JP2677733B2 - 非線形光学材料、その製造方法および光波長変換素子 - Google Patents

非線形光学材料、その製造方法および光波長変換素子

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JP2677733B2
JP2677733B2 JP2364592A JP2364592A JP2677733B2 JP 2677733 B2 JP2677733 B2 JP 2677733B2 JP 2364592 A JP2364592 A JP 2364592A JP 2364592 A JP2364592 A JP 2364592A JP 2677733 B2 JP2677733 B2 JP 2677733B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主として2次の非線形
光学特性を有する非線形光学材料とその製造方法および
前記非線形光学材料を用いた光波長変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来よりレーザ光の波長変換素子やポッ
ケルス効果による電気光学変調素子に関してKH2 PO
4 (略称KDP)やLiNbO3 (略称LN)等の材料
が用いられていたが、近年有機化合物結晶において光非
線形性の大きなものが見つかり盛んに研究ならびに開発
が行われている。
【0003】有機化合物が結晶として、2次の非線形光
学特性を示すためには、2次の非線形分子分極率βがあ
る程度大きいこと、および結晶が中心対称構造を持たな
いことが必要である。この中心対称構造を崩す手法とし
ては、下記の手法等がある。 (1)例えば2−メチル−4−ニトロアニリン(略称M
NA)等のように置換基(この場合メチル基)を導入し
分子の対称性を低下させる手法。 (2)例えばメチル−(2,4−ジニトロフェニル)−
アミノプロパネート、N−(5−ニトロ−2−ピリジ
ル)−(S)−プロリノール等のように不斉炭素を導入
し分子の対称性を低下させる手法。 (3)例えばtrans−4’−ジメチルアミノ−N−
メチル−4−スチルバゾリウム−メチル硫酸塩のように
有機塩を形成させる手法。
【0004】また、2次の非線形光学特性を有し大形の
結晶が得られている有機化合物としては有機塩L−アル
ギニン フォスフェート モノハイドレート(略称LA
P)等が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の結
晶として2次の非線形光学特性を有する有機化合物につ
いては、分子結晶をつくる化合物の場合、結晶中で分子
同士がファンデアワールス結合や水素結合等で結びつい
ており結合力が弱く、また分子の対称性もわるいため大
型の結晶を得ることが一般に困難であるという課題があ
った。さらに大型の結晶ができた場合でも、結晶の機械
的強度が小さいため、後の機械加工(切断、光学研磨
等)が困難か不可能であり、良好な光学特性を持つ面を
得ることができないという課題があった。すなわちデバ
イス(素子)に加工する際の加工特性に課題があった。
【0006】一方、塩などのイオン結晶をつくる有機化
合物の場合、結晶中でファンデルワールス力による結合
や水素結合より強固なイオン結合が形成されるため、大
型で機械的強度の大きい単結晶を比較的簡単に得ること
ができる。しかし、従来知られている結晶として2次の
非線形光学特性を有しイオン結晶をつくる有機化合物に
おいても例えばtrans−4’−ジメチルアミノ−N
−メチル−4−スチルバゾリウム−メチル硫酸塩ではπ
電子共役長が非常に長いため、光の吸収極大波長がYA
Gレーザ光や半導体レーザ光の第2高調波と同程度の波
長になり波長変換された光が結晶に吸収され、効率よく
第2高調波を取り出せないという課題があった。また、
LAPでは光非線形性が小さいため特に低パワーのレー
ザ光の変換効率が小さく、半導体レーザ光等の波長変換
には使用できないという課題があった。
【0007】本発明は、前記従来の課題を解決するもの
で、結晶成長が容易で、大型の結晶を容易に得ることが
でき、また結晶の硬度が大きく加工特性に優れ、かつ非
線形光学特性に優れた非線形光学材料およびその製造方
法、前記非線形光学材料を用いた優れた光波長変換素子
を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の非線形光学材料は、電子供与性基および電
子受容性基双方が直接結合した芳香環を有し前記芳香環
に直接結合していない(化7)、(化8)、(化9)に
示す置換基の少なくとも1種を有する有機化合物と光学
活性を有する有機酸との塩からなる。
【0009】
【化7】
【0010】
【化8】
【0011】
【化9】
【0012】前記構成においては、有機化合物が1−
(4−ニトロフェニル)ピペラジンであることが好まし
い。また、前記構成においては、有機化合物が2−(2
−アミノエチルアミノ)−5−ニトロピリジンであるこ
とが好ましい。
【0013】また、前記構成においては、有機化合物が
1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンであり、光学活
性を有する有機酸が酒石酸であることが好ましい。ま
た、前記構成においては、有機化合物が1−(4−ニト
ロフェニル)ピペラジンであり、光学活性を有する有機
酸がフェニルこはく酸であることが好ましい。
【0014】また、前記構成においては、有機化合物が
2−(2−アミノエチルアミノ)−5−ニトロピリジン
であり、光学活性を有する有機酸がリンゴ酸、マンデル
酸、フェニルこはく酸、ロイシン酸からなる群から選ば
れた少なくとも1種の酸であることが好ましい。
【0015】また本発明の非線形光学材料の製造方法
は、電子供与性基および電子受容性基双方が直接結合し
た芳香環を有し前記芳香環に直接結合していない(化1
0)、(化11)、(化12)に示す置換基の少なくと
も1種を有する有機化合物と光学活性を有する有機酸と
の塩を水および有機溶媒からなる混合溶媒に溶解してな
る溶液を用い、温度降下法あるいは溶媒蒸発法により前
記塩の単結晶を析出させることからなる。
【0016】
【化10】
【0017】
【化11】
【0018】
【化12】
【0019】前記製造方法においては、有機化合物が1
−(4−ニトロフェニル)ピペラジンであり、有機酸が
酒石酸あるいはフェニルこはく酸から選ばれた少なくと
も1種であり、有機溶媒がテトラヒドロフランであるこ
とが好ましい。
【0020】また、前記製造方法においては、有機化合
物が1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンであり、有
機酸が酒石酸であり、有機溶媒がアセトニトリルである
ことが好ましい。
【0021】さらに本発明の光波長変換素子は、光波長
変換用結晶が光共振器中に挿入されなる光波長変換素子
であって、前記光波長変換用結晶が前記本発明の非線形
光学材料からなる。
【0022】
【作用】本発明が実用的な非線形光学材料とその製造方
法、光波長変換素子を提供するのに有効である理由を以
下に説明する。
【0023】本発明の非線形光学材料は、電子供与性基
および電子受容性基双方が直接結合した芳香環および前
記芳香環に直接結合していない前記(化7)、(化
8)、(化9)に示す置換基の少なくとも1種を有する
有機化合物と光学活性を有する有機酸との塩からなり、
したがって電子供与性基および電子受容性基の双方が直
接結合した芳香環は本発明の非線形光学材料においても
保持されるため、2次の非線形光学材料として必要な2
次の非線形分子分極率βの値は本発明の非線形光学材料
において実現される。
【0024】ところで、前記(化7)、(化8)、(化
9)に示される置換基が電子供与性基および電子受容性
基双方が直接結合した芳香環に直接結合している化合物
の場合、これらの置換基それぞれにプロトンを受容させ
ようとすると、π電子共役系の電子状態が大きく変化す
るため主にπ電子共役系により発現しているβを減少さ
せたり、可視域に光吸収ピークを発生したりし、非線形
光学材料としては好ましくない場合が多く、また、安定
なπ電子共役系を変化させるためプロトンを受容させる
こと自体が困難な場合も多い。
【0025】本発明非線形光学材料の場合には、電子供
与性基および電子受容性基双方が直接結合した芳香環お
よび前記芳香環に直接結合していない前記(化7)、
(化8)、(化9)に示す置換基の少なくとも1種を有
する有機化合物が光学活性を有する有機酸と塩を形成す
る場合に、その塩化に関わる置換基は、前記芳香環に直
接結合していない(化7)、(化8)、(化9)に示す
置換基のいずれかであるため、上記問題は避けられる。
【0026】さらに結晶が2次の非線形光学特性を示す
ために必要な結晶構造の非中心対称性は、塩を形成する
ための酸として、光学活性な有機酸を用いることによっ
て、本発明の非線形光学材料の結晶に導入される。しか
も、従来行なわれている分子結晶をつくる有機化合物に
光学活性を導入する合成は一般に複雑であるのに比べ、
本発明の非線形光学材料においては、塩であるので、そ
の合成は例えば通常の中和反応が適用でき、また光学活
性な有機酸は天然に多く存在することから、きわめて容
易に行なうことが可能である。
【0027】また本発明の非線形光学材料は塩であり、
分子結晶におけるファンデルワールス力による結合や水
素結合に比べてはるかに強固なイオン結合が形成される
ため、弱いファンデルワールス力による結合や水素結合
よりなる分子結晶より大きな結晶を、結晶欠陥等の発生
なく容易に得ることができる。また、結合力が強いため
硬度が大きく、機械加工(切断、光学研磨)に耐え得る
結晶を得ることが可能となる。
【0028】以上、述べたように本発明によれば、優れ
た非線形光学特性を有し、結晶が中心対称構造を持た
ず、結晶成長が容易で結晶の硬度が大きく加工性に富む
非線形光学材料を容易に得る事ができる。
【0029】また、本発明において、電子供与性基およ
び電子受容性基双方が直接結合した芳香環および前記芳
香環に直接結合していない(化7)、(化8)、(化
9)に示す置換基の少なくとも1種を有する有機化合物
が1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンあるいは2−
(2−アミノエチルアミノ)−5−ニトロピリジンのい
ずれかである前記非線形光学材料の好ましい態様によれ
ば、1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンあるいは2
−(2−アミノエチルアミノ)−5−ニトロピリジンは
YAGレーザ光の第2高調波を吸収しないので、前記非
線形光学材料がYAGレーザ光に対し、その第2高調波
を吸収せず、より良好な波長変換特性を有する非線形光
学材料を提供できる。
【0030】また、本発明において、前記有機化合物が
1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンであり、前記有
機酸が酒石酸あるいはフェニルこはく酸であるか、もし
くは前記有機化合物が2−(2−アミノエチルアミノ)
−5−ニトロピリジンであり、前記有機酸がリンゴ酸、
マンデル酸、フェニルこはく酸、ロイシン酸から選ばれ
た少なくとも1種の酸である本発明の非線形光学材料の
好ましい態様によれば、これら有機酸は安価でかつ入手
が容易であるので、容易に前記非線形光学材料を得るこ
とができるとともに、これら有機酸の分子量は比較的小
さいため、前記非線形光学材料の結晶において電子供与
性基および電子受容性基の双方が直接結合した芳香環の
部分が全体に対して占める割合は大きくなり、結晶とし
てより優れた非線形光学特性が実現される。また、これ
らの非線形光学材料はYAGレーザ光の第2高調波を吸
収しないのでYAGレーザ光に対する良好な波長変換特
性が発揮される。さらに特に酒石酸塩、フェニルこはく
酸塩の場合は酸がカルボキシル基を2個有するため、単
結晶において、より多くのイオン結合が形成されやすく
なるため、結晶成長がより容易で、より硬度が大きく、
より加工性に優れる結晶の非線形光学材料が実現され
る。
【0031】また本発明の非線形光学材料の製造方法
は、電子供与性基および電子受容性基双方が直接結合し
た芳香環を有し前記芳香環に直接結合していない(化1
0)、(化11)、(化12)に示す置換基の少なくと
も1種を有する有機化合物と光学活性を有する有機酸と
の塩を水および有機溶媒からなる混合溶媒に溶解してな
る溶液を用い、温度降下法あるいは溶媒蒸発法により前
記塩の単結晶を析出させることからなる。一般に前記塩
は水や有機溶媒に溶解しにくいが、それらの混合溶媒に
溶解しやすいことから前記方法により、大型結晶の非線
形光学材料を得ることができる。
【0032】前記製造方法の発明において、前記有機化
合物が1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンであり、
前記有機酸が酒石酸およびフェニルこはく酸から選ばれ
た少なくとも1種であり、前記有機溶媒がテトラヒドロ
フランである本発明の非線形光学材料の製造方法の好ま
しい態様によれば、1−(4−ニトロフェニル)ピペラ
ジンの光学活性な酒石酸との塩あるいは光学活性なフェ
ニルこはく酸との塩は適当な比率で混合した、水、テト
ラヒドロフラン混合溶媒に対する溶解度がかなり大きい
ため、前記方法により、より大型の結晶である非線形光
学材料を得ることができる。
【0033】また、前記製造方法の発明において、前記
有機化合物が1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンで
あり、前記有機酸がL−酒石酸であり、前記有機溶媒が
アセトニトリルである本発明の非線形光学材料の製造方
法の好ましい態様によれば、1−(4−ニトロフェニ
ル)ピペラジンの光学活性な酒石酸との塩あるいは光学
活性なフェニルこはく酸との塩は適当な比率で混合し
た、水、テトラヒドロフラン混合溶媒に対する溶解度が
かなり大きいため、前記方法により、より大型の結晶で
ある非線形光学材料を得ることができる。
【0034】本発明光波長変換素子によれば、上記非線
形光学材料のいずれかを光波長変換用結晶として用いる
ので、優れた光波長変換特性を有する光波長変換素子を
提供することができる。
【0035】
【実施例】本発明に於ける非線形光学材料の芳香環とし
ては、例えばベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、
ピラジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール
環、イミダゾール環、フラン環、チオフェン環、チアゾ
ール環、ナフタレン環、キノリン環、インドール環、イ
ンダゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環等
があげられる。
【0036】電子供与性基としては、例えばアミノ基、
アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミ
ノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ
基、水酸基、アルコキシル基等があげられる。
【0037】電子受容性基としては、ニトロ基、シアノ
基、カルボニル基、カルボキシル基等があげられる。光
学活性に関しては、左旋性、右旋性のいずれの性質を有
するものでも良く、光学活性を有する有機酸としては、
例えばフェニルこはく酸、リンゴ酸、マンデル酸、ロイ
シン酸、乳酸、酒石酸、アビエチン酸、キナ酸、ショウ
ノウ酸、ショウノウ−10−スルホン酸、α−メトキシ
フェニル酢酸、2−メトキシ−2−トリフルオロメチル
フェニル酢酸、α−フェニルプロピオン酸等があげられ
る。
【0038】そして、比較的分子量が小さく、安価で入
手が容易なことから、好ましくは酒石酸、フェニルこは
く酸、リンゴ酸、マンデル酸、ロイシン酸等が用いられ
る。また前述したように、本発明の非線形光学材料の製
造方法としては、電子供与性基および電子受容性基双方
が直接結合した芳香環を有し前記芳香環に直接結合して
いない(化10)、(化11)、(化12)に示す置換
基の少なくとも1種を有する有機化合物と光学活性を有
する有機酸との塩を水および有機溶媒からなる混合溶媒
に溶解してなる溶液を用い、温度降下法あるいは溶媒蒸
発法により前記塩の単結晶を析出させる方法が好ましく
用いられるが、温度降下法あるいは溶媒蒸発法は通常の
結晶析出法としてごく普通に知られている方法であり、
特に説明を必要としないが、目的とする化合物を溶媒に
溶解した溶液を用い、これを過冷却の状態にするために
溶液の温度を下げて結晶を析出させる手法(温度降下
法)、あるいは、この溶液の溶媒を蒸発させて過飽和の
状態にし、結晶を析出させる手法(溶媒蒸発法)であ
る。
【0039】ここで、有機溶媒としては、水と混合でき
るテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトニ
トリル等があげられる。以下、具体的実施例について、
更に説明する。
【0040】実施例1 9.06gのL−酒石酸を650mlの水に溶解させ、
その溶液に1−(4−ニトロフェニル)ピペラジン1
2.44gを加え、60℃に加熱し、不溶物を濾過によ
って取り除いた後、冷却すると沈殿が生じた。これを回
収し、水で再結晶精製を2回繰り返し、試料1−Aを得
た。
【0041】この試料を粉末化した試料のX線回折図
(CuKα線による)を図2に示す。このX線回折図は
図3に示した1−(4−ニトロフェニル)ピペラジン粉
末のX線回折図、図4に示したL−酒石酸粉末のX線回
折図とは異なるパターンであることから、試料1−Aは
1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンおよびL−酒石
酸とからなる単純な混合物ではないことがわかる。
【0042】この試料のDMSO−d6 溶液のNMRス
ペクトルには、3.48、3.77ppmに1−(4−
ニトロフェニル)ピペラジン部分の2種類のメチレン基
(それぞれプロトン数は4)によるシグナル、4.53
ppmにL−酒石酸部分のC−H基(プロトン数2)に
よるシグナル、7.02、8.11ppmに1−(4−
ニトロフェニル)ピペラジン部分のベンゼン環の2種類
のC−H基(それぞれプロトン数は2)によるシグナ
ル、が認められ、そのピーク強度比は、ほぼ2:2:
1:1:1となる。このことから、試料1−AにはL−
酒石酸構造部分と1−(4−ニトロフェニル)ピペラジ
ン構造部分がモル比1:1で含まれていることがわか
る。
【0043】さらに、元素分析値は C:47.2%、
H:5.4%、N:11.7%、O:35.7%とな
り、L−酒石酸と1−(4−ニトロフェニル)ピペラジ
ンがモル比1:1で含まれると考えた時の計算値 C:
47.1%、H:5.3%、N:11.8%、O:3
5.9%と良く一致する。
【0044】試料1−Aを水、アセトニトリル混合溶媒
(容量比1:1)に溶解させ、約20ccの飽和溶液と
し、これを室温中に放置し、溶媒をゆっくり蒸発させ、
約7日間で、大きさ2mm×1mm×0.1mmの結晶
試料(試料1−B)を得た。
【0045】この結晶の結晶構造は粉末X線回折の結果
より、試料1−Aと同じである。この結晶のX線結晶構
造解析の結果より試料1−Aおよび1−Bは(化13)
に示すような塩構造を持ち、図1に示すような結晶構造
を持つことがわかった。
【0046】図1は1−(4−ニトロフェニル)ピペラ
ジンのL−酒石酸との塩の結晶構造をある誘電主軸方向
から見た模式図である(但し、水素原子は図示が省略さ
れている。)。また、図1中四角い枠で囲まれた部分は
単位胞を示している。
【0047】
【化13】
【0048】この結晶構造において、大きなβ値と関係
するパラニトロアニリン(pNA)構造の双極子モーメ
ントは互いに打ち消し合うことがなく、平均としてb軸
方向を向いている。
【0049】試料1−Aおよび尿素に対して、クルツ
(Kurtz )の方法にしたがって[エス.ケイ.クルツ,
ジャーナル オブ アプライド フィジックス(S.K.
Kurtz,J.App.Phys. 39,3798(1968) )]粉末法によって
第2高調波発生(SHG)強度を測定し、SHG能を評
価した。光源にはNd:YAGレーザー(1064n
m)を用いた。得られた試料をめのう乳鉢により粉砕し
て試料としSHG強度を測定した結果、試料1−AのS
HG能は尿素の値の10.1倍となり、極めて優れた非
線形光学特性を示した。
【0050】1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンの
粉末結晶についても同様にSHG強度を測定したが、S
HG強度は測定限界以下であり、1−(4−ニトロフェ
ニル)ピペラジン結晶中ではpNA構造は中心対称構造
をとっていると考えられる。
【0051】また、L−酒石酸粉末についても同様にS
HG強度を測定したが、SHG強度は測定限界以下であ
った。また、試料1−Bに対して、結晶加工性の目安と
してビッカース硬度の測定を行なったところ、63とい
う従来の代表的な分子結晶非線形光学材料の値(例えば
N−(5−ニトロ−2−ピリジル)−(S)−プロリノ
ールの値は16)よりはるかに大きな値(3〜6倍)と
なった。
【0052】光学活性のないメソ酒石酸についても同様
の合成を行い、SHG評価を行なったところ、黄色の結
晶が得られたが、SHGは認められなかった。次に比較
例として、芳香環に直接結合したアミノ基によるプロト
ンの受容について説明する。
【0053】分子結晶有機化合物としては非常に大きな
非線形光学特性を示す2−メチル−4−ニトロアニリン
(略称MNA)と酒石酸、リンゴ酸、乳酸それぞれとの
塩を作製するため、MNAとそれぞれの酸を等モルずつ
とり60℃で水に溶解の後、5〜20℃で放置したが塩
を得ることができなかった。これは、MNAのアミノ基
の電子がニトロ基に吸引されているため、アミノ基の電
子密度が低下しプロトンを受容しにくくなっているもの
と考えられる。
【0054】そこで酸性のより強い硝酸とMNAとの塩
を作製した。室温でMNAに対して過剰の硝酸を水とと
もに反応させ5℃〜10℃に保って放置したところほぼ
無色の透明性の良好な、硬い板状結晶ができた。この結
晶をめのう乳鉢で粉末にしてSGH強度を測定した結
果、SHG能は尿素の1/100以下であり殆ど測定さ
れなかった。さらにこの塩は水に対し不安定であり、上
記粉末試料を水に加えるとすぐに黄色になり塩が分解し
て元のMNA粉末に戻ってしまった。
【0055】実施例2 1−(4−ニトロフェニル)ピペラジン2.07gをテ
トラヒドロフラン125mlとトルエン125mlとの
混合溶媒に室温中で溶解した溶液を、D−フェニルこは
く酸1.94gをテトラヒドロフラン125mlとトル
エン125mlとの混合溶媒に室温中で溶解した溶液と
混合したところ、沈殿が生じた。溶液中で2時間撹拌
後、これを回収し、水による再結晶精製を2回繰り返
し、大きさ0.2mm×0.2mm×1.0mmの結晶
試料(試料2)を得た。
【0056】この結晶の吸収端波長は、分光光度計を用
いて透過法により測定した結果、約514nmであっ
た。得られた結晶を粉末化した試料のX線回折図(Cu
Kα線による)を図5に示す。このX線回折図は図3に
示す1−(4−ニトロフェニル)ピペラジン粉末のX線
回折図、図6に示すD−フェニルこはく酸粉末のX線回
折図とは異なるパターンとなっており、このことは、得
られた結晶は1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンと
D−フェニルこはく酸とからなる単純な混合物ではない
ことを示している。
【0057】また、この試料のDMSO−d6 溶液のN
MRスペクトルには、2.974、3.476ppmに
1−(4−ニトロフェニル)ピペラジン部分の2種類の
メチレン基によるシグナル(それぞれプロトン数は
4)、7.031、8.065ppmに1−(4−ニト
ロフェニル)ピペラジン部分のベンゼン環についた2種
類の水素によるシグナル(それぞれプロトン数は2)、
2.40、2.838ppmにD−フェニルこはく酸部
分の2種類のメチレン基によるシグナル(それぞれプロ
トン数は1)、3.791ppmにD−フェニルこはく
酸部分の不斉炭素に結合した水素によるシグナル(プロ
トン数は1)、7.265ppmにD−フェニルこはく
酸部分のベンゼン環についた水素によるシグナル(プロ
トン数は5)が認められ、そのピーク強度比は、ほぼ
4:4:2:2:1:1:1:5であった。このことか
ら、得られた結晶試料には1−(4−ニトロフェニル)
ピペラジン部分とD−フェニルこはく酸部分がモル比
1:1で含まれていることがわかる。
【0058】さらに、この試料の透過法(KBr錠剤
法)による赤外吸収スペクトルには、1−(4−ニトロ
フェニル)ピペラジンの場合に現われる3300cm-1
付近のイミノ基による吸収が現われず、また、1700
cm-1付近に現われるカルボキシル基による吸収が、D
−フェニルこはく酸の場合と比べて、相対強度(D−フ
ェニルこはく酸あるいはD−フェニルこはく酸部分の他
の吸収に対する強度)がほぼ半減している。このことか
ら、得られた粉末結晶試料は1−(4−ニトロフェニ
ル)ピペラジンのイミノ基がプロトンを受容した有機陽
イオンとD−フェニルこはく酸の片方のカルボキシル基
がプロトンを失ってできる有機陰イオンから成ることが
わかる。
【0059】以上より、得られた結晶試料は1−(4−
ニトロフェニル)ピペラジンの置換アミノ基がプロトン
を受容した有機陽イオンとD−フェニルこはく酸の片方
のカルボキシル基がプロトンを失ってできる有機陰イオ
ンをモル比1:1で含む塩であることがわかる。
【0060】この試料に対して、実施例1と同様の方法
によってSHG強度を測定し、SHG能を評価したとこ
ろ、SHG能は尿素の値の13.2倍となり、極めて優
れた非線形光学特性を示した。また、1−(4−ニトロ
フェニル)ピペラジンの粉末については実施例1で示し
たように、SHG強度は測定限界以下であった。
【0061】これらの結果から、1−(4−ニトロフェ
ニル)ピペラジン結晶中では中心対称構造をとっている
pNA構造部分が、1−(4−ニトロフェニル)ピペラ
ジンのD−フェニルこはく酸との塩の結晶中では非中心
対称構造をとっていることがわかる。また、D−フェニ
ルこはく酸粉末についても同様にSHG強度を測定した
が、SHG強度は測定限界以下であった。
【0062】実施例3 1.82gの2−(2−アミノエチルアミノ)−5−ニ
トロピリジンを溶解させたエタノール溶液180ml
を、1.34gのL−リンゴ酸を溶解させたエタノール
溶液5mlと混合したところ沈澱が生じた。溶液中で2
時間撹拌後、これを回収、乾燥し試料とした。
【0063】この試料について、実施例1と同様にX線
回折法によって、試料が原料の単純な混合物でないこと
を確認した。また、この試料に対して、実施例1と同じ
方法によってSHG強度を測定し、SHG能を評価し
た。SHG能は尿素の値の約1倍であり、優れた非線形
光学特性を有している。2−(2−アミノエチルアミ
ノ)−5−ニトロピリジンの粉末についても同様にSH
G強度を測定したが、SHG強度は測定限界以下であっ
た。これらの結果から、2−(2−アミノエチルアミ
ノ)−5−ニトロピリジン結晶中では中心対称構造をと
っているpNA構造部分が、本試料では非中心対称構造
をとっていることが確認できた。また、L−リンゴ酸の
粉末についても同様にSHG強度を測定したが、SHG
強度は測定限界以下であった。
【0064】実施例4 1.82gの2−(2−アミノエチルアミノ)−5−ニ
トロピリジンを溶解させた1,4−ジオキサン溶液20
0mlを、1.52gのL−マンデル酸を溶解させた
1,4−ジオキサン溶液15mlと混合したところ沈澱
が生じた。溶液中で2時間撹拌後、これを回収、乾燥し
試料とした。
【0065】この試料に対して、実施例1と同じ方法に
よってSHG強度を測定し、SHG能を評価した。SH
G能は尿素の値の約1倍であり、優れた非線形光学特性
を有している。この結果から、2−(2−アミノエチル
アミノ)−5−ニトロピリジン結晶中では中心対称構造
をとっているpNA構造部分が、本試料では非中心対称
構造をとっていることが確認できた。また、L−マンデ
ル酸粉末についても同様にSHG強度を測定したが、S
HG強度は測定限界以下であった。
【0066】実施例5 1.82gの2−(2−アミノエチルアミノ)−5−ニ
トロピリジンを溶解させたテトラヒドロフラン溶液10
0mlを、1.94gのD−フェニルこはく酸を溶解さ
せたテトラヒドロフラン溶液100mlと混合したとこ
ろ沈澱が生じた。溶液中で2時間撹拌後、これを回収、
乾燥し試料とした。
【0067】この試料に対して、実施例1と同じ方法に
よってSHG強度を測定し、SHG能を評価した。SH
G能は尿素の値の約1倍であり、優れた非線形光学特性
を有している。この結果から、2−(2−アミノエチル
アミノ)−5−ニトロピリジン結晶中では中心対称構造
をとっているpNA構造部分が、本試料では非中心対称
構造をとっていることが確認できた。
【0068】実施例6 1.82gの2−(2−アミノエチルアミノ)−5−ニ
トロピリジンを溶解させた1,4−ジオキサン溶液15
0mlを、1.32gのL−ロイシン酸を溶解させた
1,4−ジオキサン溶液10mlと混合したところ沈澱
が生じた。溶液中で2時間撹拌後、これを回収、乾燥し
粉末結晶試料とした。
【0069】この試料に対して、実施例1と同じ方法に
よってSHG強度を測定し、SHG能を評価した。SH
G能は尿素の値の約1倍であり、優れた非線形光学特性
を有している。この結果から、2−(2−アミノエチル
アミノ)−5−ニトロピリジン結晶中では中心対称構造
をとっているpNA構造部分が、本粉末結晶試料では非
中心対称構造をとっていることが確認できた。
【0070】また、L−ロイシン酸の粉末結晶について
も同様にSHG強度を測定したが、SHG強度は測定限
界以下であった。 実施例7 2−(ジエチルアミノ)エチル 4−アミノベンゾアー
ト2.36gをテトラヒドロフラン20mlとトルエン
20mlとの混合溶媒に室温中で溶解した溶液を、D−
フェニルこはく酸1.94gをテトラヒドロフラン20
mlとトルエン20mlとの混合溶媒に室温中で溶解し
た溶液と混合したところ、沈澱が生じた。溶液中で2時
間攪拌後、これを回収、乾燥し試料とした。
【0071】この試料に対して、実施例1と同じ方法に
よってSHG強度を測定し、SHG能を評価した。SH
G能は尿素の値程度であり、優れた非線形光学特性を有
していた。2−(ジエチルアミノ)エチル 4−アミノ
ベンゾアートの粉末についても同様にSHG強度を測定
したが、SHG強度は測定限界以下であった。
【0072】この結果から、2−(ジエチルアミノ)エ
チル 4−アミノベンゾアート結晶は中心対称構造をと
っているのに対し、本試料は非中心対称構造をとってい
ることが確認できた。
【0073】実施例8 約20ccの実施例1における試料1−Aの水、テトラ
ヒドロフラン混合溶媒(容量比3:7)に対する飽和溶
液を23℃中で放置し溶媒をゆっくり蒸発させることに
よって、約3日間で0.2mm×1mm×3mmの透明
性のよい結晶(試料1−C)を得た。
【0074】次に約100ccの実施例1における試料
1−Aの水、テトラヒドロフラン混合溶媒(容量比3:
7)対する飽和溶液に試料1−Cを入れ、23℃中で放
置し溶媒をゆっくり蒸発させることによって、約50日
間で5mm×30mm×90mmの透明性な結晶を得
た。
【0075】この結晶の吸収端波長は、分光光度計を用
いて透過法により測定した結果、約505nmであっ
た。またこの結晶は粉末のX線回折図のパターンより、
試料1−A、試料1−Bと同じく図1に示される結晶構
造を持つことがわかった。
【0076】さらにこの結晶に基本波としてQスイッチ
YAGのパルスレーザ光を照射した結果、位相整合した
緑の光が観察された。このとき基本波ピークパワー30
0MWに対し、150MWの出力光を得、変換効率は5
0%であった。
【0077】実施例9 実施例2における試料2の水、テトラヒドロフラン混合
溶媒に対する溶解特性曲線図を図7に示す。溶解度が特
に大きくなる水、テトラヒドロフラン混合溶媒(容量比
3:7)に実施例2における試料2を溶解させ約100
ccの飽和溶液を調整し、23℃中で放置することによ
り溶媒をゆっくり蒸発させることによって、約5日間で
5mm×30mm×30mmの透明な結晶を得た。
【0078】実施例10 約100ccの実施例1における試料1−Bの水、アセ
トニトリル混合溶媒(容量比1:1)に対する飽和溶液
を23℃中で放置することにより、溶媒をゆっくり蒸発
させることによって、約15日間で20mm×10mm
×1mmの透明性のよい結晶を得た。
【0079】実施例11 図8を用いて本発明による光波長変換素子の説明を行な
う。図8において、1は半導体レーザ、2はレンズ系、
3はYAG結晶、4は光波長変換用結晶、5はミラー、
6は光共振器、7は第2高調波である。
【0080】本実施例ではYAG結晶3の端面とミラー
5面との間で構成されている光共振器内に、波長1.0
6μmおよび0.53μmの光が透過しやすいように表
面に無反射コートした石英ガラスがマッチングオイルま
たは樹脂を介して適当に切り出された1−(4−ニトロ
フェニル)ピペラジンL−酒石酸塩結晶に貼りつけられ
た光波長変換用結晶4を挿入した構成の光波長変換素子
である。
【0081】半導体レーザ(波長808nm,出力1
W)1を用いてYAG結晶3を励起し、波長1.06μ
mのレーザ光を発振させ、これを波長変換の基本波とし
た。この基本波は光共振器6内で非常に強い電界強度を
持つため、変換効率として大きな値が期待される。
【0082】実際に表面に上記無反射処理を施した前記
(化13)に示される塩の単結晶(厚み2〜10mm)
を用いて、半導体レーザのパワー1Wの時、1mWの緑
色の第2高調波出力を得た。
【0083】結晶の透明性を向上させるか、若しくは結
晶に基本波を、非線形成分が大きく、基本波と第2高調
波の進む方向のずれ角(ウオークオフ角)が小さく、基
本波と第2高調波が位相整合する最適な方向で入射させ
る、等の工夫を加えることにより、さらに変換効率を上
げることができると考えられる。
【0084】なお、有機結晶に直接無反射コートできる
材料があればそれを用いても良い。また、前述した実施
例では2種類のイオンを含む塩の場合について述べたが
異なる3種類以上のイオンを含む塩でもよく、また塩の
結晶中に結晶水が含まれていてもよい。
【0085】
【発明の効果】本発明の非線形光学材料は、結晶成長が
容易で結晶の硬度が大きく加工特性に優れ、優れた非線
形光学特性を有する2次の非線形光学材料を提供でき
る。
【0086】また、本発明の非線形光学材料において、
電子供与性基および電子受容性基双方が直接結合した芳
香環および前記芳香環に直接結合していない前記(化
7)、(化8)、(化9)に示す置換基のいずれかを有
する有機化合物が1−(4−ニトロフェニル)ピペラジ
ンあるいは2−(2−アミノエチルアミノ)−5−ニト
ロピリジンである前記非線形光学材料の好ましい態様に
よれば、YAGレーザ光に対し、その第2高調波を吸収
せず、より良好な波長変換特性を有する非線形光学材料
が提供できる。
【0087】また、本発明において、前記有機化合物が
1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンであり、前記有
機酸が酒石酸あるいはフェニルこはく酸であるか、もし
くは前記有機化合物が2−(2−アミノエチルアミノ)
−5−ニトロピリジンであり、前記有機酸がリンゴ酸、
マンデル酸、フェニルこはく酸、ロイシン酸から選ばれ
た少なくとも1種の酸である本発明の非線形光学材料の
好ましい態様によれば、これら有機酸は安価でかつ入手
が容易であり、従って容易に前記非線形光学材料を提供
することができるとともに、電子供与性基および電子受
容性基双方が直接結合した芳香環の部分が全体に対して
占める割合は大きくなり、結晶としてより優れた非線形
光学特性が実現される。また、YAGレーザ光に対する
良好な波長変換特性が発揮される。さらに特に酒石酸
塩、フェニルこはく酸塩の場合は結晶成長がより容易
で、より硬度が大きく、より加工性に優れる結晶の非線
形光学材料が提供できる。
【0088】また、本発明の非線形光学材料の製造方法
によれば、大型結晶の非線形光学材料を得ることができ
る。また、本発明の非線形光学材料の製造方法の発明に
おいて、前記有機化合物が1−(4−ニトロフェニル)
ピペラジンであり、前記有機酸が酒石酸およびフェニル
こはく酸から選ばれた少なくとも1種であり、前記有機
溶媒がテトラヒドロフランである本発明の非線形光学材
料の製造方法の好ましい態様、あるいは、前記有機化合
物が1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンであり、前
記有機酸がL−酒石酸であり、前記有機溶媒がアセトニ
トリルである本発明の非線形光学材料の製造方法の好ま
しい態様によれば、より大型の結晶である非線形光学材
料を得ることができる非線形光学材料の製造方法を提供
できる。
【0089】また、本発明の光波長変換素子の発明にお
いては、優れた光波長変換特性を有する光波長変換素子
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における非線形光学材料、1
−(4−ニトロフェニル)ピペラジンのL−酒石酸との
塩の結晶構造をある誘電主軸方向から見た模式図。
【図2】本発明の実施例1における非線形光学材料、1
−(4−ニトロフェニル)ピペラジンのL−酒石酸との
塩の粉末のX線回折図。
【図3】1−(4−ニトロフェニル)ピペラジンの粉末
のX線回折図。
【図4】L−酒石酸粉末のX線回折図。
【図5】本発明の実施例2における非線形光学材料、1
−(4−ニトロフェニル)ピペラジンのD−フェニルこ
はく酸との塩の粉末のX線回折図。
【図6】D−フェニルこはく酸粉末のX線回折図。
【図7】本発明の実施例9における非線形光学材料、1
−(4−ニトロフェニル)ピペラジンのD−フェニルこ
はく酸との塩の水、テトラヒドロフラン混合溶媒に対す
る溶解特性曲線図。
【図8】本発明の実施例11における光波長変換素子の
構成模式図。
【符号の説明】
1 半導体レーザ 2 レンズ系 3 YAG結晶 4 光波長変換用結晶 5 ミラー 6 光共振器 7 第2高調波
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川上 哲司 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (72)発明者 河村 達朗 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (72)発明者 脇田 克也 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−241332(JP,A)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子供与性基および電子受容性基双方が
    直接結合した芳香環を有し前記芳香環に直接結合してい
    ない(化1)、(化2)、(化3)に示す置換基の少な
    くとも1種を有する有機化合物と光学活性を有する有機
    酸との塩からなる非線形光学材料。 【化1】 【化2】 【化3】
  2. 【請求項2】 有機化合物が1−(4−ニトロフェニ
    ル)ピペラジンである請求項1に記載の非線形光学材
    料。
  3. 【請求項3】 有機化合物が2−(2−アミノエチルア
    ミノ)−5−ニトロピリジンである請求項1に記載の非
    線形光学材料。
  4. 【請求項4】 光学活性を有する有機酸が酒石酸である
    請求項2に記載の非線形光学材料。
  5. 【請求項5】 光学活性を有する有機酸がフェニルこは
    く酸である請求項2に記載の非線形光学材料。
  6. 【請求項6】 光学活性を有する有機酸がリンゴ酸、マ
    ンデル酸、フェニルこはく酸、ロイシン酸からなる群か
    ら選ばれた少なくとも1種の酸である請求項3に記載の
    非線形光学材料。
  7. 【請求項7】 電子供与性基および電子受容性基双方が
    直接結合した芳香環を有し前記芳香環に直接結合してい
    ない(化4)、(化5)、(化6)に示す置換基の少な
    くとも1種を有する有機化合物と光学活性を有する有機
    酸との塩を水および有機溶媒からなる混合溶媒に溶解し
    てなる溶液を用い、温度降下法あるいは溶媒蒸発法によ
    り前記塩の単結晶を析出させることからなる非線形光学
    材料の製造方法。 【化4】 【化5】 【化6】
  8. 【請求項8】 有機化合物が1−(4−ニトロフェニ
    ル)ピペラジンであり、有機酸が酒石酸あるいはフェニ
    ルこはく酸から選ばれた少なくとも1種であり、有機溶
    媒がテトラヒドロフランである請求項7に記載の非線形
    光学材料の製造方法。
  9. 【請求項9】 有機化合物が1−(4−ニトロフェニ
    ル)ピペラジンであり、有機酸が酒石酸であり、有機溶
    媒がアセトニトリルである請求項7に記載の非線形光学
    材料の製造方法。
  10. 【請求項10】 光波長変換用結晶が光共振器中に挿入
    されなる光波長変換素子において、前記光波長変換用結
    晶が請求項1に記載の非線形光学材料からなる光波長変
    換素子。
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