JP2737792B2 - 電気絶縁型ヒートパイプ - Google Patents

電気絶縁型ヒートパイプ

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はサイリスタ等の電力半導体素子の冷却に用い
られる電気絶縁性と強度を改善した電気絶縁型ヒートパ
イプに関するものである。
〔従来の技術とその課題〕
従来からサイリスタ等の半導体の冷却用としてヒート
パイプを利用した電気絶縁型ヒートパイプが知られてい
る。この電気絶縁型ヒートパイプは第4図に示すように
一端が半球状または円錐状に絞られその先端を密閉した
第一の金属管(1)を放熱部とし、同様にして密閉され
た第二の金属管(1′)を入熱部(吸熱部)とし、この
放熱部と入熱部の中間をコバール等の封着材(2),
(2′)を介してアルミナなどの電気絶縁筒(3)によ
り接続し、内部にフロロカーボンなどの電気絶縁性の作
動液(10)を封入したものである。そしてこのヒートパ
イプは、吸熱部が半導体を装着したアルミなどの金属ブ
ロックに挿入され、半導体の発生熱を金属ブロックを介
して吸熱し、ヒートパイプの放熱側に装着されたフィン
により放熱する半導体の冷却用などに用いられる。しか
し従来の電気絶縁型ヒートパイプにおいては、電気絶縁
筒にアルミナ含有率が90%程度の低アルミナの焼成体が
用いられているため電気絶縁性が悪く、またヒートパイ
プと電気絶縁筒との接続に封着材としてコバール(Fe−
Ni−Co合金、商品名)が用いられているが、Co含有のた
め入手が困難で接続性や強度が弱く、特に振動を常時受
ける電車の車載用冷却器として用いる場合、耐振性が低
下しヒートパイプの特性が劣化する問題があった。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は上記の問題について検討の結果、電気絶縁性
が高く、振動に対する強度が優れ、特に車載用冷却器と
して好適な電気絶縁型ヒートパイプを開発したものであ
る。
〔課題を解決するための手段および作用〕
本発明は、一端が半球状または円錐状に絞られその先
端を密閉した2本の金属管をそれぞれ放熱部と加熱部と
し、該放熱部と吸熱部との中間を封着材を介して電気絶
縁筒で接続し、作動液として電気絶縁性の流体を封入し
てなる電気絶縁型ヒートパイプにおいて、該電気絶縁筒
を92〜95%のαアルミナを含有する焼成体で形成し、か
つ電気絶縁筒の空間距離を30mm以上、沿面距離を45mm以
上とし、前記封着材が電気接続部との接合部において鍔
状に折曲げられていることを特徴とする電気絶縁型ヒー
トパイプである。
すなわち本発明は、第1図に示すように、一端が半球
状または円錐状に絞られ、その先端を密閉した第一の金
属管(1)を放熱部とし、同様にして密閉された第二の
金属管(1′)を吸熱部とし、放熱部と入熱部との中間
に封着材(2)、(2′)を介して電気絶縁筒として、
材質を例えば92〜95%のαアルミナを含有する焼成体で
形成し、空間距離を30mm以上、沿面距離を45mm以上とし
た電気絶縁筒で接続し、内部に電気絶縁性の作動液(1
0)を封入したものである。
しかして本発明において、電気絶縁筒の材質として92
〜95%のαアルミナを含有する焼成体を用いるのは、電
車等の車両用として必要なAC5.3Kv以上の絶縁電圧を確
保するにはこの範囲の高アルミナの焼成体でなければ得
られないからである。
また上記の絶縁電圧を初期時及び長期使用時にても確
保するには、同時に電気絶縁筒の空間距離(絶縁筒の長
さ)を30mm以上にする必要があり、沿面距離(絶縁筒表
面に形成する波の総延長の長さ)を45mm以上とする必要
がある。空間距離、沿面距離とも、これ未満では良好な
電気絶縁が得られないが、あまり大きくとると寸法が長
くなり高価になるので20%増程度が適当である。
このように本発明においては電気絶縁筒の材質とその
形状を的確に選定することにより良好な電気絶縁が得ら
れるものであるが、さらに上記の電気絶縁筒の内面にポ
ーラス加工を施し、液の濡れ性及び熱性能を高め、外面
にはガラス状のグレーズ処理を施すことにより、電気絶
縁性の長期安定性を保つことができる。(汚れによる劣
化がない)。尚、前記電気絶縁筒の内面にはポーラス加
工の他に、濡れ性及び熱性能を向上させる条溝加工を施
しても良い。
また電気絶縁筒とヒートパイプとの接続に使用される
封着材としては、コバールに代えてNi42%程度を含む比
較的入手容易な鉄−ニッケル合金を用いることにより、
絶縁筒と熱膨張率を限りなく近づけることにより上記の
アルミナ絶縁筒とのロウ接力を増し、振動や熱サイクル
に対して強度を高めることができる。この際封着材は、
電気絶縁筒との接続面に第2図に示すように鍔状の折り
曲げ部(4)、(4′)を設けることにより絶縁筒との
接合面積が増えて結合力が大きくなる。また封着材の別
の端部にも外側に拡がる加工部(5)(5′)を施して
置くと金属管を挿入する際、容易に挿入できると共にロ
ウ材の溜りとなり良好にロウ接できる。さらに電気絶縁
筒の封着材と接する両端面にはMg−Mo系等の合金のメタ
ライジングを施して置くと封着材とのブレージングによ
る接合を良好に行うことができ、結合力が高まる。
本発明において上記の放熱部、入熱部に用いられる、
銅、アルミニウム、ステンレス鋼などのものが使用で
き、その内面にはウィックの作用をなすV字状を始め種
々の形状の条溝を設けることができる。またヒートパイ
プの一端が半球状または円錐状に絞られるのは、この形
状に加工を施して密閉する方が密閉し易く、かつ完全に
シールできるからである。
さらに上記のヒートパイプの断面形状は円形、楕円形
の他、公知の種々の形状のものが適用でき、その径も放
熱部、吸熱部と異なる径のものを用いて、放熱、吸熱特
性を変えることも可能であり、また放熱部にフィンを設
けて放熱特性を高めることができる。なお本発明のヒー
トパイプを半導体冷却用として使用するときは、半導体
が装着された金属ブロックにヒートパイプの入熱部を挿
入し、ロウ付けにより金属ブロックと一体化し、半導体
の熱を金属ブロックを介して入熱し、ヒートパイプの放
熱部に設けられたフィンにより、自然放熱またはファン
を用いて強制放熱して半導体を冷却するものである。
〔実施例〕
外径22.23mm、長さ300mmと120mmの銅管の一端を円錐
状と半円球に絞られた第1図に示す第一の金属管(1)
をヒートパイプの放熱部、(1′)を吸熱部(入熱部)
とし、この中間にアルミナ含有率92%のαアルミナ粉を
1500〜1800℃で焼成した内径20.85mm、長さ30mm、沿面
距離45mmの波形形状の電気絶縁筒(3)を第2図に示す
Ni42%の鉄−ニッケル合金からなる端部が鍔状の折曲げ
部(4)、(4′)を有する封着材(2)、(2′)と
Mn−Moのメタライジングを施してロウ付け接続し、封着
材の他端の外側に拡げられた加工部(5)、(5′)と
金属管(1)、(1′)を銀−銅共晶ロウ材で気密度よ
く(10-9Torr・リットル/sec以下)ロウ付けした。次に
金属管の一端を密閉した後、その片端より、金属管の内
部を脱気し、フロン113の作動液(10)を所定量注入し
密閉してヒートパイプ化した。
この電気絶縁型ヒートパイプを用いて第3図に示すよ
うに金属ブロック(6)にヒートパイプの一端(1′)
を挿入してハンダにより接合して一体化し、ヒートパイ
プの他端(1)には多数のフィン(7)を圧入装着して
半導体冷却器とした。
この構造による冷却器によればサイリスタ等の半導体
からの発熱は金属ブロックおよびヒートパイプ入熱部を
介してフィンに伝達し、大気中に効率よく放熱される。
ここでサイリスタ面は作動時には5.3Kv程度の高電位
を有し危険であるが、本発明によればこの高電圧は上記
の電気絶縁筒により完全に遮断されて放熱部側には伝達
されない。このため電気計装、補修、点検などのメンテ
ナンスが容易となり、特に電車に搭載されるVVVFインバ
ーター制御装置内のサイリスタ素子の冷却に好適であ
る。
また本発明は上記のヒートパイプ、封着材および電気
絶縁筒の接続強度が高いため振動や熱サイクルによる接
続部のリーク度が非常に小さく(10-9Torr・リットル/s
ec以下)したがってヒートパイプの特性が長期間保持で
きるものである。
〔効果〕
以上に説明したように本発明によれば、電気絶縁性お
よび接続強度および熱サイクルに優れた電気絶縁型ヒー
トパイプが得られたもので工業上顕著な効果を奏するも
のである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例に係る電気絶縁型ヒートパイ
プの一部断面図、第2図は電気絶縁筒の一部断面図、第
3図は本発明の使用例を示すヒートパイプ式半導体冷却
器の一部断面図、第4図は従来の電気絶縁型ヒートパイ
プの断面図である。 1……第一の金属管(ヒートパイプの放熱部)、1′…
…第二の金属管(ヒートパイプの入熱部)、2、2′…
…封着材、3……電気絶縁筒、4、4′……折曲げ部、
5、5′……加工部、6……金属ブロック、7……フィ
ン、10……作動液(絶縁液)。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一端が半球状または円錐状に絞られその先
    端を密閉した2本の金属管をそれぞれ放熱部と吸熱部と
    し、該放熱部と吸熱部との中間を封着材を介して電気絶
    縁筒で接続し、作動液として電気絶縁性の流体を封入し
    てなる電気絶縁型ヒートパイプにおいて、該電気絶縁筒
    を92〜95%のαアルミナを含有する焼成体で形成し、か
    つ電気絶縁筒の空間距離を30mm以上、沿面距離を45mm以
    上とし、前記封着材が電気接続部との接合部において鍔
    状に折曲げられていることを特徴とする電気絶縁型ヒー
    トパイプ。
  2. 【請求項2】電気絶縁筒の内面にはポーラス又は条溝加
    工が施され、外面にはガラス状のグレーズ処理が施され
    ていることを特徴とする請求項1記載の電気絶縁型ヒー
    トパイプ。
  3. 【請求項3】封着材に鉄−ニッケル合金を用いて封着し
    たことを特徴とする請求項1記載の電気絶縁型ヒートパ
    イプ。
  4. 【請求項4】封着材が金属管との接合部端において、外
    側に折曲げられていることを特徴とする請求項1記載の
    電気絶縁型ヒートパイプ。
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