JP2744486B2 - 排気熱を利用する自動車用暖房装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明に係る排気熱を利用する自動車用暖房装置
は、ヒートパイプの原理を利用する事で、エンジンから
排出される排気の熱により、車室内の暖房を行なうもの
である。

（従来の技術） 排気熱を利用して車室内の暖房を行なう暖房装置の場
合、冷却水の熱を利用して暖房を行なう装置に比べて立
ち上がりが早く（暖房感を得られる迄に要する時間が短
く）、又、寒冷地等に於いて、冷却水の熱を利用するだ
けでは十分な暖房感を得られない場合にも、これを十分
に補助する事が出来る為、従来から各種構造のものが研
究されている。この内、ヒートパイプの原理を利用して
排気熱を回収し、車室内の暖房を行なう自動車用暖房装
置として従来から、実開昭63−114806号公報等に開示さ
れたものが知られている。

この様な、ヒートパイプの原理を応用した、排気熱を
利用する自動車用暖房装置は、例えば第２図に示す様に
構成される。

この第２図に於いて１は、自動車用エンジン２から排
出される排気を流通させる排気管で、この排気管１の途
中には、第一、第二の排気流路３、４を、互いに並列に
設けている。この内の第一の排気流路３内には、純水等
の作動流体を加熱蒸発させる為の加熱器５を設けてお
り、この加熱器５の蒸気出口に、蒸気送り出し管６の一
端を接続している。

排気管１の途中で、上記第一、第二の排気流路３、４
の上流側には、加熱器５を配置した第一の排気流路３へ
の排気の送り込みとその停止とを制御する、排気流路切
換ドア７を設けて、加熱器５での、作動流体の加熱量の
調節を自在としている。

一方、送風機８によって、暖房用の空気を流通させる
ダクト内には、温水（エンジン用冷却水）を循環させる
ヒータコア９と直列に、コンデンサ10を配置している。
このコンデンサ10の蒸気入口は、上記蒸気送り出し管６
の他端に接続しており、このコンデンサ10の出口に一端
を接続し、途中に貯液器11、仕切弁12を設けた戻し管13
の他端を、前記蒸気送り出し管６の一部を介して加熱器
５に通じさせ、コンデンサ10内で凝縮液化した作動流体
を、上記加熱器５に戻す様にしている。

14は、排気流路切換ドア７駆動用のアクチュエータ、
15は、蒸気送り出し管６の途中に設けた安全弁、16は、
蒸気送り出し管６内をコンデンサ10に向けて送られる、
蒸気の温度を検出する為の温度センサ、17は、コンデン
サ10の頂部の温度を検出する為の温度センサ、18は、前
記ヒータコア９に送り込まれる温水の温度を検出する為
の温度センサ、19は、ヒータコア９とコンデンサ10とを
通過した後の空気の温度を検出する温度センサ、20は、
作動流体中に混入した空気を排出する為、コンデンサ10
の頂部に設けた電磁開閉弁、21は、この電磁開閉弁20と
直列に設けたリリーフ弁である。

前記排気流路切換ドア７の切り換えと、仕切弁12の開
閉とを制御する為の制御器（図示せず）は、上記各温度
センサ16〜19からの信号に応じて、排気流路切換ドア７
の切り換えと、仕切弁12の開閉とを行なわせる。

上述の様に構成される、従来の排気熱を利用する自動
車用暖房装置により、車室内の暖房を行なう場合、排気
流路切換ドア７を第２図に鎖線で示す様に切り換えると
共に、仕切弁12を開き、送風機８を運転する。

この結果、加熱器５内に存在する作動流体が蒸発し、
蒸気送り出し管６を通じて、コンデンサ10に送り込まれ
る。そして、このコンデンサ10内で作動流体の蒸気は、
送風機８によってダクト（図示せず）内に吸引され、こ
のダクト内を流れる空気との間で、熱交換を行なって凝
縮し、戻し管13、貯液器11、仕切弁12、蒸気送り出し管
６の一部を通じて前記加熱器５に戻され、再び蒸発する
サイクルを繰り返し行なう。ダクト内での熱交換によっ
て温度上昇した空気は、ダクトの下流端に設けた、適当
な吹き出し口から車室内に吹き出し、この車室内の暖房
に供される。

暖房装置を使用しない場合、或はヒータコア９による
暖房で十分な場合には、排気流路切換ドア７を、第２図
の実線で示す状態に切り換えると共に、仕切弁12を閉じ
る。

この結果、加熱器５に高温の排気が送り込まれなくな
ると共に、作動流体が貯液器11に溜められたまま、加熱
器５には送り込まれない状態となって、コンデンサ10の
温度が上昇する事もなくなる為、ダクト内を流通する空
気の温度が過度に上昇する事もなくなる。

（発明が解決しようとする課題） ところで、上述の様に構成され作用する、排気熱を利
用する自動車用暖房装置を、現実の自動車用暖房装置に
組み込む場合、次に述べる様な、解決しなければならな
い問題点が存在する。

即ち、現実の自動車用暖房装置に組み込む場合、所望
の吹き出し空気温度を得る為に、コンデンサ10を通過し
て温度が上昇した空気と、コンデンサ10と並列に設けら
れたバイパス流路を通過して、温度が上昇していない空
気とを混合する為、上記コンデンサ10とバイパス流路と
の上流側にエアミックスドアを設ける事が行なわれる。

吹き出し空気温度を変える場合には、このエアミック
スドアを適当に動かす事により、コンデンサ10を通過す
る空気の割合とバイパス流路を通過する空気の割合とを
適当に調節する。

この場合に於いて、エアミックスドアを、ダクト内を
流れる空気を上記バイパス流路に流す方向に、大きく移
動させた場合、コンデンサ10に於ける作動流体の放熱が
殆ど行なわれなくなってしまう。

この様に、コンデンサ10での放熱が行なわれなくなっ
た場合にも、加熱器５内に作動流体が存在した場合、加
熱器５内での作動流体の蒸発に基づき、排気熱を利用す
る暖房装置内部の圧力が異常に上昇し、この作動流体が
安全弁15から吹き出して、再使用に先立って作動流体の
再充填が必要になってしまう。

本発明の排気熱を利用する自動車用暖房装置は、上述
の様な不都合を解消するものである。

（課題を解決する為の手段） 本発明の排気熱を利用する自動車用暖房装置は、前述
した従来からの排気熱を利用する自動車用暖房装置の場
合と同様に、自動車用エンジンから排出される排気を流
通させる排気管の途中に、互いに並列に設けられた第
一、第二の排気流路と、第一の排気流路内に設けられた
加熱器と、この加熱器の蒸気出口に一端を接続した蒸気
送り出し管と、第一、第二の排気流路の上流側に設けら
れ、上記加熱器を配置した第一の排気流路への排気の送
り込みとその停止とを制御する、排気流路切換ドアと、
暖房用の空気を流通させるダクト内に配置され、蒸気入
口を上記蒸気送り出し管の他端に接続したコンデンサ
と、このコンデンサの出口に一端を接続し、コンデンサ
内で凝縮液化した作動流体を、上記加熱器に戻す戻し管
と、この戻し管の途中に設けられた仕切弁と、上記ダク
ト内に、コンデンサと並列に設けられたバイパス流路
と、このバイパス流路と上記コンデンサとの上流側に設
けられ、バイパス流路とコンデンサとに流れる空気の割
合を調節するエアミックスドアとから構成されている。

更に、本発明の排気熱を利用する自動車用暖房装置に
於いては、上記エアミックスドアが、ダクト内を流れる
空気を上記バイパス流路に流す方向に大きく移動した事
を検出する為の検出手段と、この検出手段からの信号に
基づき、上記エアミックスドアが、ダクト内を流れる空
気を上記バイパス流路に流す方向に大きく移動した場合
に、上記仕切弁を閉じる制御器とを有する事を特徴とし
ている。

（作用） 上述の様に構成される、本発明の排気熱を利用する自
動車用暖房装置は、エアミックスドアが、ダクト内を流
れる空気を上記バイパス流路に流す方向に大きく移動す
る事に伴ない、コンデンサでの作動流体の放熱量が極く
少なくなった場合には、制御器が仕切弁を閉じ、作動流
体を貯液器内に溜めたままとする。

この結果、上記作動流体が加熱器内に送り込まれる事
がなくなり、加熱器内での作動流体の蒸発も行なわれな
くなる為、排気熱を利用する暖房装置内部の圧力が、異
常に上昇する事がなくなる。

（実施例） 次に、図示の実施例を説明しつつ、本発明を更に詳し
く説明する。

第１図は本発明の排気熱を利用する自動車用暖房装置
を示す略断面図である。

第１図に於いて１は、自動車用エンジンから排出され
る排気を流通させる排気管で、この排気管１の途中に
は、第一、第二の排気流路３、４を、互いに並列に設け
ている。この内の第一の排気流路３内には、純水等の作
動流体を加熱蒸発させる為の加熱器５を設けており、こ
の加熱器５の蒸気出口に、蒸気送り出し管６の一端を接
続している。

排気管１の途中で、上記第一、第二の排気流路３、４
の上流側には、エンジン２（第２図参照）から送られて
くる排気を、第一の排気流路３に送り込むか、或は第二
の排気流路４に送り込むかを切り換える為の、排気流路
切換ドア７を設けている。この排気流路切換ドア７の切
り換えは、アクチュエータ14により行なわれる。

一方、暖房用の空気を流通させるダクト22内には、蒸
気入口を上記蒸気送り出し管６の他端に接続したコンデ
ンサ10を配置しており、このコンデンサ10の出口に一端
を接続し、途中に貯液器11、仕切弁12を設けた戻し管13
の他端を、前記加熱器５に通じさせて、コンデンサ10内
で凝縮液化した作動流体を、上記加熱器５に戻す様にし
ている。

又、上記ダクト22内にはバイパス流路23が、上記コン
デンサ10と並列に設けられており、このバイパス流路23
とコンデンサ10との上流側に、バイパス流路23とコンデ
ンサ10とに流れる空気の割合を調節するエアミックスド
ア24を設け、このエアミックスドア24の開度を、アクチ
ュエータ25により調節自在としいている。

ダクト22の途中で、上記エアミックスドア24の上流側
部分には、ダクト22内に通風する為の送風機８を設けて
いる。

更に、上記エアミックスドア24の近傍には、リミット
スイッチ26を設けて、このエアミックスドア24が、ダク
ト22内を流れる空気を上記バイパス流路23に流す方向に
大きく移動した事を検出自在としている。

即ち、上記エアミックスドア24が、第１図に実線で示
す方向に大きく移動した場合には、このエアミックスド
ア24が上記リミットスイッチ26を押し、その信号が、前
記仕切弁12の開閉を制御する為の制御器27に送られる様
にしている。

そしてこの制御器27は、上記リミットスイッチ26か
ら、エアミックスドア24が、ダクト22内を流れる空気を
上記バイパス流路23に流す方向に大きく移動した事を表
わす信号が送られてきた場合に、上記仕切弁12を閉じる
様に作用する。

尚、第１図に於いて28は、内気取入口29と外気取入口
30とを切り換える為の内外気切換ドア、31は送風機８の
下流側に設けられ、稼動時にはダクト22内を流れる空気
を冷却するエバボレータ、32は前記コンデンサ10と直列
に設けられ、冷却水の熱を利用して空気を加温する為の
ヒータコア、33は、ダクト22の下流側端部に設けられた
分配チャンバで、ダクト22内で適当な温度に調整された
空気は、この分配チャンバ33に設けた複数の吹き出し口
の内の適当な吹き出し口から、車室内に吹き出される。

上述の様に構成される、本発明の排気熱を利用する自
動車用暖房装置により、エンジンの排気熱を利用して車
室内を暖房する際の作用自体は、前述の第２図に示した
排気熱を利用する自動車用暖房装置と同様である。

但し、本発明の排気熱を利用する自動車用暖房装置の
場合、暖房不要時に、アクチュエータ25によりエアミッ
クスドア24を第１図に実線で示す状態に迄移動させ、ダ
クト22内を流れる空気を、コンデンサ10と並列に設けた
バイパス流路23に流す様にした場合、上記エアミックス
ドア24の移動に伴なってリミットスイッチ26が、制御器
27に信号を送り、この信号に基づいて制御器27が、貯液
器11と加熱器５との間に設けられた仕切弁12を閉じる。

この結果、コンデンサ10から送り出された作動流体
が、貯液器11に溜まったまま、加熱器５に送られなくな
り、加熱器５内での作動流体の蒸発も行なわれなくなる
為、排気熱を利用する暖房装置内部の圧力が異常に上昇
する事がなくなる。

尚、エアミックスドア24が、ダクト22内を流れる空気
をバイパス流路23に流す方向に大きく移動した事を検出
する為の検出手段としては、上述の様なリミットスイッ
チ26の他、上記エアミックスドア24を駆動する為のアク
チュエータ25のストローク量を検出するセンサ、更には
このアクチュエータ25への指令信号を利用する事も出来
る。

又、制御器27は、上記検出手段からの信号に基づい
て、仕切弁12を閉じる他、排気流路切換ドア７駆動用の
アクチュエータ14に信号を送り、この排気流路切換ドア
７を、第二の排気流路４に排気を流す方向に切り換える
事も出来る。

（発明の効果） 本発明の排気熱を利用する自動車用暖房装置は、以上
に述べた通り構成され作用するが、暖房不要時に、暖房
装置内部に高圧の蒸気が充満する事を防止出来る為、作
動流体が外部に排出される事を有効に防止出来る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の排気熱を利用する自動車用暖房装置の
実施例を示す略断面図、第２図は本発明の対象となる排
気熱を利用する自動車用暖房装置の１例を示す断面図で
ある。 1:排気管、2:自動車用エンジン、3:第一の排気流路、4:
第二の排気流路、5:加熱器、6:蒸気送り出し管、7:排気
流路切換ドア、8:送風機、9:ヒータコア、10:コンデン
サ、11:貯液器、12:仕切弁、13:戻し管、14:アクチュエ
ータ、15:安全弁、16、17、18、19:温度センサ、20:電
磁開閉弁、21:リリーフ弁、22:ダクト、23:バイパス流
路、24:エアミックスドア、25:アクチュエータ、26:リ
ミットスイッチ、27:制御器、28:内外気切換ドア、29:
内気取入口、30:外気取入口、31:エバポレータ、32:ヒ
ータコア、33:分配チャンバ。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】自動車用エンジンから排出される排気を流
   通させる排気管の途中に、互いに並列に設けられた第
   一、第二の排気流路と、第一の排気流路内に設けられた
   加熱器と、この加熱器の蒸気出口に一端を接続した蒸気
   送り出し管と、第一、第二の排気流路の上流側に設けら
   れ、上記加熱器を配置した第一の排気流路への排気の送
   り込みとその停止とを制御する、排気流路切換ドアと、
   暖房用の空気を流通させるダクト内に配置され、蒸気入
   口を上記蒸気送り出し管の他端に接続したコンデンサ
   と、このコンデンサの出口に一端を接続し、コンデンサ
   内で凝縮液化した作動流体を、上記加熱器に戻す戻し管
   と、この戻し管の途中に設けられた仕切弁と、上記ダク
   ト内に、コンデンサと並列に設けられたバイパス流路
   と、このバイパス流路と上記コンデンサとの上流側に設
   けられ、バイパス流路とコンデンサとに流れる空気の割
   合を調節するエアミックスドアとから成る。排気熱を利
   用する自動車用暖房装置に於いて、上記エアミックスド
   アが、ダクト内を流れる空気を上記バイパス流路に流す
   方向に大きく移動した事を検出する為の検出手段と、こ
   の検出手段からの信号に基づき、上記エミックスドア
   が、ダクト内を流れる空気を上記バイパス流路に流す方
   向に大きく移動した場合に、上記仕切弁を閉じる制御器
   とを有する事を特徴とする、排気熱を利用する自動車用
   暖房装置。