アーク電圧または溶接電流を検出し、
検出されたアーク電圧または溶接電流の波形から溶接進
行方向前後のアーク回転位置Cf ,Cr におけるアーク
電圧または溶接電流の積分値ScfとScrを求め、これら
の積分値の差Sd (Sd =Scf−Scr)が開先幅及び裏
ビード幅に対する溶接速度の関係から決められた基準値
S0 と一致するように溶接パラメータ、中でも溶接速度
を制御することとしたものである。
【0007】
【作用】高速回転アーク溶接はアークを回転させながら
溶接するものであるから、溶融池に対する上記Cf 点で
のアーク長とCr 点でのアーク長の間に差が生じる。こ
のアーク長の差によりアーク電圧差または溶接電流差S
d が生じるので、Sd を用いて溶接速度を制御すれば、
裏ビードの制御が可能となる。
【0008】
【実施例】図1は本発明の一実施例を示す説明図であ
り、図2は初層溶接部の正面断面図、図3はその平面図
である。図10〜図12の従来例と同一のものは同一符
号を用いる。この実施例では、母材1,2の裏側に普通
の裏当材4を密着させている。裏当材4としては、例え
ばセラミックス等の絶縁性のもの、ガラステープ等のバ
ッキングテープと裏当金の組み合わせによるもの、フラ
ックスと裏当金の組み合わせによるもの、あるいは固形
フラックス等、普通のバッキング法で使用されるもので
よい。このような普通の裏当材4を例えば狭開先3の下
部を覆うように密着させる。5は裏当材4に設けた裏ビ
ード形成用の溝である。
【0009】次に、溶接は周知の高速回転アーク溶接法
で行う。ここで、回転アーク溶接法とは、アークに円運
動を与えながら溶接する方法であり、アークを回転させ
る方法としては、図1に示すように偏心した電極チップ
21を使用する方式(特公昭63−39346号)や、
電極ノズル20を上部を支点として歳差運動させる方式
(特開昭62−104684号)などがあるが、いずれ
の方式でもよい。電極ノズル20はモータ22により歯
車機構23を介して回転させられ、アーク11を所定の
半径で回転運動させる。アーク11の回転速度は10H
z以上である。通常は50Hz〜100Hz位である。
アーク11の回転直径は、例えば2重の偏心リングを用
い、偏心量を変えることにより、溶接中でも開先幅に応
じて変更することができる(特願平2−284478
号)。
【0010】このような高速回転アーク溶接のもとで
は、一般にアークセンサによる開先倣い制御とトーチ高
さ制御(アーク長制御)が行われる(特開昭57−91
877号)。ここで、開先倣い制御とは、開先幅方向
(X軸)の中心に対する電極ワイヤ10の位置ずれを修
正する制御法であり、アークの1回転ごとにアーク電圧
または溶接電流を検出し、それらの波形から溶接進行方
向前方のアーク回転位置Cf 点を中心とする所定角度φ
の左側面積と右側面積を積分し、両積分値が一致するよ
うに電極ワイヤ10の位置ずれを修正するものである。
このため、電極ノズル20は図示しないX軸送り機構を
介して機体上に支持されている。トーチ高さ制御とは、
トーチ高さ(Y軸)を、つまりアーク長を一定に保持す
る制御法であり、アーク1回転ごとに溶接電流の所定面
積を積分し、その積分値が基準値と一致するようにトー
チ高さを制御するものである。このため、図示しないY
軸送り機構を介して電極ノズル20を支持している。な
お、図1において、24は電極ワイヤ10の送給ロー
ラ、25はアーク回転位置(Cf ,R,Cr ,L)を検
出するためのエンコーダ、26は溶接電源、27はアー
ク電圧を検出するための電圧計、28は溶接電流を検出
するための電流計である。
【0011】上記のようなアークセンサによる開先倣い
制御とトーチ高さ制御のもとで高速回転アーク溶接をす
ると、溶接進行方向前後のアーク回転位置Cf 点とCr
点でアーク電圧差Sd が生じる。このSd は、図4に示
すようにCf 点、Cr 点におけるアーク長の差、つまり
溶融池13の表面からの高さの差に起因するものであ
る。図4は溶接速度によりCf 点、Cr 点におけるアー
ク長間に差が生じることを示したものである。図4
(a)は溶接速度が小さい場合で、図13(a)と同様
にアーク11は溶融池13の中間部上にあって裏ビード
14が出にくい場合であるが、しかしながら、Cf 点の
アーク長a1 とCr 点のアーク長a2 の間に多少なりと
も差があるため、小さいながらもアーク電圧差Sd が生
じる。したがって、従来法のように電圧Vd が0になる
ようなことがほとんどない。図4(b)は溶接速度が適
正の場合であって、Cf 点でのアーク11が溶融池13
の先端部上で発生しているため、裏ビード14が良好に
出ている。またCf点、Cr 点におけるアーク長の差も
図4(a)の場合より大きいので、アーク電圧差Sd が
明確に現れる。図4(c)は溶接速度が過大の場合であ
って、Cf 点でのアーク11が溶融池13の先端より先
行しているため裏ビード14は不良になる。またCf
点、Cr点におけるアーク長の差がさらに大きくなるの
で、アーク電圧差Sd は最も大となる。そこで、上記ア
ーク電圧差Sd を用い、溶接速度を適正に制御すること
により、裏ビードを良好に制御することが可能になる。
また、溶接電流差を用いても同様に裏ビードの制御が可
能である。
【0012】したがって、本発明は、高速回転アーク溶
接時に検出されたアーク電圧または溶接電流に基づき、
図5に示すようにCf 点とCr 点における所定角度θに
ついてそれぞれ面積を積分し、それらの積分値ScfとS
crの差Sd =Scf−Scrを求め、このSd が基準値S0
と一致するように溶接パラメータ、例えば溶接速度vを
制御することとしたものである。角度θは180°以内
で、一般には90°位とされる。
【0013】図6に本発明における裏ビード制御系の一
実施例をブロック図で示す。同図はアーク電圧差Sd に
よる制御系の場合であるが、溶接電流差Sd による制御
系の場合も同様である。電圧計27によりアーク電圧を
検出し、または電流計28により溶接電流を検出する。
これらの検出信号は上記開先倣い制御とトーチ高さ制御
の際のデータを利用すればよい。検出信号はローパスフ
ィルタ29を通してノイズを除去し、それぞれScf積分
器30とScr積分器31に送り、上記ScfとScrの値を
求める。さらに、積分値Scfと積分値Scrの差Sd を演
算器32で演算し、比較器33により演算器32からの
Sd と設定器34からの基準値S0 を比較し、その差が
零になるように溶接機の走行モータ36のドライバ35
を制御する。基準値S0 は開先幅及び裏ビード幅に対す
る溶接速度の関係から決められる基準電圧とされる。
【0014】図7は本発明を用いてI形狭開先の初層溶
接を行ったときのデータ例を示すものである。開先幅1
8mm,アーク回転直径8mm,アーク回転速度50Hz,
ワイヤ径1.2mm,溶接電流250A,電圧30V,セ
ラミックス裏当材にて実施した。図7(a)は溶接速度
5cm/minの場合、図7(b)は溶接速度7cm/minの場
合、図7(c)は溶接速度10cm/minの場合のアーク電
圧差Sd (=Scf−Scr)を示し、比較として従来法に
よるセラミックス裏当材上のアルミ箔と母材間の電圧V
d を示してある。溶接速度5cm/minのときは溶接速度が
小さく、図4(a)の場合に相当する。Cf 点、Cr 点
でのアーク電圧のピーク値差は1Vないし2V程度と小
さいが、それでもSd が1V程度出ているところが多
い。しかし、Vd はほとんど0である。溶接速度7cm/m
inのときはほぼ適正な溶接速度であり、図4(b)の場
合に相当し、Cf 点、Cr 点でのアーク電圧のピーク差
がより大きくなり、したがってSd が平均的に3V程度
出ている。Vd もかなり明確に出ている。しかし、溶接
速度10cm/minになると、溶接速度が過大なため、アー
ク電圧が相当大きく変動している。波形の乱れも見受け
られる。Sd ,Vd 共に大きな値を示している。
【0015】次に、図8は任意に溶接速度を変化させた
場合のSd とVd の波形を比較したものである。両者は
ほぼ同様な変化を示しているが、部分的には異なる変化
もみられる。Sd は上がっているのにVd はあまり変化
していないといった違いがみられる。また、Vd は値の
検出されない期間が存在するが、Sd では最低でも1V
前後の出力が得られている。Vd は前述のようにアーク
と溶融池の相対位置に関係する値であり、Sd はアーク
の回転位置前後の溶融池表面からの高さの差に起因する
出力であることによるものと考えられる。
【0016】図9はSd =1Vとなるように溶接速度制
御を行った場合のSd ,Vd ,及び制御された溶接速度
の波形を示している。Sd による制御性はきわめて良好
であり、裏ビードも満足する形状のものが得られたこと
を確認している。
【0017】
【発明の効果】本発明は、以上のようにアークの回転位
置前後のアーク長差に基づくアーク電圧差または溶接電
流差を利用して溶接パラメータを制御することにより裏
ビードを良好に形成するものであり、下記のような効果
がある。 (1)普通の裏当材を使用できるので、従来法のような
トラブルがなく、バッキングが簡単である。 (2)溶接速度が小の場合でも、アーク電圧差または溶
接電流差が発生するので、裏ビードの制御性が安定して
おり確実である。 (3)高速回転アーク溶接のアークセンサ倣い制御時に
得られるデータを利用できるので、制御系が同一系統に
なり、簡単にできる。 (4)溶接中、あるいは溶接開始前に開先幅が変化して
も、本制御により均一な裏ビードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す説明図である。
【図2】初層溶接部の正面断面図である。
【図3】初層溶接部の平面図である。
【図4】アーク回転位置前後のCf 点とCr 点において
アーク電圧差Sd が生じることを示す説明図である。
【図5】上記Cf 点とCr 点における積分領域を示す説
明図である。
【図6】本発明の裏ビード制御系のブロック図である。
【図7】本発明を用いたデータ例の出力波形図である。
【図8】溶接速度を変化させた場合の本発明における上
記Sd と従来法のVd の波形変化を示す図である。
【図9】上記Sd ,Vd 及び制御された溶接速度の波形
図である。
【図10】従来の裏ビード制御方法を示す説明図であ
る。
【図11】従来の初層溶接部の正面断面図である。
【図12】従来の初層溶接部の平面図である。
【図13】従来法におけるアークと溶融池の相対位置関
係を示す説明図である。
【符号の説明】
1,2 母材 3 狭開先 4 裏当材 10 電極ワイヤ 11 アーク 12 溶接ビード 13 溶融池 14 裏ビード 20 電極ノズル 21 電極チップ 22 モータ 23 歯車機構 24 送給ローラ 25 エンコーダ 26 溶接電源 27 電圧計 28 電流計 29 ローパスフィルタ 30 Scf積分器 31 Scr積分器 32 Sd 演算器 33 比較器 34 S0 設定器 35 ドライバ 36 走行モータ

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 母材の裏側にバッキング法を用い、高速
    回転アーク溶接により前記母材の表側より片面溶接し、
    裏ビードを形成する方法において、 アーク電圧または溶接電流を検出し、 前記検出したアーク電圧または溶接電流の波形から、溶
    接進行方向前後のアーク回転位置(Cf ,Cr )におけ
    るアーク電圧または溶接電流の積分値(Scf,Scr)を
    求め、 両積分値の差Sd (Sd =Scf−Scr)が開先幅及び裏
    ビード幅に対する溶接速度の関係から決められた基準値
    S0 と一致するように溶接パラメータを制御することを
    特徴とする片面溶接における裏ビード制御方法。
  2. 【請求項2】 前記溶接パラメータを溶接速度としたこ
    とを特徴とする請求項1記載の片面溶接における裏ビー
    ド制御方法。
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