JP2677534B2 - マイクロ波半導体装置とその発振周波数を変化するための方法 - Google Patents

マイクロ波半導体装置とその発振周波数を変化するための方法

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JP2677534B2 JP18691595A JP18691595A JP2677534B2 JP 2677534 B2 JP2677534 B2 JP 2677534B2 JP 18691595 A JP18691595 A JP 18691595A JP 18691595 A JP18691595 A JP 18691595A JP 2677534 B2 JP2677534 B2 JP 2677534B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体超格子構造
を有し、マイクロ波信号を発振するために好適なマイク
ロ波半導体装置とその発振周波数を変化するための方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】マイクロ波信号を発振するための高周波
発振器においては、従来、ガンダイオード、インパット
ダイオード、トラパットダイオードなどのダイオード半
導体素子が用いられてきた。
【0003】例えばガンダイオードを用いた従来の高周
波発振器において、両電極間に逆バイアス電圧を印加す
ると、ガンダイオードの半導体層の中に電界の比較的強
い領域と、比較的弱い領域ができる。電界の強い領域に
おいては、電子のドリフトが他の領域よりも遅いので、
この領域が正電極に向かって移動するとき、後側に電子
が集まって負の空間電荷をもち、前側は電子が不足する
ので正の空間電荷をもつようになる。そこで、この領域
中の電界はますます強められるので、高電界領域が安定
に存在し、正電極に到達するまで消滅しない。高電界領
域が正電極に到達すると、次の新しい高電界領域が負電
極の近傍の半導体層内に生成され、次にそれが正電極に
向かって移動していく。高電界領域が消滅したとき、半
導体層中の電界はほぼ一様であったとしても、負電極の
近傍では強い電界があるので、ここでから高電界領域が
成長する。このようにして、高電界領域が次々に繰り返
して正電極に流れこむので、電流の発生を所定の周期で
繰り返すことにより、高周波信号を発生して出力するこ
とができる。ここで、高周波信号の発振周波数は、両電
極に挟設された半導体層の厚さに依存する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらの従来の高周波
発振器において、発振周波数を大きく変更するために
は、発振器に用いるダイオード半導体素子そのものを別
の発振周波数用のダイオード半導体素子に交換する必要
があった。すなわち、発振周波数が上述のように、ダイ
オード半導体素子の両電極間の半導体層の厚さに依存す
るために、半導体層の厚さの異なるダイオード半導体素
子を用いて高周波発振器を構成する必要があった。従っ
て、これらの従来の高周波発振器において、発振周波数
を広い周波数範囲で変化することができないという問題
点があった。
【0005】本発明の目的は以上の問題点を解決し、従
来に比較して簡単な構成を有し、広帯域でマイクロ波発
振周波数を変化することができるマイクロ波半導体装置
と、その発振周波数を変化するための方法を提供するこ
とにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る請求項1記
載のマイクロ波半導体装置は、2つの電極間に、障壁層
と量子井戸層とが交互に積層されてなる超格子構造を有
する真性半導体i層を挟設してなるpin型ダイオード
素子を備えたマイクロ波半導体装置であって、互いに隣
接する障壁層のX点の準位と量子井戸層のΓ点の準位と
が互いに共鳴するように、障壁層の厚さと量子井戸層の
厚さを設定しかつ上記2つの電極間に直流電源により所
定の逆バイアス電圧を印加したことを特徴とする。
【0007】また、請求項2記載のマイクロ波半導体装
置は、請求項1記載のマイクロ波半導体装置において、
上記pin型ダイオード素子のp層側から光を入射する
ための光発生手段をさらに備え、p層においてキャリア
を生成して高周波発振を生じさせることを特徴とする。
【0008】さらに、本発明に係る請求項3記載のマイ
クロ波半導体装置は、2つの電極間に、n+型半導体層
と、障壁層と量子井戸層とが交互に積層されてなる超格
子構造を有するn-型半導体層と、n+型半導体層とを挟
設してなるダイオード素子を備えたマイクロ波半導体装
置であって、互いに隣接する障壁層のX点の準位と量子
井戸層のΓ点の準位とが互いに共鳴するように、障壁層
の厚さと量子井戸層の厚さを設定しかつ上記2つの電極
間に直流電源により所定のバイアス電圧を印加したこと
を特徴とする。
【0009】またさらに、本発明に係る請求項4記載の
マイクロ波半導体装置は、2つの電極間に、少なくとも
アバランシェ増倍部と、障壁層と量子井戸層とが交互に
積層されてなる超格子構造を有する真性半導体i層とを
挟設してなるダイオード素子を備えたマイクロ波半導体
装置であって、互いに隣接する障壁層のX点の準位と量
子井戸層のΓ点の準位とが互いに共鳴するように、障壁
層の厚さと量子井戸層の厚さを設定しかつ上記2つの電
極間に直流電源により所定の逆バイアス電圧を印加した
ことを特徴とする。
【0010】さらに、本発明に係る請求項5記載のマイ
クロ波半導体装置の発振周波数を変化するための方法
は、請求項2乃至4のうちの1つに記載のマイクロ波半
導体装置において、上記直流電源による上記2つの電極
に印加される逆バイアス電圧又はバイアス電圧を変化す
ることにより、上記マイクロ波半導体装置の発振周波数
を変化することを特徴とする。
【0011】上記請求項3及び4記載のマイクロ波半導
体装置においては、上記直流電源により上記2つの電極
に所定のバイアス電圧又は逆バイアス電圧を印加するこ
とにより、キャリアが生成されることにより、マイクロ
波半導体装置において高周波発振を発生させることがで
きる。
【0012】上記請求項5記載の方法においては、上記
直流電源による上記2つの電極に印加される逆バイアス
電圧又はバイアス電圧を変化することにより、互いに隣
接する障壁層のX点の準位エネルギーと量子井戸層のΓ
点の準位エネルギーとの差を変化し、これによって、互
いに隣接する障壁層のX点の準位と量子井戸層のΓ点の
準位との間の緩和時間を変化し、超格子構造を有する半
導体層を走行する電子の走行時間を変化することによ
り、上記マイクロ波半導体装置の発振周波数を変化する
ことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係
る実施形態について説明する。
【0014】<第1の実施形態>図1は、本発明に係る
第1の実施形態であるマイクロ波ダイオード半導体素子
10を示す断面図である。このマイクロ波ダイオード半
導体素子10は、図1に示すように、障壁層21−0乃
至21−N(以下、総称する場合は21と示す。)と量
子井戸層22−0乃至22−N(以下、総称する場合は
22と示す。)とが交互に繰り返して積層されてなる超
格子構造を有する真性半導体i層を備えたヘテロ接合p
in型ダイオード半導体素子であって、当該素子の電極
11,12間に直流電源30から逆バイアス電圧Vbを
印加することにより、互いに隣接する障壁層21のX点
準位と量子井戸層22のΓ点準位とが互いに共鳴するよ
うに各障壁層21と各量子井戸層22の厚さを設定した
ことを特徴とする。ここで、逆バイアス電圧Vbを変化
することにより、真性半導体層i層16を通過する電子
の走行速度を変化することができ、これによって、ダイ
オード半導体素子10の発振周波数を変化することがで
きる。
【0015】本実施形態のpin型ダイオード半導体素
子10は、図1に示すように、裏面に平板形状のAu電
極12が形成され、Siにてなるn型不純物イオンが例
えば注入量1018/cm3だけ注入されたn−GaAs
にてなる厚さ300μmのn型半導体基板20上に、以
下の各層が順次、n型半導体基板20から近接した側か
ら積層されて形成される。 (a)Siにてなるn型不純物イオンが例えば注入量2
×1018/cm3だけ注入されたn−GaAsにてなる
厚さ0.8μmのn型バッファ層17; (b)i−GaAsにてなる厚さ10nmのi型クラッ
ド層16; (c)超格子構造を有する厚さ約820μmの真性半導
体i層(i−SL)15; (d)i−GaAsにてなる厚さ10nmのi型クラッ
ド層14; (e)Beにてなるp型不純物イオンが例えば注入量5
×1018/cm3だけ注入されたp−GaAsにてなる
厚さ50nmのp型キャップ層13;並びに、 (f)厚さ方向に貫通する孔が中央部に形成されたリン
グ形状のAu電極11。
【0016】なお、Au電極11をリング形状にするの
は、上記の積層を行った後に所定のエッチング方法によ
り行われる。また、上記真性半導体i層15は、量子井
戸層22がi型クラッド層16に隣接するように、Ga
Asにてなり24原子層の厚さ約68Åの量子井戸層2
2と、AlAsにてなり5原子層の厚さ約14Åの障壁
層21とを交互に、例えば100周期(すなわち100
対)で積層されて形成される。そして、電極11は逆バ
イアス電圧Vbの可変電圧源30の負極に接続され、電
極12は可変電圧源30の正極に接続されることによっ
て、pin型ダイオード10の電極11,12間に所定
の電界が印加されることになる。
【0017】上記pin型ダイオード半導体素子10の
真性半導体i層15は、各障壁層21の厚さが各量子井
戸層22の厚さに比較して薄い半導体超格子構造を有し
ており、この実施形態における真性半導体i層15の逆
バイアス電圧Vbに対するエネルギーバンド図を図2に
示し、逆バイアス電圧Vb=10Vにおける真性半導体
i層15の厚さ方向の位置に対するエネルギーバンド図
を図3に示す。
【0018】図3において、Γは、各層21,22がバ
ルク型半導体と仮定したときに波数ベクトルk=0又は
(000)となるときのΓ点であり、Xは、各層21,
22がバルク型半導体と仮定したときに波数ベクトルk
=(100)となるときのX点である。また、障壁層2
1がバルク型半導体でないときの第1準位、第2準位…
のX点をそれぞれX1点、X2点…と示す一方、量子井
戸層22がバルク型半導体でないときの第1準位、第2
準位…のΓ点をそれぞれΓ1点、Γ2点…と示してい
る。さらに、図2において、Γ3(0)は量子井戸層2
2−0におけるΓ3点を示し、Γ3(1)は量子井戸層
22−1におけるΓ3点を示し、以下同様である。ま
た、X1(1/2)は、量子井戸層22−0と量子井戸
層22−1との間の障壁層21−1におけるX1点を示
し、X1(1・1/2)は、量子井戸層22−1と量子
井戸層22−2との間の障壁層21−2におけるX1点
を示し、以下同様である。
【0019】図2から明らかなように、逆バイアス電圧
Vbを高くすることにより、各層21,22における閉
じ込め効果は弱くなり、各X点及び各Γ点における準位
エネルギーは低下してくる。また、図2において、逆バ
イアス電圧Vbを変化することにより、逆バイアス電圧
Vb=Vb1と設定したとき、例えば100で示すよう
に、互いに隣接する層22,21のΓ2(1)の準位エ
ネルギーとX1(1/2)の準位エネルギーとを一致さ
せることができ、また、例えば101で示すように、互
いに隣接する層22,21のΓ2(2)の準位エネルギ
ーとX1(1・1/2)の準位エネルギーとを一致させ
ることができる。これにより、詳細後述するように、電
子を各層22,21間で遷移させることができる。
【0020】ところで、本実施形態のように、超格子構
造を有する真性半導体i層15の部分でその障壁層21
の厚みが非常に薄いと、電界によって加速された電子は
トンネリング現象によって隣り合う離れた障壁層21中
のX点準位に遷移できる。これに対して、超格子構造で
はなく、総て単一組成のバルク型半導体である場合に
は、このX点は空間的に連続して存在するため、一旦X
点に入った電子はX点の中を流れることができる。とこ
ろが、超格子構造を有する真性半導体i層15において
は、障壁層21と量子井戸層22の組成が異なるためそ
のX点のエネルギー準位も大きく異なっており、障壁層
21中のX点の電子は量子井戸層22へは流れ込めず、
障壁層21中に局在する。一旦障壁層21中のX点に捕
われた電子は一般的にその緩和時間が非常に長いため、
ほとんど電流の伝動に寄与できない。以上が一般的な超
格子構造を有する真性半導体i層15内における電子伝
導に対する障壁層21中のX点の作用であるが、超格子
構造を以下のようなある特殊な構造にすることにより、
このX点準位を電子伝導に積極的に寄与させることがで
きるようになる。
【0021】すなわち、逆バイアス電圧Vbにより電界
を印加することにより、図3に示すように、例えば、障
壁層21のすぐ右隣の量子井戸層22のΓ点の第2準位
Γ2点等の高次の準位を、元の障壁層21のX点準位の
エネルギーレベルに、X1>Γ2となるように、実質的
に一致又は近接するように設定することにより、例えば
X1点準位とΓ2点準位とを共鳴させる。この場合、X
1点にトラップされた電子は、図3において200で示
すように、図上右側のそのΓ2点に遷移することがで
き、かつX1点からの緩和時間が十分速くなるため電子
伝導に寄与できるようになる。なお、量子井戸層22の
Γ2点の準位エネルギーと、それのすぐ右隣の障壁層2
1のX1点の準位エネルギーとを比較すると、Γ2≫X
1であるので、量子井戸層22のΓ2点にトラップされ
た電子は、図3において201で示すように、それのす
ぐ右隣の障壁層21のX1点に容易に遷移することがで
きる。従って、超格子構造を有する真性半導体層i層に
おける電子は、主として、障壁層21−0のX1点から
すぐ右隣りの量子井戸層22−0のΓ2点に遷移し、量
子井戸層22−0のΓ2点からすぐ右隣の障壁層22−
1のΓ2点に遷移し、以下同様に、X1点→Γ2点→X
1点→Γ2点…のように遷移するので、電流はその方向
と逆方向に流れることになる。
【0022】上述のように、互いに隣接する量子井戸層
22と障壁層21のΓ点準位とX点準位との共鳴をうま
く利用すると、電子の走行速度に関しては、電界が低い
ときには電子の実効的な速度を速くし、電界が高いとき
にはその実効的な速度を遅くすることができる。図4
に、そのような例を第1の実施形態における超格子構造
を用いた実験結果の例によって示す。図4では、当該p
in型ダイオード半導体素子10の電極11側から図1
に示すように、1ピコ秒の光パルスを入射させた場合に
生じる光電流を示しており、なお、各逆バイアス電圧V
bにおいて出力される光電流の違いを明確にするため
に、縦軸の光電流については2ずつオフセットして図示
している。
【0023】図4において、逆バイアス電圧Vbが低い
ときには、200で示すように、電子の走行速度が速い
が、ある逆バイアス電圧Vb以上においては(図4の例
では、逆バイアス電圧Vb=8.0V又は10.0Vの
とき)201で示すように電子の走行にX点の影響によ
る遅れが生じ、その後、それよりも高いある電圧以上で
は、200で示すように、再度電子の速度が遅延の無い
速い速度に戻ることがわかる。すなわち、このダイオー
ド半導体素子10はある電圧範囲では負性微分速度を電
界に対して示すことがわかる。このような負性微分速度
が存在する場合、ある遅れ速度をもって電子集団を走行
させることによって高電界領域を形成して繰り返し障壁
層まで到達するといった、半導体超格子中のX点準位と
Γ点準位との共鳴効果を利用したガン効果を示すことと
なる。すなわち、電子は空間電荷効果によって高電界領
域を発生させ、その領域境界に集中した空間電荷層が領
域移動を伴なって走行する。このような走行する領域と
キャリアの集中が起こると、そのダイオード半導体素子
10はマイクロ波帯の高周波発振を行うことが知られて
いる(上述の従来技術の項を参照。)。従って、第1の
実施形態においては、光を入射することにより、p型キ
ャップ層13にキャリアを注入し、これにより、電子及
び正孔を発生させて上記の高周波発振を生じさせる。こ
こで、入射する光は、例えばレーザダイオードなどの光
源又は光発生手段(図示せず。)を用いる。
【0024】ガンダイオードはバルクのGaAs半導体
層のΓ点準位とX点準位との走行速度差による負性微分
速度による領域生成によって高周波発振を行うが、従来
の半導体素子では、発振周波数は主として、ダイオード
半導体素子10の電子走行領域の長さによって決定され
るので、発振周波数を広い範囲で変化するためには、素
子自体を別の長さを持ったものに換えるしかない。これ
に対し、本発明に係る本実施形態におけるダイオード半
導体素子10においては、図4に示したように印加され
る逆バイアス電圧VbによってX点からΓ点への緩和時
間を大きく変化させることができるので、実効的な電子
の走行速度を大きく変化させることができ、従って、印
加される逆バイアス電圧Vbの変化によって発振周波数
を、容易に従来に比較して広い周波数範囲で変化させる
ことができる。
【0025】なお、当該pinダイオード半導体素子1
0を用いてマイクロ波発振器を構成するためには、実際
には、当該素子10の電極11,12に、比較的広い帯
域幅を有する、例えば複数の共振器からなる誘電体共振
器又はマイクロストリップ線路型共振器を接続して、発
振されたマイクロ波信号を取り出すことができる。
【0026】さらに、第1の実施形態のダイオード半導
体素子10に対して印加される逆バイアス電圧Vbを変
化させることにより、非常に広い範囲の発振周波数を変
化することができるために、例えば入力される信号又は
データに従って、逆バイアス電圧Vbを強度変調するこ
とにより、瞬時に広帯域に渡るマイクロ波周波数変調を
実現することができる。言い換えれば、印加される逆バ
イアス電圧Vbを変化するだけで発振周波数を変化させ
ることができるため、超高速で周波数を掃引することが
できる。
【0027】上記の図4の実験結果から、100対の超
格子構造を有する第1の実施形態の場合においては、約
700MHzから約2GHzまでの範囲で発振周波数を
変化することができ、例えば半分の50対の超格子構造
を有する実施形態の場合においては、約1.4GHzか
ら約4GHzまでの範囲で発振周波数を変化することが
でき、さらに、例えば1/4の25対の超格子構造を有
する実施形態の場合においては、約2.8GHzから約
8GHzまでの範囲で発振周波数を変化することができ
ると考えられる。
【0028】以上の第1の実施形態において、真性半導
体i層15における各両端の層は、量子井戸層21であ
ってもよいし、障壁層22でもあってもよい。
【0029】<第2の実施形態>図5は、本発明に係る
第2の実施形態であるマイクロ波ダイオード半導体素子
40を示す断面図である。このダイオード半導体素子4
0は、直流電源30により所定のバイアス電圧Vbが印
加された電極41と電極42との間に、n+型半導体層
43とn-型半導体層44とn+型半導体層45と、n型
半導体基板46とを挟設してなるダイオード素子におい
て、n-型半導体層44は、第1の実施形態と同様に、
超格子構造を有することを特徴とする。以下、第1の実
施形態との相違点について説明する。
【0030】この第2の実施形態においては、Siにて
なるn型不純物イオンが例えば注入量1018/cm3
け注入されたn−GaAsにてなる厚さ300μmのn
型半導体基板46上に、以下の各層が順次、n型半導体
基板46から近接した側から積層されて形成される。 (a)n+型半導体層45は、Siにてなるn型不純物
イオンが例えば注入量1×1018/cm3だけ注入され
たn+−GaAsにてなり、厚さ0.2μmを有するよ
うに形成される。 (b)n-型半導体層(n-−SL)44は、第1の実施
形態と同様の障壁層21と量子井戸層22とが繰り返し
交互に積層された超格子構造を有し、厚さ約820μm
を有する。 (c)n+型半導体層43は、Siにてなるn型不純物
イオンが例えば注入量1×1018/cm3だけ注入され
たn+−GaAsにてなり、厚さ0.2μmを有するよ
うに形成される。
【0031】ここで、超格子構造を有するn-型半導体
層44は、GaAsにてなり24原子層の厚さ約68Å
の量子井戸層22と、AlAsにてなり5原子層の厚さ
約14Åの障壁層21とを交互に、例えば100周期
(すなわち100対)で積層されて形成される。ただ
し、当該n-型半導体層44には、Siにてなるn型不
純物イオンが例えば注入量1×1016/cm3だけ注入
される。
【0032】以上のように構成された第2の実施形態の
ダイオード半導体素子40においては、第1の実施形態
と同様に、超格子構造を有するn-型半導体層44の各
層21,22の厚さ及び所定のバイアス電圧Vbを設定
する一方、直流電源30によりn+型半導体層45に電
流を注入することによりキャリアを注入することによ
り、高周波発振を生じさせることができる。ここで、印
加されるバイアス電圧VbによってX点からΓ点への緩
和時間を大きく変化させることができるので、実効的な
電子の走行速度を大きく変化させることができ、従っ
て、印加されるバイアス電圧Vbの変化によって発振周
波数を、容易に従来に比較して広い周波数範囲で変化さ
せることができる。
【0033】なお、当該n+-+構造を有するダイオ
ード半導体素子40を用いてマイクロ波発振器を構成す
るためには、実際には、当該素子40の電極41,42
に、比較的広い帯域幅を有する、例えば複数の共振器か
らなる誘電体共振器又はマイクロストリップ線路型共振
器を接続して、発振されたマイクロ波信号を取り出すこ
とができる。
【0034】以上の第2の実施形態においては、n型半
導体基板46を設けているが、本発明はこれに限らず、
設けなくてもよい。
【0035】<第3の実施形態>図6は、本発明に係る
第3の実施形態であるマイクロ波ダイオード半導体素子
50を示す断面図である。なお、図6における()内の
表示は後述する第3の実施形態の変形例における半導体
層を示す。このダイオード半導体素子50は、直流電源
30により逆バイアス電圧Vbが印加された電極51と
電極52との間に、p+型半導体層53と、n型半導体
層54と、真性半導体i層55と、n+型半導体層56
とを挟設してなるインパットダイオード素子であって、
真性半導体i層55は、第1の実施形態と同様に、超格
子構造を有することを特徴とする。以下、第1の実施形
態との相違点について説明する。
【0036】この第3の実施形態においては、Siにて
なるn型不純物イオンが例えば注入量1018/cm3
け注入されたn+−GaAsにてなる厚さ30μmのn+
型半導体層56上に、以下の各層が順次、n+型半導体
層56から近接した側から積層されて形成される。 (a)真性半導体i層(i−SL)55は、第1の実施
形態と同様の障壁層21と量子井戸層22とが繰り返し
交互に積層された超格子構造を有し、厚さ約820μm
を有する。 (b)n型半導体層54は、Siにてなるn型不純物イ
オンが例えば注入量1×1016/cm3だけ注入された
n−GaAsにてなり、厚さ0.2μmを有するように
形成される。 (c)p+型半導体層53は、Beにてなるp型不純物
イオンが例えば注入量1×1018/cm3だけ注入され
たp+−GaAsにてなり、厚さ0.2μmを有するよ
うに形成される。
【0037】ここで、n型半導体層54はアバランシェ
領域(又はインパクト領域)を構成しており、p+型半
導体層53とn型半導体層54とのpn接合により、な
だれ増倍部又はアバランシェ増倍部を構成する一方、真
性半導体i層55はドリフト領域を構成している。超格
子構造を有する真性半導体i層55は、GaAsにてな
り24原子層の厚さ約68Åの量子井戸層22と、Al
Asにてなり5原子層の厚さ約14Åの障壁層21とを
交互に、例えば100周期(すなわち100対)で積層
されて形成される。
【0038】以上のように構成された第3の実施形態の
ダイオード半導体素子50において、インパクトイオン
化が生じる臨界電界に達するような逆バイアス電圧Vb
を直流電源30により印加することにより、n型半導体
層54とp+型半導体層53との間でアバランシェ・ブ
レークダウンを生じさせ、これにより、キャリアが発生
する。この発生したキャリアを、公知の通り、飽和ドリ
フト速度で移動させることにより、当該素子50全体か
ら見ると、生成されたキャリアによる電流の位相と印加
電圧の位相の間にπ/2の位相差が現れ、実効的な抵抗
成分が負、すなわち負性抵抗が現れる。これにより高周
波発振が生じる。
【0039】ここで、第1の実施形態と同様に、超格子
構造を有する真性半導体i層55の各層21,22の厚
さ及び逆バイアス電圧Vbを設定する一方、直流電源3
0により上記アバランシェ・ブレークダウンを生じさせ
るこにより、キャリアを注入させることができ、これに
よって上述のように、高周波発振を生じさせることがで
きる。ここで、印加される逆バイアス電圧Vbによって
X点からΓ点への緩和時間を大きく変化させることがで
きるので、実効的な電子の走行速度を大きく変化させる
ことができ、従って、印加される逆バイアス電圧Vbの
変化によって発振周波数を、容易に従来に比較して広い
周波数範囲で変化させることができる。
【0040】なお、当該インパットダイオード構造を有
するダイオード半導体素子50を用いてマイクロ波発振
器を構成するためには、実際には、当該素子50の電極
51,52に、比較的広い帯域幅を有する、例えば複数
の共振器からなる誘電体共振器又はマイクロストリップ
線路型共振器を接続して、発振されたマイクロ波信号を
取り出すことができる。
【0041】以上の第3の実施形態においては、p+
導体層53と、n型半導体層54と、n+型半導体層5
6とを備えて構成しているが、本発明はこれに限らず、
図6において()内に示すように、それらに代えてそれ
ぞれ、n+型半導体層と、p型半導体層と、p+型半導体
層とを備えて構成してもよい。
【0042】以上の第3の実施形態においては、アバラ
ンシェ増倍部を有するインパットダイオードについて説
明しているが、本発明はこれに限らず、同様のアバラン
シェ増倍部を有するトラパットダイオードに容易に適用
することができる。このトラパットダイオードにおいて
は、発振周波数は接続される共振回路により決定され、
なだれ増倍による生成された電子・正孔プラズマの充満
による低電圧・高電流状態とプラズマが掃き出された高
電圧・低電流状態とが交互に繰り返され、発振が生じ
る。このトラパットダイオードにおいても、第3の実施
形態と同様の効果を有する。
【0043】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係るマイク
ロ波半導体装置によれば、2つの電極間に、少なくと
も、障壁層と量子井戸層とが交互に積層されてなる超格
子構造を有するダイオード素子を備えたマイクロ波半導
体装置であって、互いに隣接する障壁層のX点の準位と
量子井戸層のΓ点の準位とが互いに共鳴するように、障
壁層の厚さと量子井戸層の厚さを設定しかつ上記2つの
電極間に直流電源により所定の逆バイアス電圧又はバイ
アス電圧を印加したので、従来に比較して極めて簡単な
構成で、より広帯域で高周波発振周波数を変化すること
ができるマイクロ波半導体装置を提供することができ
る。当該マイクロ波半導体装置を用いることにより、高
周波の可変周波数発振器を実現することができる。
【0044】また、本発明に係るマイクロ波半導体装置
の発振周波数を変化するための方法によれば、上記マイ
クロ波半導体装置において、上記直流電源による2つの
電極に印加される逆バイアス電圧又はバイアス電圧を変
化することにより、マイクロ波半導体装置の発振周波数
を変化するので、従来に比較して極めて簡単な構成で、
より広帯域で高周波発振周波数を変化することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る第1の実施形態であるマイクロ
波ダイオード半導体素子を示す断面図である。
【図2】 図1のマイクロ波ダイオード半導体素子に対
して逆バイアス電圧を印加したときの真性半導体i層の
各点における準位エネルギーを示すエネルギーバンド図
である。
【図3】 図1のマイクロ波ダイオード半導体素子の真
性半導体i層の厚さ方向の位置に対する準位エネルギー
を示すエネルギーバンド図である。
【図4】 図1のマイクロ波ダイオード半導体素子に対
して1ピコ秒の時間幅の光パルスを入射したときの光電
流の時間経過を示すグラフである。
【図5】 本発明に係る第2の実施形態であるマイクロ
波ダイオード半導体素子を示す断面図である。
【図6】 本発明に係る第3の実施形態であるマイクロ
波ダイオード半導体素子を示す断面図である。
【符号の説明】
10,40,50…マイクロ波ダイオード半導体素子、 11,12…電極、 13…p型キャップ層、 14…i型クラッド層、 15…超格子構造を有する真性半導体i層、 16…i型クラッド層、 17…n型バッファ層、 20…n型半導体基板、 21−0乃至21−N…障壁層、 22−0乃至22−N…量子井戸層、 30…直流電源、 41,42…電極、 43…n+型半導体層、 44…超格子構造を有するn-型半導体層、 45…n+型半導体層、 46…n型半導体基板、 51,52…電極、 53…p+型半導体層、 54…n型半導体層、 55…超格子構造を有する真性半導体i層、 56…n+型半導体層。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三村 秀典 京都府相楽郡精華町大字乾谷小字三平谷 5番地 株式会社エイ・ティ・アール光 電波通信研究所内 (72)発明者 冨永 浩司 京都府相楽郡精華町大字乾谷小字三平谷 5番地 株式会社エイ・ティ・アール光 電波通信研究所内 (72)発明者 渡辺 敏英 京都府相楽郡精華町大字乾谷小字三平谷 5番地 株式会社エイ・ティ・アール光 電波通信研究所内 (56)参考文献 特開 平8−116074(JP,A) 特開 昭49−29590(JP,A)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2つの電極間に、障壁層と量子井戸層と
    が交互に積層されてなる超格子構造を有する真性半導体
    i層を挟設してなるpin型ダイオード素子を備えたマ
    イクロ波半導体装置であって、 互いに隣接する障壁層のX点の準位と量子井戸層のΓ点
    の準位とが互いに共鳴するように、障壁層の厚さと量子
    井戸層の厚さを設定しかつ上記2つの電極間に直流電源
    により所定の逆バイアス電圧を印加したことを特徴とす
    るマイクロ波半導体装置。
  2. 【請求項2】 上記pin型ダイオード素子のp層側か
    ら光を入射するための光発生手段をさらに備え、 p層においてキャリアを生成して高周波発振を生じさせ
    ることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波半導体装
    置。
  3. 【請求項3】 2つの電極間に、n+型半導体層と、障
    壁層と量子井戸層とが交互に積層されてなる超格子構造
    を有するn-型半導体層と、n+型半導体層とを挟設して
    なるダイオード素子を備えたマイクロ波半導体装置であ
    って、 互いに隣接する障壁層のX点の準位と量子井戸層のΓ点
    の準位とが互いに共鳴するように、障壁層の厚さと量子
    井戸層の厚さを設定しかつ上記2つの電極間に直流電源
    により所定のバイアス電圧を印加したことを特徴とする
    マイクロ波半導体装置。
  4. 【請求項4】 2つの電極間に、少なくともアバランシ
    ェ増倍部と、障壁層と量子井戸層とが交互に積層されて
    なる超格子構造を有する真性半導体i層とを挟設してな
    るダイオード素子を備えたマイクロ波半導体装置であっ
    て、 互いに隣接する障壁層のX点の準位と量子井戸層のΓ点
    の準位とが互いに共鳴するように、障壁層の厚さと量子
    井戸層の厚さを設定しかつ上記2つの電極間に直流電源
    により所定の逆バイアス電圧を印加したことを特徴とす
    るマイクロ波半導体装置。
  5. 【請求項5】 請求項2乃至4のうちの1つに記載のマ
    イクロ波半導体装置において、 上記直流電源による上記2つの電極に印加される逆バイ
    アス電圧又はバイアス電圧を変化することにより、上記
    マイクロ波半導体装置の発振周波数を変化することを特
    徴とするマイクロ波半導体装置の発振周波数を変化する
    ための方法。
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