JP2661445B2 - 自己潤滑性複合材料およびその肉盛方法 - Google Patents
自己潤滑性複合材料およびその肉盛方法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、金属基体中にタングス
テン系の酸化物粒子を分散させた自己潤滑性複合材料お
よびその肉盛方法に関する。
テン系の酸化物粒子を分散させた自己潤滑性複合材料お
よびその肉盛方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】先端技術の一つとして、金属基材中にＭ
ｏＳ2 ，ＷＳ2 ，Ｃ，ＢＮ等の無機系固体潤滑剤からな
る潤滑剤粉末を分散させた自己潤滑性複合材料が開発さ
れている。この複合材料は、耐凝着磨耗性等に著しく優
れており、例えば８０％ＭｏＳ2 ＋２０％Ｔａは、米国
スペースシャトルの荷物室ドアヒンジの軸受にも使われ
た。
ｏＳ2 ，ＷＳ2 ，Ｃ，ＢＮ等の無機系固体潤滑剤からな
る潤滑剤粉末を分散させた自己潤滑性複合材料が開発さ
れている。この複合材料は、耐凝着磨耗性等に著しく優
れており、例えば８０％ＭｏＳ2 ＋２０％Ｔａは、米国
スペースシャトルの荷物室ドアヒンジの軸受にも使われ
た。
【０００３】しかしながら、ＭｏＳ2 ，ＷＳ2 ，Ｃ，Ｂ
Ｎ等の無機系固体潤滑剤は、大気中では熱的に不安定で
あり、高温大気中では、材料中の固体潤滑剤が加熱によ
り酸化分解して所定の性能を維持できなくなる。そのた
め、その複合材料は、大気圏外では使用できても、大気
中で且つ摩擦面が高温となる場合は、使用が困難とな
る。
Ｎ等の無機系固体潤滑剤は、大気中では熱的に不安定で
あり、高温大気中では、材料中の固体潤滑剤が加熱によ
り酸化分解して所定の性能を維持できなくなる。そのた
め、その複合材料は、大気圏外では使用できても、大気
中で且つ摩擦面が高温となる場合は、使用が困難とな
る。
【０００４】更に、これらの無機系固体潤滑剤は、一般
に金属に対して濡れ性を示さず、比重も金属より小さい
ため、鉄と鋼，Ｖｏｌ．７６（１９９０）No. １，Ｐ５
７〜６４に示されているようなアークによる肉盛では、
たとえ酸化分解なしに溶融金属中に供給されても、溶融
金属から分離してその表層に凝集してしまう危険性が大
きい。従って、その複合材料は肉盛も困難であり、製品
の全体に使うことしかできない。そのため、製品は極め
て高価なものになる。
に金属に対して濡れ性を示さず、比重も金属より小さい
ため、鉄と鋼，Ｖｏｌ．７６（１９９０）No. １，Ｐ５
７〜６４に示されているようなアークによる肉盛では、
たとえ酸化分解なしに溶融金属中に供給されても、溶融
金属から分離してその表層に凝集してしまう危険性が大
きい。従って、その複合材料は肉盛も困難であり、製品
の全体に使うことしかできない。そのため、製品は極め
て高価なものになる。
【０００５】本発明の目的は、大気高温摩擦下での潤滑
性に優れ、しかも、肉盛が可能な自己潤滑性複合材料お
よびその肉盛方法を提供することにある。
性に優れ、しかも、肉盛が可能な自己潤滑性複合材料お
よびその肉盛方法を提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】従来の自己潤滑性複合材
料に使用されている無機系固体潤滑剤は、摩擦係数が小
さく、固定状態での潤滑性は良好である。しかし、大気
中での熱的安定性が悪く、このことが複合材料の高温摩
擦下での使用を阻害し、ひいては肉盛を阻害しているわ
けである。このことから、本発明者は、前記無機系固体
潤滑剤による固体潤滑は不可と判断し、高温下で分散粒
子が軟化乃至は溶融して潤滑を行う新たな潤滑形態を考
え出し、これを成功させるための潤滑剤粒子として酸化
物粒子に着目した。
料に使用されている無機系固体潤滑剤は、摩擦係数が小
さく、固定状態での潤滑性は良好である。しかし、大気
中での熱的安定性が悪く、このことが複合材料の高温摩
擦下での使用を阻害し、ひいては肉盛を阻害しているわ
けである。このことから、本発明者は、前記無機系固体
潤滑剤による固体潤滑は不可と判断し、高温下で分散粒
子が軟化乃至は溶融して潤滑を行う新たな潤滑形態を考
え出し、これを成功させるための潤滑剤粒子として酸化
物粒子に着目した。
【０００７】酸化物は、一般に、大気中での熱的安定性
が良好で、物性安定のまま溶融状態に至る。従って、金
属基体中に酸化物粒子を分散させておけば、その融点近
傍に摩擦面が加熱された段階で潤滑性が発現する。しか
し、高温摩擦における摩擦面の温度として通常想定され
る１０００〜１２００℃を超えるような融点をもつもの
は、潤滑剤としての使用範囲が著しく制限される。逆
に、融点が低すぎると、肉盛の際の溶融金属への投入で
溶融してしまい、肉盛が不可能となる。また、肉盛を前
提とした場合、その比重も重要となり、肉盛金属の比重
より大きいと粒子が下方に沈降し、逆の場合は粒子が浮
上し、いずれの場合も肉盛金属中に粒子を均一分散させ
ることが不可能となる。
が良好で、物性安定のまま溶融状態に至る。従って、金
属基体中に酸化物粒子を分散させておけば、その融点近
傍に摩擦面が加熱された段階で潤滑性が発現する。しか
し、高温摩擦における摩擦面の温度として通常想定され
る１０００〜１２００℃を超えるような融点をもつもの
は、潤滑剤としての使用範囲が著しく制限される。逆
に、融点が低すぎると、肉盛の際の溶融金属への投入で
溶融してしまい、肉盛が不可能となる。また、肉盛を前
提とした場合、その比重も重要となり、肉盛金属の比重
より大きいと粒子が下方に沈降し、逆の場合は粒子が浮
上し、いずれの場合も肉盛金属中に粒子を均一分散させ
ることが不可能となる。
【０００８】本発明者は、このような条件を満足する酸
化物として、従来の無機固体潤滑剤より大気中高温安定
性が良好で、酸化物としては比較的低融点のＣｄＷＯ4
等のタングステン系複合酸化物に着目し、その自己潤滑
性複合材料の潤滑剤粒子としての適性を種々調査した。
その結果、ＣｄＷＯ4 ，ＰｄＷＯ4 ，ＰｂＷＯ4 ，Ｂｉ
2 ＷＯ6 の４種類については、管状に形成した金属内に
その粒子を充填し、これを溶融状態の肉盛金属へ供給す
る程度の簡単な方法で、その金属中に均一分散させるこ
とができ、しかも、得られた肉盛層は、優れた高温自己
潤滑性複合材料として機能することを知見した。
化物として、従来の無機固体潤滑剤より大気中高温安定
性が良好で、酸化物としては比較的低融点のＣｄＷＯ4
等のタングステン系複合酸化物に着目し、その自己潤滑
性複合材料の潤滑剤粒子としての適性を種々調査した。
その結果、ＣｄＷＯ4 ，ＰｄＷＯ4 ，ＰｂＷＯ4 ，Ｂｉ
2 ＷＯ6 の４種類については、管状に形成した金属内に
その粒子を充填し、これを溶融状態の肉盛金属へ供給す
る程度の簡単な方法で、その金属中に均一分散させるこ
とができ、しかも、得られた肉盛層は、優れた高温自己
潤滑性複合材料として機能することを知見した。
【０００９】本発明は上記知見に基づきなされたもの
で、金属基体中に、潤滑剤粒子として、粒径が１０〜５
００μｍのＣｄＷＯ4 粒，ＰｄＷＯ4 粒，ＰｂＷＯ
4 粒，Ｂｉ2 ＷＯ6 粒の１種または２種以上を、３０〜
８０体積％で分散させたことを特徴とする自己潤滑性複
合材料を要旨とする。また、本発明の肉盛方法は、管状
金属内に、潤滑剤粒子として、粒径が１０〜５００μｍ
のＣｄＷＯ4 粒，ＰｄＷＯ4 粒，ＰｂＷＯ4 粒，Ｂｉ2
ＷＯ6 粒の１種または２種以上を充填して複合ワイヤと
なし、母材上に肉盛溶接を行う際に溶融状態の肉盛金属
中に前記複合ワイヤを供給して、複合ワイヤの金属部分
を肉盛金属に一体化させ、金属部分内の潤滑剤粒子を肉
盛金属中に分散させることを特徴とする。
で、金属基体中に、潤滑剤粒子として、粒径が１０〜５
００μｍのＣｄＷＯ4 粒，ＰｄＷＯ4 粒，ＰｂＷＯ
4 粒，Ｂｉ2 ＷＯ6 粒の１種または２種以上を、３０〜
８０体積％で分散させたことを特徴とする自己潤滑性複
合材料を要旨とする。また、本発明の肉盛方法は、管状
金属内に、潤滑剤粒子として、粒径が１０〜５００μｍ
のＣｄＷＯ4 粒，ＰｄＷＯ4 粒，ＰｂＷＯ4 粒，Ｂｉ2
ＷＯ6 粒の１種または２種以上を充填して複合ワイヤと
なし、母材上に肉盛溶接を行う際に溶融状態の肉盛金属
中に前記複合ワイヤを供給して、複合ワイヤの金属部分
を肉盛金属に一体化させ、金属部分内の潤滑剤粒子を肉
盛金属中に分散させることを特徴とする。
【００１０】
【作用】本発明の自己潤滑性複合材料は、金属基体中に
分散された粒子が、高温摩耗における摩擦面の温度で軟
化乃至は溶融を生じ、優れた潤滑性を示す。これは、従
来の固体潤滑と液体潤滑との中間に位置する潤滑形態
で、例えば境界潤滑と呼ぶことができる。また、本発明
材料は、焼結で製造できるのは勿論のこと、比較的簡単
に肉盛を行うことができる。
分散された粒子が、高温摩耗における摩擦面の温度で軟
化乃至は溶融を生じ、優れた潤滑性を示す。これは、従
来の固体潤滑と液体潤滑との中間に位置する潤滑形態
で、例えば境界潤滑と呼ぶことができる。また、本発明
材料は、焼結で製造できるのは勿論のこと、比較的簡単
に肉盛を行うことができる。
【００１１】金属基体の材質は特に限定しないが、自己
潤滑性複合材料の性質上、摩擦面において基体金属が大
きく磨耗することがない機械構造用炭素鋼・合金鋼、工
具鋼等の耐摩耗金属を通常採用する。
潤滑性複合材料の性質上、摩擦面において基体金属が大
きく磨耗することがない機械構造用炭素鋼・合金鋼、工
具鋼等の耐摩耗金属を通常採用する。
【００１２】潤滑剤粒子の材質としてＣｄＷＯ4 ，Ｐｄ
ＷＯ4 ，ＰｂＷＯ4 ，Ｂｉ2 ＷＯ6 を選択したのは、こ
れらの融点が約１１００℃と低く、大気中でその融点に
至ってもなお物質的に安定しており、しかも、比重が８
程度で、分散および潤滑に好都合なためである。即ち、
高温摩耗における摩擦面の温度として１０００〜１２０
０℃を想定した場合、その中間に融点が位置し、摩擦面
の温度で粒子が軟化、更には溶融して優れた境界潤滑性
能が得られる。また、基体金属として通常採用される耐
摩耗金属の比重が約８であることから、肉盛の際の粒子
供給においても粒子の浮上や沈降がなく、その分散が図
られる。更に、これらの粒子は、低融点といえども、溶
融状態の耐摩耗金属中に直接投入された場合に消失、分
解、変質等を生じるほどではない。
ＷＯ4 ，ＰｂＷＯ4 ，Ｂｉ2 ＷＯ6 を選択したのは、こ
れらの融点が約１１００℃と低く、大気中でその融点に
至ってもなお物質的に安定しており、しかも、比重が８
程度で、分散および潤滑に好都合なためである。即ち、
高温摩耗における摩擦面の温度として１０００〜１２０
０℃を想定した場合、その中間に融点が位置し、摩擦面
の温度で粒子が軟化、更には溶融して優れた境界潤滑性
能が得られる。また、基体金属として通常採用される耐
摩耗金属の比重が約８であることから、肉盛の際の粒子
供給においても粒子の浮上や沈降がなく、その分散が図
られる。更に、これらの粒子は、低融点といえども、溶
融状態の耐摩耗金属中に直接投入された場合に消失、分
解、変質等を生じるほどではない。
【００１３】ちなみに、従来の無機系固体潤滑剤の大気
中の安定上限温度、融点および比重は、ＭｏＳ2 で３５
０℃、１１８５℃および4.８、ＷＳ2 で４１０℃、１２
５０℃および7.５、Ｃで５００℃、３７２７℃および2.
２６、ＢＮで７００℃、３０００℃および3.４５であ
り、大気中では比較的低温で分解、消失を生じ、高温潤
滑機能を有しない。また、肉盛も難しい。
中の安定上限温度、融点および比重は、ＭｏＳ2 で３５
０℃、１１８５℃および4.８、ＷＳ2 で４１０℃、１２
５０℃および7.５、Ｃで５００℃、３７２７℃および2.
２６、ＢＮで７００℃、３０００℃および3.４５であ
り、大気中では比較的低温で分解、消失を生じ、高温潤
滑機能を有しない。また、肉盛も難しい。
【００１４】粒子の粒径については、分散粒子が基体金
属より離脱し、安定に摩擦面に供給され、必要な潤滑膜
を確保するには粒径の制限が必要となり、過大粒子では
円滑な離脱が行えず、また微小粒子では潤滑膜の確保が
不充分となる。よって、粒径は１０〜５００μｍとし
た。この粒径は、管状金属内に粒子を充填する場合に
も、充填作業性等の点から好都合となる。
属より離脱し、安定に摩擦面に供給され、必要な潤滑膜
を確保するには粒径の制限が必要となり、過大粒子では
円滑な離脱が行えず、また微小粒子では潤滑膜の確保が
不充分となる。よって、粒径は１０〜５００μｍとし
た。この粒径は、管状金属内に粒子を充填する場合に
も、充填作業性等の点から好都合となる。
【００１５】複合材料中の粒子量は、体積％で３０〜８
０％とする。これは、高温摩耗における摩擦面の温度下
で境界潤滑を行うには３０％以上必要であるが、８０％
を超えると複合材料の硬度が低下し、摩耗しやすくなる
からであり、望ましくは４０〜７０％である。
０％とする。これは、高温摩耗における摩擦面の温度下
で境界潤滑を行うには３０％以上必要であるが、８０％
を超えると複合材料の硬度が低下し、摩耗しやすくなる
からであり、望ましくは４０〜７０％である。
【００１６】図１は本発明の肉盛方法の一実施態様を示
している。１は母材、２はガスシールドアーク溶接トー
チ、３は溶接ワイヤであり、ガスシールドアーク溶接に
より、母材１の表面に肉盛が行われる。このとき、溶融
状態の肉盛金属４に複合ワイヤ５が挿入供給される。複
合ワイヤ５は、図２に示すように、帯状金属を管状に成
形して金属部分６となし、その中に潤滑剤粒子７を巻き
込んだものである。これを溶融状態の肉盛金属４に挿入
供給することにより、金属部分６は先端から溶融して肉
盛金属４と一体化し、その中に保持されていた潤滑剤粒
子７は、肉盛金属４の内部で放出されて、アークに触れ
ることなく肉盛金属４中に均一分散される。かくして、
肉盛層８は、金属基体９中に潤滑剤粒子７が均一分散し
た自己潤滑性複合材料となる。
している。１は母材、２はガスシールドアーク溶接トー
チ、３は溶接ワイヤであり、ガスシールドアーク溶接に
より、母材１の表面に肉盛が行われる。このとき、溶融
状態の肉盛金属４に複合ワイヤ５が挿入供給される。複
合ワイヤ５は、図２に示すように、帯状金属を管状に成
形して金属部分６となし、その中に潤滑剤粒子７を巻き
込んだものである。これを溶融状態の肉盛金属４に挿入
供給することにより、金属部分６は先端から溶融して肉
盛金属４と一体化し、その中に保持されていた潤滑剤粒
子７は、肉盛金属４の内部で放出されて、アークに触れ
ることなく肉盛金属４中に均一分散される。かくして、
肉盛層８は、金属基体９中に潤滑剤粒子７が均一分散し
た自己潤滑性複合材料となる。
【００１７】潤滑剤粒子７は、ＣｄＷＯ4 粒，ＰｄＷＯ
4 粒，ＰｂＷＯ4 粒，Ｂｉ2 ＷＯ6 粒の１種または２種
以上であり、その粒径は１０〜５００μｍに、また供給
量は肉盛層８における潤滑剤粒子７の含有量が３０〜８
０体積％となるように、それぞれ調整される。
4 粒，ＰｂＷＯ4 粒，Ｂｉ2 ＷＯ6 粒の１種または２種
以上であり、その粒径は１０〜５００μｍに、また供給
量は肉盛層８における潤滑剤粒子７の含有量が３０〜８
０体積％となるように、それぞれ調整される。
【００１８】溶接ワイヤ２、複合ワイヤ５の金属部分６
については、これらと母材の溶融部分が一体となり、肉
盛金属４となる。肉盛金属４は既に述べたように機械構
造用炭素鋼等が適しており、使用する母材に応じて溶接
ワイヤ３および複合ワイヤ５の金属部分６の組成および
供給量を設定する。また、肉盛金属４の組成を制御する
目的で潤滑剤粒子７と共に合金元素の金属粉末を加える
こともできる。
については、これらと母材の溶融部分が一体となり、肉
盛金属４となる。肉盛金属４は既に述べたように機械構
造用炭素鋼等が適しており、使用する母材に応じて溶接
ワイヤ３および複合ワイヤ５の金属部分６の組成および
供給量を設定する。また、肉盛金属４の組成を制御する
目的で潤滑剤粒子７と共に合金元素の金属粉末を加える
こともできる。
【００１９】なお、上記実施態様では、ガスシールドア
ーク溶接で肉盛を行っているが、溶接法は特に問わな
い。複合ワイヤ５の金属部分６は管でもよい。また、金
属部分６の溶融を促進するために、通電を行って電気抵
抗加熱をしてもよい。
ーク溶接で肉盛を行っているが、溶接法は特に問わな
い。複合ワイヤ５の金属部分６は管でもよい。また、金
属部分６の溶融を促進するために、通電を行って電気抵
抗加熱をしてもよい。
【００２０】
【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。
【００２１】ニッケクロムモリブデン鋼ＳＮＣＭ６１６
（ＪＩＳ Ｇ４１０３）からなる母材に、ガスシールド
アーク溶接により肉盛を行うにあたり、溶融状態の肉盛
金属に粒径１００〜２００μｍのＢｉ2 ＷＯ6 粒を複合
ワイヤの形で供給して、自己潤滑性複合材料からなる肉
盛層を形成した。溶接ワイヤは、高張力鋼用マグ溶接用
ソリッドワイヤＹＧＷ２３（ＪＩＳ Ｚ３３１２）を用
いた。複合ワイヤは、肉厚0.４ｍｍの冷間圧延鋼板ＳＰ
ＣＣ（ＪＩＳ Ｇ３１４１）にＢｉ2 ＷＯ6 粒を巻き込
んだ構造とし、ここでの粒子充填率を変えることによ
り、肉盛金属への粒子供給量を調整した。
（ＪＩＳ Ｇ４１０３）からなる母材に、ガスシールド
アーク溶接により肉盛を行うにあたり、溶融状態の肉盛
金属に粒径１００〜２００μｍのＢｉ2 ＷＯ6 粒を複合
ワイヤの形で供給して、自己潤滑性複合材料からなる肉
盛層を形成した。溶接ワイヤは、高張力鋼用マグ溶接用
ソリッドワイヤＹＧＷ２３（ＪＩＳ Ｚ３３１２）を用
いた。複合ワイヤは、肉厚0.４ｍｍの冷間圧延鋼板ＳＰ
ＣＣ（ＪＩＳ Ｇ３１４１）にＢｉ2 ＷＯ6 粒を巻き込
んだ構造とし、ここでの粒子充填率を変えることによ
り、肉盛金属への粒子供給量を調整した。
【００２２】形成された肉盛層の摩耗量を、ＪＩＳ Ｋ
７２１８ Ｃ法により測定した。このとき、試験片は１
２００℃に加熱した。試験片の形状を図３に示す。肉盛
層の粒子含有量と摩耗量との関係を図４に示す。肉盛層
にＢｉ2 ＷＯ6 粒が含有されない場合は、高温摩耗が著
しいが、Ｂｉ2 ＷＯ6 の含有によりその摩耗が抑えら
れ、含有量が３０〜８０体積％、特に４０〜７０体積％
でその効果が大きい。これは、Ｂｉ2 ＷＯ6 の境界潤滑
機能が高いこと、その粒子が肉盛層中、即ち、自己潤滑
性複合材料中に均一分散していることに他ならない。
７２１８ Ｃ法により測定した。このとき、試験片は１
２００℃に加熱した。試験片の形状を図３に示す。肉盛
層の粒子含有量と摩耗量との関係を図４に示す。肉盛層
にＢｉ2 ＷＯ6 粒が含有されない場合は、高温摩耗が著
しいが、Ｂｉ2 ＷＯ6 の含有によりその摩耗が抑えら
れ、含有量が３０〜８０体積％、特に４０〜７０体積％
でその効果が大きい。これは、Ｂｉ2 ＷＯ6 の境界潤滑
機能が高いこと、その粒子が肉盛層中、即ち、自己潤滑
性複合材料中に均一分散していることに他ならない。
【００２３】また、粒子含有量を５０％として、Ｂｉ2
ＷＯ6 とＰｂＷＯ4 ，Ｂｉ2 ＷＯ6 とＣｂＷＯ4 ，およ
びＢｉ2 ＷＯ6 とＰｄＷＯ4 をそれぞれ体積比で１：１
の割合で複合分散させた場合につき、同様に評価した結
果を表１に示す。更に比較として、固体潤滑剤であるＭ
ｏＳ2 と母材ＳＮＣＭ６１６の粉末を焼結した複合材料
について評価した結果を記す。
ＷＯ6 とＰｂＷＯ4 ，Ｂｉ2 ＷＯ6 とＣｂＷＯ4 ，およ
びＢｉ2 ＷＯ6 とＰｄＷＯ4 をそれぞれ体積比で１：１
の割合で複合分散させた場合につき、同様に評価した結
果を表１に示す。更に比較として、固体潤滑剤であるＭ
ｏＳ2 と母材ＳＮＣＭ６１６の粉末を焼結した複合材料
について評価した結果を記す。
【００２４】
【表１】
【００２５】表１より、潤滑剤を混合使用してもＢｉ2
ＷＯ6 単独の場合とほぼ同じ効果が得られることがわか
る。また、焼結による固体潤滑剤分散自己潤滑性複合材
料は、大気中高温の環境下では、固体潤滑剤が分解し、
有効な作用が発揮されない。
ＷＯ6 単独の場合とほぼ同じ効果が得られることがわか
る。また、焼結による固体潤滑剤分散自己潤滑性複合材
料は、大気中高温の環境下では、固体潤滑剤が分解し、
有効な作用が発揮されない。
【００２６】なお、上記実施例は、本発明材料を肉盛に
より形成したが、焼結で製造した場合も同様の結果が得
られることを確認している。
より形成したが、焼結で製造した場合も同様の結果が得
られることを確認している。
【００２７】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の自己潤滑性複合材料は、高温摩耗における摩擦面の温
度で潤滑剤粒子が軟化溶融することにより、優れた潤滑
性を示す。しかも、肉盛の際に潤滑剤粒子を変質等なく
簡単に均一分散させることができる。従って、肉盛が可
能であり、複合材料部品のコスト低減に大きな効果を発
揮する。
の自己潤滑性複合材料は、高温摩耗における摩擦面の温
度で潤滑剤粒子が軟化溶融することにより、優れた潤滑
性を示す。しかも、肉盛の際に潤滑剤粒子を変質等なく
簡単に均一分散させることができる。従って、肉盛が可
能であり、複合材料部品のコスト低減に大きな効果を発
揮する。
【００２８】また、本発明の肉盛方法は、この潤滑性に
優れた自己潤滑性複合材料を母材表面に簡単かつ安定に
積層し、これまた複合材料部品のコスト低減に大きな効
果を発揮する。
優れた自己潤滑性複合材料を母材表面に簡単かつ安定に
積層し、これまた複合材料部品のコスト低減に大きな効
果を発揮する。
【図１】本発明肉盛方法の一実施態様を示す模式図であ
る。
る。
【図２】本発明肉盛方法に使用される複合ワイヤの構造
例を示す横断図面である。
例を示す横断図面である。
【図３】本発明複合材料および肉盛方法の有効性の調査
に使用した試験片の寸法図である。
に使用した試験片の寸法図である。
【図４】本発明複合材料および肉盛方法の有効性の調査
結果を示す図表である。
結果を示す図表である。
１ 母材 ２ 溶接トーチ ３ 溶接ワイヤ ４ 溶融状態の肉盛金属 ５ 複合ワイヤ ６ 金属部分 ７ 潤滑剤粒子 ８ 肉盛層（複合材料） ９ 金属基体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｃ２２Ｃ 32/00 Ｃ２２Ｃ 32/00 // Ｃ１０Ｎ 10:12
Claims (2)
- 【請求項１】 金属基体中に、潤滑剤粒子として、粒径
が１０〜５００μｍのＣｄＷＯ4 粒，ＰｄＷＯ4 粒，Ｐ
ｂＷＯ4 粒，Ｂｉ2 ＷＯ6 粒の１種または２種以上を、
３０〜８０体積％で分散させたことを特徴とする自己潤
滑性複合材料。 - 【請求項２】 管状金属内に、潤滑剤粒子として、粒径
が１０〜５００μｍのＣｄＷＯ4 粒，ＰｄＷＯ4 粒，Ｐ
ｂＷＯ4 粒，Ｂｉ2 ＷＯ6 粒の１種または２種以上を充
填して複合ワイヤとなし、母材上に肉盛溶接を行う際に
溶融状態の肉盛金属中に前記複合ワイヤを供給して、複
合ワイヤの金属部分を肉盛金属に一体化させ、金属部分
内の潤滑剤粒子を肉盛金属中に分散させることを特徴と
する自己潤滑性複合材料の肉盛方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP35531291A JP2661445B2 (ja) | 1991-12-19 | 1991-12-19 | 自己潤滑性複合材料およびその肉盛方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP35531291A JP2661445B2 (ja) | 1991-12-19 | 1991-12-19 | 自己潤滑性複合材料およびその肉盛方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH05171463A JPH05171463A (ja) | 1993-07-09 |
| JP2661445B2 true JP2661445B2 (ja) | 1997-10-08 |
Family
ID=18443191
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP35531291A Expired - Lifetime JP2661445B2 (ja) | 1991-12-19 | 1991-12-19 | 自己潤滑性複合材料およびその肉盛方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2661445B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
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| US8952295B2 (en) | 2008-06-18 | 2015-02-10 | Lincoln Global, Inc. | Welding wire with perovskite coating |
| US9272358B2 (en) | 2012-07-19 | 2016-03-01 | Lincoln Global, Inc. | Hot-wire consumable to provide self-lubricating weld or clad |
-
1991
- 1991-12-19 JP JP35531291A patent/JP2661445B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH05171463A (ja) | 1993-07-09 |
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