JP2662943B2 - シールドトンネルにおけるセグメントの止水兼耐震継手 - Google Patents

シールドトンネルにおけるセグメントの止水兼耐震継手

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JP2662943B2
JP2662943B2 JP7216740A JP21674095A JP2662943B2 JP 2662943 B2 JP2662943 B2 JP 2662943B2 JP 7216740 A JP7216740 A JP 7216740A JP 21674095 A JP21674095 A JP 21674095A JP 2662943 B2 JP2662943 B2 JP 2662943B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、地震や地盤沈下による
シールドトンネルの変位が予測される箇所に有効なシー
ルドトンネルにおけるセグメントの止水兼耐震継手に関
する。
【0002】
【従来の技術】一般に、シールドトンネルは図13に示
すように、立坑101とシールドトンネル100の取り
付け部106、硬質地盤102と軟弱地盤103が折り
重なっていて地盤が急変する箇所107、別の地下構造
物104によって二次応力を受ける箇所108、硬質地
盤102の急斜面に軟弱地盤103があり、その上に宅
地105が造成されているような、地盤が急変する箇所
109等にわたって築造されるケースが多い。これらの
地盤では、同じ震度の地震に対しても揺れが大きく異な
って来る。
【0003】ところで、地震の大きさや地盤条件の違い
によるシールドトンネルの作用力を吸収緩和するため、
従来図14に示すような可撓性セグメント110を用い
ている。
【0004】この図14に示す可撓性セグメント110
は、スキンプレート111と、枠セグメント112と、
一次止水ゴム113と、その内側に取り付けられた二次
止水ゴム114と、耐力バー115および耐力スリーブ
116のユニットと、カバークロス117と、内面スキ
ンプレート118と、これに支持材119を介して支持
された内面カバーゴム120とを組み立てて構成されて
いる。
【0005】次に、図15は近時開発された弾性ワッシ
ャを示す縦断面図である。
【0006】この図15に示す弾性ワッシャ130は、
上部補強鋼板131と、繊維補強ゴム層132と、下部
補強鋼板133とを積層し、一体化して形成されてい
る。そして、例えば内径d=40mm,外径D=100
mmのものでは、全体の厚さh=32.6mmに形成さ
れている。しかして、この弾性ワッシャ130は例えば
トンネル軸方向xに隣合うセグメントリングの継手部分
に用いられている。
【0007】かかる弾性ワッシャ130は、地震等のボ
ルトの軸方向変位に対して、繊維補強ゴム層132が縮
むことにより、ボルトに作用する引張力を低減させる効
果を持っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記従来技術
において使用している可撓性セグメント110は、構造
が複雑で施工に多くの工数を要するため、施工費および
工期等の経済性の点から通常は1基の可撓性セグメント
110により、地震や地盤沈下等によるシールドトンネ
ル100の全ての変位を吸収させるようにしている。こ
のため、シールドトンネル100の作用力に対して一
次,二次止水ゴム113,114および内面カバーゴム
120の耐久力に問題があり、地震の大きさや地盤条件
の違いによるシールドトンネル100の複雑な挙動に対
する追随性に問題があった。
【0009】一方、図15に示す弾性ワッシャ130に
は、次のような問題がある。
【0010】(a)主材がゴムであるため、経年変化に
より強度が劣化し、これによりボルトの初期導入軸力が
低下してしまう。 (b)前述のごとく主材がゴムのため、ボルト締め付け
時および軸方向力作用時のたわみが大きく、したがって
弾性ワッシャ自体の厚さを厚くする必要があり、弾性ワ
ッシャ130およびボルトのコストアップを招く。 (c)通常のワッシャと同様、トルクレンチによる管理
が必要であり、トルク管理の省力化ができない。 (d)ばね効果があまり期待できないため、増し締めの
低減効果が小さい。
【0011】本発明は、上記の事情に鑑みなされたもの
で、その目的とするところは、十分な耐震性および止水
性を兼備し、かつシールドトンネルを良質で安定した形
態に維持でき、さらにはシールドトンネルの規模や、地
盤の条件が変化する場合にも容易に対応でき、しかも経
済的に施工し得るシールドトンネルにおけるセグメント
の止水兼耐震継手を提供することにある。
【0012】本発明の他の目的は、止水性および耐震性
をより一層向上させ得るシールドトンネルにおけるセグ
メントの止水兼耐震継手を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明はトンネル軸方向xに隣合うセグメントリン
グ2,2間にシール材10を介装するとともに、トンネ
ル軸方向xに隣合うセグメントリング2,2の継手プレ
ート6,6同士をボルト・ナット7・8により締結し、
さらに前記ボルト7の頭部7aと一方の継手プレート6
の間と、ナット8と他方の継手プレート6の間の少なく
とも一方に、可撓性座金11と、この可撓性座金11を
収容しかつその可撓性座金11に撓みを持たせるための
支点となる支承座金12を組み合わせた座金ユニットを
介在させるとともに、継手プレート6,6間にも前記座
金ユニットを介在させ、ボルト・ナット7・8を締め付
けたものである。
【0014】また、前記目的を達成するため、本発明は
セグメントリング2の合わせ面側に、円周方向に所定の
間隔をおいて多数の継手プレート6を設け、トンネル軸
方向xに隣合うセグメントリング2,2の間に、弾力性
を有する材料によりU字型断面に形成された止水性リン
グ14を、そのU字型の円弧部14aをセグメントリン
グ2の直径方向の外側に向けて介装し、一方のセグメン
トリング2の継手プレート6から止水性リング14を通
って他方の継手プレート6にボルト7を挿通し、ボルト
7にナット8を装着し、前記止水性リング14のウエブ
14b,14b間を通るボルト7の軸部7bに、可撓性
座金11と、この可撓性座金11を収容しかつその可撓
性座金11に撓みを持たせるための支点となる支承座金
12を組み合わせた座金ユニットを複数組介在させると
ともに、ボルト7の頭部7aと一方の継手プレート6の
間と、ナット8と他方の継手プレート6の間の少なくと
も一方に、前記座金ユニットを介在させ、ボルト・ナッ
ト7・8を締め付けたものである。
【0015】さらに、前記目的を達成するため、本発明
は前記座金ユニットとして、複数枚重ね合わせた可撓性
座金11と、1個の支承座金12とを組み合わせたもの
を用いたものである。
【0016】そして、前記目的を達成するため、本発明
は前記座金ユニットとして、1枚の可撓性座金11と、
1個の支承座金12とを1組とするもの、または複数枚
重ね合わせた可撓性座金11と、1個の支承座金12と
を1組とするものを複数組用い、かつ隣合う組の可撓性
座金間に、これらの可撓性座金よりも小径の平ワッシャ
13を介挿したものである。
【0017】
【作用】本発明では、トンネル軸方向xに隣合うセグメ
ントリング2,2間にシール材10を介装している。ま
た、同トンネル軸方向xに隣合うセグメントリング2,
2の継手プレート6,6同士をボルト・ナット7・8に
より締結している。さらに、ボルト7の頭部7aと一方
の継手プレート6の間と、ナット8と他方の継手プレー
ト6の間の少なくとも一方に座金ユニットを介在させて
おり、継手プレート6,6間にも座金ユニットを介在さ
せ、ボルト・ナット7・8を締め付けている。そして、
前記座金ユニットは可撓性座金11と、この可撓性座金
11を収容しかつその可撓性座金11に撓みを持たせる
ための支点となる支承座金12とを組み合わせて構成さ
れている。
【0018】このように、継手部に座金ユニットを用い
ていることにより、(1)可撓性座金11を、支承座金
12に設けられた支点で撓ませることにより、ボルト7
に必要な所定軸力を導入でき、かつ導入軸力を保持で
き、したがってボルト・ナット7・8の緩みを防止でき
ること、(2)座金ユニットの可撓性座金11を撓ませ
ることによって生じるばね力により、ボルト7の伸び,
シール材10の変形およびセグメントリング2,2同士
の馴染み等によるボルト・ナット7・8の緩みを吸収で
きること、(3)座金ユニットの支承座金12により、
継手プレート6にボルト軸力を良好に伝えることができ
るため、回転ばねを考慮した引張接合継手の特徴をより
一層良好に生かすことができること、(4)弾性ワッシ
ャのごとく強度の劣化の懸念が殆どなく、ボルト7の初
期導入軸力を長期間にわたって維持することができるこ
と、等が相俟って、トンネル軸方向xの圧縮力および引
張力による撓みを良好に吸収することができる。したが
って、シールドトンネルに十分な耐震性および止水性を
持たせることができ、かつシールドトンネルを良質で安
定した形態に維持することができる。
【0019】また、座金ユニットの可撓性座金11の用
いる枚数や、座金ユニットの用いる組数を適宜選択する
ことにより、築造すべきシールドトンネルの規模や、地
盤の急変部,圧密の考えられる粘性土等、地盤の条件が
変化する場合にも、容易にかつ的確に対応することがで
きる。
【0020】さらに、セグメントリング2,2同士の継
手部に、可撓性座金11と支承座金12とを組み合わせ
た座金ユニットを用いることにより、構造が複雑で組み
立て工数の多い可撓性セグメントや、高価な弾性ワッシ
ャを使用する必要がないので、コスト低減を図ることも
できる。
【0021】また、本発明ではトンネル軸方向xに隣合
うセグメントリング2,2間に、弾力性を有する材料に
よりU字型断面に形成された止水性リング14を、その
U字型の円弧部14aをセグメントリング2の直径方向
の外側に向けて介装している。そして、セグメントリン
グ2,2と止水性リング14とを、セグメントリング2
の円周方向に所定の間隔をおいて装着された多数のボル
ト・ナット7・8により締結している。前記止水性リン
グ14のウエブ14b,14b間には、この部位を通る
ボルト7の軸部7bを介して、前記可撓性座金11と支
承座金12とを組み合わせた座金ユニットを複数組介装
し、ボルト7の頭部7aと一方の継手プレート6の間ま
たは/およびナット8と他方の継手プレート6の間に
は、前記座金ユニットを介在させてボルト・ナット7・
8を締め付け、ボルト・ナット7・8が緩まないように
している。
【0022】このように、本発明では継手部に可撓性座
金11と支承座金12とを組み合わせた座金ユニットを
用いたことによる前述の(1)〜(4)の作用と、U字
型断面に形成されかつ同継手部に介装された止水性リン
グ14の弾力性とにより、トンネル軸方向xの圧縮力お
よび引張力による撓みをより一層良好に吸収することが
できるし、前述のごとくU字型断面に形成されかつ円弧
部14aをセグメントリング2の直径方向の外側に向け
て介装された止水性リング14と、この止水性リング1
4をバックアップしている継手部の作用とにより、止水
性を強化することができる。したがって、耐震性および
止水性の向上を図ることができる。
【0023】さらに、本発明では可撓性座金11を複数
枚重ね合わせ(並列重ね)た座金ユニットを用いてい
る。可撓性座金11を2枚並列に重ね合わせると、荷重
が同じであれば撓みが2分の1になり、荷重を2倍にす
ると撓みが同じになる。
【0024】したがって、本発明によれば可撓性座金1
1の使用枚数を選択することによって、セグメントの継
手部分の色々な仕様にも簡単に対応することができる。
【0025】そして、本発明では1枚の可撓性座金11
と1個の支承座金12とを1組とする座金ユニット、ま
たは複数枚重ね合わせた可撓性座金11と1個の支承座
金12とを1組とする座金ユニットを複数組用いてい
る。また、隣合う座金ユニットの可撓性座金間に、これ
らの可撓性座金よりも小径の平ワッシャ13を介挿して
いる。
【0026】このように、複数組の座金ユニットの可撓
性座金間に平ワッシャ13を介挿してボルト・ナット7
・8を締め付けたときに、平ワッシャ13が可撓性座金
の内側を支える役目をする。その結果、継手構造に良好
な耐震性を持たせることができる。
【0027】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。
【0028】図1は本発明にかかる止水兼耐震継手を用
いたシールドトンネルのセグメントを示す斜視図、図2
は同セグメントを内側から見た展開図、図3は本発明の
一実施例を示す縦断面図、図4は図3のA−A線断面
図、図5は図3のB−B線断面図、図6は座金ユニット
の可撓性座金の拡大縦断面図、図7は図6の平面図、図
8は同座金ユニットの支承座金の拡大縦断面図、図9は
図8の平面図、図10は図8のC部分の拡大図、図11
はこの実施例において、ボルト・ナットを締め込んだ状
態を模式的に示した横断平面図である。
【0029】その図1および図2に示すシールドトンネ
ルのセグメント1は、トンネル軸方向xに止水兼耐震継
手4を介して多数のセグメントリング2を次々に組み立
てて築造されている。
【0030】各セグメントリング2は、継手4′を介し
て円周方向に複数のセグメントピース3を接続して構成
されている。
【0031】トンネル軸方向xに隣合うセグメントリン
グ2,2の止水兼耐震継手4は、ボルトボックス5と、
継手プレート6と、ボルト・ナット7・8とを有して構
成されている。
【0032】そして、接続すべき一方のセグメントリン
グ2の合わせ面側には、円周方向に所定の間隔をおいて
多数のボルトボックス5と継手プレート6とが設けられ
ており、他方のセグメントリング2の合わせ面側にも、
円周方向に前記間隔と同じ間隔をおいて多数のボルトボ
ックス5と継手プレート6とが設けられている。
【0033】前記トンネル軸方向xに隣合うセグメント
リング2,2の合わせ面には、図3に示すように、シー
ル材10が介装されている。
【0034】前記一方のセグメントリング2に設けられ
た継手プレート6から他方のセグメントリング2に設け
られた継手プレート6にわたってボルト7が挿通されて
おり、このボルト7の軸部7bの端部にはナット8が装
着されている。
【0035】前記ボルト7の頭部7aと一方の継手プレ
ート6の間には、座金ユニットを介在させている。一方
の継手プレート6と他方の継手プレート6間には、ボル
ト7の軸部7bを介して、座金ユニットと、平ワッシャ
13と、可撓性座金11′と、座金ユニットと、平ワッ
シャ13と、座金ユニットとを介在させている。ナット
8と他方の継手プレート6間には、座金ユニットを介在
させている。
【0036】そして、前記部材を介在させたうえで、ボ
ルト・ナット7・8を図8に示すごとく、座金ユニット
の可撓性座金11の撓み代がなくなるまで締め付けてい
る。
【0037】前記座金ユニットは、可撓性座金11と、
支承座金12とを組み合わせて構成されている。
【0038】前記可撓性座金11は、ばね鋼または高張
力鋼等により、この実施例では図6,図7に示すよう
に、厚さt1 ,内径D1 ,外径D2 の中空円形に形成さ
れているが、外形は正多角形や長方形、またはだ円形等
に形成しても良い。
【0039】前記支承座金12は、ばね鋼,高張力鋼等
により、図8および図9に示すように、円孔12aを有
するフランジ12bと、リム12cとを備えたほぼ凹字
型断面に形成されている。また、支承座金12の深さt
2 は、前記可撓性座金11の厚さt1 とほぼ同じに形成
され、円孔12aの直径D3 は、可撓性座金11の外径
2 よりも小径に形成され、リム12cの内径D4 は、
可撓性座金11の外径D2 よりも僅かに大きく形成さ
れ、円孔12aとリム12cの根元部分間には、可撓性
座金11の支承部12dが設けられ、リム12cの上縁
内周は、図10に示すように、可撓性座金11をセット
するときのガイドをなすテーパ面12eに形成されてい
る。つまり、支承座金12は可撓性座金11を簡単に収
容でき、かつその可撓性座金11に撓みを持たせるため
の支承部12dを有する形状に形成されている。
【0040】前記可撓性座金11′は、前記可撓性座金
11と同様の材料で形成され、またこの実施例では可撓
性座金11よりも小径に形成されている。
【0041】前記平ワッシャ13は、可撓性座金11′
よりもさらに小径に形成されている。
【0042】また、前記座金ユニットを複数組組み合わ
せると、荷重特性が累進的な非線形特性となる。そこ
で、シールドトンネルの規模や、地盤の急変部,圧密の
考えられる粘性土等、地盤の条件が変化する場合には、
重ね合わせて用いる可撓性座金11の枚数や、座金ユニ
ットの組数を適宜選択して設計する。
【0043】次に、前記実施例の止水兼耐震継手4を組
み立てるに当たっては、前回築造されたセグメントリン
グ2に反力を取ってシールド機をトンネル軸方向xに推
進させた後、シールド機の後方で、前回築造したセグメ
ントリング2のトンネル軸方向xの端面に、シール材1
0を当接させる。ついで、シール材10のトンネル軸方
向xの端面にセグメントピース3を当て、そのセグメン
トピース3に設けられているボルトボックス5を利用し
て、一方の継手プレート6から他方の継手プレート6に
ボルト7を挿通する。そのとき、この実施例では図3お
よび図4に示すように、ボルト7の頭部7aと一方の継
手プレート6間には1組の座金ユニットを介在させ、継
手プレート6,6間にはボルト7の軸部7bに座金ユニ
ットと、平ワッシャ13と、可撓性座金11′と、座金
ユニットと、平ワッシャ13と、座金ユニットとを組み
合わせて介在させ、他方の継手プレート6の外側に突出
されているボルト7の軸部7bには座金ユニットを装着
する。ついで、ボルト7の軸部7bの端部にナット8を
嵌め、ボルト・ナット7・8を可撓性座金11の撓み代
がなくなるまで締め付ける。
【0044】さらに、円周方向に隣合うセグメントピー
ス3,3もその継手4′で、ボルト・ナット7・8によ
り接続する。
【0045】以上の動作を繰り返して、前回築造された
セグメントリング2に対してシール材10をはさみ、止
水兼耐震継手4を介して当該回のセグメントリング2を
組み付ける。
【0046】以上のように、この実施例では継手部に座
金ユニットを用いたことにより、可撓性座金11を、支
承座金12に設けられた支点で撓ませることにより、ボ
ルト7に必要な所定軸力を導入でき、かつ導入軸力を保
持できるので、ボルト・ナット7・8の緩みを防止でき
るし、座金ユニットの可撓性座金11を撓ませることに
よって生じるばね力により、ボルト7の伸び,シール材
10の変形およびセグメントリング2,2同士の馴染み
等によるボルト・ナット7・8の緩みを吸収できるし、
座金ユニットの支承座金12により継手プレート6にボ
ルト軸力を良好に伝えることができるので、回転ばねを
考慮した引張接合継手の特徴をより一層良好に生かすこ
とができるし、弾性ワッシャのごとく強度の劣化の懸念
が殆どなく、ボルト7の初期導入軸力を長期間にわたっ
て維持することができること等が相俟って、トンネル軸
方向xの圧縮力および引張力による撓みを良好に吸収す
ることができる。したがって、シールドトンネルに十分
な耐震性および止水性を持たせることができ、かつシー
ルドトンネルを良質で安定した形態に維持することがで
きる。
【0047】また、座金ユニットの可撓性座金11の用
いる枚数や、座金ユニットの用いる組数を適宜選択する
ことにより、築造すべきシールドトンネルの規模や、地
盤の急変部,圧密の考えられる粘性土等、図13に示す
ごとく地盤の条件が変化する場合にも、容易にかつ的確
に対応することができる。
【0048】さらに、複数組介在させた座金ユニットの
隣合う可撓性座金11,11または11,11′間に、
これらの座金よりも小径の平ワッシャ13を介挿してボ
ルト・ナット7・8を締め付けることにより、平ワッシ
ャ13が可撓性座金11,11または11,11′の内
側を支える役目をする結果、継手部により一層良好な耐
震性を持たせることができる。
【0049】次に、図12は本発明の他の実施例を示す
縦断面図である。
【0050】この図12に示す実施例の止水兼耐震継手
4は、トンネル軸方向xに隣合うセグメントリング2,
2の合わせ面側に、円周方向に所定の間隔をおいて多数
のボルトボックス5と継手プレート6とが設けられてい
る。他方のセグメントリング2の合わせ面側にも、円周
方向に前記間隔と同じ間隔をおいて多数のボルトボック
ス5と継手プレート6とが設けられている。
【0051】前記一方のセグメントリング2と他方のセ
グメントリング2の合わせ面には、U字型断面の止水性
リング14が介装されている。この止水性リング14に
は、円周方向に前記継手プレート6の間隔と同じ間隔を
おいて、ボルト通し穴15が設けられている。
【0052】前記止水性リング14には、高水圧に耐
え、しかもフレキシブルな構造とするため、例えば鋼線
を織り込んだゴム製のものが好適である。
【0053】前記一方のセグメントリング2に設けられ
た継手プレート6と、止水性リング14に設けられたボ
ルト通し穴15と、他方のセグメントリング2に設けら
れた継手プレート6とにわたって、ボルト7が挿通され
ており、このボルト7の軸端部にはナット8が装着され
ている。
【0054】前記ボルト7の頭部7aと一方の継手プレ
ート6の間には、可撓性座金11と支承座金12とを組
み合わせた1組の座金ユニットを介在させ、継手プレー
ト6,6内に配置された止水性リング14のウエブ14
b,14b間には、この部分を通るボルト7の軸部7b
を介して、座金ユニットと、平ワッシャ13と、可撓性
座金11′と、座金ユニットと、平ワッシャ13と、座
金ユニットとを介在させ、ナット8と他方の継手プレー
ト6間には、1組の座金ユニットを介在させている。
【0055】そして、この図12に示す実施例の止水兼
耐震継手4では、セグメントリング2,2の合わせ面間
に、弾力性を有する材料によりU字型断面に形成された
止水性リング14を介装していること、セグメントリン
グ2,2と止水性リング14とをセグメントリング2の
円周方向に所定の間隔をおいて装着された多数のボルト
・ナット7・8により締結していること、止水性リング
14のウエブ14b,14b間には、この部位を通るボ
ルト7の軸部7bを介して、座金ユニットと可撓性座金
11′と平ワッシャ13とを組み合わせて介在させ、ま
たボルト7の頭部7aと一方の継手プレート6の間に
は、座金ユニットを介在させ、さらにナット8と他方の
継手プレート6の間にも、座金ユニットを介在させてボ
ルト・ナット7・8を締め付けており、ボルト・ナット
7・8が緩まないようにしている。
【0056】その結果、可撓性座金11と支承座金12
とを組み合わせてなる座金ユニットと、可撓性座金1
1′と、平ワッシャ13とを適宜組み合わせて用いた継
手部の作用と、止水性リング14の弾力性とにより、ト
ンネル軸方向xの圧縮力および引張力による撓みをより
一層良好に吸収することができる。また、前述のごとく
U字型断面に形成されかつ円弧部14aをセグメントリ
ング2の直径方向の外側に向けて介装された止水性リン
グ14と、この止水性リング14をバックアップしてい
る継手部の作用との相乗作用により、止水性を強化する
ことができる。
【0057】したがって、この実施例によれば耐震性お
よび止水性の向上を図ることができる。
【0058】なお、この図12に示す実施例の他の作用
については、前記図3および図4に示す実施例と同様で
ある。
【0059】また、前記各実施例とも継手部に座金ユニ
ットを用いることにより、構造が複雑で組み立て工数の
多い可撓性セグメントや、高価な弾性ワッシャを使用す
る必要がないので、コスト低減を図ることができる。
【0060】さらに、本発明ではボルト・ナット7・8
を所定の締め付け力で締め付け後、ボルト・ナット7・
8、座金ユニットや平ワッシャ13等の継手を構成して
いる部材の周辺に、例えばウレタンゴムを含んだ塗料を
塗布し、弾力性を持った防錆皮膜を施しても良い。
【0061】
【発明の効果】以上のように、本発明の請求項1記載の
発明では、トンネル軸方向xに隣合うセグメントリング
2,2間にシール材10を介装し、同トンネル軸方向x
に隣合うセグメントリング2,2の継手プレート6,6
同士をボルト・ナット7・8により締結し、さらに前記
ボルト7の頭部7aと一方の継手プレート6の間と、ナ
ット8と他方の継手プレート6の間の少なくとも一方
に、可撓性座金11と、この可撓性座金11を収容しか
つその可撓性座金11に撓みを持たせるための支点とな
る支承座金12を組み合わせた座金ユニットを介在させ
るとともに、継手プレート6,6間にも前記座金ユニッ
トを介在させ、ボルト・ナット7・8を締め付けてお
り、可撓性座金11を、支承座金12に設けられた支点
で撓ませることにより、ボルト7に必要な所定軸力を導
入でき、かつ導入軸力を保持でき、したがってボルト・
ナット7・8の緩みを防止できるし、座金ユニットの可
撓性座金11を撓ませることによって生じるばね力によ
り、ボルト7の伸び,シール材10の変形およびセグメ
ントリング2,2同士の馴染み等によるボルト・ナット
7・8の緩みを吸収できるし、座金ユニットの支承座金
12により、継手プレート6にボルト軸力を良好に伝え
ることができるため、回転ばねを考慮した引張接合継手
の特徴をより一層良好に生かすことができるし、弾性ワ
ッシャのごとく強度の劣化の懸念が殆どなく、ボルト7
の初期導入軸力を長期間にわたって維持することができ
ること等が相俟って、トンネル軸方向xの圧縮力および
引張力による撓みを良好に吸収することができ、したが
ってシールドトンネルに十分な耐震性および止水性を付
与し得る効果があり、またシールドトンネルを良質で安
定した形態に維持し得る効果がある。さらに、本発明で
は座金ユニットの可撓性座金11の用いる枚数や、座金
ユニットの用いる組数を適宜選択することにより、築造
すべきシールドトンネルの規模や、地盤の急変部,圧密
の考えられる粘性土等、地盤の条件が変化する場合に
も、容易にかつ的確に対応し得る効果がある。しかも、
本発明ではセグメントリング2,2同士の継手部に、可
撓性座金11と支承座金12とを組み合わせた座金ユニ
ットを使用することにより、構造が複雑で組み立て工数
の多い可撓性セグメントや、高価な弾性ワッシャを使用
する必要がないので、コスト低減を図り得る効果もあ
る。
【0062】また、本発明の請求項2記載の発明では、
トンネル軸方向xに隣合うセグメントリング2,2の間
に、弾力性を有する材料によりU字型断面に形成された
止水性リング14を、そのU字型の円弧部14aをセグ
メントリング2の直径方向の外側に向けて介装し、一方
のセグメントリング2の継手プレート6から止水性リン
グ14を通って他方の継手プレート6にボルト7を挿通
し、ボルト7にナット8を装着し、前記止水性リング1
4のウエブ14b,14b間を通るボルト7の軸部7b
に、可撓性座金11と、この可撓性座金11を収容しか
つその可撓性座金11に撓みを持たせるための支点とな
る支承座金12を組み合わせた座金ユニットを複数組介
在させるとともに、ボルト7の頭部7aと一方の継手プ
レート6の間と、ナット8と他方の継手プレート6の間
の少なくとも一方に、前記座金ユニットを介在させてお
り、各座金ユニットの可撓性座金11を、支承座金12
に設けられた支点で撓ませることにより、ボルト7に必
要な所定軸力を導入でき、かつ導入軸力を保持でき、し
たがってボルト・ナット7・8の緩みを防止できるし、
座金ユニットの可撓性座金11を撓ませることによって
生じるばね力により、ボルト7の伸びおよびセグメント
リング2,2同士の馴染み等によるボルト・ナット7・
8の緩みを吸収できるし、座金ユニットの支承座金12
により、継手プレート6にボルト軸力を良好に伝えるこ
とができるため、回転ばねを考慮した引張接合継手の特
徴をより一層良好に生かすことができるし、弾性ワッシ
ャのごとく強度の劣化の懸念が殆どなく、ボルト7の初
期導入軸力を長期間にわたって維持することができるこ
と等が相俟って、トンネル軸方向xの圧縮力および引張
力による撓みを良好に吸収することができるという作用
と、U字型断面に形成されかつ同継手部に介装された止
水性リング14の弾力性とにより、トンネル軸方向xの
圧縮力および引張力による撓みをより一層良好に吸収す
ることができるし、前述のごとくU字型断面に形成され
かつ円弧部14aをセグメントリング2の直径方向の外
側に向けて介装された止水性リング14と、この止水性
リング14をバックアップしている継手部の作用とによ
り、止水性を強化することができるので、耐震性および
止水性の向上を図り得る効果がある。
【0063】さらに、本発明の請求項3記載の発明で
は、前記座金ユニットとして、複数枚重ね合わせた可撓
性座金11と、1個の支承座金12とを組み合わせたも
のを用いているので、座金ユニットの可撓性座金11の
使用枚数を選択することによって、セグメントの継手部
分の色々な仕様にも簡単に対応し得る効果がある。
【0064】そして、本発明の請求項4記載の発明で
は、前記座金ユニットとして、1枚の可撓性座金11
と、1個の支承座金12とを1組とするもの、または複
数枚重ね合わせた可撓性座金11と、1個の支承座金1
2とを1組とするものを複数組用い、かつ隣合う組の可
撓性座金間に、これらの可撓性座金よりも小径の平ワッ
シャ13を介挿しており、複数組の座金ユニットの可撓
性座金間に平ワッシャ13を介挿してボルト・ナット7
・8を締め付けたときに、平ワッシャ13が可撓性座金
の内側を支える役目をするので、継手構造に良好な耐震
性を付与し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる止水兼耐震継手を用いたシール
ドトンネルのセグメントを示す斜視図である。
【図2】同セグメントを内側から見た展開図である。
【図3】本発明の一実施例を示す縦断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】座金ユニットの可撓性座金の拡大縦断面図であ
る。
【図7】図6の平面図である。
【図8】座金ユニットの支承座金の拡大縦断面図であ
る。
【図9】図8の平面図である。
【図10】図8のC部分の拡大図である。
【図11】図3に示す実施例において、ボルト・ナット
を締め込んだ状態を模式的に示した横断平面図である。
【図12】本発明の他の実施例を示す縦断面図である。
【図13】シールドトンネルの施工例を示す概要図であ
る。
【図14】セグメントリング同士の従来の継手構造を示
す一部分の縦断面図である。
【図15】セグメント継手に用いられる弾性ワッシャを
示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 セグメント 2 セグメントリング 4 止水兼耐震継手 6 継手プレート 7 ボルト 7a ボルトの頭部 7b ボルトの軸部 8 ナット 10 シール材 11 座金ユニットを構成している可撓性座金 11′ 同じく可撓性座金 12 同じく支承座金 12d 支承座金に設けられた可撓性座金の支承部 13 平ワッシャ 14 止水性リング 14a 止水性リングの円弧部 14b 止水性リングのウエブ 15 ボルト通し穴

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セグメントリング2の合わせ面側に、円
    周方向に所定の間隔をおいて多数の継手プレート6を設
    け、トンネル軸方向xに隣合うセグメントリング2,2
    間にシール材10を介装し、同トンネル軸方向xに隣合
    うセグメントリング2,2の継手プレート6,6同士を
    ボルト・ナット7・8により締結するシールドトンネル
    におけるセグメントの止水兼耐震継手において、 前記ボルト7の頭部7aと一方の継手プレート6の間
    と、ナット8と他方の継手プレート6の間の少なくとも
    一方に、可撓性座金11と、この可撓性座金11を収容
    しかつその可撓性座金11に撓みを持たせるための支点
    となる支承座金12を組み合わせた座金ユニットを介在
    させるとともに、継手プレート6,6間にも前記座金ユ
    ニットを介在させ、 ボルト・ナット7・8を締め付けた、ことを特徴とする
    シールドトンネルにおけるセグメントの止水兼耐震継
    手。
  2. 【請求項2】 セグメントリング2の合わせ面側に、円
    周方向に所定の間隔をおいて多数の継手プレート6を設
    け、 トンネル軸方向xに隣合うセグメントリング2,2の間
    に、弾力性を有する材料によりU字型断面に形成された
    止水性リング14を、そのU字型の円弧部14aをセグ
    メントリング2の直径方向の外側に向けて介装し、 一方のセグメントリング2の継手プレート6から止水性
    リング14を通って他方の継手プレート6にボルト7を
    挿通し、ボルト7にナット8を装着し、 前記止水性リング14のウエブ14b,14b間を通る
    ボルト7の軸部7bに、可撓性座金11と、この可撓性
    座金11を収容しかつその可撓性座金11に撓みを持た
    せるための支点となる支承座金12を組み合わせた座金
    ユニットを複数組介在させるとともに、ボルト7の頭部
    7aと一方の継手プレート6の間と、ナット8と他方の
    継手プレート6の間の少なくとも一方に、前記座金ユニ
    ットを介在させ、 ボルト・ナット7・8を締め付けた、ことを特徴とする
    シールドトンネルにおけるセグメントの止水兼耐震継
    手。
  3. 【請求項3】 前記座金ユニットとして、複数枚重ね合
    わせた可撓性座金11と、1個の支承座金12とを組み
    合わせたものを用いたことを特徴とする請求項1または
    2記載のシールドトンネルにおけるセグメントの止水兼
    耐震継手。
  4. 【請求項4】 前記座金ユニットとして、1枚の可撓性
    座金11と、1個の支承座金12とを1組とするもの、
    または複数枚重ね合わせた可撓性座金11と、1個の支
    承座金12とを1組とするものを複数組用い、かつ隣合
    う組の可撓性座金間に、これらの可撓性座金よりも小径
    の平ワッシャ13を介挿したことを特徴とする請求項1
    または2記載のシールドトンネルにおけるセグメントの
    止水兼耐震継手。
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