JP2683516B2 - 表面硬化木質化粧板の製造方法 - Google Patents

表面硬化木質化粧板の製造方法

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JP2683516B2
JP2683516B2 JP20192195A JP20192195A JP2683516B2 JP 2683516 B2 JP2683516 B2 JP 2683516B2 JP 20192195 A JP20192195 A JP 20192195A JP 20192195 A JP20192195 A JP 20192195A JP 2683516 B2 JP2683516 B2 JP 2683516B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、木質化粧板の製造方法
に関し、更に詳しくは、表面が平滑で、優れた美観を有
し、かつ表面硬度、耐摩耗性および耐水性等に優れた表
面硬化木質化粧板を工業的に有利に製造する方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、木材の美観、表面硬度、耐摩耗性
および耐水性などを向上させるために、木材に熱硬化性
樹脂を減圧または加圧下で含浸させ、加熱硬化せしめ
る、いわゆるWPC(Wood Plastic Combination)処理す
る方法が知られている。しかしながら、このWPC処理
は工程が繁雑で、設備が大がかりとなり製造費が高くつ
くという欠点があった。また、得られた処理木材の表面
には十分な表面硬度、耐摩耗性をもたらすほどの樹脂膜
層が形成されないという問題があった。また、木材の表
面に熱硬化性樹脂を含浸させた紙、不織布、あるいは、
布等をオーバーレイする方法がある。しかしながら、こ
の方法では紙、不織布、あるいは、布等に含浸された樹
脂の流動性が悪く、道管や仮道管の大きな木材では、接
着が不良となり、浮き現象が生じるなどの問題があっ
た。さらに、木材表面を直接、熱硬化性樹脂で被覆する
方法がある。この方法は道管、仮道管の大きな木材、あ
るいは、その表面が粗面となっているような木材の表面
を被覆するのに好適である。しかしながら、熱硬化性樹
脂の硬化を熱圧によって行おうとした場合、熱硬化性樹
脂の架橋による硬化が始まる前に、熱硬化性樹脂の急激
な粘度低下を伴うために、該熱硬化性樹脂が木材の側面
から外部に流出するという欠点があった。また、得られ
る処理木材の表面の樹脂層の耐クラック性が悪く、割れ
を生じやすいという欠点を有していた。
【0003】さらにまた、本発明者らは、先に、表面硬
化木質化粧板の製造方法(特開平2-145339号)を提案し
た。この方法は、上記諸課題を解消し、優れた美観、表
面硬度、耐磨耗性、および、耐水性に優れた表面硬化木
質化粧板を提供するものであった。しかしながら、この
製造方法は木質基材上に粉体状の硬化性組成物を散布
(フォーミング)するという工程を有しており、均一に
散布するのが困難であり、表面平滑性の良好な化粧板を
得るには高圧下で熱圧成形しなければならないという問
題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記したよ
うな状況に鑑み、木質板材、とりわけ、美観的に十分で
ない、あるいは、表面硬度の低い木質板材の表面に化学
修飾木質材、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および、重
合開始剤から成るシート状の硬化性組成物を載置し、一
体化させることにより、表面が平滑で、優れた美観を有
し、かつ表面硬度、耐摩耗性および耐水性等に優れた表
面硬化木質化粧板を工業的に有利に製造する方法を提供
することをその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題点に鑑み、鋭意研究を行った。この結果、木質基材に
化学修飾木質材、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および重
合開始剤からなるシート状の硬化性組成物を載置し、熱
圧成形することにより上記課題を解決できることを見い
出し本発明に至ったのである。
【0006】即ち、本発明によれば、化学修飾木質材、
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および重合開始剤から成る
シート状の硬化性組成物を木質基材に載置し、熱圧成形
することにより、該シート状の硬化性組成物中の化学修
飾木質材の可塑化と熱硬化性樹脂の架橋反応を行わせし
め、該シート状の硬化性組成物と該木質基材とを一体化
させることを特徴とする表面硬化木質化粧板の製造方法
が提供され、また、熱可塑性樹脂のビカット軟化点が1
20℃以下であり、さらに、重合開始剤の1分間での半
減期温度が140℃以上であることを特徴とする表面硬
化木質化粧板の製造方法が提供され、また、熱可塑性樹
脂が化学修飾木質材100重量部に対して1〜20重量
部含まれることを特徴とする表面硬化木質化粧板の製造
方法が提供され、また、より好ましくは、熱可塑性樹脂
がエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とす
る表面硬化木質化粧板の製造方法が提供され、また、熱
硬化性樹脂が化学修飾木質材100重量部に対して1〜
60重量部含まれることを特徴とする表面硬化木質化粧
板の製造方法が提供され、また、より好ましくは、熱硬
化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂であることを特徴と
する表面硬化木質化粧板の製造方法が提供され、また、
化学修飾木質材が、木質材に多塩基酸無水物およびエポ
キシ化合物を反応させて得られるオリゴエステル化木質
材であることを特徴とする表面硬化木質化粧板の製造方
法が提供され、また、より好ましくは、オリゴエステル
化木質材の製造段階において、熱可塑性樹脂を添加混合
し、得られたオリゴエステル化木質材と熱可塑性樹脂と
の混合物に熱硬化性樹脂および重合開始剤を添加混合
し、シート化することによりシート状の硬化性組成物を
得ることを特徴とする表面硬化木質化粧板の製造方法が
提供される。
【0007】本発明で使用する化学修飾木質材とは、木
質材中の水酸基に化学物質を反応させたものであって、
この化学物質の種類と量によって、木質材そのものには
本来備わっていなかった熱可塑性を付与することができ
る。本発明においては化学修飾木質材のうち熱可塑性の
高いものを使用するのが好ましい。これらの例として
は、特開昭57-103804号、特開昭60-206602号、特開昭58-3
2807号、特開昭60-188401号、 白石信夫:木材学会誌vol.
32,No.10,P755-762(1986)、大越誠 :木材学会誌vol.3
6,No.1,P57-63(1990)、等において開示されたエステル
化木材、エーテル化木材、アセチル化木材、アリル化木
材、ベンジル化木材、ラウロイル化木材、エチル化木
材、シアノエチル化木材、さらに、特開平2-145339号に
おいて開示されている木質成分中の水酸基に二塩基酸無
水物および重合性二重結合を有するモノエポキシ化合物
を反応させたオリゴエステル化木材、またさらに、アセ
チルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチル
セルロース等のセルロース誘導体等を用いることができ
る。これらの化学修飾木質材のうちでも、製造工程が簡
単で、反応後、系から除去する必要がある副生物がない
という理由から、オリゴエステル化木質材が特に好適に
用いられる。
【0008】一方、化学修飾木質材の原料となる木質材
に関しては、樹種や形状に特に制限はなく、木粉、木材
繊維、木材チップ等の木材を粉砕したものが使用可能で
あるし、セルロース、パルプ等も使用可能である。さら
には、未利用のまま大量に廃棄される麦わら、稲わら、
もみがら、古紙、リンター、バガス等の植物繊維、ある
いは、その他のセルロースやリグニンを主成分とするリ
グノセルロース材料を粉砕したもの等も使用可能であ
る。
【0009】また、熱可塑性樹脂としては、低密度ポリ
エチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチ
レン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブ
テン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレ
ンオキサイドやメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチ
レン共重合体、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−エチル
アクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート
−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重
合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレ
ン−メチルメタアクリレート共重合体、熱可塑性ポリウ
レタン、アイオノマー、芳香族ポリエステル、脂肪族ポ
リエステル等が単独で、あるいは、複数種ブレンドされ
て使用される。本発明において用いられる熱可塑性樹脂
は、化学修飾木質材、熱硬化性樹脂、重合開始剤を効率
よく包含でき、さらに、重合開始剤の分解を避けること
ができる温度で混練できるものが好ましい。この意味か
ら本発明では上記熱可塑性樹脂の中でもビカット軟化点
が120℃以下のもの、および1分間での半減期温度が
140℃以上の重合開始剤が組み合わされて用いられる
のが好ましく、さらには、ビカット軟化点が100℃以
下のもの、および1分間での半減期温度が150℃以上
の重合開始剤が組み合わされて用いられるのが望まし
い。また、上記条件を満たす熱可塑性樹脂の中でもエチ
レン−酢酸ビニル共重合体が、またさらには、酢酸ビニ
ル含量が10〜50重量%のエチレン−酢酸ビニル共重
合体がより好ましい。
【0010】一方、熱可塑性樹脂の配合量は化学修飾木
質材100重量部に対して1〜20重量部であること
が、さらには好ましくは2〜10重量部であることが望
ましい。熱可塑性樹脂の配合量が1〜20重量部の範囲
内であれば化学修飾木質材、熱硬化性樹脂、重合開始剤
と混合し、シート化する際、これらを効率よく包含で
き、さらに得られる表面硬化木質化粧板の表面処理層の
表面硬度、耐摩耗性、耐熱変形性を損なわず好ましい。
【0011】熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステ
ル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、
ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリ
ルフタレート樹脂などが使用可能である。そして、熱硬
化性樹脂の配合量は、化学修飾木質材100重量部に対
して1〜60重量部であることが望ましい。熱硬化性樹
脂の配合量がこの範囲内であれば十分な表面硬度、耐摩
耗性が得られ、さらに、該熱硬化性樹脂を化学修飾木質
材、熱可塑性樹脂、重合開始剤と混合しシート化する作
業が容易である。また、化学修飾木質材との相溶性が良
好であるという理由により、熱硬化性樹脂として、不飽
和ポリエステル樹脂を用いることがさらに好ましい。
【0012】一方、重合開始剤としては公知の有機過酸
化物が使用でき、例えば、:ビス−3,5,5−トリメチ
ルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサ
イド、p−ベンゾイルパーオキサイド、等のジアシルパ
ーオキサイド:ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメ
チル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサ
ン、 1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロ
ピル)−ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、
ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5− ジメチル−
2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキセン−
3、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等の
ジアルキルパーオキサイド:2,4,4−トリメチルペン
チルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−アミル
パーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパー
オキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオ
キシ−イソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシ−ヘ
キサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ3,
5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオ
キシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、
ジ−t−ブチルパーオキシ−トリメチル−アジペート等
のアルキルパーエステル:ジ−3−メトキシブチルパー
オキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオ
キシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキ
シル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパー
オキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロ
ピルカーボネート等のパーカーボネート等が使用可能で
ある。また本発明においては、前記したように化学修飾
木質材、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および重合開始剤
を添加混合してシート状とする工程時においては、重合
開始剤が分解しにくい方が好ましい。この意味から、ジ
クミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−
(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン、 1,3 −ビス
−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)−ベンゼ
ン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチル
パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−
ブチルパーオキシ)−ヘキセン−3、トリス−(t−ブ
チルパーオキシ)トリアジン、t−ブチルパーオキシ
3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパー
オキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエー
ト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート
等、1分間での半減期温度が150℃以上のものがビカ
ット軟化点が120℃以下の熱可塑性樹脂と組み合わさ
れて用いられるのがより好ましい。。これらの重合開始
剤は単独で、あるいは、複数種組み合わせて用いられ、
その配合量は熱硬化性樹脂100重量部に対して、0.
1〜20重量部、さらに好ましくは1.0〜10重量部
である。
【0013】その他本発明においては、熱硬化性組成物
の硬化特性、および、硬化物の特性を低下させない範囲
内において該熱硬化性組成物に可塑剤、内部離型剤、抗
菌剤、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定
剤、香料等を配合することを妨げるものではない。
【0014】また、木質基材としては、その樹種を問わ
ず、さらに、木材から直接切り出された板であるか、合
板であるか、パーティクルボードであるか、OSBであ
るか、あるいは、集成材であるかを問わず、あらゆる木
質板が使用可能であるが、カラマツ、スギ、ヒノキ、シ
ナ、ホウ、カツラなどの表面の軟らかい樹木、木目柄の
不鮮明な樹木から得られる木質板が本発明の効果をより
有効的に享受できるという理由のため、最も一般的に用
いられる。また、上記木質基材に前もってモノマー、プ
レポリマー、ポリマーなどを注入したもの、あるいは注
入後、さらに硬化させたものを用いることもできる。
【0015】次いで、本発明の表面硬化木質化粧板の製
造方法の具体的製造手順について説明する。まず、化学
修飾木質材に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および重合
開始剤を添加混合し、シート状の硬化性組成物を調製す
る。添加混合時の温度条件は、熱可塑性樹脂が軟化して
均一に分散できる温度で、熱硬化性樹脂の架橋反応が進
行しない温度範囲に設定することが望ましい。その混合
方法については特に限定されないが、例えば、ブレンダ
ー、ニーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー
などの混練機、あるいは、単軸、二軸押出機を用いて行
うことができる。混練のためミキシングロールを用いた
ときには、混練と同時にシート化が行え効率的である。
さらに単軸、二軸押出機にTダイを取り付けTダイスに
設けられたスリットを介して押し出すことによっても混
練と同時にシート化が行え効率的である。また、混練と
シート化を同時に行わず、混練の後、シート化を二次的
に行う場合には、混練された硬化性組成物をカレンダー
製膜装置、ミキシングロール等に供給することによりこ
れを行う。
【0016】また、化学修飾木材としてオリゴエステル
化木質材を用いる場合にはオリゴエステル化木質材の製
造段階において熱可塑性樹脂を添加混合することが望ま
しい。このようにすることによって熱可塑性樹脂がさら
に一層均一に分散するので、最終的な化粧面のむらをさ
らに少なくすることができる。
【0017】次にこのようにして得られるシート状の硬
化性組成物を木質基材に載置する。シート状の硬化性組
成物は2枚以上、積層するごとく木質基材上に載置する
こともでき、木質基材の材質、厚さ、表面状態および製
造しようとする表面硬化木質化粧板の外観等に応じて柔
軟に設定できる。次いで、木質基材に載置させられたシ
ート状の硬化性組成物側から所要時間、熱圧成形するこ
とにより、該シート状の硬化性組成物中の化学修飾木質
材の可塑化と熱硬化性樹脂の架橋反応を行わせしめ、該
シート状の硬化性組成物と該圧密化木質基材とを一体化
させる。なお当然のことながら、ここにおいてシート状
の硬化性組成物、木質基材の順番に載置を行ってもいっ
こうに構わない。
【0018】さらに、熱圧成形の際、該木質基材が圧密
化するほどの圧力をかけてもかまわない。こうすること
によって、木質基材の硬度、強度が向上する。なお、熱
圧成形の際、シート状の硬化性組成物の表面に平滑な鏡
面板をあてがってから熱圧成形すれば、得られる表面硬
化木質化粧板の表面がより平滑となり、美観的に好まし
い。また、同じく熱圧成形の際、シート状の硬化性組成
物の表面にエンボス模様が施された板をあてがってから
熱圧成形すれば、エンボス模様が表面硬化木質化粧板の
表面に転写され、意匠性のあるものとなる。
【0019】加熱加圧条件は化粧板の種類、重合開始剤
の種類、熱硬化性樹脂の種類、化学修飾木質材の種類に
よって適宜設定されるが、一般的には 加熱温度は10
0〜200℃の範囲が適当である。また圧力は化学修飾
木質材成分がその温度で可塑化するのに必要な圧力でよ
く、一般的には10〜200kg/cm2であり、好ましくは
20〜50kg/cm2である。加圧時間は1〜20分程度で
よい。これらの熱圧条件下において、該シート状の硬化
性組成物の可塑化と架橋が行われ、さらに該シート状の
硬化性組成物の一部が該木質基材に含浸され、該木質基
材が強化されるとともに、該シート状の硬化性組成物と
該圧密化木質基材が強固に一体化する。
【0020】
【作用】本発明の大きな特徴は、化学修飾木質材、熱硬
化性樹脂および重合開始剤を含む硬化性組成物を木質基
材に載置し、熱圧成形して両者を一体化するに先立ち、
あらかじめ、化学修飾木質材、熱硬化性樹脂、重合開始
剤を含む硬化性組成物をシート化し、シート状の硬化性
組成物とすることにある。このシート化を容易に行う目
的のため、熱可塑性樹脂が上記3成分につけ加えられ
る。このように4成分をシート化することにより硬化性
組成物の混練が非常に有効になされるとともに、シート
の厚み調整も比較的容易であることから、得られるシー
ト状の硬化性組成物の厚みの均一性が良好である。従っ
て、木質基材に該シート状の硬化性組成物を載置し、熱
圧成形して両者を一体化して得られる表面硬化木質化粧
板の表面平滑性が良好であり、また、該表面硬化木質化
粧板表面の硬化樹脂層の組成のばらつきがない。さら
に、熱圧成形時における硬化性組成物の流動性が良好で
あるため、比較的低圧力での熱圧が可能となるだけでな
く、木質基材に多少の凹凸があっても、硬化性組成物が
凹部に充填され、表面平滑性の良好な表面硬化木質化粧
板が得られる。
【0021】また、硬化性組成物中に化学修飾木質材が
含まれることによって、熱圧成形工程において、熱硬化
性樹脂の架橋による硬化が始まる前に、熱硬化性樹脂の
急激な粘度低下が起こり、該熱硬化性樹脂が木質基材の
側面から外部に流出するという問題点が解消される。こ
れは熱圧成型工程の初期において、熱硬化性樹脂が急激
な粘度低下を起こす時点において化学修飾木質材は、ま
だ十分な可塑化状態にはなく、依然、粉体の性質を残し
ているため、粘度低下した熱硬化性樹脂を吸収し、流出
するのを防ぐ作用をするためと考えられる。
【0022】
〔熱可塑性樹脂〕
・エチレン−酢酸ビニル共重合体(住友化学工業(株)
製、「スミテートKA−3」、酢酸ビニル含量:28w
t%、ビカット軟化点:39℃) ・エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重
合体(住友シーディエフ(株)製、「ボンダインTX8
030」、ビカット軟化点:68℃) 〔熱硬化性樹脂〕 ・不飽和ポリエステル((株)日本触媒製、「N−34
0HV」) 〔重合開始剤〕 ・ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ(株)製、「三
井DCP」、1分間での半減期温度:179℃) 一方、以下の実施例、比較例で示す物性値の測定は次の
規格に準拠した。 ・引きかき硬度試験B試験 :JAS特殊合板 ・1類浸せき剥離試験 :JAS特殊合板 ・耐摩耗性試験 :JIS A1453(総回転数1000回) ・耐衝撃性試験 :JIS A5908
【0023】[実施例1]乾燥木粉(含水率:0.7
%、商品名:LIGNOCEL S150 TR ; J. Rettenmaier& So
hne社製;繊維長:30〜60μ)750g、無水マレイン
酸100g、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体50
gを加圧型ニーダーに充填して、115℃で1時間撹拌
下に反応せしめた。その後、アリルグリシジルエーテル
(ダイソー(株)製、「ネオアリルG」)150gを添
加し、さらに、115℃で1時間撹拌下に反応せしめ
た。次に、得られたオリゴエステル化木粉とエチレン−
酢酸ビニル共重合体の混合物300g、不飽和ポリエス
テル樹脂120g、およびジクミルパーオキサイド9g
をミキシングロールにより均一になるまで混合し、次い
で該混合物を厚さ0.4mm、幅20cmのシート状で
取り出すことによって、シート状の硬化性組成物を得
た。なお、ミキシングロールによる混合にあたっては意
図的な加温は行わなかった。次に、該シート状の硬化性
組成物を鏡面板上に置き、その上に大きさ30cm×2
0cm×2cmのカラマツ集成材を載せ、プレス機の熱
板間に挿入して熱圧成形を行った。熱圧条件は温度15
0℃、圧力20kg/cm2 で5分間とした。熱圧成形
後、得られた表面硬化木質化粧板は表面が強靭で硬く、
緻密性を有し、光沢のあるプラスチック様の優れた美観
を有するものであった。さらに、このようにして得られ
た表面硬化木質化粧板の硬度、耐浸せき剥離性、耐摩耗
性、耐衝撃性を評価した。その結果を表1に示す。
【0024】[実施例2]乾燥サンダー粉(含水率:
0.5%、80メッシュ篩を通過したもの)750g、
無水マレイン酸100g、およびエチレン酢酸ビニル樹
脂50gを加圧型ニーダーに充填して、115℃で1時
間撹拌下に反応せしめた。その後、アリルグリシジルエ
ーテル(ダイソー(株)製、「ネオアリル」)150g
を添加し、さらに、115℃で1時間撹拌下に反応せし
めた。次に、得られたオリゴエステル化サンダー粉とエ
チレン−酢酸ビニル共重合体の混合物300g、不飽和
ポリエステル樹脂100g、およびジクミルパーオキサ
イド7.5gをミキシングロールにより均一になるまで
混合し、次いで該混合物を厚さ0.4mm、幅20cm
のシート状で取り出すことによって、シート状の硬化性
組成物を得た。なお、ミキシングロールによる混合にあ
たっては意図的な加温は行わなかった。次に、該シート
状の硬化性組成物を鏡面板上に置き、その上に大きさ3
0cm×20cm×2cmのカラマツ集成材を載せ、プ
レス機の熱板間に挿入して熱圧成形を行った。熱圧条件
は温度150℃、圧力20kg/cm2 で5分間とし
た。熱圧成形後、得られた本発明の表面硬化木質化粧板
は表面が強靭で硬く、緻密性を有し、光沢のあるプラス
チック様の優れた美観を有するものであった。さらに、
このようにして得られた表面硬化木質化粧板の硬度、耐
浸せき剥離性、耐摩耗性、耐衝撃性を評価した。その結
果を表1に示す。
【0025】[実施例3]乾燥木粉(含水率:0.7
%、商品名:LIGNOCEL S150 TR ; J. Rettenmaier& So
hne社製;繊維長:30〜60μ)750g、無水マレイン
酸100g、およびエチレン−エチルアクリレート−無
水マレイン酸共重合体100gを加圧型ニーダーに充填
して、115℃で1時間撹拌下に反応せしめた。その
後、アリルグリシジルエーテル(ダイソー(株)製、
「ネオアリル」)150gを添加し、さらに、115℃
で1時間撹拌下に反応せしめた。次に、得られたオリゴ
エステル化木粉とエチレン−エチルアクリレート−無水
マレイン酸共重合体の反応物300g、不飽和ポリエス
テル樹脂100g、およびジクミルパーオキサイド7.
5gをミキシングロールにより均一になるまで混合し、
次いで該混合物を厚さ0.4mm、幅20cmのシート
状で取り出すことによって、シート状の硬化性組成物を
得た。なお、ミキシングロールによる混合にあたっては
意図的な加温は行わなかった。次に、該シート状の硬化
性組成物を鏡面板上に置き、その上に大きさ30cm×
20cm×2cmのカラマツ集成材を載せ、プレス機の
熱板間に挿入して熱圧成形を行った。熱圧条件は温度1
50℃、圧力20kg/cm2 で5分間とした。熱圧成
形後、得られた本発明の表面硬化木質化粧板は表面が強
靭で硬く、緻密性を有し、光沢のあるプラスチック様の
優れた美観を有するものであった。さらに、このように
して得られた表面硬化木質化粧板の硬度、耐浸せき剥離
性、耐摩耗性、耐衝撃性を評価した。その結果を表1に
示す。
【0026】[実施例4]セルロースアセテート(含水
率:0.5%、商品名:L−AC、DS2.4、ダイセ
ル化学工業(株))700g、フタル酸ジメチル300
g、およびエチレン酢酸ビニル樹脂50gを加圧型ニー
ダーに添充填して、110℃で1時間撹拌下に反応せし
めた。次に、得られたセルロースアセテートとフタル酸
ジメチルとエチレン−酢酸ビニル共重合体の混合物30
0g、不飽和ポリエステル樹脂120g、およびジクミ
ルパーオキサイド9gをミキシングロールにより均一に
なるまで混合し、次いで該混合物を厚さ0.4mm、幅
20cmのシートで取り出すことによって、シート状の
硬化性組成物を得た。なお、ミキシングロールによる混
合にあたっては意図的な加温は行わなかった。次に、該
シート状の硬化性組成物を鏡面板上に置き、その上に大
きさ30cm×20cm×2cmのカラマツ集成材を載
せ、プレス機の熱板間に挿入して熱圧成形を行った。熱
圧条件は温度150℃、圧力20kg/cm2 で5分間
とした。熱圧成形後、得られた本発明の表面硬化木質化
粧板は表面が強靭で硬く、緻密性を有し、光沢のあるプ
ラスチック様の優れた美観を有するものであった。さら
に、このようにして得られた表面硬化木質化粧板の硬
度、耐浸せき剥離性、耐摩耗性、耐衝撃性を評価した。
その結果を表1に示す。
【0027】[比較例1]乾燥木粉(含水率:0.7
%、商品名:LIGNOCEL S150 TR ; J. Rettenmaier& So
hne社製;繊維長:30〜60μ)750g、および無水マ
レイン酸100gを加圧型ニーダーに充填して、115
℃で1時間撹拌下に反応せしめた。その後、アリルグリ
シジルエーテル(ダイソー(株)製、「ネオアリル」)
150gを添加し、さらに、115℃で1時間撹拌下に
反応せしめた。次に、得られたオリゴエステル化木粉3
00g、不飽和ポリエステル樹脂120g、およびジク
ミルパーオキサイド9gをミキシングロールに添加し
て、均一になるまで混合し、粉体状の硬化性組成物を得
た。次に、該粉体状の硬化性組成物を散布量0.4kg
/m2 で鏡面板の上に均等に散布し、その上に大きさ3
0cm×20cm×2cmのカラマツ集成材を載せ、プ
レス機の熱板間に挿入して熱圧成形を行った。熱圧条件
は温度150℃、圧力20kg/cm2 で5分間とし
た。熱圧成形後、得られた表面硬化木質化粧板は表面が
一部可塑化していない部分があり、また、光沢にもむら
が見られ、美観の乏しいものであった。さらに、このよ
うにして得られた表面硬化木質化粧板の硬度、耐浸せき
剥離性、耐摩耗性、耐衝撃性を評価した。その結果を表
1に示す。
【0028】[比較例2]乾燥木粉(含水率:0.7
%、商品名:LIGNOCEL S150 TR ; J. Rettenmaier& So
hne社製;繊維長:30〜60μ)300g、エチレン−酢
酸ビニル共重合体20g、不飽和ポリエステル樹脂12
0g、およびジクミルパーオキサイド9gをミキシング
ロールにより均一になるまで混合し、次いで該混合物を
厚さ0.4mm、幅20cmのシート状で取り出すこと
によって、シート状の硬化性組成物を得た。なお、ミキ
シングロールによる混合にあたっては意図的な加温は行
わなかった。次に、該シート状の硬化性組成物を鏡面板
上に置き、その上に大きさ30cm×20cm×2cm
のカラマツ集成材を載せ、プレス機の熱板間に挿入して
熱圧成形を行った。熱圧条件は温度150℃、圧力20
kg/cm2 で5分間とした。熱圧成形後、得られた表
面硬化木質化粧板は木粉が可塑化しなかったため硬化層
に透明感がなく、また光沢にもむらが見られ、美観の乏
しいものであった。さらに、このようにして得られた表
面硬化木質化粧板の硬度、耐浸せき剥離性、耐摩耗性、
耐衝撃性を評価した。その結果を表1に示す。
【0029】[比較例3]乾燥木粉(含水率:0.7
%、商品名:LIGNOCEL S150 TR ; J. Rettenmaier& So
hne社製;繊維長:30〜60μ)750g、無水マレイン
酸100g、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体50
0gを加圧型ニーダーに充填して、115℃で1時間撹
拌下に反応せしめた。その後、アリルグリシジルエーテ
ル(ダイソー(株)製、「ネオアリルG」)150gを
添加し、さらに、115℃で1時間撹拌下に反応せしめ
た。次に、得られたオリゴエステル化木粉とエチレン酢
酸ビニル樹脂の混合物300gをミキシングロールによ
り均一になるまで混合し、次いで該混合物を厚さ0.4
mm、幅20cmのシートで取り出すことによって、シ
ート状組成物を得た。次に、該シート状組成物を鏡面板
上に置き、その上に大きさ30cm×20cm×2cm
のカラマツ集成材を載せ、プレス機の熱板間に挿入して
熱圧成形を行った。熱圧条件は温度150℃、圧力20
kg/cm2 で5分間とした。熱圧成形後、得られた表
面硬化木質化粧板は表面が柔らかく、硬度、および耐摩
耗性の低いものであった。さらに、このようにして得ら
れた表面硬化木質化粧板の硬度、耐浸せき剥離性、耐摩
耗性、耐衝撃性を評価した。その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】表1より明らかなように、本発明の表面硬
化木質化粧板は十分な表面硬度、耐浸せき剥離性、耐摩
耗性を有している。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
簡便で効率的な表面硬化木質化粧板の製造方法が提供さ
れる。この製造方法によって得られる表面硬化木質化粧
板は、表面が平滑で、優れた美観を有し、かつ表面硬
度、耐浸せき剥離性、耐摩耗性および耐水性等に優れて
いる。また、本製造方法は木質基材を選ばず、例えば表
面の軟かい樹木、木目柄の不鮮明な樹木からも優れた美
観を有する表面硬化木質化粧板を製造することができ
る。このように本発明は建材分野において好適に使用さ
れる表面硬化木質化粧板の製造方法を提供するものであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−143214(JP,A)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学修飾木質材、熱可塑性樹脂、熱硬化
    性樹脂および重合開始剤から成るシート状の硬化性組成
    物を木質基材に載置し、熱圧成形することにより、該シ
    ート状の硬化性組成物中の化学修飾木質材の可塑化と熱
    硬化性樹脂の架橋反応を行わせしめ、該シート状の硬化
    性組成物と該木質基材とを一体化させることを特徴とす
    る表面硬化木質化粧板の製造方法。
  2. 【請求項2】 熱可塑性樹脂のビカット軟化点が120
    ℃以下であり、さらに、重合開始剤の1分間での半減期
    温度が140℃以上であることを特徴とする請求項1に
    記載の表面硬化木質化粧板の製造方法。
  3. 【請求項3】 熱可塑性樹脂が化学修飾木質材100重
    量部に対して1〜20重量部含まれることを特徴とする
    請求項1乃至2のいずれかに記載の表面硬化木質化粧板
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 熱可塑性樹脂がエチレン−酢酸ビニル共
    重合体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれ
    かに記載の表面硬化木質化粧板の製造方法。
  5. 【請求項5】 熱硬化性樹脂が化学修飾木質材100重
    量部に対して1〜60重量部含まれることを特徴とする
    請求項1乃至4のいずれかに記載の表面硬化木質化粧板
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂
    であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記
    載の表面硬化木質化粧板の製造方法。
  7. 【請求項7】 化学修飾木質材が、木質材に多塩基酸無
    水物およびエポキシ化合物を反応させて得られるオリゴ
    エステル化木質材であることを特徴とする請求項1乃至
    6のいずれかに記載の表面硬化木質化粧板の製造方法。
  8. 【請求項8】 オリゴエステル化木質材の製造段階にお
    いて、熱可塑性樹脂を添加混合し、得られたオリゴエス
    テル化木質材と熱可塑性樹脂との混合物に熱硬化性樹脂
    および重合開始剤を添加混合し、シート化することによ
    りシート状の硬化性組成物を得ることを特徴とする請求
    項7に記載の表面硬化木質化粧板の製造方法。
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