JP2713828B2 - 核燃料再処理溶解液から有価金属を回収する方法 - Google Patents

核燃料再処理溶解液から有価金属を回収する方法

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博 森島
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  • Manufacture And Refinement Of Metals (AREA)
  • Electrolytic Production Of Metals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、使用済核燃料中のウ
ランおよびプルトニウムを回収する際に調製される使用
済核燃料の硝酸溶解液中に含まれる白金族元素や銀とい
った有価金属を回収する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の再処理ピューレックスプロセス
は、使用済核燃料から高品位のウランおよびプルトニウ
ム製品を得ることを目的としている。すなわち、使用済
核燃料を硝酸に溶解する溶解工程、およびこの硝酸溶解
液から不溶解残渣を除去する清澄工程および硝酸溶解液
の硝酸濃度およびウラン、プルトニウムの濃度を調整す
る調整工程を経た後、TBPを抽出剤とする溶媒抽出工
程(共除染工程)によりウランおよびプルトニウムと核
分裂生成物との分離精製を行い、ウランおよびプルトニ
ウムは有機溶媒相に抽出し、大部分の核分裂生成物は硝
酸水相へ逆抽出させて高放射性廃液(HAW)として除
去される。一方、硝酸溶解液中に含まれる白金族元素や
テクネチウムなどの一部易抽出性の錯体は溶媒抽出され
るため、抽出器を多段に並べた抽出サイクルを多重化す
ることによって必要な除染係数が得られる。このように
して使用済核燃料の硝酸溶解液に含まれる白金族元素や
テクネチウム、銀などの有価金属元素類イオンはその他
の核分裂生成物と共に高放射性廃液として硝酸溶解液か
ら分離除去され、清澄工程で除去された不溶解残渣(ス
ラッジ)とともにガラス固化される。一方、有機溶媒相
に抽出されたウランとプルトニウムは分配工程において
ウランとプルトニウムとに分離され、それぞれウラン精
製工程およびプルトニウム精製工程を経てウラン製品お
よびプルトニウム製品とされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、大部
分の核分裂生成物は硝酸水相へ逆抽出されて容易に除去
されるが、白金族元素イオンは硝酸溶解液中で種々の錯
イオンを形成しており、特にルテニウムについては数十
%の割合で存在するトリニトラトニトロシル錯体がTB
Pに対して極めて易抽出性であるため所定のウランおよ
びプルトニウム製品純度を得るためには、抽出サイクル
を多重化し繰り返し除染せざるを得ないのが現状であ
る。またパラジウムはTBPに対する抽出性は低いもの
の、分配工程で使用する還元剤の多くと沈殿を生成した
り、劣化した希釈剤と錯化して抽出工程や希釈剤洗浄工
程でクラッドを生成し、円滑な溶媒抽出操作を阻害す
る。かような白金族元素は化学試薬を用いて化学反応に
よってもある程度除去することは可能であるが、二次的
な廃棄物が発生するという新たな問題を生じさせる。
【0004】このように白金族元素はピューレックスプ
ロセスを妨害する核種であるが、一方では有価であり資
源戦略上も極めて価値の高い金属である。使用済核燃料
の硝酸溶解液中には白金族元素の他にもテクネチウムや
希土類元素等有価な金属イオンが多量に混在している。
ちなみに中燃焼度程度の使用済核燃料1トン当たりに含
まれる白金族元素、銀およびテクネチウムは計算上約4
Kgを超える。このうち白金族元素やテクネチウムは不
溶解残渣としても存在するため、イオンとしての存在量
は計算よりも少ないが、これらは極めて強い放射能と共
存しているため、未だ効果的分離回収法は確立されてい
ない。
【0005】そこでこの発明は、使用済核燃料の硝酸溶
解液中に含まれる白金族元素や銀といった有価金属を、
化学試薬等を使用することによる二次的廃棄物の発生を
回避して、効果的に回収できる方法を提供することを目
的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ちこの発明による核燃
料再処理溶解液から有価金属を回収する方法は、使用済
核燃料の硝酸溶解液を定電位電解することによってカソ
ード電極に白金族元素および銀を析出させ、次いでこの
カソード電極を陽極に分極することによって析出した白
金族元素および銀を再溶解させて回収することを特徴と
するものである。
【0007】図1はこの発明の実施例を示すフローシー
トであり、再処理ピューレックスプロセスの清澄工程か
らの硝酸溶解液を並列に組み込んだ2つの電解槽を有す
るシステムで電解して有価金属の回収を行った後、この
硝酸溶解液をピューレックスプロセスの共除染・分配工
程へ送るものである。
【0008】すなわち清澄工程からの使用済核燃料の硝
酸溶解液は一旦タンク1に貯蔵したのち、流路切替え手
段(図示せず)により電解槽10へ導き、ここで電解電
位調節用のポテンショスタット11により一定時間還元
電解を行ってカソード電極上に有価金属を析出させる。
電解槽10から流出させた処理液はタンク12に送られ
析出操作時間の目安とするためにサンプリング装置13
でサンプリングして液組成を測定される。所定の有価金
属を析出・除去した硝酸溶解液は、ピューレックスプロ
セスの共除染・分配工程へと送られる。
【0009】一方、既に所定の還元電解を終了してカソ
ード電極上に有価金属を析出させた電解槽20へは、流
路切替え手段(図示せず)により硝酸タンク2から硝酸
溶液を供給し、ポテンショスタット21によりカソード
電極をアノード電極に分極してこの電極上の析出物を脱
着するための酸化電解操作を行う。脱着処理された有価
金属イオンを含む硝酸溶液はタンク22に送られ脱着操
作時間の目安とするためにサンプリング装置23でダン
プリングして液組成を測定される。
【0010】かくして電解槽10での析出操作、電解槽
20での脱着操作を一定時間行った後は、流路切替え手
段(図示せず)によりタンク1からの使用済核燃料の硝
酸溶解液を電解槽20へ、硝酸タンク2からの硝酸溶液
を電解槽10へ供給し、それぞれ逆の操作を行い、以
後、これらの操作を各電解槽10、20で繰り返すこと
によりピューレックスプロセスの共除染・分配工程の前
処理工程を連続的に行うことができる。電解槽で電極か
ら脱着された有価金属を含む硝酸溶液から有価金属を回
収した後の硝酸溶液は回収され、硝酸タンク2へリサイ
クルされる。なお図中の番号14,24は電位制御用参
照電極を示す。
【0011】電解槽で使用するアノードおよびカソード
材は、電解精製で頻繁に用いられる白金などの貴金属で
ある必要はなく、チタンやタンタル等を用いることもで
きる。また、カソード材はTi及びTaが好ましいが、
析出金属を脱着させるときの条件によっては、ステンレ
ス鋼などの安価なものも使用できる。カソード材として
304ステンレス鋼を用いた試験では、パラジウムおよ
び銀に関して80%以上の回収率が得られている。ま
た、カソード電極の表面積は析出反応率と比例的な関係
があるので、網状にするなどして表面積を増大する形状
が有利となる。
【0012】従来の硝酸溶解液からのパラジウムの回収
の電解条件としては、硝酸濃度は低くなければならなか
ったが、この発明においては使用済核燃料再処理の硝酸
溶解液の硝酸濃度に近い2.5Nといった高濃度の条件
での回収が可能である。パラジウムは、核燃料再処理の
硝酸溶解液程度の酸濃度では約0.4V付近から析出し
始めるが、電位をあまり卑側に分極すると他の還元反
応、例えば水素発生などが障害となるので、約0.1か
ら0.2V程度がパラジウムを析出回収するには最適な
電位である。
【0013】脱着操作時の電位は、析出金属が溶解され
る電位であれば決まった値である必要はないが、電極表
面からの酸素発生は析出物を剥がす効果もあるので、電
極表面が酸化膜に覆われない程度の電位の酸素発生電位
に設定することが望ましい。3.0N程度の硝酸溶液中
では、パラジウムの溶解電位はおよそ1.2〜1.3V
である。
【0014】
【実施例】使用済核燃料の硝酸溶解液に含まれる核分裂
生成物濃度を約10倍に濃縮した模擬硝酸溶解液を、図
2に示したような試験用電解装置を用いて定電位電解を
行った。図2において、電解セル30は500ml容量
のガラス製蓋付反応槽を使用し、電解セル内に収容した
模擬硝酸溶解液は電磁スターラー31を用いて約150
rpmで攪拌し、液温を21.0〜29.7℃に保っ
た。作用電極32として平板のSUS304、対象電極
33として白金線(直径1mm)、参照電極34として
飽和カロメル電極をそれぞれ用いた。なお、参照番号3
5は温度センサー、36は塩橋を示す。試験は模擬硝酸
溶解液を、電位制御装置であるレコーダー付きポテンシ
ョスタット37を用いて24時間、一定電位で電気分解
を行った。試験後、模擬溶解液中に含まれる金属元素濃
度および電極表面上に析出した金属元素および電解セル
の底に沈殿した金属元素を濃硝酸を用いて溶解した溶解
液中の金属元素濃度を分析し、これらの結果から目的金
属の回収率を求めた。
【0015】実施例1:模擬硝酸溶解液からのパラジウ
ム、銀イオンの電解析出法による同時回収 電解条件および回収率の結果を表1に示す。
【0016】 表1 溶 解 液 充填率 電解条件 回収率 金属元素 酸濃度 表面積/容量 電解電位 [N] [cm -1] [V vs SCE] [%] Pd 2.5 0.019 +0.2 84.8 Ag 2.5 0.015 −0.2 81.7 Ru 2.5 0.019 −0.2 4.2 Rh 2.5 0.019 −0.2 2.1 Zr 2.5 0.019 0.0 0.4 Mo 2.5 0.019 0.0 0.5
【0017】表1の結果からわかるように、パラジウム
および銀を極めて効率的に分離回収することができる。
パラジウム以外の白金属元素であるルテニウムおよびロ
ジウムは、この電解条件ではほとんど回収されない。ま
た、白金属元素以外の模擬溶解液中に含まれるモリブデ
ンおよびジルコニウムなどの元素もこの電解条件では回
収されない。従ってこの操作方法を用いることにより、
模擬溶解液中から極めて選択的にパラジウムと銀を析出
回収することができる。なお、ウランイオンが共存する
場合でも、回収率は若干低下するが析出物の選択性に変
化はない。
【0018】実施例2:模擬溶解液からのパラジウム、
銀イオンの電解析出法による分離回収 電解条件および回収率、分離率の結果を表2に示す。
【0019】 表2 溶 解 液 回収率/分離率 金属元素 酸濃度 電解電位 −0.2 0.0 +0.2 [N] [V vs SCE] Pd 2.5 80.1 82.6 84.8 Ag 2.5 81.7 81.5 65.6 Ag/Pd 1.02 0.987 0.774
【0020】表2の結果から、電解電位を変化させるこ
とによりパラジウム/銀の析出組成率を操作することが
可能であることがわかる。これは、パラジウムと銀の析
出電位が異なる理由から生じているものと考えられる。
またこれらの析出電位はその他の電解条件、例えば溶液
の酸濃度を調節したり、どちらかの金属イオンの析出を
妨げるような共存イオンを添加するなどにより、さらに
パラジウム/銀の分離率を広範囲で操作させることも可
能と思われる。
【0021】
【発明の効果】以上説明したところからわかるように、
この発明によれば使用済核燃料の硝酸溶解液に含まれる
パラジウム(白金族元素)や銀などの有価金属を電気化
学的方法により効果的に回収することができる。これら
の金属は、従来の再処理ピューレックスプロセスにおい
ては他の核分裂生成物と共に廃棄物として処理されてい
るが、これらを回収することにより有価金属として価値
を持たせることができる。その結果、有価金属の回収は
ピューレックスプロセスに新たな付加価値を加味するこ
ととなり、核燃料サイクル全体のコストダウンにも寄与
する。
【0022】一方、使用済核燃料の硝酸溶解液中に含ま
れるパラジウムはピューレックスプロセスにおける溶媒
抽出工程の円滑運転を妨害する核種の1つである。さら
にルテニウムは設計上主分離プロセス全体の除染性能お
よび抽出サイクルの数を決定する支配的核種である。こ
の発明によれば使用済核燃料の硝酸溶解液中のこれらの
白金族元素を電気化学的方法によって除去回収できるか
ら、ピューレックスプロセスにおける除染性の向上に寄
与できることになり、結果として抽出サイクル数の削減
を図ることが可能となる。
【0023】さらにまた、使用済核燃料の硝酸溶解液か
らの白金族元素や銀の回収は化学試薬を用いてもある程
度可能であろうが、この発明におけるように電気化学的
方法を適用することによって、二次的な廃棄物の発生を
防ぐことができ、工程が簡単になり、安全である等の種
々の点で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の方法の実施例を示すフローシートで
ある。
【図2】この発明で使用する実験用電解装置の例を示す
説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小泉 健治 茨城県那珂郡東海村大字村松4番地33 動力炉・核燃料開発事業団 東海事業所 内 (56)参考文献 特開 昭62−172298(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 使用済核燃料の硝酸溶解液を定電位電解
    することによってカソード電極に白金族元素および銀を
    析出させ、次いでこのカソード電極をアノード電極に分
    極することによってこの電極に析出した白金族元素およ
    び銀を再溶解させて回収することを特徴とする、核燃料
    再処理溶解液から有価金属を回収する方法。
  2. 【請求項2】 前記定電位電解における電解電位を変化
    させることにより白金族元素/銀のカソード電極での析
    出組成率を制御することを特徴とする請求項1記載の核
    燃料再処理溶解液から有価金属を回収する方法。
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