JP2730960B2 - Ｖ形エンジンの吸気装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、Ｖ形エンジンの吸気装置に係り、特にその
サージタンク回りの構造に関する。

［従来技術］ 従来、複数の気筒を並設してなる一対のシリンダ列を
Ｖ形に配置し、これらシリンダ列の相対向する側面に各
気筒に連なる吸気口を設けるとともに、この吸気口の上
方にクランク軸の軸方向に延びるサージタンクを配置
し、これらサージタンクの互いに対向する側面に、相対
向するサージタンクの下方の吸気口に連なる複数の吸気
分配管を接続したＶ形エンジンが知られている。（例え
ば「特開昭60−81458号公報」参照） そして、この種のＶ形エンジンにおいて、上記複数の
吸気分配管によって囲まれる空間に、エアクリーナから
の新気をサージタンクに導くための導入管を配置し、吸
気系回りをシリンダ列の間にコンパクトに収めたＶ形エ
ンジンも既に知られている。

［発明が解決しようとする課題］ ところが、この従来のＶ形エンジンでは、吸気口に接
続される燃料噴射弁やこの燃料噴射弁に燃料を供給する
デリバリ管も、上記空間に一括して収められているた
め、この空間の一部が燃料噴射弁やデリバリ管によって
専有されてしまい、空間の容積が著しく狭くなる傾向に
あった。このため、導入管の配置スペースが少なくなっ
て、この導入管の管径が制限されたり、導入管自体を上
記燃料噴射弁やデリバリ管との干渉を避けて通す必要が
あるから、導入管に急激な曲げが生じる虞れがあり、そ
の分、吸気抵抗が大きくなる不具合がある。

本発明はこのような事情にもとづいてなされたもの
で、吸気系回りのコンパクト化は勿論のこと、導入管の
配置スペースを充分に広く確保することができ、この導
入管の配置が無理のない滑らかなものとなって吸気抵抗
を低減できるエンジンの吸気装置の提供を目的とする。

［課題を解決するための手段］ そこで、本発明においては、複数の気筒をクランク軸
の軸方向に並設してなる一対のシリンダ列をＶ形に配置
し、これら各シリンダ列の相対向する側面に各気筒に連
なる吸気口を設けるとともに、この吸気口の上方にクラ
ンク軸の軸方向に沿って延びるサージタンクを配置し、
これら一対のサージタンクの互いに対向する側面に、相
対向するサージタンクの下方の吸気口に連なる複数の吸
気分配管を接続したＶ形エンジンにおいて、 上記吸気分配管は、一対のサージタンクの間を略水平
に延びる水平管部と、この水平管部の下流端部から吸気
口に向って上下方向に延びる縦管部とを備え、これら吸
気分配管によって囲まれる空間に、エアクリーナからの
新気をサージタンクに導く導入管を配置するとともに、
上記サージタンクの外側面とシリンダ列とで挾まれた空
所に、上記吸気口に連なる燃料噴射弁と、この燃料噴射
弁に燃料を供給するデリバリ管を配置したことを特徴と
している。

［作用］ この構成によれば、吸気分配管によって囲まれた空間
の導入管の配置スペースとして利用できるので、この導
入管がサージタンクや吸気分配管の外方に大きく突出す
ることはなく、エンジンの吸気系回りをコンパクトで纏
まりの良いレイアウトとすることができる。

また、吸気分配管は各サージタンクから略水平に導か
れた後、下向きに延びる形状をなしているため、この吸
気分配管で囲まれた空間が略四角形状となり、シリンダ
列間の限られたスペースの中で上記空間の容積を充分に
大きく確保できる。しかも、燃料噴射弁やデリバリ管は
上記空間の外側に配置されるために、これら燃料噴射弁
やデリバリ管によって空間の一部が専有されることもな
く、導入管の配置スペースを広げることができる。この
ため、導入管の配置を無理なく行なえるから、この導入
管の管径が制限されたり、導入管自体に急激な曲げが生
じることもなく、その分、吸気抵抗を少なく抑えること
ができる。

［実施例］ 以下本発明を、図面に示す一実施例にもとづいて説明
する。

第12図中符号１で示す実用自動車の車体は、車室２の
前方にエンジンルーム３を備えている。エンジンルーム
３の前部にはラジエータ４が設置されており、このラジ
エータ４の後方に本発明に係るＶ系８気筒エンジン５が
横置きに収容されている。

このエンジン５のシリンダブロック６は、一本のクラ
ンク軸７を支持するロアケース８と、このロアケース８
の上面にＶ形に立設された一対のシリンダ列9a,9bとで
構成される。シリンダ列9a,9bは四つの気筒10をクラン
ク軸７の軸方向に並設してなるシリンダ本体11a,11b
と、このシリンダ本体11a,11bの上面に被嵌されたシリ
ンダヘッド12a,12bおよびヘッドカバー13a,13bとからな
り、そのシリンダ本体11a,11bはロアケース８と一体化
されている。そして、Ｖ形に対向し合う気筒10のピスト
ンは、コンロッドを介してクランク軸７上の共通のクラ
ンクピンに連結されており、このため、一対のシリンダ
列9a,9bはクランク軸７の軸方向にオフセットされてい
る。

各シリンダ列9a,9bのシリンダヘッド12a,12bには、各
気筒10毎に吸気口14と排気口15が形成されている。吸気
口14はシリンダヘッド12a,12bの相対向する側面16上に
おいて、クランク軸７の軸方向に一列に並んだ状態で上
向きに開口されており、これら吸気口14の開口中心X
₁は、各気筒10のボア中心とクランク軸７の軸方向の位
置が一致している。そして、各シリンダ列9a,9bの吸気
口14の上方には、夫々サージタンク18a,18bが配置され
ている。サージタンク18a,18bはクランク軸７の軸方向
に延びる細長い箱状をなしており、本実施例の場合は、
第１図に示すように上面が開口されたタンク本体19と、
このタンク本体19の上面開口部を覆うカバー20とで構成
されている。タンク本体19の互いに対向し合う側面21に
は、夫々四本の吸気分配管22が接続されている。これら
吸気分配管22は相対向するサージタンク18a,18bに向っ
て延びた後、その下方に位置する吸気口14に導かれてい
る。

すなわち、吸気分配管22は第１図に示すように、サー
ジタンク18a,18bの間を略水平に延びる水平管部23と、
この水平管部23の吸気下流端から吸気口14に向って略鉛
直方向に延びる縦管部24とで構成され、各サージタンク
18a,18bから導出された合計８本の水平管部23は、第２
図に平面的に示すようにサージタンク18a,18bの間にお
いて交互に位置されている。そして、各水平管部23の吸
気下流端は相対向するサージタンク18a,18bのタンク本
体19の内部に入り込んで、ここで下向きに滑らかに湾曲
されており、この湾曲部25の下端部が縦管部24に連なっ
ている。したがって、このように曲げられた吸気分配管
22は、Ｖ形の形作る一対のシリンダ列9a,9bの間を上方
から覆っており、これらシリンダ列9a,9bの間に連なる
略四角形状の空間29に構成している。

また、タンク本体19の底面は上記湾曲部25の位置で上
向きに張り出しており、これら湾曲部25の間に、このタ
ンク本体19に接続されるべき水平管部23の吸気上流端が
開口されている。それとともに、吸気分配管22の水平管
部23は、タンク本体19と一体に鋳造成形されているのに
対し、縦管部24はタンク本体19の底面から下向きに突出
する接続口26と、シリンダヘッド12a,12bの吸気口14に
ボルト締めされた吸気ジョイント27とに二分割されてお
り、こらら接続口26と吸気ジョイント27とがゴム製の接
続パイプ28を介して気密に連結されている。このため、
サージタンク18a,18bを含む吸気分配管28の水平管部23
は、シリンダヘッド12a,12bに対し浮動状態に防振支持
されている。

ところで、吸気分配管22によって囲まれる空間29に
は、サージタンク18a,18bに新気を導く導入管30が配置
されている。導入管30はサージタンク18a,18bよりも下
方を通ってクランク軸７の軸方向に延びており、その内
部が隔壁31によって第１の通路32aと第２の通路32bに仕
切られている。それとともに、導入管30の吸気下流端は
二又状に分岐されており、一方の分岐部33aが第１の通
路32aに、また他方の分岐部33bが第２の通路32bに連な
っている。そして、これら分岐部33a,33bは斜め上向き
に延びて、エンジン５全体をクランク軸７の軸方向から
見た場合に略Ｖ字形をなしており、これら分岐部33a,33
bの先端開口部がサージタンク18a,18b側の接続口34a,34
bに連結されている。

なお、導入管36の内部を仕切る隔壁31は、必ずしも導
入管30の全長に亘って設ける必要はなく、第４図中想像
線で示すように、分岐部33a,33bの直前の極短い範囲の
みに設けても良いし、場合によっては省略しても良い。

導入管30の吸気上流端は、上記空間29内からクランク
軸７の軸方向に沿ってシリンダブロック６の後方に導出
されており、この導入管30の後方への導出端にはスロッ
トル弁37を収容したスロットルボデー38が連結されてい
る。スロットルボデー38は第９図のクラッチ35を覆う図
示しないクラッチハウジングの上方に位置しており、そ
の吸気上流端が吸気ダクト39を介してエアクリーナ40に
連なっている。スロットルボデー38には、スロットル弁
37を迂回する図示しないバイパス通路と、このバイパス
通路を開閉することでアイドルスピードを一定に保つ電
磁式の制御弁41が設けられている。電磁弁41は細長い筒
状をなしており、その軸線を導入管30の管軸方向に沿わ
せた姿勢で上記スロットルボデー38の上面に設置されて
いる。また、このスロットルボデー38にはスロットル弁
37の開度を検出するセンサ42やスロットル弁37を閉じ方
向に付勢するリターンスプリング43が設けられている。

一方、上記サージタンク18a,18bの外側面45は、第１
図に示すように各シリンダヘッド12a,12bのヘッドカバ
ー13a,13bよりも内側に位置している。この外側面45は
略鉛直方向に沿う吸気分配管22の縦管部24の周面に一直
線状に連なっており、これらサージタンク18a,18bの外
側面45および縦管部24の周面よりも外側に張り出すシリ
ンダヘッド12a,12bの側面に、吸気口14に連なる燃料噴
射弁46が取付けられている。燃料噴射弁46は縦管部24に
沿うように略直立しており、この燃料噴射弁46の上端部
には燃料供給用のデリバリ管47が接続されている。デリ
バリ管47はサージタンク18a,18bの外側面45に沿って水
平に配置されており、これら燃料噴射弁46およびデリバ
リ管47は、サージタンク18a,18bの外側面45とシリンダ
ヘッド12a,12bのヘッドカバー13a,13bとで挾まれた略Ｖ
字状の空所48に収められている。したがって、燃料噴射
弁46やデリバリ管47は、吸気分配管22によって囲まれた
空間29の外側に位置されている。

なお、燃料噴射弁46を直立させたことに伴い、燃料噴
射弁46の上部は空所48の開口端に近いヘッドカバー13a,
13bの側方に位置しており、ここに開いたスペース部分
に燃料噴射弁46に連なるカプラ49が配置されている。

また、エンジン５をクランク軸７の軸方向に沿う前面
側から見た場合に、Ｖ形を形作る一対のシリンダ列9a,9
bの間には、第10図に示すようにウォータポンプ50と、
交流発電機51が配置されている。これらウォータポンプ
50および交流発電機51はＶベルト52を介してクランク軸
７と連動されている。ウォータポンプ50は一対の吐出口
53と吸入口54を備えており、この吸入口54はラジエータ
４に、また吐出口53は各シリンダ本体11a,11bのウォー
タジャケット（図示せず）に夫々連なっている。

各シリンダ列9a,9bのシリンダヘッド12a,12bには、ウ
ォータポンプ50とは反対側、つまり上記スロットルボデ
ー38側の後面に位置して、ウォータジャケットを通過し
た冷却水の出口55a,55bが開口されている。これら出口5
5a,55bは冷却水戻しハウジング56を介して互いに連通さ
れている。冷却水戻しハウジング56は一方の出口55aに
連なる第１のハウジング57aと他方の出口55bに連なる第
２のハウジング57bとに分割されており、これらハウジ
ング57a,57bの分割端がホース58を介して連結されてい
る。そして、第１のハウジング57aは第２のハウジング5
7bよりも長く形成されており、第２図および第９図に示
すようにフロットルボデー38と、その下方に位置する上
記クラッチハウジングの間を通って一対のシリンダヘッ
ド12a,12bの間に跨がっている。この際、第１のハウジ
ング57aは、スロットルボデー38とクラッチハウジング
との間を通過する部分において、その断面形状が第２図
中想像線で示すように円形から横長の長方形状に変化さ
れており、上記スロットルボデー38とクラッチハウジン
グの間の狭い空間部分を通すための工夫がなされてい
る。

第１のハウジング57aの途中には、サーモスタット60
を収容する収容室61が形成されている。収容室61は第２
図に示すように、スロットルボデー38の一側に偏った位
置に設けられており、この収容室61には配管62を介して
ラジエータ４に連なる戻し口63と、上記サーモスタット
60によって開閉されるバイパス口64が設けられている。
バイパス口64は上記導入管30の下方に導かれており、こ
のバイパス口64の先端はバイパス管65を介して上記ウォ
ータポンプ50の吸入口54に連なっている。バイパス管65
は導入管30の下方を通って、上記空間29の下部をクラン
ク軸７の軸方向に延びており、上記ウォータポンプ50と
バイパス口64とを一直線状に結んでいる。

なお、シリンダブロック６のクラッチハウジング側の
後面には、第11図に示すようにオイルフィルタ67を一体
化した円筒状の水冷式オイルクーラ68が設けられてお
り、この水冷式オイルクーラ68はクランク軸７の軸方向
に延びている。

このような構成によれば、一対のサージタンク18a,18
bから導出された８本の吸気分配管22で囲まれる空間29
に、エアクリーナ40からの新気をサージタンク18a,18b
に導く導入管30を配置したので、導入管30がサージタン
ク18a,18bや吸気分配管22の外方に大きく突出すること
はなく、エンジン５の吸気系回りをコンパクト化するこ
とができる。

また、吸気分配管22はサージタンク18a,18bから略水
平に延びた後、吸気口14に向って略鉛直方向に延びる形
状をなしているため、この吸気分配管22で囲まれる上記
空間29が略四角形状となり、この空間29の容積を充分に
確保することができる。その上、吸気口14に連なる燃料
噴射弁46やデリバリ管47は、サージタンク18a,18bの外
側面45とヘッドカバー13a,13bとの間の空所48に収容さ
れるために、これら燃料噴射弁48やデリバリ管47によっ
て上記空間29の一部が専有されることもなく、この空間
29内に挿通される導入管30の周囲に広いスペースを確保
することができる。

このため、導入管30の配置を無理なく行なえるので、
この導入管30の管径が制約されたり、急激な曲げが生じ
ることもなく、その分、導入管30の形状が滑らかなもの
となって、吸気抵抗を少なく抑えることができる。

また、本実施例のように、燃料噴射弁46を略鉛直方向
に配置して、この燃料噴射弁46をサージタンク18a,18b
の外側面45と略平行に配置すれば、サージタンク18a,18
bを始めして、吸気分配管22の縦管部24をデリバリ管47
に極力近づける、つまり外側にずらすことができる。こ
のため、吸気分配管22で囲まれる空間29をより広くする
ことができ、導入管30を無理なく配置する上で好都合と
なる。

なお、上記実施例では、導入管を吸気分配管によって
囲まれる空間内で分岐したが、例えば導入管を空間の外
側で分岐して、これら一対の分岐部を互いに平行をなし
て上記空間内に導いても良い。

また、上記実施例では、吸気分配管の水平部とサージ
タンクとを一体に鋳造成形したが、例えばこれら両者を
別部品として着脱可能に接続しても良い。

［発明の効果］ 以上詳述した本発明によれば、導入管がサージタンク
や吸気分配管の外方に大きく突出せずに済むので、エン
ジンの吸気系回りをコンパクト化することができる。

しかも、空間自体が略四角形状となって、その容積を
充分に大きく確保できるとともに、燃料噴射弁やデリバ
リ管によって空間の一部が専有されてしまう虞れもなく
なり、導入管の回りに広いスペースを確保することがで
きる。したがって、導入管の配管を無理なく行なえるか
ら、この導入管の管径が制約されたり、急激な曲げが生
じることもなく、その分、吸気抵抗を少なく抑えて吸入
効率を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例を示し、第１図はサージタンク
回りの断面図、第２図はサージタンク回りの平面図、第
３図は第２図中III−III線に沿う断面図、第４図は導入
管の平面図、第５図は第４図中Ｖ−Ｖ線に沿う断面図、
第６図は第２図中VI線方向から見た矢視図、第７図はシ
リンダブロックの正面図、第８図はエンジン全体の平面
図、第９図はエンジン全体の後面図、第10図はエンジン
全体の正面図、第11図はエンジン全体の側面図、第12図
はエンジンルームの平面図である。 ７……クランク軸、9a,9b……シリンダ列、10……気
筒、14……吸気口、18a,18b……サージタンク、22……
吸気分配管、23……水平管部、24……縦管部、29……空
間、30……導入管、40……エアクリーナ、46……燃料噴
射弁、47……デリバリ管、48……空所。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】複数の気筒をクランク軸の軸方向に並設し
   てなる一対のシリンダ列をＶ形に配置し、これら各シリ
   ンダ列の相対向する側面に各気筒に連なる吸気口を設け
   るとともに、この吸気口の上方にクランク軸の軸方向に
   沿って延びるサージタンクを配置し、これら一対のサー
   ジタンクの互いに対向する側面に、相対向するサージタ
   ンクの下方の吸気口に連なる複数の吸気分配管を接続し
   たＶ形エンジンにおいて、 上記吸気分配管は、一対のサージタンクの間を略水平に
   延びる水平管部と、この水平管部の下流端部から吸気口
   に向って上下方向に延びる縦管部とを備え、これら吸気
   分配管によって囲まれる空間に、エアクリーナからの新
   気をサージタンクに導く導入管を配置するとともに、上
   記サージタンクの外側面とシリンダ列とで挾まれた空所
   に、上記吸気口に連なる燃料噴射弁と、この燃料噴射弁
   に燃料を供給するデリバリ管を配置したことを特徴とす
   るＶ形エンジンの吸気装置。