JP2711271B2 - 衛星による位置計測システム - Google Patents
衛星による位置計測システムInfo
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野」
本発明は、人工衛星を使った電波航法システムに関す
る。更に詳しくは、地球表面の近傍で移動或いは停止す
る航空機,自動車,船舶,建造物等の位置を人工衛星を
使って計測する衛星による位置計測システムに関する。 [従来の技術] 航空機,船舶等の地理上の位置を計測するには、種々
の方法が知られている。最近宇宙技術の進歩から人工衛
星を使ったシステムが登場した。このシステムは上空か
ら信号を受け取るため地形の影響を受けない等他のシス
テムに比して優れた特徴がある。これらの中で過去提案
された衛星を使った各位置計測システムの主なシステム
を要約して紹介する。 I.NNSS(Navy Navigation Satellite System) 衛星からの電波の受信周波数がドップラー効果により
変化するという原理を使うものである。この観測方式は
米海軍航法衛星システム(NNSS Navy′s Navigation Sa
tellite System)に採用され、現在唯一の運用システム
として船舶の航法をはじめ精密測量などにも使われてい
る。NNSSは全天候的な受動的(つまりユーザー側からの
電波を出さない)航法システムで地上のユーザーに対し
て世界的規模で測位情報を提供する。 しかしドップラー周波数効果を高める必要から衛星高
度約1000Kmという低い極軌道をとるため地表のユーザー
が観測できる時間は10分程度と短く、しかも測位計算に
は通常1パス(pass)の間に得られるすべてのドップラ
ー曲線が必要である。また現在5個のNNSS衛星が配置さ
れており測位間隔は平均して90分である。それ故このシ
ステムの利用は船舶のようなスローダイナミクスのユー
ザに限られている。 II.NavstarGPS(Navigaton Satellite Timing and Rang
ing Global Positioning System) これは、6個のNDS(Navigation Development Satell
ite航行開発衛星)を120゜離れた2つの軌道面に各3個
づつ40゜間隔に配置し、これにより全世界に1日に4時
間は少なくとも4個のNDSが同一視野にくる。計画で
は、(phase IIで)初期の6個から徐々にNDSを増や
す。3次元(測位)としては周期的に、2次元(測位)
としてはほとんど連続的に測位が可能となろう。全衛星
配置が完了する1990年初期には18個の実用タイプの航行
衛星(GPS衛星)を周期12時間,赤道傾斜角55゜で120゜
離れた3つの軌道面に各6個づつ等間隔に配置する考え
である。 GPSの概念 送信側と受信側の双方が理想的な精密時計を備えてい
るとすれば、送受信間の距離ρは受信時刻tと送信時刻
t′との差つまり信号伝搬時間に光速Cを乗じて得られ
る。 ρ=C(t−t′) ……(1.1) 計算が可能であるためには、両時計はある共通の基準
時刻(GPSシステムタイム)に正確に同期していること
が絶対条件である。(1.1)式は、NDSからの時刻t′に
おける位置を中心とし半径ρの球面を表す。 つまりユーザーの位置は時刻tにおいて3個のNDSか
らの同時測定が行えたとすれば3つの球面が得られ、3
個の球の交わりとしてユーザーの3次元位置が決まる。
全世界測位衛星システムGPSにおける測位計算はこのよ
うな簡単な幾何学的原理に基づいている。しかし、この
原理を実現するためには技術的な種々な条件が満たされ
なければならない。まずこの測位計算ができるにはユー
ザーは正確な送受信時刻を知らなければならない。しか
しながら正確な時を刻む理想的な時計は存在せず我々が
利用できる時計は必ず時刻の偏移を伴う。ユーザーはさ
らに送信時刻t′におけるNDSの位置を知らなければな
らない。(1・1)式では電波の大気層伝搬効果を無視
している。そこでこのような実際状況を考慮して(1・
1)を書き直してみる。 いま、ユーザー及びNDSの時計のGPSシステムタイムか
らの時刻の変移、つまり同期差をそれぞれ△tおよび△
t′とすればユーザーの計算する測距離ρは と書ける。ここで△tAは電波の大気伝搬遅延時間とす
る。上式でt+△t,t′+△t′はともに時計の読み(i
ndicate time)である。(1.2)式により定義される通常の幾何学距離ではなく右辺第3項に両時計の時刻偏
移による距離誤差が加算された形になっているので疑似
距離(pseudo range)と呼んでいる。 (1.2)式はNDSおよびユーザーのある基準直交座標系
に関する位置ベクトルYsv=(Xsv,Ysv,Zsv)T及びr=
(x,y,z)(Tは転置を表す)の成分により と書ける。GPSでは衛星搭載時計として高安定な発振器
である原子周波数標準を使うがさらにユーザーはGPS航
法信号に含まれるNDS時計の時刻修正パラメーターを使
って送信時刻の周期誤差△t′を約9ns(測距誤差換算
で約3m)以内の精度で推定することができる。そして推
定された送信時刻t′におけるNDS位置ベクトルrsv
(t′)を算出するための軌道情報も航法信号に含まれ
ている。 ほとんどすべてのユーザーは、NDSに比べてより精度
の劣る低コスト時計を装備すると考えられる。その場合
△tも未知数とみなし、計4個のNDSからの擬似距離観
測を行えばユーザーの受信点位置ベクトルrおよび△t
に関して解ける。すなわち、前記(2.3)式により合計
4個のNDSからの疑似距離観測し(2.3)式に代入すれ
ば、受信点位置ベクトルrと、△tに関して解ける。
(1−2)式から明らかなように1μsの周期誤差は約
300mの測距誤差を生ずるから、この考え方が非常に重要
であることがわかる。しかし、GPSにおいてはユーザー
は自分の位置を知るだけで通信機能を持っていないのが
欠点である。 III.GEOSTER(米国のオニールによって提案された通信
システム) 地球表面上の空陸域を走る大多数の乗り物,特に航空
機の現在位置を決定するためのシステムで靜止軌道で各
々45゜間隔を有する少なくとも3つの衛星を含むもので
ある。静止軌道上の衛星は周期約24時間,又軌道高度36
000Kmである。 次にこのシステムの概要を第10図,第11図を使って下
記に説明する。 時刻t0に、地上局GSは衛星S2に向けて質問信号をキャ
リア周波数f1で送信する。衛星S2に搭載されたリピータ
ー回路は、本システムのレンジ内にある航空機すべてに
質問信号を再送信する。この再送信は衛星S2に搭載した
1つか又は複数の広ビームアンテナを利用して同一周波
数f1で実施される。ユーザーAに搭載した中継器が衛星
S2を経由した質問信号を受信すると(第11図)中継器が
作動している場合は、キャリア周波数f2のビーコン周波
数信号で応答する。 そのビーコン信号はS1,S2,S3の3つの衛星で受信され
る。3つの衛星は各々キャリア周波数f2で作動するリピ
ーター回線を持っており、衛星S2では衛星S2でAからの
ビーコン信号も地上局GSに中継再送信する他、S1,S3を
経由したビーコン信号も地上局GSに中継再送信する(第
12図)。地上局GSでは各リターン信号の到着時間t1,t2,
t3が測定され、又その信号上の情報を復調することによ
ってユーザーの現在位置を計算する。その結果には固定
した基準面(平均海面レベル)上のユーザーの経度,緯
度,高度が示される。又このGEOSTERにおいては測距用
のクロックは搭載されていないので、GPSのようなクロ
ック誤差に関する心配はならないし、これは又通信機能
を持ったものである。 [発明が解決しようとする問題点] NNSSは、ドップラー効果を利用する関係から本来測定
精度が低いことやユーザの移動速度が位置決定の誤差要
因となるため、船舶等の運行スピードが遅いものしか利
用できない、限られた時間以外は利用できない。(観測
可能な頻度が低い)等の問題点がある。前記したGPSで
は、連続的に位置を計測するには、18個以上の衛星が必
要になってくる。また、位置測定の精度を10m程度で行
うには、衛星クロックの安定性は10-12〜10-13もの精度
が要求される。 GEOSTARでは、ユーザ、衛星の精密クロックは不要で
ある。しかし、測位の毎に衛星及び地上局との交信が必
要となり、回線容量から制約されて大量のユーザ、連続
的に計測する航法には使えない。また、ユーザが、自分
の位置を知る為には地上局で計算された位置情報の受信
を待たなければならず、この情報の入手に約0.5秒の遅
れがでてくる。また、ユーザの発信する電波の強弱、あ
るいはユーザアンテナの衛星に対する姿勢の不適合によ
る受信感度の劣化等によって、3つの衛星がこれを受信
して地上局に中継し、地上局でユーザの位置を算出する
ことができない場合がありうる。 このことは、位置情報入手の不確実性と遅延のため
に、航空機の管制、航法においては信頼性を持ってこの
システムを利用できない問題があることを意味する。 本発明は、前記の3つのシステムの有する欠点を克服
するため、人工衛星の数は極力少なくすると共に、衛星
・ユーザ・地上局にクロックを内蔵させ、このクロック
の同期化を極めて簡単な手段により実現することで、ク
ロックに格別の精密さが要求されなくともより信頼性が
高くしかも通信機能を備えた位置計測システムを提案す
るものである。 [問題点を解決するための手段] 本発明は、前記問題点を解決するために次の2つの手
段を採る。 本発明の衛星による位置計測システムは、 受信・発信装置とクロックとを内蔵する地上局と、地
球の表面の軌道上に配置された受信・発信装置とクロッ
クとを内蔵する少なくとも2個の衛星と、位置が不明で
前記衛星と通信をするための受信・発信装置とクロック
とを有した位置計測手段とからなる衛星による位置計測
システムであって、 位置を計測するために少なくとも1個の前記衛星に設
けられ前記1個の衛星のクロック時刻に基づいて第1測
距信号を発する第1測距信号発信手段と、 位置を計測するために前記位置計測手段の各々に設け
られ前記位置計測手段の各々のクロック時刻に基づいて
第2測距信号を発する第2測距信号発信手段と、 衛星と地上局との間で直接的に前記第1測距信号が伝
播する第1到達時間と前記位置計測手段と前記地上局と
の間で間接的に前記衛星を介して前記第2測距信号が伝
播する第2到達時間から到達時間差Δtsを算出する第1
算出手段と、 前記位置計測手段が前記第2測距信号を発した時刻と
前記第1測距信号が前記位置計測手段に到達する時刻と
の時刻差ΔTuを算出する第2算出手段とからなり、 前記第1算出手段は前記地上局が備える第1時計を含
み、 前記第2算出手段は前記位置計測手段が備える第2時
計を含み、 更に、前記到達時間差ΔTsと前記時刻差ΔTuとからク
ロックバイアスΔTbを下記関係式 ΔTb=(ΔTs−ΔTu)/2 から計算する計算手段とからなり、 前記関係式でΔTuは零でなく任意の値であり、 前記クロックバイアスΔTbが前記第1時計と前記第2
時計とを同期化するために用いられる。 なお、前記クロックバイアスΔTbを用いて前記第1時
計と前記第2時計とを同期化した後に前記同期化後に前
記位置計測手段の位置の移動を停止した状態で計測した
位置の発散傾向により前記第2時計の誤差を自動的に較
正する機能を有する手段を備えることが好ましい。 [実施例] 第1図に示す図は、本発明の位置計測システムの概念
の1例を示す体系図である。多数の空域ユーザ群,海域
ユーザ群,陸域ユーザ群があり、これらのユーザは三つ
の衛星SS1,SS2,SS3と送受信できる。この三つの衛星
は、主局GS2,従局GS1,GS3の地上系と互いに送受信でき
る。主局GS2は、衛星の位置の測距、ユーザへの各種情
報サービス等を行うもので、本システムの中心的な役割
を果たす。従局GS1,GS3は、主局GS2の管理下にあって協
力して衛星の位置の測距等を行う。 3つの衛星とユーザは、精密な時計を搭載しているが
衛星クロック及びユーザクロックは後述するような原理
に基き随意同期化,較正が可能であるため、GPS衛星に
使用されるような超精密なクロックは要求されない。衛
星とユーザとのクロックバイアスを次のような原理に基
づいて、電波を交信して知ることができる。 クロックバイアス計測の原理 以下これの算出の仕方を述べる。(第2図参照)まず
条件として、衛星の位置は既知で衛星クロックは地上局
のクロックと既に同期化されているものとする。この方
法は周知技術であり、本発明の要旨ではないので説明は
省略する。 第2図は、同期化の方法を示したものであるが、まず
衛星からユーザと地上局(ユーザと地上局の方向は違
う)に対して自分自身の時計で時刻tsoで電波Aを出し
て、地上局及びユーザで受信する。またユーザはユーザ
時計で衛星に時刻tuoに電波を出して、又それを地上局
に送ってやる。そうすると、地上局は衛星からの測距信
号とユーザからの測距信号の到達時間差△tsを算出す
る。△tsは地上局より衛星を介してユーザに送信する。 第2図より、ユーザは△tsより△tB(クロックバイア
ス)を算出する。すなわち、△ts=l/C+△tB、△tu=l
/C−△tB、ゆえに、△tB−(△ts−△tu)/2という関係
が成立し、ユーザは衛星とユーザーとのクロックバイア
ス△tBを知ることができる。ただし、l=衛星/ユーザ
間の距離、C=光速を意味する。また地上と衛星間の交
信は衛星と地上間のクロック同期及び位置決定に使用す
る。 前記のクロックバイアス△tBの算出においてユーザの
移動は誤差の要因となるが、通常ユーザは衛星からの測
距信号に使用されている電波のドップラーシフトより速
度を決定することができる。高速移動のユーザについて
はこの速度情報を使用して、クロックバイアス推定の精
度を高めることが可能である。 また、同期化の手段としてここでは地上局での△ts測
定を使用しているが、ユーザと衛星間のみの△ts測定で
もこの原理は適用できる。すなわち、△tsは衛星におい
て測定可能である。しかしながら、この方法では衛星は
多くのユーザに対し前記△tsの測定を行わなければなら
ないため、衛星搭載の機器が増大する。従って、実現性
の観点から衛星を中継して地上局において測定を行うこ
とにしたが、少数ユーザに対してはユーザ/衛星間での
△ts測定の方式でも実用的であり、衛星/地上局間のク
ロック同期化と同様な原理とみなしうる。 システムの構成 第3図に示すものは、前記本発明の原理に基づくシス
テムの衛星,ユーザ,主局,従局の機能を示す機器ブロ
ック図である。衛星1は、通常の衛星を運行するための
システム以外に、中継器5,データ/測距信号受信系6,衛
星精密クロック7,データ/測距信号受信系8,衛星データ
処理・作成系9等を内蔵している。中継器5は、ユーザ
2からのデータ測距信号の地上局3へのを送信と、地上
局3からユーザ2への送信とを地上局3、ユーザ2へ中
継するだけの機能である。データ/測距信号送信系6
は、データ,測距信号をユーザ2,地上局3に送信するも
のである。 衛星精密クロック7は、通常原子時計で構成されるも
ので衛星に搭載されたものであるが、各衛星1は地上局
3より絶えず追尾できる、地球同期衛星であるため、ク
ロック誤差は地上局3より要求される精度に応じた頻度
で較正することができる。この為、長寿命化及び価格に
問題のある原子時計の替わりに精度において原子時計に
劣るが、長寿命化が可能な水晶発振器を適用することが
できる。データ/測距信号受信系8は、地上局3からの
信号を受信する受信器である。衛星データ処理・作成系
9は、中央処理装置(CPU)を備えたもので、各データ
等を処理,演算するものである。処理,演算されたデー
タ等をユーザ2,地上局3に送信する。 ユーザ2は、データ/測距信号系11,ユーザクロック1
2,データ/測距信号受信系13,受信メッセージ再生表示
器14,位置・速度処理表示器15,送信メッセージ入力発生
系16等から構成される。また、ユーザ2が航空機であれ
ば高度計17等も備えている。 データ/測距信号送信系11はユーザ系のクロックバイ
アス△tBを測定・更新するために、衛星1を中継して地
上局3に測距信号を送信するものであり、送信はユーザ
系の位置決定要求精度に対応して、ある時間間隔毎に行
われる。送信の時間間隔はオペレータが表示系15に付随
するスイッチを操作することにより自動的に定められ
る。また、地上局3に送信される測距信号にはオペレー
タによって例えば、送信メッセージ入力発生系16のキー
ボードにより入力されたメッセージは、データ/測距信
号送信系11において測距信号の混入され、メッセージ送
信の機能を果たす。 ユーザクロック12は、ユーザ2が所有している例えば
原子時計,水晶時計である。データ/測距信号受信系13
はデータ/測距信号送信系6からの或いは中継器5から
のデータ/測距信号を受信する受信器である。データ/
測距信号受信系13では、少なくとも2個の衛星のデータ
/測距信号送信系6から、衛星・ユーザ間の測距の情報
である電波の到達に要する時間と、データ/測距信号に
混入された衛星軌道データとを、中継器5からは地上局
3からのメッセージとユーザクロックバイアス△tBの算
出する為のデータ△tSを抽出するための前置処理を行
う。 受信メッセージ再生表示系14は、データ/測距信号受
信系13からの信号を受け、受信したメッセージを表示す
る。位置・速度処理表示系15は、測定結果をブラウン
管,液晶表示器等を介して表示するものである。例え
ば、自動車のナビゲーターであれば、道路,建物を表示
して運転者に現在地を示す。 高度計17は、航空機等に搭載するもので、地表面から
の高度を測定する。本システムで計測したデータ等と組
み合わせて、正確な位置の測定ができる。ユーザクロッ
ク12の精度は、10-9〜10-10程度で良い。地上局3は、
主局と、2つの測距局からなり、データ/測距信号送信
計21,地上局精密クロック22,データ/測距信号受信計2
3,衛星監視系24,送信メッセージ発生系25,受信メッセー
ジ系再生系26,ユーザクロック同期化処理系27,衛星クロ
ック/軌道計算処理系28,衛星処理系29,ユーザ管制系30
等から構成される。 データ/測距信号送信系21は、衛星1の中継器5,デー
タ/測距信号受信系8にデータ,測距信号を送信する。
地上局精密クロック22は、10-12〜10-13程度の高精度と
精密な原子時計であることが望ましいが、10-11程度で
も運用は可能である。データ/測距信号受信系23は、衛
星1の中継器5,データ/測距信号送信系6からの信号を
受信するものである。衛星監視系24は、衛星1の軌道,
機器のメンテナンスを行うものである。送信メッセージ
発生系25は、ユーザ2へ各種情報をメッセージするもの
である。 ユーザ管制系30は、ユーザへの及びユーザからの各種
提供情報を保有しユーザの関係機関との情報交信を行
う。送信メッセージ発生系25はユーザへのメッセージ或
いは△tsを送る機能を有している。受信メッセージ再生
系26は、ユーザ2からの信号の内容を再生してユーザ管
制系30に提供する。ユーザクロック同期化処理系27は、
ユーザのクロック12と衛星のクロック7、地上局のクロ
ック7とのそれぞれの時間の誤差を周期的に、或いはユ
ーザの要求に対応して同期処理するものである。衛星ク
ロック/軌道計算処理系28は、衛星の軌道位置クロック
の誤差を計算処理するものである。 衛星指令系29は、衛星の軌道位置の修正・保持及び衛
星の管制を行うための指令系である。 また、各点線L1F,Ls,L2R,L1R,L2F,Ls,Lsは、搬送電波
の流れを示す。 システムのモード 第4図は、前記した本発明のシステムの運用を示すモ
ードチャートの例である。ユーザクロック化モードは、
間欠周期的に行う。この周期間隔Tは、ユーザクロック
の安定性と要求精度によって違ってくるが、本例では1
時間に数回程度である。また、地上局と衛星データの更
新の周期Tは、衛星クロックの精度、安定性によって変
わってくるものである。本例では1日に数回程度であ
る。衛星の管制も通常行われているように1か月数回程
度である。 第3図(b)は、第4図(a)に示した連続測位モー
ドの場合のシステムの動きを示す概念図である。太線で
囲まれた機器の作動状態であることを示す。連続測位モ
ードの場合の衛星1とユーザ2間のクロックは、同期し
ていることが前記である。したがって、2〜3個の衛星
1から搬送波に載せられた測距信号Lsが連続的に送られ
てくるのみで、ユーザ2は位置を計測できる。 第3図(c)は、第4図(c)のユーザクロック同期
化モードの場合のシステムの動きを示す概念図である。
ユーザのデータ/測距信号送信系11から測距信号L2Rが
発せられると、衛星1の中継器5を介して信号L2Fが地
上局3のデータ/測距信号受信系23に入る。この測距信
号L2Fが入ると、ユーザクロック同期化処理系27が作動
し、到達時間を計測する。 第3図(d)は、第4図(b)の通信モードの場合の
システムの動きを示す概念図である。前記した本システ
ムの原理で詳記した△tsを地上局3から衛星1を介して
ユーザ21に送る場合である。 第5図は、第3図で示した本システムの機能の作動を
示す一覧である。例えば、航法モードのとき作動するの
が、○印を付したユーザ装置では衛星1PN(Pseudo−ran
dom Noise,擬似雑音)信号受信処理,衛星2PN信号受信
処理,衛星3PN信号受信処理,衛星系ではのPN信号送
信,衛星データ処理・更新である。 計測システムの作動 第6図に示すフローチャートは、ユーザ装置の動作を
示すメインの動作フロー図の例である。スタートする
と、初期化のルーチンに入り初期化を行う(ステップ
)。ステップでユーザが高度計などの情報から高度
情報が利用できるか否か判断する。利用できれば、3つ
の衛星から測距信号を受信し、擬似距離を算出する(ス
テップ)。高度情報が利用できれば、この情報と2衛
星からの測距信号を受信し疑似距離を算出する。(ステ
ップ)。 ステップでユーザのクロックバイアスを消去して、
ユーザ位置を算出する(ステップ)。ステップで現
在位置情報使用可能か否か判断する(ステップ)。YE
Sであれば、その位置とステップで算出した位置と比
較し、許容値内か否か判断する(ステップ)。すなわ
ち、本システムの性能上の許容誤差か否か判断する。許
容値内であればステップに進む。許容値以外であれば
ステップに進む。ステップでは、クロック同期化の
時間間隔を経過したか否かを判断する。設定時間間隔を
越えておけば、ステップに進み、ユーザのクロック12
を衛星1のクロック7と同期化させる。 クロック同期化を行う時間間隔は、ユーザーの測位精
度をどの程度要求するか、ユーザクロックの精度によっ
て定まる。ユーザが端末から必要に応じて同期化の時間
間隔を設定できるものである。 ステップではユーザ装置の操作スイッチよりクロッ
ク較正モードを随意選択できる。クロック較正モードで
あれば、ステップでクロックのバイアス変化率を較正
する。クロックのバイアス変化率の定期的な較正は、計
測精度を高める上で有力である。ユーザのクロック誤差
(もちろん衛星クロックについても同様だが)で較正が
可能でかつ較正の効果が大きい要素として、クロックの
時間の同期に係わる誤差、すなわちクロックバイアス誤
差と、クロックバイアスが時間に比例して増減するクロ
ックバイアス変化率がある。 まずクロックバイアス誤差については第6図のステッ
プすなわち第7図のロジックに従って算出可能であ
り、位置測定精度の向上に利用できる。 クロックバイアス変化率についてはクロックの基本的
な精度を決定するものであり、これが簡単に較正可能で
あれば比較的低価格のクロックをユーザクロックとして
採用できるが、この一定のクロックバイアス変化率につ
いては、定位置での連続測位値の増大の傾向から推進で
きる。クロック較正ロジックは、表示器に粗,普通,精
などの3レベルの較正モードの1つを選択すれば、3レ
ベルに対応した較正の所要時間を終えた後、クロック誤
差パラメータを推定し、これを測定処理に使用する為の
手続きを終えて、このモードを完了するロジックを有す
る。 クロックの同期化処理 第7図は、第6図のステップに対応するクロックを
同期化するためのユーザ装置のフローチャートである。
まず、最初のサイクルか否か判断し、最初のサイクルで
あれば処理パラメータの初期化する(ステップ,
)。ステップで自分の割当回線が空いているか否か
判断し、回線が空いていればステップに進み、データ
/測距信号を衛星1の中継器5を介して、地上局3のデ
ータ/測距受信系23に送る。地上局3は衛星測距信号を
受信し、擬似到達時間を算出する(ステップ)。 ステップで地上局からの同期メッセージがあるか否
かの判断をする。メッセージよりユーザと衛星間の擬似
到達時間を得てクロックバイアスを求める。クロック同
期化モード選択を解除する(ステップ)。 クロック較正処理 第8図は、第6図のフローのステップに対応するク
ロック較正ロジックの詳細なフローチャートである。最
初のサイクルか否か判断してパラメータを初期化する
(ステップ,)。 通常、測位計算の過程で算出されるユーザ/衛星間の
距離には衛星の時間的な位置の移動の外に、衛星内の装
置及びユーザ装置な内部で、或いは電波の伝播の過程で
不規則の測距誤差が混入する。まず衛星の位置移動(地
球固定基準座標に対する移動)は衛星の軌道要素により
正確に推定し、これを計算上除去することができるが、
不規則な測距誤差については複数の数値の平均化に頼ら
ざるを得ない。 すなわち、ステップにて所定時間間隔(たとえば60
秒)に達しない場合は、前記の位置移動の成分を除去し
た複数個の距離の値(レンジ)を算術平均する(ステッ
プ)。所定の時間間隔に達すれば、前記の最新のレン
ジの平均値を過去のレンジの平均値より、距離の時間変
化率(レンジレート)を算出するためのフィルタを使用
して、レンジレートを算出し、更新する(ステップ
)。レンジレート算出法にはイテラティブ(Iterativ
e)な最小自乗法やカルマンフィルタが一般的である
が、この場合更新されたレンジレートの変動値より、レ
ンジレートの推定値がある特定の値に収束し、推定が正
しく実行されているか否かを判定できる(ステップ
)。 充分安定していないければ、本ロジックの実行を管理
するメインロジックに復帰し、メインロジックでの適当
な処理を実用した後、再び本ロジックの先頭にもどって
くることになるだろう。レンジレートの推定が充分安定
して実行されており、所定の較正時間を経過した場合
(ステップ)、上記レンジレートの安定した最終値を
光速で除算することによってクロックバイアスの時間変
化率を求めユーザ装置内に記憶する(ステップ)とと
もにクロック較正モードを解除する(ステップ)こと
によって本ロジックの実行は完了する。 第8図ではユーザクロックの較正(クロックバイアス
の時間変化率の算出・更新)の原理を容易に説明するた
め、衛星/ユーザ間のレンジの変化を利用する方法を対
象として記述したが、この方法はユーザ装置の有する処
理ロジックを有効に利用していない。以下、さらに簡易
なユーザクロック較正の方式を説明する。 ユーザクロックのバイアス変化率△Bは特定の時間
△tの経過の後、クロックバイアスを△B×△tだけ
増加させる。すなわち、時刻toでのクロックバイアスが
△B(to)とすれば、△tの経過の後、時刻t1(t1=
to+△t)でのクロックバイアス△tB(to+△t)は△
tB(to)+△B×△tとなる。ユーザ装置では時刻to
でのユーザ位置が算出されており、これを水平面内の座
標(Xo,Yo)とする。時間△tの経過後、すなわち時刻t
1(t1=t0+△t)では、クロックバイアスの増減分だ
け、ユーザ装置の算出する位置が移動する。この座標を
(X1,Y1)とする。ここでユーザ装置が内蔵するロジッ
クを使用して、擬似的なバイアス値△t′B(△t′B
=△tB(to)+△tc)に従ったユーザの位置計算を行う
とその結果は、座標(Xc,Yc)として計算される。以上
の実測座標値(Xo,Yo),(X1,X1)と擬似的なバイアス
値△t′Bによる座標値(Xc,Yc)よりユーザクロック
のバイアス変化率△t′Bが以下の式より算出できる。
すなわち、 ここで、SGNは|Xc−X0|と|Yc−Yo|を比較して例えば|
Xc−X0|が大きいとすれば、(Xc−X0)×(X1−X0)>
0のとき+1、(Xc−X0)×(X1−X0)<0のとき−1
の値となる。 以上のクロックバイアス変化率の算出法は極めて簡単
であり実用的である。もしもユーザの位置が正確に与え
られるならば、この較正モードにおいて同時に時間t0で
のクロックバイアス△tB(t0)も算出できる。すなわ
ち、真のユーザ位置を座標(XN,XN)とすれば、座標
(X0,Y0)とすれば、クロックバイアスによるものであ
るから、 より時刻t0でのクロックバイアス誤差△tB(t0)がもと
まる。 第9図は、ユーザー装置の同期化時間間隔と要求測位
精度との関係の概念を示したものである。測位精度を向
上させるには、同期化時間間隔を小さくする必要がある
ことを意味する。第10図は、前記したような手法からク
ロックバイアス誤差の傾向を読み、誤差を較正した場合
の較正時間間隔と、ドリフトレート推定精度と、測距誤
差の関係を示した図である。前記したようにこの考え型
を使うと、クロックバイアス誤差を自動的に較正するこ
とができ較正時間間隔は少なくても済む。 [効 果] 以上、詳細したように本発明によって、少なくとも2
個の衛星からの測距信号の受信可能な領域での連続測位
が可能になった。また、移動体の運動の程度に強く影響
されないで高精度測位が可能になった。更に、慣性航法
装置の如く高精度な初期位置・速度などの補助情報は不
要である。また、衛星の軌道上に配置する個数を増大さ
せることによって、連続測位の可能な領域を拡張するこ
とができるのは当然であるが、限定された領域ではGPS
に比較して極めて少数の衛星によって連続測位が行える
ことが本システムの開発費,維持費の抑制の観点で極め
て大きな効果を有する。
る。更に詳しくは、地球表面の近傍で移動或いは停止す
る航空機,自動車,船舶,建造物等の位置を人工衛星を
使って計測する衛星による位置計測システムに関する。 [従来の技術] 航空機,船舶等の地理上の位置を計測するには、種々
の方法が知られている。最近宇宙技術の進歩から人工衛
星を使ったシステムが登場した。このシステムは上空か
ら信号を受け取るため地形の影響を受けない等他のシス
テムに比して優れた特徴がある。これらの中で過去提案
された衛星を使った各位置計測システムの主なシステム
を要約して紹介する。 I.NNSS(Navy Navigation Satellite System) 衛星からの電波の受信周波数がドップラー効果により
変化するという原理を使うものである。この観測方式は
米海軍航法衛星システム(NNSS Navy′s Navigation Sa
tellite System)に採用され、現在唯一の運用システム
として船舶の航法をはじめ精密測量などにも使われてい
る。NNSSは全天候的な受動的(つまりユーザー側からの
電波を出さない)航法システムで地上のユーザーに対し
て世界的規模で測位情報を提供する。 しかしドップラー周波数効果を高める必要から衛星高
度約1000Kmという低い極軌道をとるため地表のユーザー
が観測できる時間は10分程度と短く、しかも測位計算に
は通常1パス(pass)の間に得られるすべてのドップラ
ー曲線が必要である。また現在5個のNNSS衛星が配置さ
れており測位間隔は平均して90分である。それ故このシ
ステムの利用は船舶のようなスローダイナミクスのユー
ザに限られている。 II.NavstarGPS(Navigaton Satellite Timing and Rang
ing Global Positioning System) これは、6個のNDS(Navigation Development Satell
ite航行開発衛星)を120゜離れた2つの軌道面に各3個
づつ40゜間隔に配置し、これにより全世界に1日に4時
間は少なくとも4個のNDSが同一視野にくる。計画で
は、(phase IIで)初期の6個から徐々にNDSを増や
す。3次元(測位)としては周期的に、2次元(測位)
としてはほとんど連続的に測位が可能となろう。全衛星
配置が完了する1990年初期には18個の実用タイプの航行
衛星(GPS衛星)を周期12時間,赤道傾斜角55゜で120゜
離れた3つの軌道面に各6個づつ等間隔に配置する考え
である。 GPSの概念 送信側と受信側の双方が理想的な精密時計を備えてい
るとすれば、送受信間の距離ρは受信時刻tと送信時刻
t′との差つまり信号伝搬時間に光速Cを乗じて得られ
る。 ρ=C(t−t′) ……(1.1) 計算が可能であるためには、両時計はある共通の基準
時刻(GPSシステムタイム)に正確に同期していること
が絶対条件である。(1.1)式は、NDSからの時刻t′に
おける位置を中心とし半径ρの球面を表す。 つまりユーザーの位置は時刻tにおいて3個のNDSか
らの同時測定が行えたとすれば3つの球面が得られ、3
個の球の交わりとしてユーザーの3次元位置が決まる。
全世界測位衛星システムGPSにおける測位計算はこのよ
うな簡単な幾何学的原理に基づいている。しかし、この
原理を実現するためには技術的な種々な条件が満たされ
なければならない。まずこの測位計算ができるにはユー
ザーは正確な送受信時刻を知らなければならない。しか
しながら正確な時を刻む理想的な時計は存在せず我々が
利用できる時計は必ず時刻の偏移を伴う。ユーザーはさ
らに送信時刻t′におけるNDSの位置を知らなければな
らない。(1・1)式では電波の大気層伝搬効果を無視
している。そこでこのような実際状況を考慮して(1・
1)を書き直してみる。 いま、ユーザー及びNDSの時計のGPSシステムタイムか
らの時刻の変移、つまり同期差をそれぞれ△tおよび△
t′とすればユーザーの計算する測距離ρは と書ける。ここで△tAは電波の大気伝搬遅延時間とす
る。上式でt+△t,t′+△t′はともに時計の読み(i
ndicate time)である。(1.2)式により定義される通常の幾何学距離ではなく右辺第3項に両時計の時刻偏
移による距離誤差が加算された形になっているので疑似
距離(pseudo range)と呼んでいる。 (1.2)式はNDSおよびユーザーのある基準直交座標系
に関する位置ベクトルYsv=(Xsv,Ysv,Zsv)T及びr=
(x,y,z)(Tは転置を表す)の成分により と書ける。GPSでは衛星搭載時計として高安定な発振器
である原子周波数標準を使うがさらにユーザーはGPS航
法信号に含まれるNDS時計の時刻修正パラメーターを使
って送信時刻の周期誤差△t′を約9ns(測距誤差換算
で約3m)以内の精度で推定することができる。そして推
定された送信時刻t′におけるNDS位置ベクトルrsv
(t′)を算出するための軌道情報も航法信号に含まれ
ている。 ほとんどすべてのユーザーは、NDSに比べてより精度
の劣る低コスト時計を装備すると考えられる。その場合
△tも未知数とみなし、計4個のNDSからの擬似距離観
測を行えばユーザーの受信点位置ベクトルrおよび△t
に関して解ける。すなわち、前記(2.3)式により合計
4個のNDSからの疑似距離観測し(2.3)式に代入すれ
ば、受信点位置ベクトルrと、△tに関して解ける。
(1−2)式から明らかなように1μsの周期誤差は約
300mの測距誤差を生ずるから、この考え方が非常に重要
であることがわかる。しかし、GPSにおいてはユーザー
は自分の位置を知るだけで通信機能を持っていないのが
欠点である。 III.GEOSTER(米国のオニールによって提案された通信
システム) 地球表面上の空陸域を走る大多数の乗り物,特に航空
機の現在位置を決定するためのシステムで靜止軌道で各
々45゜間隔を有する少なくとも3つの衛星を含むもので
ある。静止軌道上の衛星は周期約24時間,又軌道高度36
000Kmである。 次にこのシステムの概要を第10図,第11図を使って下
記に説明する。 時刻t0に、地上局GSは衛星S2に向けて質問信号をキャ
リア周波数f1で送信する。衛星S2に搭載されたリピータ
ー回路は、本システムのレンジ内にある航空機すべてに
質問信号を再送信する。この再送信は衛星S2に搭載した
1つか又は複数の広ビームアンテナを利用して同一周波
数f1で実施される。ユーザーAに搭載した中継器が衛星
S2を経由した質問信号を受信すると(第11図)中継器が
作動している場合は、キャリア周波数f2のビーコン周波
数信号で応答する。 そのビーコン信号はS1,S2,S3の3つの衛星で受信され
る。3つの衛星は各々キャリア周波数f2で作動するリピ
ーター回線を持っており、衛星S2では衛星S2でAからの
ビーコン信号も地上局GSに中継再送信する他、S1,S3を
経由したビーコン信号も地上局GSに中継再送信する(第
12図)。地上局GSでは各リターン信号の到着時間t1,t2,
t3が測定され、又その信号上の情報を復調することによ
ってユーザーの現在位置を計算する。その結果には固定
した基準面(平均海面レベル)上のユーザーの経度,緯
度,高度が示される。又このGEOSTERにおいては測距用
のクロックは搭載されていないので、GPSのようなクロ
ック誤差に関する心配はならないし、これは又通信機能
を持ったものである。 [発明が解決しようとする問題点] NNSSは、ドップラー効果を利用する関係から本来測定
精度が低いことやユーザの移動速度が位置決定の誤差要
因となるため、船舶等の運行スピードが遅いものしか利
用できない、限られた時間以外は利用できない。(観測
可能な頻度が低い)等の問題点がある。前記したGPSで
は、連続的に位置を計測するには、18個以上の衛星が必
要になってくる。また、位置測定の精度を10m程度で行
うには、衛星クロックの安定性は10-12〜10-13もの精度
が要求される。 GEOSTARでは、ユーザ、衛星の精密クロックは不要で
ある。しかし、測位の毎に衛星及び地上局との交信が必
要となり、回線容量から制約されて大量のユーザ、連続
的に計測する航法には使えない。また、ユーザが、自分
の位置を知る為には地上局で計算された位置情報の受信
を待たなければならず、この情報の入手に約0.5秒の遅
れがでてくる。また、ユーザの発信する電波の強弱、あ
るいはユーザアンテナの衛星に対する姿勢の不適合によ
る受信感度の劣化等によって、3つの衛星がこれを受信
して地上局に中継し、地上局でユーザの位置を算出する
ことができない場合がありうる。 このことは、位置情報入手の不確実性と遅延のため
に、航空機の管制、航法においては信頼性を持ってこの
システムを利用できない問題があることを意味する。 本発明は、前記の3つのシステムの有する欠点を克服
するため、人工衛星の数は極力少なくすると共に、衛星
・ユーザ・地上局にクロックを内蔵させ、このクロック
の同期化を極めて簡単な手段により実現することで、ク
ロックに格別の精密さが要求されなくともより信頼性が
高くしかも通信機能を備えた位置計測システムを提案す
るものである。 [問題点を解決するための手段] 本発明は、前記問題点を解決するために次の2つの手
段を採る。 本発明の衛星による位置計測システムは、 受信・発信装置とクロックとを内蔵する地上局と、地
球の表面の軌道上に配置された受信・発信装置とクロッ
クとを内蔵する少なくとも2個の衛星と、位置が不明で
前記衛星と通信をするための受信・発信装置とクロック
とを有した位置計測手段とからなる衛星による位置計測
システムであって、 位置を計測するために少なくとも1個の前記衛星に設
けられ前記1個の衛星のクロック時刻に基づいて第1測
距信号を発する第1測距信号発信手段と、 位置を計測するために前記位置計測手段の各々に設け
られ前記位置計測手段の各々のクロック時刻に基づいて
第2測距信号を発する第2測距信号発信手段と、 衛星と地上局との間で直接的に前記第1測距信号が伝
播する第1到達時間と前記位置計測手段と前記地上局と
の間で間接的に前記衛星を介して前記第2測距信号が伝
播する第2到達時間から到達時間差Δtsを算出する第1
算出手段と、 前記位置計測手段が前記第2測距信号を発した時刻と
前記第1測距信号が前記位置計測手段に到達する時刻と
の時刻差ΔTuを算出する第2算出手段とからなり、 前記第1算出手段は前記地上局が備える第1時計を含
み、 前記第2算出手段は前記位置計測手段が備える第2時
計を含み、 更に、前記到達時間差ΔTsと前記時刻差ΔTuとからク
ロックバイアスΔTbを下記関係式 ΔTb=(ΔTs−ΔTu)/2 から計算する計算手段とからなり、 前記関係式でΔTuは零でなく任意の値であり、 前記クロックバイアスΔTbが前記第1時計と前記第2
時計とを同期化するために用いられる。 なお、前記クロックバイアスΔTbを用いて前記第1時
計と前記第2時計とを同期化した後に前記同期化後に前
記位置計測手段の位置の移動を停止した状態で計測した
位置の発散傾向により前記第2時計の誤差を自動的に較
正する機能を有する手段を備えることが好ましい。 [実施例] 第1図に示す図は、本発明の位置計測システムの概念
の1例を示す体系図である。多数の空域ユーザ群,海域
ユーザ群,陸域ユーザ群があり、これらのユーザは三つ
の衛星SS1,SS2,SS3と送受信できる。この三つの衛星
は、主局GS2,従局GS1,GS3の地上系と互いに送受信でき
る。主局GS2は、衛星の位置の測距、ユーザへの各種情
報サービス等を行うもので、本システムの中心的な役割
を果たす。従局GS1,GS3は、主局GS2の管理下にあって協
力して衛星の位置の測距等を行う。 3つの衛星とユーザは、精密な時計を搭載しているが
衛星クロック及びユーザクロックは後述するような原理
に基き随意同期化,較正が可能であるため、GPS衛星に
使用されるような超精密なクロックは要求されない。衛
星とユーザとのクロックバイアスを次のような原理に基
づいて、電波を交信して知ることができる。 クロックバイアス計測の原理 以下これの算出の仕方を述べる。(第2図参照)まず
条件として、衛星の位置は既知で衛星クロックは地上局
のクロックと既に同期化されているものとする。この方
法は周知技術であり、本発明の要旨ではないので説明は
省略する。 第2図は、同期化の方法を示したものであるが、まず
衛星からユーザと地上局(ユーザと地上局の方向は違
う)に対して自分自身の時計で時刻tsoで電波Aを出し
て、地上局及びユーザで受信する。またユーザはユーザ
時計で衛星に時刻tuoに電波を出して、又それを地上局
に送ってやる。そうすると、地上局は衛星からの測距信
号とユーザからの測距信号の到達時間差△tsを算出す
る。△tsは地上局より衛星を介してユーザに送信する。 第2図より、ユーザは△tsより△tB(クロックバイア
ス)を算出する。すなわち、△ts=l/C+△tB、△tu=l
/C−△tB、ゆえに、△tB−(△ts−△tu)/2という関係
が成立し、ユーザは衛星とユーザーとのクロックバイア
ス△tBを知ることができる。ただし、l=衛星/ユーザ
間の距離、C=光速を意味する。また地上と衛星間の交
信は衛星と地上間のクロック同期及び位置決定に使用す
る。 前記のクロックバイアス△tBの算出においてユーザの
移動は誤差の要因となるが、通常ユーザは衛星からの測
距信号に使用されている電波のドップラーシフトより速
度を決定することができる。高速移動のユーザについて
はこの速度情報を使用して、クロックバイアス推定の精
度を高めることが可能である。 また、同期化の手段としてここでは地上局での△ts測
定を使用しているが、ユーザと衛星間のみの△ts測定で
もこの原理は適用できる。すなわち、△tsは衛星におい
て測定可能である。しかしながら、この方法では衛星は
多くのユーザに対し前記△tsの測定を行わなければなら
ないため、衛星搭載の機器が増大する。従って、実現性
の観点から衛星を中継して地上局において測定を行うこ
とにしたが、少数ユーザに対してはユーザ/衛星間での
△ts測定の方式でも実用的であり、衛星/地上局間のク
ロック同期化と同様な原理とみなしうる。 システムの構成 第3図に示すものは、前記本発明の原理に基づくシス
テムの衛星,ユーザ,主局,従局の機能を示す機器ブロ
ック図である。衛星1は、通常の衛星を運行するための
システム以外に、中継器5,データ/測距信号受信系6,衛
星精密クロック7,データ/測距信号受信系8,衛星データ
処理・作成系9等を内蔵している。中継器5は、ユーザ
2からのデータ測距信号の地上局3へのを送信と、地上
局3からユーザ2への送信とを地上局3、ユーザ2へ中
継するだけの機能である。データ/測距信号送信系6
は、データ,測距信号をユーザ2,地上局3に送信するも
のである。 衛星精密クロック7は、通常原子時計で構成されるも
ので衛星に搭載されたものであるが、各衛星1は地上局
3より絶えず追尾できる、地球同期衛星であるため、ク
ロック誤差は地上局3より要求される精度に応じた頻度
で較正することができる。この為、長寿命化及び価格に
問題のある原子時計の替わりに精度において原子時計に
劣るが、長寿命化が可能な水晶発振器を適用することが
できる。データ/測距信号受信系8は、地上局3からの
信号を受信する受信器である。衛星データ処理・作成系
9は、中央処理装置(CPU)を備えたもので、各データ
等を処理,演算するものである。処理,演算されたデー
タ等をユーザ2,地上局3に送信する。 ユーザ2は、データ/測距信号系11,ユーザクロック1
2,データ/測距信号受信系13,受信メッセージ再生表示
器14,位置・速度処理表示器15,送信メッセージ入力発生
系16等から構成される。また、ユーザ2が航空機であれ
ば高度計17等も備えている。 データ/測距信号送信系11はユーザ系のクロックバイ
アス△tBを測定・更新するために、衛星1を中継して地
上局3に測距信号を送信するものであり、送信はユーザ
系の位置決定要求精度に対応して、ある時間間隔毎に行
われる。送信の時間間隔はオペレータが表示系15に付随
するスイッチを操作することにより自動的に定められ
る。また、地上局3に送信される測距信号にはオペレー
タによって例えば、送信メッセージ入力発生系16のキー
ボードにより入力されたメッセージは、データ/測距信
号送信系11において測距信号の混入され、メッセージ送
信の機能を果たす。 ユーザクロック12は、ユーザ2が所有している例えば
原子時計,水晶時計である。データ/測距信号受信系13
はデータ/測距信号送信系6からの或いは中継器5から
のデータ/測距信号を受信する受信器である。データ/
測距信号受信系13では、少なくとも2個の衛星のデータ
/測距信号送信系6から、衛星・ユーザ間の測距の情報
である電波の到達に要する時間と、データ/測距信号に
混入された衛星軌道データとを、中継器5からは地上局
3からのメッセージとユーザクロックバイアス△tBの算
出する為のデータ△tSを抽出するための前置処理を行
う。 受信メッセージ再生表示系14は、データ/測距信号受
信系13からの信号を受け、受信したメッセージを表示す
る。位置・速度処理表示系15は、測定結果をブラウン
管,液晶表示器等を介して表示するものである。例え
ば、自動車のナビゲーターであれば、道路,建物を表示
して運転者に現在地を示す。 高度計17は、航空機等に搭載するもので、地表面から
の高度を測定する。本システムで計測したデータ等と組
み合わせて、正確な位置の測定ができる。ユーザクロッ
ク12の精度は、10-9〜10-10程度で良い。地上局3は、
主局と、2つの測距局からなり、データ/測距信号送信
計21,地上局精密クロック22,データ/測距信号受信計2
3,衛星監視系24,送信メッセージ発生系25,受信メッセー
ジ系再生系26,ユーザクロック同期化処理系27,衛星クロ
ック/軌道計算処理系28,衛星処理系29,ユーザ管制系30
等から構成される。 データ/測距信号送信系21は、衛星1の中継器5,デー
タ/測距信号受信系8にデータ,測距信号を送信する。
地上局精密クロック22は、10-12〜10-13程度の高精度と
精密な原子時計であることが望ましいが、10-11程度で
も運用は可能である。データ/測距信号受信系23は、衛
星1の中継器5,データ/測距信号送信系6からの信号を
受信するものである。衛星監視系24は、衛星1の軌道,
機器のメンテナンスを行うものである。送信メッセージ
発生系25は、ユーザ2へ各種情報をメッセージするもの
である。 ユーザ管制系30は、ユーザへの及びユーザからの各種
提供情報を保有しユーザの関係機関との情報交信を行
う。送信メッセージ発生系25はユーザへのメッセージ或
いは△tsを送る機能を有している。受信メッセージ再生
系26は、ユーザ2からの信号の内容を再生してユーザ管
制系30に提供する。ユーザクロック同期化処理系27は、
ユーザのクロック12と衛星のクロック7、地上局のクロ
ック7とのそれぞれの時間の誤差を周期的に、或いはユ
ーザの要求に対応して同期処理するものである。衛星ク
ロック/軌道計算処理系28は、衛星の軌道位置クロック
の誤差を計算処理するものである。 衛星指令系29は、衛星の軌道位置の修正・保持及び衛
星の管制を行うための指令系である。 また、各点線L1F,Ls,L2R,L1R,L2F,Ls,Lsは、搬送電波
の流れを示す。 システムのモード 第4図は、前記した本発明のシステムの運用を示すモ
ードチャートの例である。ユーザクロック化モードは、
間欠周期的に行う。この周期間隔Tは、ユーザクロック
の安定性と要求精度によって違ってくるが、本例では1
時間に数回程度である。また、地上局と衛星データの更
新の周期Tは、衛星クロックの精度、安定性によって変
わってくるものである。本例では1日に数回程度であ
る。衛星の管制も通常行われているように1か月数回程
度である。 第3図(b)は、第4図(a)に示した連続測位モー
ドの場合のシステムの動きを示す概念図である。太線で
囲まれた機器の作動状態であることを示す。連続測位モ
ードの場合の衛星1とユーザ2間のクロックは、同期し
ていることが前記である。したがって、2〜3個の衛星
1から搬送波に載せられた測距信号Lsが連続的に送られ
てくるのみで、ユーザ2は位置を計測できる。 第3図(c)は、第4図(c)のユーザクロック同期
化モードの場合のシステムの動きを示す概念図である。
ユーザのデータ/測距信号送信系11から測距信号L2Rが
発せられると、衛星1の中継器5を介して信号L2Fが地
上局3のデータ/測距信号受信系23に入る。この測距信
号L2Fが入ると、ユーザクロック同期化処理系27が作動
し、到達時間を計測する。 第3図(d)は、第4図(b)の通信モードの場合の
システムの動きを示す概念図である。前記した本システ
ムの原理で詳記した△tsを地上局3から衛星1を介して
ユーザ21に送る場合である。 第5図は、第3図で示した本システムの機能の作動を
示す一覧である。例えば、航法モードのとき作動するの
が、○印を付したユーザ装置では衛星1PN(Pseudo−ran
dom Noise,擬似雑音)信号受信処理,衛星2PN信号受信
処理,衛星3PN信号受信処理,衛星系ではのPN信号送
信,衛星データ処理・更新である。 計測システムの作動 第6図に示すフローチャートは、ユーザ装置の動作を
示すメインの動作フロー図の例である。スタートする
と、初期化のルーチンに入り初期化を行う(ステップ
)。ステップでユーザが高度計などの情報から高度
情報が利用できるか否か判断する。利用できれば、3つ
の衛星から測距信号を受信し、擬似距離を算出する(ス
テップ)。高度情報が利用できれば、この情報と2衛
星からの測距信号を受信し疑似距離を算出する。(ステ
ップ)。 ステップでユーザのクロックバイアスを消去して、
ユーザ位置を算出する(ステップ)。ステップで現
在位置情報使用可能か否か判断する(ステップ)。YE
Sであれば、その位置とステップで算出した位置と比
較し、許容値内か否か判断する(ステップ)。すなわ
ち、本システムの性能上の許容誤差か否か判断する。許
容値内であればステップに進む。許容値以外であれば
ステップに進む。ステップでは、クロック同期化の
時間間隔を経過したか否かを判断する。設定時間間隔を
越えておけば、ステップに進み、ユーザのクロック12
を衛星1のクロック7と同期化させる。 クロック同期化を行う時間間隔は、ユーザーの測位精
度をどの程度要求するか、ユーザクロックの精度によっ
て定まる。ユーザが端末から必要に応じて同期化の時間
間隔を設定できるものである。 ステップではユーザ装置の操作スイッチよりクロッ
ク較正モードを随意選択できる。クロック較正モードで
あれば、ステップでクロックのバイアス変化率を較正
する。クロックのバイアス変化率の定期的な較正は、計
測精度を高める上で有力である。ユーザのクロック誤差
(もちろん衛星クロックについても同様だが)で較正が
可能でかつ較正の効果が大きい要素として、クロックの
時間の同期に係わる誤差、すなわちクロックバイアス誤
差と、クロックバイアスが時間に比例して増減するクロ
ックバイアス変化率がある。 まずクロックバイアス誤差については第6図のステッ
プすなわち第7図のロジックに従って算出可能であ
り、位置測定精度の向上に利用できる。 クロックバイアス変化率についてはクロックの基本的
な精度を決定するものであり、これが簡単に較正可能で
あれば比較的低価格のクロックをユーザクロックとして
採用できるが、この一定のクロックバイアス変化率につ
いては、定位置での連続測位値の増大の傾向から推進で
きる。クロック較正ロジックは、表示器に粗,普通,精
などの3レベルの較正モードの1つを選択すれば、3レ
ベルに対応した較正の所要時間を終えた後、クロック誤
差パラメータを推定し、これを測定処理に使用する為の
手続きを終えて、このモードを完了するロジックを有す
る。 クロックの同期化処理 第7図は、第6図のステップに対応するクロックを
同期化するためのユーザ装置のフローチャートである。
まず、最初のサイクルか否か判断し、最初のサイクルで
あれば処理パラメータの初期化する(ステップ,
)。ステップで自分の割当回線が空いているか否か
判断し、回線が空いていればステップに進み、データ
/測距信号を衛星1の中継器5を介して、地上局3のデ
ータ/測距受信系23に送る。地上局3は衛星測距信号を
受信し、擬似到達時間を算出する(ステップ)。 ステップで地上局からの同期メッセージがあるか否
かの判断をする。メッセージよりユーザと衛星間の擬似
到達時間を得てクロックバイアスを求める。クロック同
期化モード選択を解除する(ステップ)。 クロック較正処理 第8図は、第6図のフローのステップに対応するク
ロック較正ロジックの詳細なフローチャートである。最
初のサイクルか否か判断してパラメータを初期化する
(ステップ,)。 通常、測位計算の過程で算出されるユーザ/衛星間の
距離には衛星の時間的な位置の移動の外に、衛星内の装
置及びユーザ装置な内部で、或いは電波の伝播の過程で
不規則の測距誤差が混入する。まず衛星の位置移動(地
球固定基準座標に対する移動)は衛星の軌道要素により
正確に推定し、これを計算上除去することができるが、
不規則な測距誤差については複数の数値の平均化に頼ら
ざるを得ない。 すなわち、ステップにて所定時間間隔(たとえば60
秒)に達しない場合は、前記の位置移動の成分を除去し
た複数個の距離の値(レンジ)を算術平均する(ステッ
プ)。所定の時間間隔に達すれば、前記の最新のレン
ジの平均値を過去のレンジの平均値より、距離の時間変
化率(レンジレート)を算出するためのフィルタを使用
して、レンジレートを算出し、更新する(ステップ
)。レンジレート算出法にはイテラティブ(Iterativ
e)な最小自乗法やカルマンフィルタが一般的である
が、この場合更新されたレンジレートの変動値より、レ
ンジレートの推定値がある特定の値に収束し、推定が正
しく実行されているか否かを判定できる(ステップ
)。 充分安定していないければ、本ロジックの実行を管理
するメインロジックに復帰し、メインロジックでの適当
な処理を実用した後、再び本ロジックの先頭にもどって
くることになるだろう。レンジレートの推定が充分安定
して実行されており、所定の較正時間を経過した場合
(ステップ)、上記レンジレートの安定した最終値を
光速で除算することによってクロックバイアスの時間変
化率を求めユーザ装置内に記憶する(ステップ)とと
もにクロック較正モードを解除する(ステップ)こと
によって本ロジックの実行は完了する。 第8図ではユーザクロックの較正(クロックバイアス
の時間変化率の算出・更新)の原理を容易に説明するた
め、衛星/ユーザ間のレンジの変化を利用する方法を対
象として記述したが、この方法はユーザ装置の有する処
理ロジックを有効に利用していない。以下、さらに簡易
なユーザクロック較正の方式を説明する。 ユーザクロックのバイアス変化率△Bは特定の時間
△tの経過の後、クロックバイアスを△B×△tだけ
増加させる。すなわち、時刻toでのクロックバイアスが
△B(to)とすれば、△tの経過の後、時刻t1(t1=
to+△t)でのクロックバイアス△tB(to+△t)は△
tB(to)+△B×△tとなる。ユーザ装置では時刻to
でのユーザ位置が算出されており、これを水平面内の座
標(Xo,Yo)とする。時間△tの経過後、すなわち時刻t
1(t1=t0+△t)では、クロックバイアスの増減分だ
け、ユーザ装置の算出する位置が移動する。この座標を
(X1,Y1)とする。ここでユーザ装置が内蔵するロジッ
クを使用して、擬似的なバイアス値△t′B(△t′B
=△tB(to)+△tc)に従ったユーザの位置計算を行う
とその結果は、座標(Xc,Yc)として計算される。以上
の実測座標値(Xo,Yo),(X1,X1)と擬似的なバイアス
値△t′Bによる座標値(Xc,Yc)よりユーザクロック
のバイアス変化率△t′Bが以下の式より算出できる。
すなわち、 ここで、SGNは|Xc−X0|と|Yc−Yo|を比較して例えば|
Xc−X0|が大きいとすれば、(Xc−X0)×(X1−X0)>
0のとき+1、(Xc−X0)×(X1−X0)<0のとき−1
の値となる。 以上のクロックバイアス変化率の算出法は極めて簡単
であり実用的である。もしもユーザの位置が正確に与え
られるならば、この較正モードにおいて同時に時間t0で
のクロックバイアス△tB(t0)も算出できる。すなわ
ち、真のユーザ位置を座標(XN,XN)とすれば、座標
(X0,Y0)とすれば、クロックバイアスによるものであ
るから、 より時刻t0でのクロックバイアス誤差△tB(t0)がもと
まる。 第9図は、ユーザー装置の同期化時間間隔と要求測位
精度との関係の概念を示したものである。測位精度を向
上させるには、同期化時間間隔を小さくする必要がある
ことを意味する。第10図は、前記したような手法からク
ロックバイアス誤差の傾向を読み、誤差を較正した場合
の較正時間間隔と、ドリフトレート推定精度と、測距誤
差の関係を示した図である。前記したようにこの考え型
を使うと、クロックバイアス誤差を自動的に較正するこ
とができ較正時間間隔は少なくても済む。 [効 果] 以上、詳細したように本発明によって、少なくとも2
個の衛星からの測距信号の受信可能な領域での連続測位
が可能になった。また、移動体の運動の程度に強く影響
されないで高精度測位が可能になった。更に、慣性航法
装置の如く高精度な初期位置・速度などの補助情報は不
要である。また、衛星の軌道上に配置する個数を増大さ
せることによって、連続測位の可能な領域を拡張するこ
とができるのは当然であるが、限定された領域ではGPS
に比較して極めて少数の衛星によって連続測位が行える
ことが本システムの開発費,維持費の抑制の観点で極め
て大きな効果を有する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の位置計測システムの概念図、第2図は
本発明のシステムの原理を示す図、第3図(a),
(b),(c),(d)は本発明のシステムの機能ブロ
ック図、第4図は本システムのモードを示す図、第5図
は本発明のシステム機能の作動を示す表、第6図はユー
ザ装置の作動を示すメインのフローチャート図、第7図
はユーザのクロックを同期化処理のフローチャート、第
8図はユーザクロック較正処理のフローチャート、第9
図は同期化時間間隔と測位精度との関係の概念を示した
図、第10図は較正時間とドリトフレート推定精度の関係
を示す図、第11図,12図は従来技術を示す図である。 1……衛星,2……ユーザ,3……地上局
本発明のシステムの原理を示す図、第3図(a),
(b),(c),(d)は本発明のシステムの機能ブロ
ック図、第4図は本システムのモードを示す図、第5図
は本発明のシステム機能の作動を示す表、第6図はユー
ザ装置の作動を示すメインのフローチャート図、第7図
はユーザのクロックを同期化処理のフローチャート、第
8図はユーザクロック較正処理のフローチャート、第9
図は同期化時間間隔と測位精度との関係の概念を示した
図、第10図は較正時間とドリトフレート推定精度の関係
を示す図、第11図,12図は従来技術を示す図である。 1……衛星,2……ユーザ,3……地上局
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.受信・発信装置とクロックとを内蔵する地上局と、
地球の表面の軌道上に配置された受信・発信装置とクロ
ックとを内蔵する少なくとも2個の衛星と、位置が不明
で前記衛星と通信をするための受信・発信装置とクロッ
クとを有した位置計測手段とからなる衛星による位置計
測システムであって、 位置を計測するために少なくとも1個の前記衛星に設け
られ前記1個の衛星のクロック時刻に基づいて第1測距
信号を発する第1測距信号発信手段と、 位置を計測するために前記位置計測手段の各々に設けら
れ前記位置計測手段の各々のクロック時刻に基づいて第
2測距信号を発する第2測距信号発信手段と、 衛星と地上局との間で直接的に前記第1測距信号が伝播
する第1到達時間と前記位置計測手段と前記地上局との
間で間接的に前記衛星を介して前記第2測距信号が伝播
する第2到達時間から到達時間差Δtsを算出する第1算
出手段と、 前記位置計測手段が前記第2測距信号を発した時刻と前
記第1測距信号が前記位置計測手段に到達する時刻との
時刻差ΔTuを算出する第2算出手段とからなり、 前記第1算出手段は前記地上局が備える第1時計を含
み、 前記第2算出手段は前記位置計測手段が備える第2時計
を含み、 更に、前記到達時間差ΔTsと前記時刻差ΔTuとからクロ
ックバイアスΔTbを下記関係式 ΔTb=(ΔTs−ΔTu)/2 から計算する計算手段とからなり、 前記関係式でΔTuは零でなく任意の値であり、 前記クロックバイアスΔTbが前記第1時計と前記第2時
計とを同期化するために用いられる 衛星による位置計測システム。 2.更に、前記クロックバイアスΔTbを用いて前記第1
時計と前記第2時計とを同期化した後に前記同期化後に
前記位置計測手段の位置の移動を停止した状態で計測し
た位置の発散傾向により前記第2時計の誤差を自動的に
較正する機能を有する手段とからなる 特許請求の範囲第1項に記載の衛星による位置計測シス
テム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10126687A JP2711271B2 (ja) | 1987-04-24 | 1987-04-24 | 衛星による位置計測システム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10126687A JP2711271B2 (ja) | 1987-04-24 | 1987-04-24 | 衛星による位置計測システム |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS63266375A JPS63266375A (ja) | 1988-11-02 |
JP2711271B2 true JP2711271B2 (ja) | 1998-02-10 |
Family
ID=14296091
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10126687A Expired - Fee Related JP2711271B2 (ja) | 1987-04-24 | 1987-04-24 | 衛星による位置計測システム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2711271B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6266012B1 (en) * | 1998-09-28 | 2001-07-24 | Telefonaktiebolaget Lm Ericsson | Use of global positioning system in locating a radio transmitter |
US8706392B2 (en) | 2009-05-07 | 2014-04-22 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Distance detection device and collision determination device |
CN114397646B (zh) * | 2021-11-30 | 2024-06-21 | 中国西安卫星测控中心 | 深空测距上下行设备零值的标定与分离方法 |
CN114815571B (zh) * | 2022-03-31 | 2023-07-25 | 北京微纳星空科技有限公司 | 一种星地时差的测量方法、系统、存储介质和电子设备 |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US4161730A (en) * | 1977-10-17 | 1979-07-17 | General Electric Company | Radio determination using satellites transmitting timing signals with correction by active range measurement |
-
1987
- 1987-04-24 JP JP10126687A patent/JP2711271B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS63266375A (ja) | 1988-11-02 |
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