JP2713171B2 - 金属材料の劣化検査装置 - Google Patents

金属材料の劣化検査装置

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JP2713171B2 JP6158357A JP15835794A JP2713171B2 JP 2713171 B2 JP2713171 B2 JP 2713171B2 JP 6158357 A JP6158357 A JP 6158357A JP 15835794 A JP15835794 A JP 15835794A JP 2713171 B2 JP2713171 B2 JP 2713171B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、劣化検査装置に係り、
特に、化学プラント及び原子力プラント等の高温環境下
で使用される含フェライト系ステンレス鋼等の金属材料
の実機部材における高温時効脆化損傷の検知に好適な測
定装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来の脆化測定方法の例としては、特開
昭54−61981号公報、特開昭61−28859号
公報に記載のような方法がある。この内特開昭54−6
1981号公報では、オーステナイト系ステンレス溶接
金属の脆化の有無を初期のδフェライト量が5%以上減
少したことで判定するとしてある。◆特開昭61−28
859号公報は、被測定体の磁気特性の変化によって劣
化を検知する方法を提案する。 【0003】尚、この他に測測定体の磁気特性を利用し
てその組織状態を監視する方法として特開昭56−16
8545号公報記載の技術が、また磁気特性自体の検知
に関するものとして特開昭59−108970号公報記
載の技術が、夫々提案されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記特開昭54−61
981号公報記載の従来技術では、高温で使用される金
属材料の内で、特に、含フェライト系ステンレス鋼を例
にとれば、高温長時間の使用により時効脆化を起こすこ
とが、すでに知られている。これは、およそ600℃以
上の比較的高温においては、σ相の析出に起因するσ脆
化が生じ、また、400℃から500℃の範囲では、い
わゆる475℃脆化が生じることによる。しかし、47
5℃脆化は、400℃以下の温度範囲においても長時間
使用中に生じうる可能性があり、含フェライト系ステン
レス鋼の実機部材の高温での使用には十分の配慮が必要
である。 【0005】しかしながら、上記従来技術は、500℃
以下の脆化については配慮されておらず、475℃脆性
の程度を検出できなかった。◆また、実機溶接部の初期
フェライト量は溶接位置で異なり、ばらつきも大きい。
さらに、実機では、溶接箇所が膨大であるため、全部の
溶接部及び機器材料の初期フェライト量を全て監視する
ことは困難である。すなわち、従来技術は、初期フェラ
イト量が不明な箇所には適用できないため、実機で実用
化できないという問題があった。 【0006】一方、渦流検査法(Eddy Curre
nt Test Method 以下ECTという)の
例としては、特開昭55−141653号公報記載の技
術がある。この従来例は、被測定材のECT値と使用前
の被測定体、あるいはそれと同種材質の材料を被測定体
の初期熱処理と同様の熱処理を施したもののECT値を
比較し、その値が正か負かによって鉄基合金の劣化状態
を判定する方法を示している。 【0007】しかし、正負によって判定するのみである
から、定量的な測定はできなかった。 この他、特開昭
61−28859号公報提案の技術では、磁気特性の初
期値を測定しておく必要があり、特開昭59−1089
70号、同56−168545号各公報提案の技術は単
に材料特性の測定に止まり劣化検知には流用できない。 【0008】本発明の目的は、高温環境下で使用する含
フェライト系ステンレス鋼等の金属材料の実機部材の脆
化の程度を非破壊的にかつ精度良く検知できる装置を提
供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記目的は、材料の時効
劣化に伴って変化する材料の磁気的な特性を測定するこ
とにより材料の劣化の程度を判定することができる。材
料の磁気特性を示す代表例として挙げ得る磁気ヒステリ
シスの形態は、材料の劣化の程度とよく対応している。
すなわち、この磁気特性の変化から金属材料等の被測定
体の劣化の程度を推定できる。また、重回帰分析等の統
計的データ処理により高い相関で金属材料の劣化の程度
を推定できる。 【0010】被測定体を効率良く励磁するためには、励
磁コイルに超電導材料のコイルを採用することも考えら
れる。◆また、磁界の検出には検出コイルと積分器の代
わりに高精度の磁気測定が可能な超電導量子干渉素子あ
るいは半導体のホール素子の磁気センサ装置を用いて行
うこともできる。 【0011】本願発明の金属材料の劣化検査装置は、非
磁性材料からなる容器と、この容器の内部と外部とを断
熱する断熱材と、前記容器の内部に封入された冷却材
と、前記容器の内部に配設された超電導励磁コイルと、
第1のコイルと第2のコイルを備えており、前記超電導
励磁コイルにより形成される磁場が実質的に均一となっ
ている領域に前記第1のコイルと前記第2のコイルとが
配設された差動コイルと、前記容器の外部から前記第1
のコイルの内部に劣化検査対象である試料を挿入する手
段と、前記容器の外部から前記第2のコイルの内部に前
記試料の劣化検査の基準となる基準試料を挿入する手段
と、磁気シールドされて前記容器の内部に配設されてお
り、前記第1のコイルで検出した前記試料の磁気ヒステ
リシスループ面積と前記第2のコイルで検出した基準材
料の磁気ヒステリシスループ面積との変化分を検出する
超電導量子干渉素子と、この超電導量子干渉素子が検出
した前記磁気ヒステリシスループ面積の変化分から前記
試料の劣化の程度を判定する劣化程度判定手段とを備え
たことを特徴とする。 【0012】 【0013】 【0014】 【0015】(磁場印加手段)代表的な磁場印加手段と
しては励磁コイルが挙げられる。 【0016】(磁気特性)代表的な磁場特性は磁気ヒス
テリシス特性である。◆例えば磁気ヒステリシスループ
の複数パラメータ(磁気ヒステリシスループ面積、残留
磁束密度、飽和磁化等)を検出し、予め求めておいた磁
気ヒステリシスの複数のパラメータの変化と金属材料の
劣化の関係の重回帰分析等の統計的データ処理により前
記被測定体の劣化の程度を判定するデータ処理演算装置
を用いることが有効である。 【0017】また、他の例として、磁気ヒステリシスル
ープの複数のパラメータ(磁気ヒステリシスループ面
積、残留磁束密度、飽和磁化等)を検出して材料の処女
材の状態のばらつきを正規化し、予め求めておいた磁気
ヒステリシスの複数の正規化したパラメータの変化と金
属材料の劣化の関係のデータ処理により前記被測定体の
劣化の程度を判定するデータ処理演算装置を用いること
も有効である。 【0018】(未使用材)本明細書において未使用材と
は当該材料の未使用状態のもの、即ち処女材、受入れ材
を意味する。未使用材(受入材、初期状態)の磁気特性
は例えば初期フェライト量が目安となる。 【0019】(付帯設備)例えば消磁装置が挙げられ
る。即ち測定体を消磁する消磁装置を備え、消磁後に励
磁する励磁力を変えて複数の磁気ヒステリシスループを
求め、起磁力の変化に伴う磁気ヒステリシスループの複
数のパラメータ(磁気ヒステリシスループ面積、残留磁
束密度、飽和磁化等)の変化を検出して、この変化によ
る金属材料の劣化を判定するデータ処理演算装置を用い
ることが有効である。 【0020】また、例えばフィードバック制御型励磁装
置が挙げられる。即ち、測定する磁気ヒステリシスルー
プの最大磁束密度を設定し、励磁する起磁力を高精度に
フィードバック制御して材料の磁気ヒステリシスループ
検出するフィードバック制御型励磁装置を具備すること
が望ましい。 【0021】(演算装置)使用に好適なデータ処理演算
装置の代表例は、磁気ヒステリシスループの形態と金属
材料の劣化度の対応を求めたデータベースにより、測定
した被測定体の磁気ヒステリシスループを正規定し、そ
の形態が最も近いデータベースの磁気ヒステリシスルー
プの劣化度を被測定体の劣化度と判定するデータ処理演
算装置である。より具体的には被測定体の材料の飽和磁
化まで励磁して求めた磁気ヒステリシスループの形態と
金属材料の劣化度の対応を求めたデータベースにより、
測定した被測定体の磁気ヒステリシスループを正規化
し、その形態が最も近いデータベースの磁気ヒステリシ
ステループの劣化度を被測定体の劣化度と判定するデー
タ処理演算装置である。 【0022】他に例えば、フーリエ変換により磁気ヒス
テリシスループの高調波歪成分を検出し、前記高調波歪
成分の値の変化から金属材料の劣化を判定するデータ処
理演算装置も有効である。 【0023】(劣化の目安)劣化の目安は本明細書中に
詳述するが、例えば金属材料の組織変化に伴う破壊靭性
値の低下の推定が便利である。 【0024】(磁気センサ)磁気センサとしては、超電
導量子干渉素子が最適である。例えば磁気センサ装置に
精密な磁気変化を捕らえる為の超電導量子干渉素子を用
いた励磁システム及びセンサシステムの使用が簡便であ
る。 【0025】 【作用】金属材料は一般に高温環境中で長時間使用する
と内部組織に変化を生じ、強度が低下する。特に含フェ
ライト系ステンレス鋼において顕著であるように、高温
時効の熱処理時間の増加に伴い強度は低下する。 【0026】本発明者らは、含フェライト系ステンレス
鋼等の金属材料の高温加熱による脆化について種々検討
した結果、高温時効に伴い、金属材料の電気抵抗率ρや
透磁率μなどの電磁気的特性及び硬さや金属組織などの
機械的性質も変化することを発見し、本発明に至った。
特に、材料の高温時効脆化と磁化特性の変化とがよく対
応することを見出し、受入れ材(未処理材)と高温処理
材の磁気ヒステリシスの測定結果では、被測定体は脆化
の程度により磁気ヒステリシスループの面積(磁気ヒス
テリシスロス)や残留磁束密度等に変化が生じているこ
とを見出した。すなわち、この現象を利用すれば、含フ
ェライト系ステンレス鋼等の金属材料の脆化の進行程度
を精度良く検知することができることになる。 【0027】 【実施例】次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。◆ (第1実施例に係る全体システム)図1は、本発明によ
る金属材料の劣化検査装置を実施するためのシステム構
成の一例を示したものである。この図において、1は原
子力プラント等に用いられる機器あるいは配管等の被測
定体である。2は前記被測定体1を励磁するための励磁
システムであり、3は磁気を検出するための磁気センサ
システムである。4は磁化コントローラユニット、5は
データ処理ユニット、6は劣化度演算ユニット、7はデ
ータベース、8は表示ユニットである。9は励磁システ
ム2及び磁気センサシステム3の走査駆動装置、10は
走査駆動制御装置である。 【0028】被測定体1の表面には励磁システム2及び
磁気センサシステム3に対向配置してある。励磁システ
ム2及び磁気センサシステム3を走査するための走査駆
動装置9は、走査駆動制御装置10に接続されており、
制御を受ける。 【0029】励磁システム2及び磁気センサシステム3
は、磁化コントロールユニット4に接続され、励磁及び
磁気検出の測定及び制御を受ける。励磁及び磁気検出の
データは、磁気コントローラユニット4に取り込まれ、
最適磁化状態の設定がなされる。このデータは、データ
処理ユニット5で各劣化パラメータごとに処理される。
データ処理ユニット5で処理された各劣化パラメータご
とのデータは、予め求めておいた材料のデータベース7
に基づいて劣化度演算ユニット6にて比較演算され、前
記被測定体1の劣化度が判定される。この結果は、表示
ユニット8に出力される。 【0030】(励磁システム及び磁気センサシステムの
例)励磁システム2及び磁気センサシステム3の詳細を
図2に示す。励磁システム2は、励磁する磁化電流の波
形を制御するための波形制御型発振器21とこれを増幅
するためのアンプ22、被測定体1を磁化するための励
磁コイル23からなる。アンプ22からは、励磁コイル
23の起磁力の信号が出力される。この信号は磁気コン
トローラユニット4に取り込まれる。励磁コイル23及
び被測定体1を通る磁束Bは磁気センサ31で検知す
る。磁気センサ31の出力は、変換器32を介して磁気
コントローラユニット4に取り込まれる。 【0031】(磁化コントローラユニットの例)磁化コ
ントローラユニット4の詳細を図3に示す。磁化コント
ローラユニット4は、磁化ヒステリシスループ合成装置
40、磁束密度入力インターフェイス装置41、起磁力
入力インタフェイス装置42、磁気特性出力メモリ装置
43、基準値設定装置44及び差動増幅制御装置45か
らなる。 【0032】被測定体1を励磁するための励磁システム
2の起磁力は、起磁力入力インターフェイス42を介し
て磁気ヒステリシスループ合成装置40に取り込まれ
る。また、起磁力によって誘起される磁束を検知するホ
ール素子や検知コイルと積分器等からなる磁気センサシ
ステム3の出力は、磁束密度入力インターフェイス送置
41介して磁気ヒステリシスループ合成装置40に取り
込まれる。これらのデータは、磁気ヒステリシスループ
合成装置40で磁気ヒステリシスループに合成される。
この磁気ヒステリシスループは、基準値設定装置44に
予め設定された条件と比較され、その差分が差動増幅制
御装置45で増幅され、励磁システム2にフィードバッ
クされ、最適な励磁状態に設定される。この時の磁気ヒ
ステリシスループのデータは、磁気特性出力メモリ装置
43を介して出力される。 【0033】(走査駆動装置の例)図1における励磁シ
ステム2及び磁気センサシステム3を走査するための駆
動装置9の詳細を沸騰水形原子炉に適用した実施例につ
いて図4及び図6を用いて説明する。 【0034】図4は、沸騰水形原子炉の断面図のであ
る。600は原子炉格納容器、610は原子炉圧力容
器、611は制御棒、612は再循環給水ポンプ、61
3は一次系配管、614は炉心、615は炉水である。
原子炉格納容器600の上部にはクレーン620があ
る。このクレーン620に走査駆動装置9が釣り下げら
れてあり、原子炉圧力容器610の炉水615中の内壁
に走査駆動装置9が配置されている。走査駆動装置9は
ケーブル900で原子炉格納容器600の外に配置され
た制御装置910等に接続され、遠隔操作で動作する。 【0035】図6は、原子炉圧力容器内壁点検X−Y走
査型駆動装置の一例である。走査駆動装置9は、4本の
支柱を持つフレーム891、原子炉圧力容器610の内
壁に固定するための吸盤892及び真空ポンプ893と
フレーム891をX軸上に移動するためのX軸モータ8
95、ギアボックス896及び駆動シャフト898並び
にY軸上に移動するためのY軸モータ897、ギアボッ
クスを備えたエアシリンダ899及び駆動シャフト89
4からなり、エアシリンダ899の先端には励磁システ
ム2及び磁気センサシステム3が装備してある。 【0036】他の実施例として沸騰水形原子炉の配管系
に適用した例について図5、図7及び図8を用いて説明
する。◆図5は、図4と同様の沸騰水形原子炉の断面図
である。走査駆動装置9は一次系配管613に配置され
ている。走査駆動装置9はケーブル900で原子炉格納
容器600の外に配置された制御装置910等に接続さ
れ遠隔操作で動作する。 【0037】図7は一次系配管613を示したものであ
る。配管の母材630にはSUS304やSUS316
Lのオーステナイト系ステンレス鋼材が用いられ、配管
の溶接部631にはSUS308等の溶接棒が用いられ
る。このため、配管の溶接部631はオーステナイト相
とフェライト相が混在する2相金属組織状態になってい
る。 【0038】図8は、原子炉配管系点検用駆動装置の一
例である。走査駆動装置9は、2分割可能な固定リング
810と一次系配管613の周方向に回転可能な回転リ
ング811からなる。固定リング810には、軸方向駆
動モータ820、ギアボックス821及び位置検出用エ
アコーダ826、827からなる3組の軸方向移動機構
がある。軸方向の移動量は、ローラ824及び位置検出
用エアコーダ826、827で検出し、軸方向移動機構
にフィードバックされる。回転リング811は、複数の
プーリ825により固定リング810に保持され、周方
向の位置検出機能を備えた周方向回転モータ823で駆
動する。回転リング811の一部には励磁システム2及
び磁気センサシステム3が装備したヘッド部850があ
る。なお、駆動モータ820、823、エンコーダ82
6、827、及びヘッド部850には磁気測定に磁気ノ
イズが影響しないように磁気シールドが施こされてあ
る。 【0039】(原理説明)本実施例の動作原理を図9、
図10、図11を用いて説明する。◆金属材料は、図9
に示すように高温環境中で長時間使用すると、内部組織
に変化を生じ、強度が低下する。図12に含フェライト
系ステンレス鋼の475℃熱処理を施こした時効材のシ
ャルピー衝撃試験結果を示す。高温時効の熱処理時間の
増加に伴い強度が低下している。 【0040】発明者らは、含フェライト系ステンレス鋼
等の金属材料の高温加熱による脆化について種々検討し
た結果、高温時効に伴い、金属材料の電気抵抗率ρや透
磁率μなどの電磁気的特性及び硬さや金組織などの機械
的性質も変化することがわかった。特に、図10、図1
1に示すように、材料の高温時効脆化と磁化特性の変化
とがよく対応することを見出した。図10、図11の受
入れ材と高温熱処理材の磁気ヒステリシスの測定結果で
は、被測定体は脆化の程度により磁気ヒステリシスルー
プの面積(磁気ヒステリシスロス)や残留磁束密度等に
変化が生じていることを見出した。この現象を利用し
て、特に含フェライト系ステンレス鋼等の金属材料の脆
化の進行程度を精度良く検知できる。 【0041】(動作手順の例)さて、上記図1〜図8に
示す如く構成したシステムにおいて、本発明の測定動作
の例を図13のフローチャートにより説明する。 【0042】ステップ1:まず、駆動装置9を原子炉の
機器及び配管等の被測定体1の表面に配置し、駆動装置
9を測定系の原点にセットする。◆ ステップ2:検査範囲を入力する。 【0043】ステップ3:測定開始とともに、駆動装置
9は測定開始点に移動する。◆ ステップ4:測定開始。測定データを採取する。 【0044】ステップ5:測定中、データは磁化コント
ロールユニット4に記憶する。◆ ステップ6:測定終了後、駆動装置9は次の測定位置に
移動する。 【0045】ステップ7:測定装置9が最終位置に達し
たか否かを判定する。◆“No”ならステップ4へ“Y
es”なら測定終了方向のステップ8へ移る。 【0046】ステップ8:測定データを磁化コントロー
ルユニット4からデータ処理ユニット5に入力して処理
され、演算ユニット6に転送される。 【0047】ステップ9:測定データを統計用データ処
理方法で処理し、データベースを用いて、時効脆化の程
度を判定する。この結果は、外部記録装置に出力され、
表示ユニット8に表示される。 【0048】(データ処理の例)図13におけるステッ
プ9の統計的データ処理の詳細を以下、図を用いて説明
する。◆金属材料として例えば含フェライト系ステンレ
ス鋼の場合、高温時効の劣化に伴い磁気ヒステリシスル
ープは、図10、図11に示すように変化する。図10
は受入れ材についての磁束密度(B)−起磁力(H)特
性図であり、図11熱処理475℃/443時間後のB
−H特性図である。 【0049】この変化する磁気ヒステリシスループは、
図14及び図15に示すように起磁力の大きさによって
磁気ヒステリシスループ面積率や残留磁束密度に変化が
あり、ある値以上の起磁力の領域では劣化材と処女材と
の間に明確な差が生じる。 【0050】しかし、材料の初期フェライト量を推定で
きないと材料の劣化の程度は評価できない。図14は超
磁力と磁気ヒステリシスループ面積率の関係を示す特性
図であり、図15は超磁力と残留磁束密度の関係を示す
特性図であって、いずれも受入材(未処理材)と熱処理
後のものとを比率して示してある。ところが、図16に
示す起磁力による最大磁束密度は、高温時効によってほ
とんど変化しないが、この最大磁束密度は材料の初期フ
ェライト量で決まる。図16は起磁力と磁束密度振幅と
の関係を示す特性図である。 【0051】2相ステンレス鋼の場合、材料の初期の磁
気特性はフェライト量に依存する。フェライト量が2倍
になれば、残留磁気、飽和磁気も2倍になる。このた
め、熱時効に依存せずフェライト量にのみ依存するパラ
メータで整理すれば、初期のフェライト量が推定できる
ため、磁気特性も推定できる。図16に示す例のように
高磁界中での磁束密度振幅は、熱時効に依存しないた
め、このパラメータから初期磁気特性が推定できる。 【0052】図17は起磁力と正規化磁気ヒステリシス
ループとの関係を示す特性図であり、図18は起磁力と
正規化残留磁束密度との関係を示す特性図である。図1
6乃至図18はいずれも受入れ材と熱処理後の部材とを
比較して示してある。図16及び図17に示すように、
材料の初期フェライト量のばらつきを補正するため、最
大磁束密度で正規化した正規化磁気ヒステリシスループ
面積率や正規化残留磁束密度で材料の劣化を評価するこ
とが有効である。 【0053】ここで、磁気ヒステリシスループの正規化
データとは、磁気ヒステリシスループにおいて劣化に依
存せず、初期の状態のバラツキが補正できるパラメータ
を一つとするようにした正規化磁気ヒステリシスループ
データをいい、2相ステンレス鋼の熱時効に関しては、
飽和磁気或いは高磁界中での磁束密度に対して正規化す
るものである。初期のフェライト量の補正の為に、熱時
効に依存しない最大磁束密度(飽和磁気或いは高磁界中
での磁束密度)で正規化すれば、どの劣化材も一つの較
正曲線で評価できる。 【0054】すなわち、図19に示すように測定、デー
タ採取(ステップ4)では、測定体を消磁し、起磁力の
小さい方から磁気ヒステリシスループを求め必要なデー
タを採取する。採取したデータは、データ処理(ステッ
プ9)で予め求めておいたマスターカーブや評価関数で
劣化度が判定される。 【0055】このように、当該被測定体の材料について
起磁力を連続的あるいは離散的に変化させて磁気ヒステ
リシスループを求め、正規化した磁気ヒステリシスルー
プ面積及び残留磁束密度で整理した図17及び図18の
データを較正曲線として多くの鋼種についてデータベー
スを予め作成しておき、このデータベースと測定データ
を比較することで被測定体の初期のデータ無しに劣化度
が推定する。 【0056】(判定方法の第2の例)他の判定法の実施
例として規定の起磁力で劣化材を励磁してその時の値か
ら劣化度を推定する方法がある。 【0057】図14及び図15に示すように起磁力の大
きさによって磁気ヒステリシスループ面積率や残留磁束
密度に変化があり、ある値以上の起磁力の領域では劣化
材と処女材との間に明確な差が生じる。そこで、起磁力
を劣化検出を適した値に設定し、磁気ヒステリシスルー
プを求める。この磁気ヒステリシスループの磁気ヒステ
リシスループ面積、残留磁束密度及び最大磁束密度等の
各パラメータを劣化度を表わす劣化パラメータ(例え
ば、ローソン−ミーラー(Lalson−Mille
r)則のP値)で整理すると、図20及び図21のよう
になる。 【0058】すなわち、測定した磁気ヒステリシスルー
プ面積、残留磁束密度及び最大磁束密度から劣化パラメ
ータP値が求まり、材料の劣化度が推定できる。そこ
で、図20及び図21のようにデータをデータベースと
して構築することにより、材料の劣化度を推定できる。
例えば、予め材料の劣化パラメータを図22及び図23
のようなシャルピー衝撃値あるいは破壊靭性値KIC等
としたデータベースであれば、金属材料の破壊強度も評
価できる。 【0059】(判定方法の第3の例)また、磁気ヒステ
リシスループを求める方法として起磁力を一定の値に設
定する方法の他に、磁束密度を一定の値に設定する方法
がある。これを図24に示す。励磁する磁束密度を一定
の値として起磁力を高精度に制御して磁気ヒステリシス
ループを求めるため、測定データの再現性や精度が容易
に向上できる。 【0060】(判定方法の第4の例)他の判定法の実施
例として、磁気ヒステリシスループの形態(パターン)
から材料の劣化度を推定する方法がある。 【0061】図10、図11に示すように、磁気ヒステ
リシスループの形態(パターン)は材料の劣化と対応し
ている。そこで、磁気ヒステリシスループ形態から劣化
度を推定する方法を図25に示す。 【0062】図25の測定、データ採取(ステップ4)
では、測定体を消磁し、一定の起磁力による磁化あるい
は、飽和磁化を選択し磁気ヒステリシスループを求め必
要なデータを採取する。採取したデータは、データ処理
(ステップ9)で磁気ヒステリシスループを正規化し、
予め求めておいた基準の磁気ヒステリシスループのデー
タベースとのパターンマッチングをする。その結果、測
定した磁気ヒステリシスループ形態に最も近い磁気ヒス
テリシスループをデータベースより選択し、その磁気ヒ
ステリシスループの劣化度から被測定体の劣化度や破壊
強度を推定する。(判定方法の第5の例)他の判定法の
実施例を図26に示す。図13のデータ処理(ステップ
9)において、測定した磁気ヒステリシスループによ
り、起磁力にサイン(sin)波を入力した場合の磁束
密度の出力波形を求めて、この磁束密度の波形の歪みを
フーリエ変換で求め、各高調波成分の大きさと位相差か
ら回復分析等の統計的処理により求めておいたデータベ
ースから材料の劣化度を求める。 【0063】(第2実施例に係る全体システム)他の実
施例を図27に示す。図27は、測定体を試料11とし
て採取できる場合の実施例である。小形の試料11を励
磁コイル23内に挿入し、励磁電源ユニット20で励磁
する。試料11には差動コイル310が設けてあり、コ
イルの出力は積分器320で積分され、磁束を求める。
以下、図1の実施例と同様に処理される。 【0064】(超電導システム利用による実施例)他の
実施例として、励磁システム2及び磁気センサシステム
3を超伝導システムを用いた例を図28から図30に示
す。 【0065】図28は、励磁コイル23に超伝導システ
ムを用いて強力な磁場で被測定体1を励磁し、検出精度
を向上させるものである。本実施例の構造は、超電導励
磁コイル23の超電導状態を維持するために冷却材13
0を充填する非磁性材料からなる容器110を被測定体
1の表面に配置し、その容器110中に超電導励磁コイ
ル23が位置している。超電導励磁コイル23の中央に
低温で動作可能な磁気センサ31がある。容器110
は、断熱材120で外部との断熱をしている。冷却材1
30は、冷却装置410で再循環冷却されている。容器
110及び励磁コイル23の外側には磁気シールド10
0及び110があり、外部磁気及び励磁磁場の最適化を
図っている。励磁コイル23及び磁気センサ31は、接
続ケーブル500で磁化コントローラユニット4と接続
されている。 【0066】この実施例によれば、小形の励磁コイルで
強力な磁場が得られるため、局所の劣化診断評価が可能
となる。 【0067】図29の実施例は、図28の実施例の磁気
センサとして検出感度の高い超電導量子干渉素子(SQ
UID)340を用いた場合のものである。励磁コイル
23の中央に超電導量子干渉素子用のピックアップコイ
ル330を配置し、磁気シールド101の外部に超電導
量子干渉素子340を配置して磁気の測定を行う。 【0068】この実施例によれば、磁場の検出を高感度
にできるため、材料劣化の検出を飛躍的に向上させるこ
とができる。 【0069】また、試料11が採取できる場合の実施例
を図30に示す。超電導励磁コイル23は超電導状態を
維持するために冷却材130を充填する非磁性材料から
なるの容器110の中にあり、容器110は、断熱材1
20で外部との断熱をしている。超電導励磁コイル23
の中央には2つの孔があり、外部から試料11が挿入で
きる。この領域では均一な磁場となるように超電導励磁
コイル23を配置されている。2つの孔には、差動コイ
ルのピックアップコイル330を配置し、磁気シールド
された超電導量子干渉素子340で磁気の測定を行う。
この2つの孔の一方に試料11、他方に基準試料12を
挿入した試料の磁気特性の変化分だけを検出することが
できる。 【0070】この実施例によれば材料の磁気特性の変化
を高精度に検出できるため、磁場のひずみを精度良く測
定でき、材料の劣化評価の精度を向上させることができ
る。 【0071】 【発明の効果】本発明によれば、高温で使用される金属
材料の脆化の程度を非破壊的にかつ迅速に検知できるの
で脆化損傷を未然に防ぐことかが可能であり、実機の安
全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による劣化検出装置の一例を示す全体シ
ステム図である。 【図2】図1の例に係るシステム中、励磁システム及び
磁気センサシステムの内部構成図である。 【図3】同じく磁気コントローラユニットの内部構成図
である。 【図4】図1のシステムを用いた沸騰水形原子炉の断面
図である。 【図5】図4の一代案を示す沸騰水形原子炉の断面図で
ある。 【図6】図4の例における原子炉圧力容器内壁点検用X
−Y−走査型駆動装置の例を示す斜視図である。 【図7】図5の例における一次系配管の部分断面斜視図
である。 【図8】同じく原子炉配管系点検用駆動装置の斜視図で
ある。 【図9】金属を高温長時間曝したときの金属組織変化の
説明図である。 【図10】受入れ材の磁束密度と起磁力との関係を示す
特性図である。 【図11】熱処理後の金属部材の磁束密度と起磁力との
関係を示す特性図である。 【図12】金属部材の熱処理の時効時間に対するシャル
ピー吸収エネルギー残有率の関係を示す特性図である。 【図13】図1の実施例における動作手順を示すフロー
図である。 【図14】金属部材の起磁力と磁気ヒステリシスループ
面積率との関係を示す特性図である。 【図15】金属部材の起磁力と残留磁束密度との関係を
示す特性図である。 【図16】金属部材の起磁力と磁束密度振幅との関係を
示す特性図である。 【図17】金属部材の起磁力と正規化磁気ヒステリシス
ループ面積との関係を示す特性図である。 【図18】金属部材の磁束密度を一定とした場合の起磁
力と正規化残留磁束密度との関係を示す特性図である。 【図19】本発明の劣化判定方法例のフロー図である。 【図20】金属部材の正規化磁気ヒステリシスループ面
積と劣化パラメータとの関係を示す特性図である。 【図21】金属部材の正規化残留磁束密度と劣化パラメ
ータとの関係を示す特性図である。 【図22】金属部材の正規化残気ヒステリシスループ面
積とシャルピー衝撃値との関係を示す特性図である。 【図23】金属部材の正規化残留磁束密度とシャルピー
衝撃値との関係を示す特性図である。 【図24】金属部材の起磁力と磁束密度のヒステリシス
ループとの関係を示す特性図である。 【図25】本発明の一実施例として磁気ヒステリシスル
ープ形態から劣化度を推定する方法のフロー図である。 【図26】同じく磁気ヒステリシスループからフーリエ
変換を経由して劣化度を求めるフロー図である。 【図27】本発明の第2実施例に係る劣化検出装置の全
体システム図である。 【図28】本発明の他の実施例において超電導システム
を利用した場合の装置断面図である。 【図29】本発明の他の実施例において超電導システム
を利用した場合の装置断面図である。 【図30】本発明の他の実施例において超電導システム
を利用した場合の装置断面図である。 【符号の説明】 1…被測定体、2…励磁システム、3…磁気センサシス
テム、4…磁化コントロールユニット、5…データ処理
ユニット、6…演算ユニット、7…データベース、8…
表示ユニット、9…駆動装置、10…駆動制御装置、1
1…試料、12…基準試料、20…励磁電源ユニット、
21…発振器、22…アンプ、23…励磁コイル、31
…磁気センサ、32…変換器、40…磁気ヒステリシス
・ループ合成装置、41…磁束密度入力インターフェイ
ス、42…起磁力入力インターフェイス、43…磁気特
性出力メモリ装置、44…基準値設定装置、45…差動
増幅制御装置、91…フレーム、92…吸盤、93…真
空ポンプ、94…駆動シャフト、95…X軸モータ、9
6…ギアボックス、97…Y軸モータ、98…駆動シャ
フト、99…ギアボックスを備えたエアシリンダ、10
0及び101…磁気シールド、110…非磁性材料の容
器、120…断熱材、130…冷却材、310…差動検
知コイル、320…積分器、330…ピックアップコイ
ル、340…超電導量子干渉素子、400…冷却パイ
プ、410…冷却装置、500…ケーブル、600…原
子炉格納容器、610…原子炉圧力容器、611…制御
棒、612…再循環給水ポンプ、613…一次系配管、
614…炉心、615…炉水、620…クレーン、63
0…配管の母材、631…配管の溶接部、810…2分
割可能な固定リング、811…回転リング、820…駆
動モータ、820,821…ギアボックス、824…ロ
ーラ、825…プーリー、826…エンコーダ、827
…位置検出用エンコーダ、850…ヘッド部、891…
フレーム、892…吸盤、893…真空ポンプ、895
…X軸モータ、896…ギアボックス、897…Y軸モ
ータ、898…駆動シャフト、899…ギアボックスを
備えたエアシリンダ、900…ケーブル、910…制御
装置、i…電流、B…磁束密度、H…起磁力。
フロントページの続き (72)発明者 林 真琴 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社 日立製作所 機械研究所内 (72)発明者 清水 翼 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社 日立製作所 機械研究所内 (72)発明者 高久 和夫 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (56)参考文献 特開 昭60−147646(JP,A) 特開 昭62−223663(JP,A) 特開 昭58−60248(JP,A) 特開 昭59−100858(JP,A) 特開 昭59−131160(JP,A) 特開 昭58−132659(JP,A) 特開 昭58−127161(JP,A) 実開 昭61−161659(JP,U) 特公 昭32−7849(JP,B2)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.非磁性材料からなる容器と、 この容器の内部と外部とを断熱する断熱材と、 前記容器の内部に封入された冷却材と、 前記容器の内部に配設された超電導励磁コイルと、 第1のコイルと第2のコイルを備えており、前記超電導
    励磁コイルにより形成される磁場が実質的に均一となっ
    ている領域に前記第1のコイルと前記第2のコイルとが
    配設された差動コイルと、 前記容器の外部から前記第1のコイルの内部に劣化検査
    対象である試料を挿入する手段と、 前記容器の外部から前記第2のコイルの内部に前記試料
    の劣化検査の基準となる基準試料を挿入する手段と、 磁気シールドされて前記容器の内部に配設されており、
    前記第1のコイルで検出した前記試料の磁気ヒステリシ
    スループ面積と前記第2のコイルで検出した基準材料の
    磁気ヒステリシスループ面積との変化分を検出する超電
    導量子干渉素子と、 この超電導量子干渉素子が検出した前記磁気ヒステリシ
    スループ面積の変化分から前記試料の劣化の程度を判定
    する劣化程度判定手段と、 を備えた金属材料の劣化検査装置。
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