JP2729289B2 - 亀裂のない熱分解窒化硼素を炭素構造体上に形成する方法及び該方法から得られた物品 - Google Patents

亀裂のない熱分解窒化硼素を炭素構造体上に形成する方法及び該方法から得られた物品

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の分野 本発明は、特に、窒化硼素のコーティングを炭素−炭
素複合材料上に形成して高温での酸化保護を提供する改
善された方法及びその方法によって形成された物品に関
する。
炭素−炭素複合材料は、高温で高強度及び高靭性を有
するので、大気及び宇宙空間の用途に重要な材料であ
る。しかしながら、炭素−炭素複合材料は酸化に対して
敏感であるのでその使用は現時点では制限されている。
酸化保護は、炭素−炭素複合材料の表面上に耐酸化性の
ある保護層を蒸着することによって与えられ得る。好ま
しい材料は窒化硼素である。
従来、化学気相法により窒化硼素コーティングを形成
するすべての試みは炭素−炭素複合材料支持体の熱膨張
よりも実質的に高い熱膨張を有するコーティングをもた
らしていた。従来の熱分解法により蒸着した窒化硼素の
コーティングは代表的な炭素−炭素複合材料の熱膨張の
3倍程の熱膨張を有する。熱膨張の不整合は、蒸着温度
から室温に戻るときに、窒化硼素コーティングに亀裂を
生じる。
本発明の方法は、炭素−炭素複合構造物上に「亀裂の
ない」熱分解窒化硼素コーティングを生じて、800℃ま
でそしてそれ以上の温度で該複合材料構造物の酸化保護
を提供する。本発明において、「亀裂のない」とは炭素
−炭素複合材料に空気を侵入させる横断面の亀裂(cros
s plane crack)が実質的にないコーティングを意味す
る。蒸着面に平行な亀裂の存在は、かかる横断面の亀裂
を伴わなければ深刻ではない。従って、蒸着面を横断す
る方向に貫通する亀裂が実質的に存在しなければコーテ
ィングは「亀裂がない」とみなされる。
発明の要約 炭素−炭素複合材料構造上に熱分解室窒化硼素の亀裂
のないコーティングを製造する本発明の方法は、上記炭
素−炭素複合材料構造物をアンモニア及びガス状ハロゲ
ン化硼素の蒸気に、かかる蒸気を含む調節された雰囲気
中で接触してそしてかかる雰囲気を1500℃〜1700℃の温
度範囲内で維持することを含む。
図面の簡単な説明 本発明の利点は、以下の本発明の詳細な説明を添付図
面とともに読むことによって明らかになろう。
図1は本発明に従う炭素−炭素複合材料上に蒸着され
た窒化硼素コーティングの熱膨張曲線と、市販用の熱分
解窒化硼素(PBN)コーティング及び該窒化硼素コーテ
ィング複合材料が形成される炭素−炭素支持体の両方の
熱膨張曲線とを比較するグラフである。
図2はコーティングを防水性にするための本発明の方
法の改良型に従って蒸着された窒化硼素コーティングの
熱膨張曲線を示す。
発明の詳細な説明 従来の炭素−炭素複合材料は、炭素繊維の織布または
不織布と該炭素繊維に直接結合されて単位構造を形成す
る炭質材料から構成された材料である。炭素−炭素複合
材料は、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を
炭化して、炭素繊維から形状化された支持体を形成し、
そして熱分解炭素のような熱分解材料を炭素繊維上に蒸
着することによって得られる炭素繊維の織布である。炭
素の蒸着は、典型的には、炭化水素ガスを、炭素繊維支
持体を含む炉中に、該ガスを炭素繊維の表面で分解且つ
炭化させる条件下で導入することによって実行される。
本発明は、下層の炭素−炭素複合材料構造物の熱膨張
率に整合するように調整された熱膨張を示す熱分解窒化
硼素コーティングを炭素−炭素複合材料上に形成する新
規に見出された方法に関する。熱分解窒化硼素は、耐酸
化性を下層構造にもたらし、それは大気及び宇宙空間に
おいて使用するための炭素−炭素複合材料用に理想的な
コーティングとなる。しかしながら、通常の熱分解窒化
硼素コーティングは室温から1500℃の温度範囲に渡って
約0.4〜0.5%の熱膨張率を有している。炭素−炭素複合
材料は同じ温度範囲にて約0.13〜0.17%の代表的な熱膨
張率を有する。それゆえ、炭素−炭素複合材料上に従来
の慣行に従って形成された熱分解窒化硼素コーティング
は下層の炭素−炭素複合材料に対して実質的に一層高い
熱膨張を有し、それは冷却の際にコーティングに亀裂を
生じる。
それ自体で独立している構造物上に熱分解窒化硼素コ
ーティングを形成する従来の方法は米国特許第3152006
号に詳細に記載されており、これを援用して本文の記載
の一部とする。熱分解窒化硼素は以下の反応に従って三
塩化硼素とアンモニア蒸気の熱分解によって生じる。
NH3+BC13→BN+3HC1 反応温度は1450℃〜2300℃にし得、好ましい温度範囲
は1850〜2200℃である。該方法は、上記特許に記載され
たように、通常1850℃〜1950℃の蒸着温度で実行され
る。
本発明に従えば、熱分解窒化硼素コーティングは、室
温から1500℃の温度範囲に渡って0.14〜0.32%の低熱膨
張率、従って炭素−炭素複合材料の代表的な熱膨張率に
近い低熱膨張率を有して炭素−炭素複合材料構造物上に
形成され得る。本発明の方法を実行するには、米国特許
第3152006号に教示され且つ記載されたように、慣用の
真空炉を用い得る。しかしながら、本発明の方法は、15
00〜1700℃の臨界的な範囲にありそして好ましくは約16
50℃の蒸着温度を必要とする。この臨界的な温度範囲内
において、窒化硼素の均一なコーティングが下層の炭素
−炭素複合材料の熱膨張率に近い極めて低い熱膨張率を
有して形成されることは全く予期されない。また、本発
明に従い、窒化硼素コーティングの蒸着の間の雰囲気温
度を1800℃未満の温度に調節してコーティングと炭素ま
たはグラファイト構造物との間の整合した熱膨張率を提
供することによって、炭素または−グラファイト構造物
上に十分に結合した向上された窒化硼素コーティングを
形成することが出来ることを見出した。
図1のグラフは、従来の慣行に従って形成された代表
的な熱分解窒化硼素コーティングAと本発明の方法に従
って形成された熱分割窒化硼素コーティングBの熱膨張
率の比較を0〜1500℃の温度範囲に渡って示す。高い面
内強度及び適度に高いヤング率、すなわち、10〜20×10
6psiを有する代表的な炭素−炭素複合材料Cの同じ温度
範囲に渡る熱膨張曲線も図示する。熱分解窒化硼素コー
ティングBの熱膨張曲線は炭素−炭素複合材料Cの熱膨
張曲線と、1500℃にて、0.1%未満の熱膨張率の差でぴ
ったりと整合している。これは、熱分解窒化硼素コーテ
ィングが、蒸着温度にて応力が残留しておらず、室温に
冷却したときに0.1%未満の引張歪しか受けないことを
意味する。該コーティングの熱膨張率は炭素−炭素複合
材料の熱膨張率とほとんど整合しているので、良好なコ
ーティング/支持体の接着が得られる。さらに、良好な
コーティングの接着には特別な表面の調整は不要であ
る。
熱分解窒化硼素コーティングは、本発明に従って、コ
ーティングされる炭素−炭素支持体を、真空容器内の抵
抗または誘導コイルによって電気的に加熱することがで
きる”ホットウオール(hot wall)”蒸着容器、好まし
くはグラファイト製の蒸着容器内に配置することによっ
て形成される。炭素−炭素支持体は蒸着容器内で固定支
持または回転支持されてもよい。蒸着炉を脱気し、蒸着
容器を1500〜1650℃の均一な温度に加熱する。所望の温
度に達すると、窒素で希釈しまたは希釈していない三塩
化硼素及びアンモニアを蒸着容器に計量導入して熱分解
窒化硼素(PBN)の成長が始まる。反応ガス流量、蒸着
時間及び他のプロセス変数によって調節しながら、コー
ティングが所望の厚さに達した後に、実施を終えて、コ
ーティングした炭素−炭素複合材料を取り出す。コーテ
ィング操作を繰り返して空隙を充填する。本発明に従っ
て形成されたすべてのPBNコーティングは六方晶系結晶
構造を有し1.75〜1.90g/ccの密度を有する。
以下に本発明の実施例を示す。
例1 8つの炭素−炭素複合材料をグラファイト製の棒材上
に置きそして直径6.5インチ、長さ12インチのパイロッ
トプラントサイズのCVD容器中に配置した。この系を脱
気したステンレス鋼製の真空容器内に置き、次いで容器
を1650℃に加熱した。アンモニア及びBC13をモル比4.0:
1.0で蒸着容器中に供給して、PBNの成長を開始した。反
応を、300ミクロンHgの圧力で270分間実行した。炉を冷
却した後、PBNが被覆された炭素−炭素複合材料を取り
出して、秤量して、そしてコーティングの厚さを同様の
蒸着条件下で作製した初期のPBNコーティングに基づい
て仮定したコーティング密度1.80g/ccにより見積もっ
た。この第1の試験によるコーティングされた複合材料
をひっくり返して、再び蒸着容器内に置いて第2のコー
ティングをして第1の試験でグラファイトの支持体と接
触していた小領域を密封した。第2のコーティングを16
50℃及び400ミクロンHgにて285分間実行した。
これらの二つの試験からのPBNコーティングは、一層
高温でできたコーティングよりも半透明であり、ほとん
どのコーティングは目に見える亀裂はないことがわかっ
た。これらのPBNコーティングの平均密度は約1.8g/ccで
あり、そいて蒸着面に平行な膨張率は1500℃までで0.32
%であることがわかった。この膨張率は、まだ、CTE炭
素−炭素複合材料の最も低い膨張率よりも約0.15%高い
けれども、PBNの他の特性、例えば、一層低いモデュラ
ス(一層高い温度で作製されたコーティングに比べて、
コーティング温度と室温との一層小さい温度差)は亀裂
のないコーティングをもたらすに重要である。
例2 この例は、例1の条件の規模を拡大したものであり、
直径17インチ、長さ27インチの蒸着容器を用いて一回の
実施で、各々約12×29cm×2〜3mmの3対の炭素−炭素
複合材料プレートを被覆する。これらのプレートを、30
0ミクロンの圧力及びNH3/BC13モル比3.6を用いて1650℃
にて被覆した。適当なコーティング厚は17〜21ミルの範
囲であった。規模拡大は、12の被覆面のうち11が亀裂が
なかった点で成功であった。コーティングのひとつの熱
膨張曲線を曲線Bとして図1に図示した。PBNコーティ
ングの熱膨張は被覆される複合材料の熱膨張により影響
されたかもしれない。複合材料は、1500℃までで0.12%
の熱膨張率を有し、そしてこの複合材料上のPBNコーテ
ィングは1500℃までに0.2%膨張した。図1に示さなか
った他の材料は1500℃まで加熱した際に約0.16%膨張
し、そしてその上のPBNコーティングは1500℃までに0.2
8%膨張した。両方の場合において、PBNコーティング
は、PBNコーティングは室温にて約0.1%の残留歪みを有
する。
本発明に従って、蒸着した窒化硼素コーティングは、
1750℃より高く2000℃までの温度でコーティングをアニ
ールし、好ましくはアニールにより生じる寸法変化を最
小にすべく約1800℃〜1900℃の温度でアニールする追加
工程によって、別途コーティング性能に悪影響を与える
ことなく、耐水性にすることができることが見いだされ
た。この追加の工程は水の反応に対する感受性を減じ
る。以下の例は、水分の攻撃に対するコーティングの抵
抗性を具現化する。
例3 各々、約75×25×2〜3mmの二つの炭素−炭素複合棒
材を、一端近傍の小孔及び水平の支持棒を用いて設置し
て、次いで、これらの棒材を例1及び2のパイロットプ
ラントサイズのCVD反応器を用いてPBN被覆した。試料
を、NH3:BC13モル比3.8を用いて1650℃及び500ミクロン
Hgにて270分間被覆し、次いで炉が10分間で1900℃に加
熱されそしてさらに25分間1900℃に維持されている間に
被覆を続けた。外側のコーティングは一層典型的な高温
PBN蒸着であったけれども、試験例第8904番からの蒸着
の大部分は、構造上、アニールしていない1650℃の蒸着
と同様であった。FWHM002は67゜であり、中間層間隔c0/
2は、代表的なターボストラチック(turbostratic)PBN
蒸着を示す3.4Åであった。FWHM002は、X線(002)配
向分布の半値幅であり、そして、例えば、A.W.ムーア
(Moor)らのJouranl of Applied Physics、第65巻、51
09頁、1989年に定義されたように、PBN蒸着における結
晶の好ましい配向の尺度である。この亀裂のないコーテ
ィングの熱膨張率は、支持体及び位置に依存して、1500
℃にて0.14〜0.27%であることが測定された。この熱処
理したコーティングは、アニールしていない1650℃のPB
Nコーティングとは異なり95〜100℃での水との反応に対
して抵抗性を示した。
例4 例3で記載したように設置した2つの炭素−炭素複合
棒材を、NH3:BC13モル比3.7を用いて、1650℃及び520ミ
クロンHgにて300分間被覆した。次いで、PBN被覆複合材
料をさらにコーティングすることなく2000℃にて30分間
に渡って加熱した。アニールしたコーティング(試験89
06)は亀裂がないだけでなく、95〜100℃の水の攻撃に
も抵抗性を有していた。アニールしたコーティングのひ
とつを図2に曲線Dとして図示する。このコーティング
からの試料は61〜72゜の好ましい配向FWHM002を有して
おり、中間層間隔は、ターボストラチックPBNに代表さ
れる3.41〜3.43Åであった。密度は1.83〜1.96g/ccに渡
ることが測定され、1500℃までの膨張率は0.20%であ
り、下層のCTE炭素−炭素複合材料と適合する極めて満
足な値であった。曲線Eは、CTE炭素−炭素複合材料の
低熱膨張率を示す。
図2より、追加のアニール工程は熱膨張に悪影響を及
ぼさないことがないことが確認される。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素又はグラファイト構造物上に熱分解窒
    化硼素の亀裂のないコーティングを形成する方法であっ
    て、炭素又はグラファイト構造物を反応容器の熱壁炉室
    内に置き、炉室内の雰囲気を1,500〜1,700℃の間の均一
    温度に加熱し、炉室にアンモニア及びガス状ハロゲン化
    硼素の反応体蒸気を導入して炭素又はグラファイト構造
    物上に六方晶系結晶構造及び室温から1,500℃の温度に
    わたって0.14〜0.32%の熱膨張を示す窒化硼素のコーテ
    ィングを付着させ、ここで該炭素又はグラファイト構造
    物は前記温度範囲にわたって0.13〜0.17%の熱膨張を示
    すものであり、そして付着操作を通してかかる雰囲気を
    1,500〜1,700℃の前記温度範囲内に維持することを含む
    熱分解窒化硼素コーティングの形成方法。
  2. 【請求項2】炭素構造物が炭素−炭素複合構造物である
    請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】温度が約1,650℃に維持される請求項1記
    載の方法。
  4. 【請求項4】熱分解窒化硼素のコーティングを約1,750
    〜2,000℃の温度でアニールする工程を更に含む請求項
    1記載の方法。
  5. 【請求項5】アニール温度範囲が約1,800〜1,900℃であ
    る請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】室温から1,500℃の温度範囲にわたって約
    0.13〜約0.17%の熱膨張を示す炭素−炭素複合体下部構
    造物と、上部構造を構成する窒化硼素の一体的に結合さ
    れたコーティングとを有する物品であって、かかる窒化
    硼素コーティングは六方晶系結晶構造及び実質上同じ熱
    膨張特性を有し、そして炭素−炭素複合体構造物にアン
    モニア及びガス状窒化硼素の蒸気をかかる蒸気の雰囲気
    中において1,500〜1,700℃の温度範囲内で接触させる方
    法によって形成されたものである物品。
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