JP2673521B2 - 抗ヒト染色体21関連抗原モノクローナル抗体及びそれを産生するハイブリドーマ - Google Patents
抗ヒト染色体21関連抗原モノクローナル抗体及びそれを産生するハイブリドーマInfo
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Description
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、ヒト染色体21上の遺伝子に起因する、細
胞膜上の抗原に対応するモノクローナル抗体及びそれを
産生するハイブリドーマに関する。この発明のモノクロ
ーナル抗体は、ダウン症候群及びその関連疾患の診断試
薬として用いることができる。 [従来の技術] 遺伝子工学の進歩は遺伝情報の担い手であるDNAのレ
ベルで遺伝子操作を可能にし、その成果の一部は既に医
薬品として工業化されている。DNAの高次構築物である
染色体についても遺伝子工学的手法を応用した染色体工
学と称されている分野が既に存在しているが、現状で
は、技術的難度のため、具体的な成果はまだ知られてい
ない。 一方、染色体レベルでの異常と疾患との関係につい
て、興味深い情報が得られつつある。 ダウン症候群の疾患は先天的な心疾患、アルツハイマ
ー病、白血病等の発病の危険率が高く、短命であること
が知られているが、正常個体では対をなす2個の21番染
色体を含む46個の染色体構成であるのに対し、ダウン症
では3個の21番染色体を有する異常構成の核型(トリソ
ミー)を示している。 ダウン症候群は外見的特徴から診断は容易とされてい
るが、染色体異常に帰結される免疫学的な診断法は確立
されていない。 [発明が解決しようとする問題点] ダウン症候群及びそれとの関連が予期されているアル
ツハイマー症は今後の高齢化社会において出現頻度が増
大することが予想されている(母親の年令が高いほど出
現しやすいことが統計的に知られている)が、その早期
あるいは病因に基づいた診断法が研究、治療、予防に不
可欠であり、診断法開発の壁となる特異性の高いモノク
ローナル抗体の確立が必要である。 従って、この発明の目的は、ダウン症候群及びその関
連疾患の診断に用いることができるモノクローナル抗体
を提供することである。 [問題点を解決するための手段] すなわち、この発明は、ヒト染色体21の長腕部分に存
在する遺伝子によりコードされる分子量約1万の抗原と
抗原抗体反応をし、IgM亜群に属し、ディソミー21細胞
である線維芽細胞株IMR−90及びHELと抗原抗体反応せ
ず、トリソミー21細胞であるD529、D532及びD539と抗原
抗体反応するモノクローナル抗体NR−S2を提供する。 さらにまた、この発明は、ヒト染色体21の全長又は長
腕部を組込んだチャイニーズハムスターオバリー細胞で
免疫された動物の抗体産生細胞と骨髄腫細胞との融合に
よって得られる上記モノクローナル抗体を産生するハイ
ブリドーマを提供する。 [発明の効果] この発明のモノクローナル抗体は染色体21上の遺伝子
産物を抗原として反応し、ダウン症候群の非常に優れた
モデルであるトリソミー21線維芽細胞株と反応すること
から、ダウン症候群に非常に強く関連した抗原を認識し
ている。従って、この発明のモノクローナル抗体を診断
薬としてダウン症候群及びその関連疾患を感度良く診断
することができる。 [発明の具体的説明] この発明のモノクローナル抗体は、例えば以下の方法
により得ることができる。ヒト染色体21の全長をチャイ
ニーズハムスターズオバリー(CHO)細胞に組込んだ細
胞である153E9A8細胞(文献:David Patterson and Vick
y B.Schandle,Banbury Report 14:Recombinant DNA App
lication to Human Disease,pp.215−223(1983),Cold
Spring Laboratory)を免疫原として例えばマウスのよ
うな動物を免疫し、免疫された動物から抗体産生B細胞
を得、これと骨髄腫細胞をケーラーとミルシュタインの
常法により融合し、HAT培地で培養してハイブリドーマ
を選択し、例えばフローサイトメーターを用いた蛍光抗
体法により153E9A8細胞株に陽性、その野生株であるCHO
細胞に陰性の抗体を産生しているハイブリドーマを選択
し、これを培養してその栄養上清からこの発明のモノク
ローナル抗体を回収することができる。モノクローナル
抗体を産生するハイブリドーマはまた、常法によりマウ
スの腹水中で培養し、この発明のモノクローナル抗体を
腹水から得ることもできる。 上記のようにして得たこの発明のモノクローナル抗体
は、当然ながら153E9A8細胞株と反応し、野生型のCHO細
胞とは反応しない。また、本発明のモノクローナル抗体
は、ディソミー21細胞である線維芽細胞株IMR−90及びH
ELと抗原抗体反応せず、トリソミー21細胞であるD529、
D532及びD539と抗原抗体反応する。また、後述の実施例
で得られたこの発明のモノクローナル抗体NR−S2は、常
法であるウェスタンブロット法、ドットイムノバインデ
ィング法、及び蛍光抗体法により、染色体21の長腕部分
(21q)が組込まれているCHO細胞株2Fur(文献:David P
atterson and Vicky B.Schandle、前出)、8q-(文献:N
icoletta Sacchi等.Science,231,January pp.379−381
(1986)、ring(R2−10)(文献:M.L.VAN KEUREN等、A
m J.Hum.Genet 38,793−804(1986)と反応する。これ
らのことから、この発明のモノクローナル抗体の認識す
る抗原の遺伝子は染色体21の長腕部分(21q)に存在す
ると推定される。 この発明のモノクローナル抗体は、オクタロニー法に
よりIgM亜群に属することがわかった。 また、後述の実施例で明らかになるように、モノクロ
ーナル抗体NR−S2が陽性に反応するヒト白血病T細胞株
であるTALL−1(文献:岸本忠三、渡辺武編、免疫担当
細胞、岩波講座、免疫科学3、pp.181−204(1986))
の可溶化物をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で
分離し、モノクローナル抗体と反応するバンドを酵素免
疫的手法で検出した結果、モノクローナル抗体は分子量
約1万付近のタンパク質とのみ結合し、染色される。こ
のことから、この発明のモノクローナル抗体の対応抗原
は、ヒト染色体21上の遺伝子に起因する細胞膜上の分子
量約1万の物質であることがわかった。 また、この発明のモノクローナル抗体NR−S2は、ヒト
正常人末梢血中のリンパ球、顆粒球、単球とは反応しな
い。 さらに、モノクローナル抗体NR−S2は、分化段階の進
んだT細胞株、即ち上記TALL−1、skw文献:岸本忠三
他編、前出)、MT−2文献:岸本忠三他、前出)、HUT
−102文献:岸本忠三他編、前出)と陽性に反応し、未
熟なT細胞株、B細胞株、単球・顆粒球系細胞株、赤芽
球系細胞株と反応しない。 また、モノクローナル抗体NR−S2は、染色体21を3組
持つトリソミー21の線維芽細胞株5種類、すなわち、D5
29(文献:Catalogue of Cell Line and Hybridoma,ATCC
5th edition,1985)、D532(文献:ATCC、同上)、D539
(文献:ATCC、同上)、GM4928(文献:Catalogue of NIG
MS Corp.NJ USA)、GM2067文献:NIGMS同上:Pro NAS78,p
7670(1981))と全て陽性反応を示し、ディソミー21の
線維芽細胞株IMR−90(文献:ATCC、同上)、HEL(文献:
ATCC、同上)、モノソミー21の線維芽細胞株GMO137文
献:NIGMS社、前出)、と反応しない。これらの結果は、
明らかにモノクローナル抗体NR−S2がダウン症候群の病
因に関わっている染色体21のトリソミーと特異的に反応
していることを示す。 この発明のモノクローナル抗体は、ダウン症候群及び
その関連疾病の診断薬としての用途を有する。この発明
のモノクローナル抗体を診断薬として用いる場合には患
者から摘出した組織片あるいは細胞あるいは血液等の体
液をモノクローナル抗体によってそれぞれ組織染色する
方法、細胞を蛍光抗体法及び酵素抗体法で顕微鏡下で観
察するか、細胞自動解析装置等で分析する方法、酵素免
疫測定法で比色定量する(K.シコラ他、単クローン抗体
の臨床応用、講談社サイエンティフィク(1985)参
照)。 [発明の実施例] モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製 (1)免疫原にはCHO細胞株153E9A8(入手先:Dr.Patter
son;The Eleanor Roosevelt Institute for Cancer Res
earch,Denver USA)を10%ウシ胎児血清(以下FCSと略
す)添加F12培地で培養し、0.02%トリプシン、EDTAで
細胞を浮遊させ、PBSで2回洗浄し、遠心分離(1000rpm
x5分)で細胞を集め、細胞数を調整したものを用い
た。 免疫操作は4週令のBALB/cマウスの尾静脈に1×107
個の細胞株153E9A8を静注し、その後2週間の間隔で2
〜4回尾静脈又は腹腔内に1×107個の細胞株153E9A8を
追加免疫した。免疫の過程で免疫原への抗体価の上昇を
追跡した。 (2)細胞融合 最終免疫より3日後に抗体価の高いマウスから脾細胞
を無菌的に取り出し、ステンレスメッシュで単細胞にほ
ぐし、脾細胞の1/7量の8−アザグアニン耐性骨髄腫細
胞株NS−1を混合し、洗浄遠沈後、細胞のペレットに1m
lの50%ポリエチレングリコール(平均分子量1500)を
加えて注意深く細胞融合操作を行なった。洗浄後培養液
をHAT培地に交換し、96穴マイクロプレートに1×106個
の割合で0.1mlづつ分注した。各マイクロプレートは5
%CO2、37℃(100%RH)のインキュベータで、1日、4
日目とHAT培地を1滴づつ追加しながら注意深く数週間
培養した。 (3)ハイブリドーマの選択 96穴マイクロプレートを倒立顕微鏡下で観察し、主に
単一のコロニーが形成されているウェルから培養上清を
サンプリングし、自動細胞解析装置フローサイトメータ
ーEpics−C(コールター社)を用いて蛍光抗体法によ
り細胞株153E9A8に陽性、その野生株であるCHOに陰性の
抗体を産生しているハイブリドーマを選択した。 このように選択されたハイブリドーマは直ちに限界希
釈法によりクローニングを繰り返した。5回のクローニ
ングにより安定したハイブリドーマの培養上清をヒト正
常末梢値注の細胞と反応させ、リンパ球、顆粒状、単球
とそれぞれ陽性のクローンを選び出し、NR−S2と命名し
た。 モノクローナル抗体NR−S2を産生するハイブリドーマ
はBALB/cマウスを用いて常法により腹水を作製した。 (4)免疫グロブリンのサブクラス この発明のモノクローナル抗体の免疫グロブリンのサ
ブクラスはオクタロニー法によりマウスIgMと決定され
た。 抗原をコードする遺伝子の染色体上のマッピング位置 上記のようにして得られたモノクローナル抗体NR−S2
は、153E9A8細胞株、ヒト染色体21の長腕部分(21q)が
組込まれている2Fur細胞株(入手先:Dr.Patterson;The
Eleanor Roosevelt Institute for Cancer Research,De
nver,USA)との反応性を周知のウェスタンブロット法、
ドットイムノバインディング法、蛍光抗体法(これら3
法が準拠した文献:日本生化学会編、続生化学実験講座
5、免疫生化学研究法(1986);Barbara B.,Mishell an
d Stanley M.Shugi“Selected Methods in Cellular Im
munology(1980),W.H.Freeman and Company SF,USA)
で調べたところ、いずれの方法によっても反応すること
が確認された。このことから、NR−S2の認識する抗原の
遺伝子は染色体21の長腕部分(21q)に存在すると推定
された。両者の細胞に共通する特徴として、スーパーオ
キシドディスムテース(SOD)、ホスホリボシルグリシ
ンアミンシンセテース(GARS)などの遺伝子が発現して
いることが知られている。 また、同様の手法で細胞株8q-(入手先:Dr.Patterso
n、前出)、ring(入手先:Dr.Patterson、前出)と反応
することが確認された。これらの細胞もいずれもヒト染
色体21qを含んでいる。 次に染色体21を組込んだ細胞の可溶化物をSDS−ポリ
アクリルアミドゲル電気泳動で分離し染色体21上にコー
ドされているタンパク質について検索した。結果を第1
表に示す。 これらの結果から、NR−S2の認識する抗原をコードす
る遺伝子はヒト染色体21のSOD位置より下、ブレークポ
イントの22.3より上に存在すると考えられた。 抗原の分子量 ヒトT細胞株TALL−1の可溶化物をSDS−ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動して分離し、NL−S2と反応するバ
ンドを酵素免疫的手法で検出しぃた。この操作はBarbar
a B.,Mishell and Stanley M.Shugi“Selected Methods
in Cellular Immunology(1980),W.H.Freeman and Co
mpany SF,USAに記載された方法により行なった。NR−S2
は分子量10kDa付近のタンパク質とのみ結合し、染色さ
れた。 白血球分化抗原との関連性 白血病、リンパ腫の患者の血液患者から樹立された各
種の細胞株が血球細胞系における幹細胞から末梢の分化
細胞までの分化段階の抗原を担っていることが知られて
いる。セルバンク(藤崎細胞センター、岡山市藤崎字東
拾割675−1)より入手した各種のT細胞系、B細胞
系、非T非B細胞系、単球・顆粒球系、赤芽球系の細胞
との反応を上記蛍光抗体法及びウェスタンブロット法に
より調べた。結果を第2表に示す。 上記結果は、NR−S2が認識する抗原が白血病分化抗原
と深い関わりがあることを示しており、ダウン症候群が
高率で急性白血病を併発することと興味深い関係を強く
示唆している。 トリソミ−21の線維芽細胞との反応性 染色体21を1〜3個それぞれ有している線維芽細胞と
の反応性を上記蛍光抗体法で調べた。その結果、ディソ
ミーであるIMR−90(入手先:ATCC)、HEL(入手先:ATC
C)の2種類の細胞との反応性は陰性、トミソミーであ
るD529(入手先:ATCC)、D532(入手先:ATCC)、D539
(入手先:ATCC)、GM4928(入手先:NIGMS社、米国)、G
M2067(入手先:NIGMS社、米国)の5種類との反応性は
いずれも陽性、モノソミーであるGM0137(入手先:NIGMS
社、米国)との反応性は陰性であった。この結果は明ら
かにNR−S2がダウン症候群の病因に深く関わっている染
色体21のトリソミーと特異的に反応していることを証明
した。
胞膜上の抗原に対応するモノクローナル抗体及びそれを
産生するハイブリドーマに関する。この発明のモノクロ
ーナル抗体は、ダウン症候群及びその関連疾患の診断試
薬として用いることができる。 [従来の技術] 遺伝子工学の進歩は遺伝情報の担い手であるDNAのレ
ベルで遺伝子操作を可能にし、その成果の一部は既に医
薬品として工業化されている。DNAの高次構築物である
染色体についても遺伝子工学的手法を応用した染色体工
学と称されている分野が既に存在しているが、現状で
は、技術的難度のため、具体的な成果はまだ知られてい
ない。 一方、染色体レベルでの異常と疾患との関係につい
て、興味深い情報が得られつつある。 ダウン症候群の疾患は先天的な心疾患、アルツハイマ
ー病、白血病等の発病の危険率が高く、短命であること
が知られているが、正常個体では対をなす2個の21番染
色体を含む46個の染色体構成であるのに対し、ダウン症
では3個の21番染色体を有する異常構成の核型(トリソ
ミー)を示している。 ダウン症候群は外見的特徴から診断は容易とされてい
るが、染色体異常に帰結される免疫学的な診断法は確立
されていない。 [発明が解決しようとする問題点] ダウン症候群及びそれとの関連が予期されているアル
ツハイマー症は今後の高齢化社会において出現頻度が増
大することが予想されている(母親の年令が高いほど出
現しやすいことが統計的に知られている)が、その早期
あるいは病因に基づいた診断法が研究、治療、予防に不
可欠であり、診断法開発の壁となる特異性の高いモノク
ローナル抗体の確立が必要である。 従って、この発明の目的は、ダウン症候群及びその関
連疾患の診断に用いることができるモノクローナル抗体
を提供することである。 [問題点を解決するための手段] すなわち、この発明は、ヒト染色体21の長腕部分に存
在する遺伝子によりコードされる分子量約1万の抗原と
抗原抗体反応をし、IgM亜群に属し、ディソミー21細胞
である線維芽細胞株IMR−90及びHELと抗原抗体反応せ
ず、トリソミー21細胞であるD529、D532及びD539と抗原
抗体反応するモノクローナル抗体NR−S2を提供する。 さらにまた、この発明は、ヒト染色体21の全長又は長
腕部を組込んだチャイニーズハムスターオバリー細胞で
免疫された動物の抗体産生細胞と骨髄腫細胞との融合に
よって得られる上記モノクローナル抗体を産生するハイ
ブリドーマを提供する。 [発明の効果] この発明のモノクローナル抗体は染色体21上の遺伝子
産物を抗原として反応し、ダウン症候群の非常に優れた
モデルであるトリソミー21線維芽細胞株と反応すること
から、ダウン症候群に非常に強く関連した抗原を認識し
ている。従って、この発明のモノクローナル抗体を診断
薬としてダウン症候群及びその関連疾患を感度良く診断
することができる。 [発明の具体的説明] この発明のモノクローナル抗体は、例えば以下の方法
により得ることができる。ヒト染色体21の全長をチャイ
ニーズハムスターズオバリー(CHO)細胞に組込んだ細
胞である153E9A8細胞(文献:David Patterson and Vick
y B.Schandle,Banbury Report 14:Recombinant DNA App
lication to Human Disease,pp.215−223(1983),Cold
Spring Laboratory)を免疫原として例えばマウスのよ
うな動物を免疫し、免疫された動物から抗体産生B細胞
を得、これと骨髄腫細胞をケーラーとミルシュタインの
常法により融合し、HAT培地で培養してハイブリドーマ
を選択し、例えばフローサイトメーターを用いた蛍光抗
体法により153E9A8細胞株に陽性、その野生株であるCHO
細胞に陰性の抗体を産生しているハイブリドーマを選択
し、これを培養してその栄養上清からこの発明のモノク
ローナル抗体を回収することができる。モノクローナル
抗体を産生するハイブリドーマはまた、常法によりマウ
スの腹水中で培養し、この発明のモノクローナル抗体を
腹水から得ることもできる。 上記のようにして得たこの発明のモノクローナル抗体
は、当然ながら153E9A8細胞株と反応し、野生型のCHO細
胞とは反応しない。また、本発明のモノクローナル抗体
は、ディソミー21細胞である線維芽細胞株IMR−90及びH
ELと抗原抗体反応せず、トリソミー21細胞であるD529、
D532及びD539と抗原抗体反応する。また、後述の実施例
で得られたこの発明のモノクローナル抗体NR−S2は、常
法であるウェスタンブロット法、ドットイムノバインデ
ィング法、及び蛍光抗体法により、染色体21の長腕部分
(21q)が組込まれているCHO細胞株2Fur(文献:David P
atterson and Vicky B.Schandle、前出)、8q-(文献:N
icoletta Sacchi等.Science,231,January pp.379−381
(1986)、ring(R2−10)(文献:M.L.VAN KEUREN等、A
m J.Hum.Genet 38,793−804(1986)と反応する。これ
らのことから、この発明のモノクローナル抗体の認識す
る抗原の遺伝子は染色体21の長腕部分(21q)に存在す
ると推定される。 この発明のモノクローナル抗体は、オクタロニー法に
よりIgM亜群に属することがわかった。 また、後述の実施例で明らかになるように、モノクロ
ーナル抗体NR−S2が陽性に反応するヒト白血病T細胞株
であるTALL−1(文献:岸本忠三、渡辺武編、免疫担当
細胞、岩波講座、免疫科学3、pp.181−204(1986))
の可溶化物をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で
分離し、モノクローナル抗体と反応するバンドを酵素免
疫的手法で検出した結果、モノクローナル抗体は分子量
約1万付近のタンパク質とのみ結合し、染色される。こ
のことから、この発明のモノクローナル抗体の対応抗原
は、ヒト染色体21上の遺伝子に起因する細胞膜上の分子
量約1万の物質であることがわかった。 また、この発明のモノクローナル抗体NR−S2は、ヒト
正常人末梢血中のリンパ球、顆粒球、単球とは反応しな
い。 さらに、モノクローナル抗体NR−S2は、分化段階の進
んだT細胞株、即ち上記TALL−1、skw文献:岸本忠三
他編、前出)、MT−2文献:岸本忠三他、前出)、HUT
−102文献:岸本忠三他編、前出)と陽性に反応し、未
熟なT細胞株、B細胞株、単球・顆粒球系細胞株、赤芽
球系細胞株と反応しない。 また、モノクローナル抗体NR−S2は、染色体21を3組
持つトリソミー21の線維芽細胞株5種類、すなわち、D5
29(文献:Catalogue of Cell Line and Hybridoma,ATCC
5th edition,1985)、D532(文献:ATCC、同上)、D539
(文献:ATCC、同上)、GM4928(文献:Catalogue of NIG
MS Corp.NJ USA)、GM2067文献:NIGMS同上:Pro NAS78,p
7670(1981))と全て陽性反応を示し、ディソミー21の
線維芽細胞株IMR−90(文献:ATCC、同上)、HEL(文献:
ATCC、同上)、モノソミー21の線維芽細胞株GMO137文
献:NIGMS社、前出)、と反応しない。これらの結果は、
明らかにモノクローナル抗体NR−S2がダウン症候群の病
因に関わっている染色体21のトリソミーと特異的に反応
していることを示す。 この発明のモノクローナル抗体は、ダウン症候群及び
その関連疾病の診断薬としての用途を有する。この発明
のモノクローナル抗体を診断薬として用いる場合には患
者から摘出した組織片あるいは細胞あるいは血液等の体
液をモノクローナル抗体によってそれぞれ組織染色する
方法、細胞を蛍光抗体法及び酵素抗体法で顕微鏡下で観
察するか、細胞自動解析装置等で分析する方法、酵素免
疫測定法で比色定量する(K.シコラ他、単クローン抗体
の臨床応用、講談社サイエンティフィク(1985)参
照)。 [発明の実施例] モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製 (1)免疫原にはCHO細胞株153E9A8(入手先:Dr.Patter
son;The Eleanor Roosevelt Institute for Cancer Res
earch,Denver USA)を10%ウシ胎児血清(以下FCSと略
す)添加F12培地で培養し、0.02%トリプシン、EDTAで
細胞を浮遊させ、PBSで2回洗浄し、遠心分離(1000rpm
x5分)で細胞を集め、細胞数を調整したものを用い
た。 免疫操作は4週令のBALB/cマウスの尾静脈に1×107
個の細胞株153E9A8を静注し、その後2週間の間隔で2
〜4回尾静脈又は腹腔内に1×107個の細胞株153E9A8を
追加免疫した。免疫の過程で免疫原への抗体価の上昇を
追跡した。 (2)細胞融合 最終免疫より3日後に抗体価の高いマウスから脾細胞
を無菌的に取り出し、ステンレスメッシュで単細胞にほ
ぐし、脾細胞の1/7量の8−アザグアニン耐性骨髄腫細
胞株NS−1を混合し、洗浄遠沈後、細胞のペレットに1m
lの50%ポリエチレングリコール(平均分子量1500)を
加えて注意深く細胞融合操作を行なった。洗浄後培養液
をHAT培地に交換し、96穴マイクロプレートに1×106個
の割合で0.1mlづつ分注した。各マイクロプレートは5
%CO2、37℃(100%RH)のインキュベータで、1日、4
日目とHAT培地を1滴づつ追加しながら注意深く数週間
培養した。 (3)ハイブリドーマの選択 96穴マイクロプレートを倒立顕微鏡下で観察し、主に
単一のコロニーが形成されているウェルから培養上清を
サンプリングし、自動細胞解析装置フローサイトメータ
ーEpics−C(コールター社)を用いて蛍光抗体法によ
り細胞株153E9A8に陽性、その野生株であるCHOに陰性の
抗体を産生しているハイブリドーマを選択した。 このように選択されたハイブリドーマは直ちに限界希
釈法によりクローニングを繰り返した。5回のクローニ
ングにより安定したハイブリドーマの培養上清をヒト正
常末梢値注の細胞と反応させ、リンパ球、顆粒状、単球
とそれぞれ陽性のクローンを選び出し、NR−S2と命名し
た。 モノクローナル抗体NR−S2を産生するハイブリドーマ
はBALB/cマウスを用いて常法により腹水を作製した。 (4)免疫グロブリンのサブクラス この発明のモノクローナル抗体の免疫グロブリンのサ
ブクラスはオクタロニー法によりマウスIgMと決定され
た。 抗原をコードする遺伝子の染色体上のマッピング位置 上記のようにして得られたモノクローナル抗体NR−S2
は、153E9A8細胞株、ヒト染色体21の長腕部分(21q)が
組込まれている2Fur細胞株(入手先:Dr.Patterson;The
Eleanor Roosevelt Institute for Cancer Research,De
nver,USA)との反応性を周知のウェスタンブロット法、
ドットイムノバインディング法、蛍光抗体法(これら3
法が準拠した文献:日本生化学会編、続生化学実験講座
5、免疫生化学研究法(1986);Barbara B.,Mishell an
d Stanley M.Shugi“Selected Methods in Cellular Im
munology(1980),W.H.Freeman and Company SF,USA)
で調べたところ、いずれの方法によっても反応すること
が確認された。このことから、NR−S2の認識する抗原の
遺伝子は染色体21の長腕部分(21q)に存在すると推定
された。両者の細胞に共通する特徴として、スーパーオ
キシドディスムテース(SOD)、ホスホリボシルグリシ
ンアミンシンセテース(GARS)などの遺伝子が発現して
いることが知られている。 また、同様の手法で細胞株8q-(入手先:Dr.Patterso
n、前出)、ring(入手先:Dr.Patterson、前出)と反応
することが確認された。これらの細胞もいずれもヒト染
色体21qを含んでいる。 次に染色体21を組込んだ細胞の可溶化物をSDS−ポリ
アクリルアミドゲル電気泳動で分離し染色体21上にコー
ドされているタンパク質について検索した。結果を第1
表に示す。 これらの結果から、NR−S2の認識する抗原をコードす
る遺伝子はヒト染色体21のSOD位置より下、ブレークポ
イントの22.3より上に存在すると考えられた。 抗原の分子量 ヒトT細胞株TALL−1の可溶化物をSDS−ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動して分離し、NL−S2と反応するバ
ンドを酵素免疫的手法で検出しぃた。この操作はBarbar
a B.,Mishell and Stanley M.Shugi“Selected Methods
in Cellular Immunology(1980),W.H.Freeman and Co
mpany SF,USAに記載された方法により行なった。NR−S2
は分子量10kDa付近のタンパク質とのみ結合し、染色さ
れた。 白血球分化抗原との関連性 白血病、リンパ腫の患者の血液患者から樹立された各
種の細胞株が血球細胞系における幹細胞から末梢の分化
細胞までの分化段階の抗原を担っていることが知られて
いる。セルバンク(藤崎細胞センター、岡山市藤崎字東
拾割675−1)より入手した各種のT細胞系、B細胞
系、非T非B細胞系、単球・顆粒球系、赤芽球系の細胞
との反応を上記蛍光抗体法及びウェスタンブロット法に
より調べた。結果を第2表に示す。 上記結果は、NR−S2が認識する抗原が白血病分化抗原
と深い関わりがあることを示しており、ダウン症候群が
高率で急性白血病を併発することと興味深い関係を強く
示唆している。 トリソミ−21の線維芽細胞との反応性 染色体21を1〜3個それぞれ有している線維芽細胞と
の反応性を上記蛍光抗体法で調べた。その結果、ディソ
ミーであるIMR−90(入手先:ATCC)、HEL(入手先:ATC
C)の2種類の細胞との反応性は陰性、トミソミーであ
るD529(入手先:ATCC)、D532(入手先:ATCC)、D539
(入手先:ATCC)、GM4928(入手先:NIGMS社、米国)、G
M2067(入手先:NIGMS社、米国)の5種類との反応性は
いずれも陽性、モノソミーであるGM0137(入手先:NIGMS
社、米国)との反応性は陰性であった。この結果は明ら
かにNR−S2がダウン症候群の病因に深く関わっている染
色体21のトリソミーと特異的に反応していることを証明
した。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所
(C12P 21/08
C12R 1:91)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.ヒト染色体21の長腕部分に存在する遺伝子によりコ
ードされる分子量約1万の抗原と抗原抗体反応をし、Ig
M亜群に属し、ディソミー21細胞である線維芽細胞株IMR
−90及びHELと抗原抗体反応せず、トリソミー21細胞で
あるD529、D532及びD539と抗原抗体反応するモノクロー
ナル抗体NR−S2。 2.ヒト染色体21の全長又は長腕部を組込んだチャイニ
ーズハムスターオバリー細胞で免疫された動物の抗体産
生細胞と骨髄腫細胞との融合によって得られ、ヒト染色
体21の長腕部分に存在する遺伝子によりコードされる分
子量約1万の抗原と抗原抗体反応をし、IgM亜郡に属
し、ディソミー21細胞である線維芽細胞株IMR−90及びH
ELと抗原抗体反応せず、トリソミー21細胞であるD529、
D532及びD539と抗原抗体反応するモノクローナル抗体NR
−S2を産生するハイブリドーマ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62242766A JP2673521B2 (ja) | 1987-09-29 | 1987-09-29 | 抗ヒト染色体21関連抗原モノクローナル抗体及びそれを産生するハイブリドーマ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62242766A JP2673521B2 (ja) | 1987-09-29 | 1987-09-29 | 抗ヒト染色体21関連抗原モノクローナル抗体及びそれを産生するハイブリドーマ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS6486881A JPS6486881A (en) | 1989-03-31 |
JP2673521B2 true JP2673521B2 (ja) | 1997-11-05 |
Family
ID=17093958
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP62242766A Expired - Fee Related JP2673521B2 (ja) | 1987-09-29 | 1987-09-29 | 抗ヒト染色体21関連抗原モノクローナル抗体及びそれを産生するハイブリドーマ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2673521B2 (ja) |
-
1987
- 1987-09-29 JP JP62242766A patent/JP2673521B2/ja not_active Expired - Fee Related
Non-Patent Citations (1)
Title |
---|
Somatic Cell and Molecular Genetics,Vol.12,No.3,(1986),P.297〜302 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS6486881A (en) | 1989-03-31 |
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