JP2736692B2 - Al系多孔質焼結吸音材 - Google Patents

Al系多孔質焼結吸音材

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はAl系多孔質焼結吸音材に係り、詳しくは、吸
音特性を具え、表面の凹凸によって塗膜が付着し易いAl
系焼結多孔質材に塗装を施し、吸音特性ならびに化粧性
に優れたAl系多孔質焼結吸音材に係る。
従来の技術 Al系多孔質焼結材は、例えば、特開昭53−90113号公
報や特公昭56−11373号公報に記載の如くAl系粉末を無
加圧、非酸化性雰囲気下で一部液相で焼結し、多孔率40
〜50%の多孔質材を得る方法が開発され、吸音材等に広
く利用されている。しかしながら、この種の吸音材料を
建築内外装に使用する場合、この材料の性質上、他の吸
音ボードに比し、曲げ力に対し、塑性変形を生じ易いこ
とから、吸音特性を損なうことなく剛性を高め且つこの
多孔質焼結材を塗装し、化粧性を高めるようにしたAl系
多孔質焼結吸音材の出現が望まれていた。
発明が解決しようとする課題 本発明は上記問題の解決を目的とし、具体的には、表
面が凹凸状態であるAl系多孔質焼結材を塗装したもので
あって、そのために機械的強度が向上し、しかも、表面
塗装が容易で意匠的効果も大きいAl系多孔質焼結吸音材
を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段ならびにその作用 すなわち、本発明は、凹凸を生じるエンボス圧延処理
を施しAl系多孔質焼結材表面の焼結材粒子の一部若しく
は全部を平坦部から構成し、塗装したものからなり、し
かも、この塗装塗膜が焼結材粒子の孔隙部を残し、平坦
部に形成したものからなることを特徴とする。
以下、本発明の手段たる構成ならびにその作用につい
て図面により詳しく説明すると、次の通りである。
なお、第1図(a)、(b)ならびに(c)はAl系多
孔質焼結材の焼結後の表面の拡大説明図、エンボス圧延
後の表面の拡大説明図ならびに塗装後の表面の拡大説明
図であり、第2図はスプレーガンによる塗料の吹付状況
の説明図であり、第3図は第2図に示すスプレーガンの
通行状況の説明図であり、第4図はAl系多孔質焼結材を
用いた吸音壁の一例を示す説明図であり、第5図はAl系
多孔質焼結材の製造工程の一例を示す説明図であり、第
6図は中心周波数と垂直入射吸音率との関係を示すグラ
フである。
まず、本発明に用いられるAl系多孔質焼結材の製造法
から順に説明する。
第5図に示す如く、Alを主成分とした原料粉末1はホ
ッパー2からAlと反応しない容器3(例えばグラファイ
ト容器)中に所定厚みに均一に散布される。この時の散
布厚みは容器の深さによって調整される。原料粉末が自
然充填された容器3は段積みされ、NH3分解ガスやN2
スなどの非酸化性雰囲気に保たれた焼結炉4中で焼結さ
れ、冷却ゾーン6で冷却された後、容器3から外すこと
によってAl系多孔質焼結材7が得られる。
この焼結において、各Al粉末粒子は内部と酸化皮膜と
の熱膨脹率の差によってその酸化皮膜が破壊され、この
破壊部分を通して内部のAl分が露出して焼結が進行す
る。このため、露出したAl分や部分溶融により生成した
液相部分が酸化され易いので、焼結雰囲気は酸素の分圧
を低く制御し、露点が−30℃以下の雰囲気で多孔率39〜
60%で焼結することが望ましい。
また、第6図に示すグラフのNo.4のように多孔率39%
以下になると、部分的に独立気孔が増えて連通孔の存在
が消失し、メタリックな焼結となるので、吸音率の低下
の傾向となり、多孔率60%以上は、吸音率ならびに材料
強度の点で実用性が劣るようになる。
しかし、前記のようにして得られたAl系多孔質焼結材
を建築吸音材料として例えば、劇場やホール等の音響調
整等を目的とした吸音壁として、例えば、50cm×50cm×
3mmの如く、平板にして第4図に示すようにAl系多孔質
焼結材7をランナー8ならびにスタット9上に施工し建
築内装とするには設計、取扱上での材料の剛性と化粧性
を高める必要がある。
そこで、本発明では、焼結後更に圧延し、なかでも、
エンボス圧延処理し、その表面に化粧性を高める塗装を
併せて行なうことが重要である。
次に、エンボス圧延処理について説明する。
エンボス圧延処理は、前記の説明にもある剛性を高め
且つAl系多孔質焼結材の塗装を容易化し、化粧性を高め
るに効果的な手段である。剛性を単に高める方法として
は、別にAl成分組成の構成で冶金的に解決することもで
きるが、一般的に焼結液相を多くするようにするがその
焼結液相を多くする代表的な元素としてはCuであるが、
Cuの添加は耐食性の点であまり好ましくない。また、厚
さを厚くすることもできるが、コストならびに重量上の
問題も生ずる。
そこで、物理的に加工を行ない、加工硬化による機械
的性質を向上させることで材料剛性を高めることが本発
明の狙いの一つである。
すなわち、焼結後の多孔率が39〜60%であると、ほと
んど孔隙が表面から連続し、吸音効果に寄与しない独立
の孔隙がほとんどない。また、焼結後エンボスエンボス
延処理によってある程度圧下し、焼結密度が高められて
も、圧延による目詰まりで、吸音性が維持できる。この
ことは孔隙の連通性が保持される。エンボス圧延処理の
特徴は圧延ロールに模様彫りしてその表面が凹凸となっ
ているので、圧下率が一様でなく、圧下率の相違から、
圧下率の高いところの孔隙の連通性が少なくなっても、
それに隣接して圧下率の低いところの孔隙は連通性がほ
とんど低下しない。このため、吸音率への影響が少なく
して、剛性が高められる。
なお、このような圧延を達成するには圧延条件を通気
の流れ抵抗値によって制限するのが好ましい。この流れ
抵抗値はJIS A 6306に記載されるものであって流れ抵抗
値を800dyn.sec/cm4以下の範囲でエンボス圧延する。通
常においては、300dyn.sec/cm4程度で実施すればよい。
勿論、フラットなロールであっても、先の範囲の流れ抵
抗値であれば、フラット圧延でも可能である。
また、一例として多孔率53%の多孔質焼結材を圧下率
を変えてエンボス圧延し、この場合の多孔率、流れ抵抗
値及び引張強度を示すと第1表の通りである。
また、垂直入射吸音率は第6図に示すように、第1表
のテストNo.2ならびに3は剛性が向上し、しかも、吸音
率において大きな低下はみられない。
次に、本発明のエンボス圧延が塗装における塗着性等
に寄与し、建材等に使用し、化粧性を高められる点につ
いて説明する。Al系多孔質焼結材の塗装技術の問題とし
て、他の無孔材料と異り、塗料が孔隙中に吸収されるこ
とで、いかにして吸音性を損なうことなく効率良く塗装
するかが大きな課題である。
そこで、この点解決する方法とし、第1図(a)、
(b)ならびに(c)により説明する。
本発明におけるAl系多孔質焼結吸音材の焼結後の表面
を拡大すると、第1図(a)に示すように粒子間で三次
元的に焼結されていて、空孔部が連通していることがわ
かる。Al粒子の表面は実際不規則な形状であるが、塗料
をスプレーガン等で霧状に噴霧した場合、焼結したまま
のものは平坦部が極めて少ないため、噴霧塗料が累積し
て積層できにくい。その為に毛細管現象によって空孔部
に塗料が浸透し着色しずらい。しかしながら、本発明の
エンボス多孔質焼結材は、第1図(c)に示すように塗
膜13を形成する場合、第1図(b)に示すように、エン
ボス加工による平坦部が各Al焼結粒子上面に形成されて
おり、この平坦部に塗料が噴霧されると、噴霧塗料が面
で受け、塗料が積層され易く、そのために高い塗着効率
が得られる。
また、この効果の確認実験を第2表により説明する。
上記実験方法は第2図に示すようにスプレーガンを使
用し、ガンより吹付けられる楕円状のパターン幅20をパ
ターン開き調節器21ならびに吐出量調節器22により25cm
に調整し、第3図に示すようにスプレーガンの6運行を
1回塗りとし、塗料色に近ずくまで重ね塗りをくり返し
た。この結果を第2表に示した。なお、第2表の記号×
印は、塗料が孔隙中に吸い込み、ほとんど色がスケて着
色しない状態を示し、△印は塗装色がやや不十分な状態
を示し、○印は目的とする塗料色に仕上がった重ね塗り
状態を示す。
第2表によれば本発明の作用であるエンボス圧延処理
によるAl焼結粒子の平坦部に塗料が積層されやすいた
め、焼結後、エンボス圧延せずに塗装したものに較べ、
同じ色相に仕上げるに塗装工数が半分となる上に、目詰
まりの程度を示す流れ抵抗値も大幅に増大することもな
く、塗装することができることがわかる。
また、上記塗装品の垂直入射吸音率は、間接的に第1
表ならびに第6図からもわかるように、焼結後に塗装し
たものは、何ら圧延しないにもかかわらず、圧延したも
のに近い流れ抵抗値を示している。
また、本発明に用いられるAl系多孔質焼結吸音材は、
粉末粒子を焼結して製造するために一般的に製品の多孔
率にバラツキがあり、このところから塗料の吸い込みに
差が生じ、塗膜厚さにバラツキが発生して色相に有異差
が生じやすい。この点の解決についても本発明である焼
結の後、エンボス圧延処理を施すことによりAl系多孔質
焼結吸音材の塗着表面がほぼ一様な孔隙部と平坦部を有
する粒子面とで成ることで、見掛上、製品間での色相の
バラツキを小さくすることができる。
<発明の効果> 以上詳しく説明したように、本発明は、凹凸を生じる
エンボス圧延処理を施しAl系多孔質焼結材表面の焼結材
粒子の一部若しくは全部を平坦部から構成し、塗装した
ものからなり、しかも、この塗装塗膜が焼結材粒子の孔
隙部を残し、平坦部に形成したものからなることを特徴
とする。
従って、Al系多孔質焼結吸音材を吸音化粧材とする
に、多孔質焼結体であるため、塗装が困難とされていた
ものを本発明は解決したものであり、塗着効果を向上
し、均一な色相に仕上げる塗装技術について、焼結後、
エンボス圧延処理を施し、Al焼結粒子表面の全部又は一
部を平坦部に形成するようにしたため、 塗着部が面として成ることで、塗料が積層しやすく、
塗着効果の大幅な向上がみられた。
製品間の多孔率のバラツキの多少は圧延によって、塗
装仕上がりで、色相の変化を小さくする効果が得られ
た。
吸音材料とし同じ厚さで剛性が高められ、施工時の取
り扱いが向上した。また、Al焼結は粉末粒子が焼結後部
分偏析し、粗密粒子外観を呈すことがあり、そのまま塗
装すると、より顕著になり、化粧性を失なうことになる
が、エンボス圧延による焼結粒子表面を平坦にしたた
め、塗装後の仕上りで色相上、粒子偏析による影響も小
さくなり、吸音化粧材料として一段と実用性を高めるこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)、(b)ならびに(c)はAl系多孔質焼結
材の焼結後の表面の拡大説明図、エンボス圧延後の表面
の拡大説明図ならびに塗装後の表面の拡大説明図、第2
図はスプレーガンによる塗料の吹付状況の説明図、第3
図は第2図に示すスプレーガンの運行状況の説明図、第
4図はAl系多孔質焼結材を用いた吸音壁の一例を示す説
明図、第5図はAl系多孔質焼結材の製造工程の一例を示
す説明図、第6図は中心周波数と垂直入射吸音率との関
係を示すグラフである。 符号10……Al焼結粒子 11……孔隙部 13……塗膜

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】凹凸を生じるエンボス圧延処理を施しAl系
    多孔質焼結材表面の焼結材粒子の一部若しくは全部を平
    坦部から構成し、塗装したものからなり、しかも、この
    塗装塗膜が前記焼結材粒子の孔隙部を残し、平坦部に形
    成したものからなることを特徴とするAl系多孔質焼結吸
    音材。
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