JP2658600B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

車両の制御装置

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JP2658600B2
JP2658600B2 JP2778591A JP2778591A JP2658600B2 JP 2658600 B2 JP2658600 B2 JP 2658600B2 JP 2778591 A JP2778591 A JP 2778591A JP 2778591 A JP2778591 A JP 2778591A JP 2658600 B2 JP2658600 B2 JP 2658600B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両の制御装置に関する
ものであり、特に車両の運動に関する検出状態量に基づ
き車両の制御を行う制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車両の各種状態量を検出するセンサ類の
出力信号を用いて車両の制御を行う車両の制御装置にお
いて、センサの故障検出をするのに故障検知対象センサ
についてはセンサを2個設置することで故障発生の有無
を判断する方式によるものでは、その2個のセンサ同志
の出力の比較を行い、センサ故障を検出することができ
る。即ち,同じ状態量を検出する2個のセンサの互いの
出力信号を比較して、その値の差が所定値以上になった
ら、そのセンサ系には故障があると判断するのであり、
そのためにセンサを2個設置する。従って、例えば、後
輪操舵機構を有する4WS車の舵角制御装置の場合でい
えば、舵角センサを故障検知の対象とするなら舵角セン
サを2個設けるようにし、また、舵角制御の舵角演算に
制御情報としてヨーレイトを使用する場合においてヨー
レイトを検出するヨーレイトセンサをも故障検知の対象
とするときは、ヨーレイトセンサについても2個設ける
ようにして、夫々のセンサ故障診断に備えることにな
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかして、かような故
障検出装置によってセンサの故障の検出を行う車両の制
御装置にあっては、同種のセンサを少なくとも2個設置
しそれらの出力を比較してセンサの故障を検出するた
め、故障診断のために同じ状態量を検出するセンサが少
なくとも2つ必要となり、従ってセンサ個数が増加しコ
ストも増加する。また、制御に必要な状態量情報を増や
して制御の向上を図ろうとする場合、そのためのセンサ
をシステム中に新たに1種追加するときはセンサ1個の
追加使用では足りず、2個センサを追加しなければなら
ないことになる。いずれの場合も、その分制御システム
を高価なものとし、低廉なシステムを望むときはコスト
的な負担となる。
【0004】また、たとえ同種の2個のセンサで当該検
出系の故障の診断は行えても、そのうちのどらちの方の
故障かが分からなければ(即ち正常な方はどちらである
か区別できなければ)、故障発生後は、その検出系で検
出の対象となっている状態量が制御情報として必要な制
御は続けるわけにはいかない。
【0005】本発明の目的は、車両の運動に関する少な
くとも3種の状態量を検出し、その検出状態量を制御に
用いる車両の制御装置において、故障検知の対象となる
状態量検出手段は同種のものを2以上設けなくても故障
検出を行え、しかも故障した状態量検出手段の特定がで
きる車両の制御装置を提供することにある。更に他の目
的は、状態量検出手段が故障した際にも制御を続けるこ
とのできる車両の制御装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、図1に
概念を示す如く、下記の車両の制御装置が提供される。
【0007】車両の運動に関する状態量を検出しその状
態量に基づき車両を制御する車両の制御装置であって、
車両の運動に関する状態量のうち、少なくとも3種の状
態量を検出する第1、第2、第3の状態量検出手段を有
する状態量検出手段群と、該状態量検出手段群のうちの
第1の状態量検出手段の出力から、第2の状態量検出手
段の出力の推定値を出力する第2の状態量推定手段と、
該第1又は第2の状態量検出手段の少なくとも一方の出
力から、第3の状態量検出手段の出力の推定値を出力す
る第3の状態量推定手段とを有する状態量推定部と、前
記第2、第3の各状態量検出手段の出力と該状態量推定
部による夫々の推定値とを比較した夫々の比較結果の組
合わせから前記状態量検出手段群のうちのどの検出手段
が故障かを判定する判定手段とを具備してなる車両の制
御装置(図1(a))、車両の運動に関する状態量を検出
しその状態量に基づき車両を制御する車両の制御装置で
あって、上記の状態量検出手段群を有すると共に、該状
態量検出手段群における第2、第3の状態量検出手段の
うちの一方の状態量検出手段の出力を、夫々その他方の
状態量検出手段の出力と第1の状態量検出手段の出力か
ら推定する状態量推定部を有し、該第2、第3の状態量
検出手段のいずれか一方が故障したときには、該状態量
推定部の出力を当該故障した一方の状態量検出手段の出
力の代わりに用いる故障補償手段を有する車両の制御装
置(図1(b) )である。
【0008】
【作用】請求項1記載の発明は、状態量検出手段群は車
両の運動に関する状態量のうち、少なくとも3種の状態
量を検出する第1、第2、第3の状態量検出手段を有
し、状態量推定部の第2の状態量推定手段が第1の状態
量検出手段の出力から第2の状態量検出手段の出力を推
定し、第3の状態量推定手段が、第1又は第2の状態量
検出手段の少なくとも一方の出力から第3の状態量検出
手段の出力を推定し、故障判定手段が、第2、第3の状
態量検出手段の出力と状態量推定部による夫々の推定値
とを比較した夫々の比較結果の組合わせから状態量検出
手段群のうちのどの検出手段が故障かを判定する。これ
により、状態量検出手段の故障判断を行うのに同種の検
出手段を更に1以上設けなくても故障検出ができ、その
分状態量検出手段にかかるコストを抑えられ、かつまた
故障が生じた検出手段の特定ができる。
【0009】請求項2記載の発明によれば、状態量推定
部は、第2、第3の状態量検出手段のうちの一方の状態
量検出手段の出力を、夫々その他方の状態量検出手段の
出力と第1の状態量検出手段の出力から推定し、第2、
第3の状態量検出手段のいずれか一方が故障した際に
は、故障補償手段が、その故障した一方の状態量検出手
段の出力に代えて状態量推定部の出力を用いる。これに
より、第2、第3の状態量検出手段の故障時には、その
推定値で継続して制御を続けることができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に
説明する。
【0011】図2は本発明の一実施例で、舵角制御シス
テムに適用した場合を示す。図中1L, 1Rは前輪、2L, 2R
は後輪、3はステアリングホイールを夫々示す。前輪1
L, 1Rはステアリングホイールへの操舵入力により主操
舵可能にすると共に、操舵機構中の前輪操舵用アクチュ
エータ4により主操舵に対し補助操舵を可能とする。ま
た、後輪2L, 2Rは補助操舵機構中の後輪操舵用アクチュ
エータ5により操舵可能とする。各アクチュエータ4,
5の作動は、これを信号処理部6、制御演算部(舵角演
算部)7、舵角制御部8の制御系9によって制御し、そ
の信号処理部6には、車両の運動(平面運動)に関する
状態量を示す情報を入力する。図示例では、ステアリン
グホイール3の操舵角θを検出する操舵角センサ10から
の信号、前輪実舵角δf を検出する前輪舵角(前輪実舵
角)センサ11からの信号、後輪実舵角δr を検出する後
輪舵角(後輪実舵角)センサ12(前後輪舵角センサ11,
12を第1の状態量検出手段とする)からの信号、車両に
作用するヨーレイト dφ/dtを検出するヨーレイトセン
サ13(第2の状態量検出手段)からの信号、車両の横加
速度αを検出する横加速度センサ14(第3の状態量検出
手段)からの信号、及び車速Vを検出する車速センサ15
からの信号等を夫々入力する。ここに各センサはヨーレ
イトセンサ、横加速度センサ、前後輪舵角センサを含ん
で、図示の如く、夫々該当状態量情報を検出するセンサ
としては、1個ずつとしてある。
【0012】制御系9では、基本的には、次のようにし
て舵角制御を行う。即ち、各センサ10〜15からの夫々の
信号は信号処理部6において適宜フィルタリング、A/
D変換を施され、信号処理後の各センサの出力に基づき
制御演算部7が車両の制御のための前後輪の舵角演算を
行い、舵角制御部8に対し指示舵角を出力し、これに応
じ指示された舵角に実際の舵角が一致するように、舵角
制御部8が前輪操舵用アクチュエータ4、後輪操舵用ア
クチュエータ5を制御する。
【0013】制御系9は、更に上記の各部に加えて、状
態量推定部16と、故障検出部(故障判断部)17とを備え
る。信号処理部6での処理後の信号は、故障検出部17に
与えられると共に、状態量推定部16に与えられる。信号
処理部6から故障検出部17に入力される各センサ出力
は、後述の状態量推定、故障推定による故障検知の対象
となるセンサ系(状態量検出系)に異常がなく正常のと
きには制御演算部7の入力として用いて既述の如き舵角
制御のための舵角演算に適用される。また、該当するセ
ンサ系のものについては、故障判断のため状態量推定部
16からの入力との比較に用いられる。状態量推定部16
は、それへの入力信号と車両運動数学モデルとに基づき
センサの出力を推定するもので、その推定値を上記故障
検出部17の他方の入力として与える。
【0014】状態量推定部16と故障検出部17とを含んで
構成される本発明に従う故障検出装置は、或るセンサの
出力(検出対象状態量)を他の(異種の)センサの出力
から推定し、かつセンサの出力(実センサ検出値)と比
較することで同種のセンサを2個設けることなくセンサ
の故障検出を行なえるものであるが、本実施例では、車
両の平面運動に関する状態量として前後輪舵角、ヨーレ
イト、横加速度を夫々検出する3種の対応センサ11、1
2、13、14を対象とし、上記状態量推定部16では、前輪
実舵角δf に相当する信号と、後輪実舵角δr に相当す
る信号との信号処理部6からの入力に基づき、後述する
方法で、前輪実舵角δf と後輪実舵角δr より、第2の
状態量の推定手段にてヨーレイトと、第3の状態量の推
定手段にて横加速度とを推定する。これらヨーレイト推
定値、横加速度推定値と各センサ13,14 の出力値を故障
検出部17で比較することにより、故障検出部17は、前後
輪舵角センサ、ヨーレイトセンサ、横加速度センサのう
ちのどのセンサが故障かを判定、特定する。
【0015】状態量推定部はまた、他の例では、上記に
代えまたはこれと共に、ヨーレイトdφ/dtより横加速
度αを推定し、横加速度αよりヨーレイト dφ/dtを推
定する。斯く推定されるヨーレイトからの横加速度推定
値、横加速度からのヨーレイト推定値も故障検出部へ比
較情報として入力することができる。故障検出部17は、
望ましくは、故障検出時、必要な故障補償(フェイルセ
ーフ)を行う。その場合に、推定値を代替値として故障
センサ系に用いることを含めることができる。
【0016】以下、状態量推定部16でのヨーレイトと横
加速度の推定、故障検出部17におけるセンサ故障の推定
の各内容について、更に具体的に説明する。まず、前後
輪舵角センサ11,12 の出力である舵角δf , δr からの
ヨーレイトセンサ13及び横加速度センサ14の各出力につ
いての推定値を求める方法について述べる。車両が前後
輪の舵角を制御する4WS車両の場合、車両の運動方程
式は、次式で表される。 dxp (t)/dt = Ap ・ xp (t)+ Bp ・ up (t) … (1) yp1(t)= cp1・ xp (t)+ dp ・ up (t) … (2) ここで、上記 Ap 等は夫々下記(式3)数1
【数1】 を内容とする。
【0017】また、以下は次を内容とする。 xp = 〔 VyP(t) , p (t)/dt〕T up = 〔δf (t) , δr (t) 〕T yp1= αp ap11= - (2/mV) ・(Kf + Kr ) ap12= - (2/mV) ・(Lf Kf - Lf Kr ) - V ap21= - (2/IV) ・(Lf Kf - Lf Kr ) ap22= - (2/IV) ・(Lf 2Kf -Lf 2K r ) bp11= (2/m)・ Kf bp12= (2/m)・ Kf bp21= (2/I)・ Lf Kf bp22= -(2/I) ・ Lf Kf m:車両算量 I:車両ヨー慣性モー
メント Kf :車両重心点前車軸間距離 Kr :車両重心点後車
軸間距離 V:車速 dφp /dt :車両のヨ
ーレイト Vyp:車両の横方向速度 αp :車両の横加速度 δf :前輪実舵角 δr :後輪実舵角
【0018】操舵角を入力とした場合、上記車両の平面
運動に関する運動方程式は上述の如くに表され、前後輪
の舵角δf , δr からヨーレイト dφp /dt と、横加速
度αを推定する場合、推定部16では下記(式4)数2
【数2】 (式5)数3
【数3】 を用いてこれを行う。
【0019】ここで、 x02 = 〔 Vy02(t), dφ02(t)/dt〕T y02 = 〔α02, dφ02(t)/dt] である。
【0020】図3には、上記に基づいてヨーレイト推定
値dφ02(t)/ dt 、横加速度推定値α02を求めるための
演算ブロック図の一例が示されている。
【0021】以上の演算により、ヨーレイト dφ/dt 、
及び横加速度αの夫々について、次の2種の情報が得ら
れる。即ち、ヨーレイトについては、センサ13の出力 d
φ/dt 値と、前後輪の舵角δf , δr から推定された結
果(推定値dφ02(t)/dt)との2種類のものが、また横
加速度については、センサ14の出力α値と、前後輪の舵
角δf , δr から推定された結果(推定値α02)との2
種類のものが、夫々得られる。故障検出部17では、これ
らの値により、ヨーレイトセンサ13、横加速度センサ1
4、前後輪舵角センサ11,12 の故障を推定する。
【0022】該故障推定は、次のような観点から、夫々
の故障のケース(ケース1の1〜1の3)につきこれを
行うことができる。
【0023】ケース1の1:ヨーレイトセンサの故障 かかる場合、前後輪舵角センサが故障でなければ、それ
らの検出値を基に推定して得た各推定値dφ02(t)/dt,
α02も正常であるとみることができ、よって次のように
異常、正常に分けることができる。 出力が異常なもの (イ)ヨーレイトセンサ 出力が正常なもの (ハ)横加速度センサ (ニ)前後輪舵角センサ (ヘ)前後輪舵角により推定されたヨーレイト (ト)前後輪舵角により推定された横加速度
【0024】ケース1の2:横加速度センサの故障 上記に準じ、この場合は次のようになる。 出力が異常なもの (イ)横加速度センサ 出力が正常なもの (ハ)ヨーレイトセンサ (ニ)前後輪舵角センサ (ヘ)前後輪舵角により推定されたヨーレイト (ト)前後輪舵角により推定された横加速度
【0025】ケース1の3:前後輪舵角センサのいずれ
か一方、または両方の故障この場合は、推定値は正しい
ものは得られないことから次のように分けることができ
る。 出力が異常なもの (イ)前後輪舵角センサのいずれか一方、または両方 (ロ)前後輪舵角により推定されたヨーレイト (ハ)前後輪舵角により推定された横加速度 出力が正常なもの (ヘ)ヨーレイトセンサ (ト)横加速度センサ
【0026】以上の各ケースでのセンサの異常に対する
出力の様子を示したものが下記の表1である。センサ故
障と各出力との関係を示す該表において、NGは異常、
OKは正常を意味する(後記する他の表においても同様
である)。
【0027】
【0028】 以上の結果より、次のことがいえる。即ち、 dφ/dt ≠ dφ02/dt かつα= α02 ならば、ヨーレイトセンサの故障であり、 dφ/dt = dφ02/dt かつα≠α02 ならば、横加速度センサの故障であり、 dφ/dt ≠ dφ02/dt かつα≠α02 ならば、前後輪舵角センサのいずれか一方、または両方
が故障である、と判断することができる。なお、上記の
判断において、不一致、更には一致の判定については、
誤差を考慮して、一定の許容量を設定するのが望まし
く、例えば dφ/dt ≠ dφ02/dt のケースでいえば、両
者の差(偏差)が予め定めた所定値以上のときに一致し
ていないと判定するのがよい。
【0029】図4は、故障検出部17において上述の故障
診断を行うためのフローチャートの一例を示し、まず、
ヨーレイトセンサ13の出力値 dφ/dt と前述のヨーレイ
ト推定値 dφ02/dt とを比較し両者が等しいかをチェッ
クし(ステップ41)、等しければ更に横加速度センサ14
の出力値αと前述の横加速度推定値α02とを比較し両者
が等しいかをチェックする(ステップ42)。そして、こ
こでセンサ出力値αと推定値α02とが等しければ異常な
しとみなし(ステップ43)、等しくなければ横加速度セ
ンサ14が異常で故障していると判断することとする(ス
テップ44)。なお、上記の各チェックで、偏差が所定値
未満かどうかで一致、不一致の判断を行なえることにつ
いては既に述べた通りであって、この点については後述
のステップ45、及び他の実施例の場合でも同様である。
【0030】上述の処理は、前述したケース分け、並び
に表1に示されるように、ケース1の2に該当するかど
うかをチェックしていることになる。
【0031】一方、ヨーレイトセンサ出力値 dφ/dt と
ヨーレイト推定値 dφ02/dt とが等しくないときには,
前記ケース1の1とケース1の3の場合が予想される
(同ケース1の1における(イ),(ヘ)の異常、正常
の組み合わせと、同ケース1の3における(ロ),
(ヘ)の異常、正常の組み合わせとの2組の可能性があ
る)。そこで、いずれが原因で不一致となっているかを
みるために、前記と同様の横加速度センサ出力値αと横
加速度推定値α02との比較チェックを行う(ステップ4
5)こととする(これは、基本的には、もし、前後輪舵
角センサ系が正常なら、ヨーレイトと同様に該センサ系
出力を基にその推定値を得ている横加速度情報は、セン
サ出力値αと推定値α02とが一致し、もし、前後輪舵角
センサ系が異常なら、同時に、センサ出力値αと推定値
α02との間でも不一致の状態が生ずることになるという
考え方に基づくものである)。しかして、その結果、等
しいと判定されたときは,前記ケース1の1に該当する
とみて、ヨーレイトセンサ13が異常で当該センサ自体の
故障と判断する(ステップ46)。他方、等しくなけれ
ば、本プログラム例では、センサ出力値と推定値との不
一致(この場合は、ヨーレイトについても、横加速度に
ついても、いずれも不一致の状態)の原因は、推定のた
めの情報を得る前後輪舵角センサ系側にあるとみて、即
ち前記ケース1の3に該当するものとみなして、前後輪
舵角センサ系の異常、故障であるとすることとする(ス
テップ47)。こうして舵角センサ系の故障もみれる利点
がある。
【0032】図5〜図9は、上述の故障検出のシュミレ
ーション結果の一例を示す。シュミレーションは、時刻
0でステップ状に45°の操舵角を与えたと仮定した条件
の下でなされており、図5は前後輪舵角センサ11,12 、
ヨーレイトセンサ13、横加速度センサ14が正常な場合の
結果を、図6はヨーレイトセンサ13が故障したときの各
センサ出力、及び各推定値等の結果を、図7は横加速度
センサ14が故障したときの同様の結果を、図8は前輪実
舵角センサが故障したときの同様の結果を、図9は後輪
実舵角センサが故障したときの同様の結果を、夫々示
す。図5をみると、正常時には、同図(a) 〜(d) の前輪
実舵角、後輪実舵角、ヨーレイト、横加速度は、夫々の
真値((a) 〜(d) の各(イ))に対しセンサ出力が夫々
同各(ロ)のように変化し、かつ、前後輪舵角δf , δ
r (センサ出力)からのヨーレイト推定値 dφ02/ dt
((c) の(ハ))、及び横加速度推定値α02((d) の
(ハ))は、夫々(c) の(ロ) 、及び(d) の(ロ)と同
様の挙動を呈する結果が示されている。なお、上記か
ら、操舵前の直進走行では、いずれも値0.0を示すこ
とも分かる。
【0033】これに対し、例えば、図6に示すヨーレイ
トセンサ故障時(ステップ操舵後0.8 秒以降)の場合、
センサ出力の図示の如き故障態様での変化後の故障状態
では、ヨーレイトセンサ出力 dφ/ dtとヨーレイト推定
値 dφ02/dt とは同図(c)の (ロ) と(ハ)のように
一致せず、他方、横加速度センサ出力αと横加速度推定
値α02とは0.8 秒以降も前記図5の正常時の場合と同じ
状態で推移していることが示されている。従って、前記
のヨーレイト、横加速度についての2条件、即ち、 dφ
/ dt≠ dφ02/ dt、及びα= α02が成立しており、夫々
の推定値とセンサ出力との比較判断によって、この場合
はヨーレイトセンサ13の故障と判定でき、的確に故障セ
ンサの特定をすることもできることが分かる。
【0034】他の故障時のシュミレーション結果を示す
図7〜図9の場合についても、上記に準じて同様に説明
することができる。このうち、舵角センサ系、例えば図
8の前輪実舵角センサ11故障時の場合を例にとって、更
に簡単に説明すれば、故障発生後、(0.8 秒以降)は、
同図(c) の(ロ)と(ハ)、及び(d) の(ロ)と(ハ)
のように、センサ出力 dφ/dtと推定値 dφ02/dt、セ
ンサ出力αと推定値α02は、いずれも一致せず、従って
それらの比較判断で前記の dφ/dt≠ dφ02/dtかつα
≠α02なる結果が得られる状態であることが示されてい
る。よって、上記シュミレーション結果からも、この場
合には、舵角センサ系の故障、より詳しくは前輪実舵角
センサ11の故障と判断することができることが分かる。
【0035】以上のように、本実施例によれば、車速セ
ンサ15の出力と前後輪舵角センサ11,12 の出力から、少
なくともヨーレイトセンサ13と横加速度センサ14との2
種のセンサ出力を推定して推定値 dφ02/dt、推定値α
02を得、かつ夫々の推定値と各対応するセンサ出力とを
用いて、夫々の比較を行うことにより、夫々の比較結果
の組合わせから前後輪舵角センサ、ヨーレイトセンサ、
横加速度センサについての故障判断を適切に行うことが
できるので、それらの故障検出をするために夫々同種の
センサを2個設けるなどする必要がない。従って、前後
輪舵角、ヨーレイト、横加速度の各情報を検出するセン
サとして夫々単一のセンサを使用することで済む分だけ
制御システムのコストを抑え、低廉なものとすることが
できる。
【0036】また、同種のセンサを2個設けずに、例え
ば舵角センサとヨーレイトセンサを有する制御システム
において、舵角センサの出力値が0であるにもかかわら
ず、ヨーレイトセンサの出力値が0でないとき、故障と
判断することも考えられるが、しかしかかる手法による
ときは、故障態様等によっては、どちらの故障か判定で
きない場合も生じる。
【0037】即ち、上記のものは、非操舵状態では両セ
ンサの出力値はともに0で、舵角センサが正常なら、そ
の出力値が0を示す状態(中立位置)のときにヨーレイ
トセンサの出力値も0を示すはずなのに、0でない場合
はヨーレイトセンサの故障とするという考え方に基礎を
おいているが、舵角センサ出力値=0、ヨーレイトセン
サ出力値≠0という状態は、次のようなときに出現する
場合もある。即ち、舵角センサ自体が異常であって、し
かも、非操舵時でも操舵時でもその出力値は0を示す一
方、ヨーレイトセンサは異常ではなく正常にヨーレイト
を検出してそれに対応する出力値を示すという場合であ
る。従って、このような点からみると、たとえ、いずれ
も1個ずつのセンサの使用でよくても、故障診断のため
の情報としてセンサ出力値自体の相互の関係をみて故障
検知を行わんとする上述の手法では、不十分である。舵
角センサが正常でヨーレイトセンサが異常の状態と、舵
角センサが異常でヨーレイトセンサが正常の状態とを区
別することはできず、よって舵角センサ系とヨーレイト
センサ系のどちらが故障なのか故障センサの特定ができ
ない。
【0038】上記のことは、舵角センサの出力値が0で
あるにもかかわらず、横加速度センサの出力値が0でな
いとき故障と判断するものについても同様のことがいえ
る。
【0039】これに対し、本実施例では、既述の如く、
少なくとも2つの推定値 dφ02/dt,α02を用いるもの
であって、推定値 dφ02/dt,α02と各対応センサ出力
dφ/dt,αとの比較で故障判断を行うようにしてお
り、2個ずつセンサを設けることがない上、ヨーレイト
センサ、横加速度センサ、前後輪舵角センサ系のどれが
異常かを適切に区別して故障判定をすることができ、故
障が生じたセンサの特定ができるのである。
【0040】また、故障検出時には、故障検出部17は警
告と故障補償を行う。即ち、上記のいずれかのセンサの
出力値の故障が検出されたときには、該当センサが故障
である旨を表示器に表示するなどする。一方、更に、故
障センサがヨーレイトセンサ13、横加速度センサ14であ
る場合には、そのセンサ出力値に代えて上記の推定値の
出力を用いるようにし、こうすることによって、故障発
生時でもほぼ正確な制御を行わせることができる。従っ
て、この場合の推定値 dφ02/dt及び推定値α02は、故
障診断のための情報であると共に、故障が発生した際に
はその dφ02/dt値、α02値がそのまま代替値として利
用できるという性質の情報でもあるのである。それ故、
かかる点においても、同種のセンサを2個配して故障検
出を行う構成のものと比べても、更には前記の手法によ
る場合のものに比べても、優れている。
【0041】なお、上記で前後輪舵角センサ系の故障と
判断された場合は、本実施例では、特にそれについての
推定値は求めていないことから、舵角制御はこれを中止
して通常の2WSとすればよい。
【0042】図10に示すものは、上記実施例に係る変形
例の一つであって、横加速度をヨーレイトから推定した
場合における故障診断のためのフローチャートの一例で
ある。即ち、上記第1実施例で横加速度の推定につき、
これを前後輪舵角から行ったものを、ヨーレイトから行
うよう替えたものである。図10において、ステップ41〜
ステップ45は夫々前記図4と同様の処理を行うステップ
である。ステップ45での比較チェックの結果、答が Yes
で等しいと判定されたときは、ステップ46a で前後輪舵
角センサ系の異常、故障であると判断し、また答がNoで
不一致なら、ステップ47a でヨーレイトセンサ13の異
常、故障と判断することとする。このように、前後輪舵
角センサ11, 12の出力からヨーレイトセンサ出力を推定
し、またヨーレイトセンサ13の出力から横加速度センサ
出力を推定し、夫々の推定値と各対応センサの出力とを
比較した結果の組合わせから、前後輪舵角センサ、ヨー
レイトセンサ、横加速度センサについての故障判断を行
うこともでき、上記実施例と同様の作用効果を奏し得
る。
【0043】更に、他の変形例の一つとして、ヨーレイ
トの推定につきこれを横加速度から行うようにしてもよ
い。
【0044】次に、本発明の他の例について説明する
と、以下に述べるものは、更に推定値を夫々1つ追加
し、夫々2つの推定値を得て、センサの故障の推定を行
う。
【0045】即ち、本実施例では、状態量推定部16で
は、前記ヨーレイト推定値 dφ02/dt、横加速度推定値
α02の他、ヨーレイト dφ/dtより横加速度を推定し、
横加速度αよりヨーレイトを推定し、故障検出部17で
は、これらの推定値とセンサ出力とを用い、比較判断に
よりセンサの故障検出を行う。横加速度センサ14からの
ヨーレイトの推定、ヨーレイトセンサ13からの横加速度
の推定について、夫々次の方法により行うものとする。
【0046】即ち、横加速度αからヨーレイト dφ/dt
を推定する方法としては、同一次元オブザーバを用い、
以下の手順により行う。
【0047】手順1:下記(式6)数4
【数4】 により可制御正準変換行列Tを求める。
【0048】手順2:次式のように、オブザーバの設定
極γ12 を任意に定め、オブザーバのゲインベクトル
kを求める。 (S +γ1)(S +γ2)= S2+ ( γ1+γ2)S + γ1 ・γ2 = S2+ d2S + d1 kT = [d1-a , d2-a2]T -1
【0049】手順3:オブザーバのシステムマトリック
スを下記(式7)数5
【数5】 により求め、しかして下記(式8)数6
【数6】 (式9)数7
【数7】 の如く同一次元オブザーバを構成してヨーレイト推定値
01/dtを求める。
【0050】次にヨーレイト dφ/dtから横加速度推定
値α01を推定するために、横速度V y を推定する。その
方法として、最小次元オブザーバの手法を用いる。ただ
し、前記式2の代わりに次式10を用いる。
【0051】yp2= cP2・ xp yp2= [ dφp /dt] --- (10) Cp2= [0,1]
【0052】手順1:まず、下記(式11)数8
【数8】 に示すSの行列式が0にならないようにWを適当に決め
る。
【0053】手順2:下記(式12)数9
【数9】 を計算する。
【0054】手順3:下記(式13)数10
【数10】 の固有値を希望の値γとするようにjを決定する。
【0055】手順4:上記でjが決定されたら、下記
(式14)数11
【数11】 の値を夫々求めて横加速度推定値α01を求める。
【0056】図11には、上記手法に基づき状態量推定部
16においてヨーレイト推定値 dφ01/ dt、横加速度推定
値α01を求めるための演算ブロック図の一例が示されて
いる。なお、前後輪の舵角δf , δr からのヨーレイト
及び横加速度の各推定値dφ02/ dt、α02については、
前記実施例と同様、前述の式4,式5を用い、前記図3
によりこれを求めるものとする。
【0057】以上の演算により、本実施例では、ヨーレ
イトについては、センサ13の出力 dφ/dt値と、最小次
元オブザーバの演算結果(推定値 dφ01/dt)と、前後
輪の舵角から推定された結果(推定値 dφ02/dt)との
3種類のものが得られ、また横加速度についても、セン
サ14の出力α値と、同一次元オブザーバの演算結果(推
定値α01)と、前後輪の舵角から推定された結果(推定
値α02)との3種類のものが得られることとなり、これ
らの値により、ヨーレイトセンサ13、横加速度センサ1
4、前後輪舵角センサ11,12 の故障を推定する。故障推
定は、本実施例の場合、次のようなケース(ケース2の
1〜2の3)に分けて行うことができる。
【0058】ケース2の1:ヨーレイトセンサの故障 出力が異常なもの (イ)ヨーレイトセンサ (ロ)最小次元オブザーバにより推定された横加速度 出力が正常なもの (ハ)横加速度センサ (ニ)前後輪舵角センサ (ホ)同一次元オブザーバにより推定されたヨーレイト (ヘ)前後輪舵角により推定されたヨーレイト (ト)前後輪舵角により推定された横加速度
【0059】ケース2の2:横加速度センサの故障 出力が異常なもの (イ)横加速度センサ (ロ)同一次元オブザーバにより推定されたヨーレイト 出力が正常なもの (ハ)ヨーレイトセンサ (ニ)前後輪舵角センサ (ホ)最小次元オブザーバにより推定された横加速度 (ヘ)前後輪舵角により推定されたヨーレイト (ト)前後輪舵角により推定された横加速度
【0060】ケース2の3:前後輪舵角センサのいずれ
か一方、または両方の故障出力が異常なもの (イ)前後輪舵角センサのいずれか一方、または両方 (ロ)前後輪舵角により推定されたヨーレイト (ハ)前後輪舵角により推定された横加速度 (ニ)最小次元オブザーバにより推定された横加速度 (ホ)同一次元オブザーバにより推定されたヨーレイト 出力が正常なもの (ヘ)ヨーレイトセンサ (ト)横加速度センサ
【0061】本実施例でのセンサの異常に対する出力の
様子を表2に示す。
【0062】
【0063】上記結果より、次のように判断することが
できる。即ち、dφ/dt ≠ dφ01/ dt = dφ02/dtかつα
01≠α= α02ならば、ヨーレイトセンサの故障であり、
01/ dt≠ dφ/ dt= dφ02/ dtかつα≠α01= α02
ならば、横加速度センサの故障であり、dφ/ dt≠ dφ
01/ dt≠ dφ02/ dtかつα≠α01≠α02ならば、前後輪
舵角センサのいずれか一方、または両方の故障である、
と判断できる。
【0064】図12〜図16は、ステップ状に45°の操舵角
を与えた時の本実施例でのシュミレーション結果の一例
を示す。図12は全センサが正常な時の結果を示し、また
図13は操舵後0.8 秒後にヨーレイトセンサ13が故障した
ときの各センサ出力、及び各推定値の結果を、図14は同
じく横加速度センサ16が故障したときの結果を、図15は
同じく前輪実舵角センサ11が故障したときの結果を、図
16は同じく後輪実舵角センサ12が故障したときの結果
を、夫々示しており、該当センサ故障時に表2、あるい
は上述した関係が成り立つことが分かる。
【0065】本実施例は、前記実施例と比べて故障診断
をより適切に行うことができる。例えば、凍結路での操
舵時のような場合を考えると、センサに故障が生じてい
ないのに、回頭性過剰(スピン状態)など車両の状況に
よっては、故障と判断してしまう誤判断の可能性があ
る。これに対し、ヨーレイト及び横加速度につき夫々2
種の推定値 dφ01/dt, dφ02/dt、α01,α02(図12
〜図16の各(c),(d) の(ハ)、(ニ))を用いる場合に
は、実センサ出力とそれら2種の推定値の3者間の比較
判断で故障診断を行う結果、上述のような車両状況によ
る場合のものと区別をつけることもできるようになる。
【0066】ヨーレイトセンサ故障のパターンを例にと
っていえば、前記実施例の場合に、dφ/ dt≠ dφ02/ d
tかつα=α02のパターンがもし車両挙動に起因して生ず
るものであれば、そのパターンだけではヨーレイトセン
サ故障との区別はできないことになるが、本実施例で
は、更に、これに加えて、 dφ/ dt≠ dφ01/ dt、α≠
α01(従ってα01≠α02)の成立の有無についてもチェ
ックしている(ここでは、 dφ01/ dt= dφ02/ dtの成
立の有無もチェックしている)。ここで、仮に、ヨーレ
イトセンサが故障ではなく、また前後輪舵角センサ及び
横加速度センサも故障ではないのに、車両挙動に起因し
て dφ/ dt≠ dφ02/ dtの不一致が生じているとすれ
ば、そのとき、正常なヨーレイトセンサ出力値 dφ/ dt
と正常な横加速度センサからの推定値 dφ01/ dtとの
間、及び正常な横加速度センサ出力値αと正常なヨーレ
イトセンサからの推定値α01との間でも、同時に不一致
が生ずる可能性は少ないといえる。こう考えた場合にお
いて、それにもかかわらず、 dφ/ dt≠ dφ01/ dt、α
≠α01が成立するということは、この場合には、その不
一致の原因は値 dφ/ dt, 値α01側、従ってヨーレイト
センサの故障によるものと判断することができる(ま
た、横加速センサ、及び前後輪舵角センサが正常である
点については、α =α02、更には dφ01/ dt = dφ02/
dtによってみることができる)。従って、上記例では、
ヨーレイトセンサが故障でないのに、誤って故障と判断
してしまう誤判断を避けることもできることになる。
【0067】本実施例に従えば、上述のような構成によ
り、前記実施例と同様、車両の制御を行うために必要な
状態量が増加しても、センサの増加によるコスト増加を
最小限に抑えることができると共に、故障が生じたセン
サの特定ができる他、更に故障診断をより適切なものに
することができる。
【0068】次に本発明の更に他の例について説明す
る。本実施例は、前記の第2実施例によるものの拡張に
係り、特にヨーレイトセンサ、横加速度センサについて
の故障判断を行うと共に、それら故障時の補償をより正
確かつ適切なものとする。
【0069】図17は本実施例での制御システム図で、図
示例では、操舵角センサ、前輪実舵角センサ、後輪実舵
角センサ、及び車速センサについては、夫々符号10a, 1
0b、11a, 11b、12a, 12b、15a, 15bの如く同種のセンサ
を2個配置する一方、故障検知の対象となるヨーレイト
センサ13、及び横加速度センサ14については、それらを
1個ずつ設ける構成としてある。状態量推定部16では、
前記第2実施例と同様に,ヨーレイトについてヨーレイ
ト推定値 dφ02/ dtとヨーレイト推定値 dφ01/ dtとの
2つの推定値を得ると共に、横加速度について横加速度
推定値α02と横加速度推定値α01との2つの推定値を
得、これらを故障検出部(故障判断部)17に入力する。
各推定値を求める方法は、前記図3、図11(a),(b)の演
算ブロックを含んで既述したものと同様であってもよ
い。
【0070】故障検出部(故障判断部)17では、ヨーレ
イト及び横加速度については、それら各センサ13,14 の
出力を、または該各センサ13,14 のいずれか一方が故障
した際にはその特定された故障センサに応じてセンサ出
力の推定値を、制御演算部(舵角演算部)7に入力す
る。ヨーレイトセンサ13の故障判断、横加速度センサ14
の故障判断については、前記第2実施例で述べたパター
ンで行ってよい。制御演算部17は、同様に、ヨーレイト
及び横加速度については、夫々のセンサ出力自体、また
は該当するときは代替値として適用されるセンサ出力の
推定値を用いて前後の舵角演算を行う。
【0071】本実施例は、このように、夫々単一のセン
サとして設けられるヨーレイトセンサ、横加速度センサ
の故障を対象とし、かつ、それらのどちらか一方の故障
と判断されたときには、状態量推定部16で得られている
その推定値を、当該故障した一方のセンサの出力の代わ
りに用いて制御を続行させるものとする。ヨーレイトセ
ンサ、横加速度センサの故障推定は、ヨーレイトについ
ての dφ/dt値、 dφ01/dt値、 dφ02/dt値、及び横
加速度についてのα値、α01値、α02値を用い、前記第
2実施例で述べたケース2の1の(イ)〜(ト)(ヨー
レイトセンサの故障)と、同ケース2の2の(イ)〜
(ト)(横加速度センサの故障)に従って行うことがで
き、その結果を示すと、表3のようなセンサ故障と各出
力の関係となる。
【0072】
【0073】以上より、ヨーレイトセンサ13の故障、横
加速度センサ14の故障に関しては、dφ/ dt≠ dφ01/ d
t= dφ02/dt かつα01≠α= α02ならば、ヨーレイト
センサの故障と判断でき、しかも、この場合は、以後、
ヨーレイトセンサの出力の代わりに上記 dφ01/ dt値ま
たは dφ02/dt 値を用いて舵角演算を行う。また、 dφ
01/ dt≠ dφ/dt= dφ02/ dtかつα≠α01= α02なら
ば、横加速度センサの故障と判断でき、この場合は、以
後、横加速度センサの出力の代わりに上記α01値または
α02値を用いて舵角演算を行う。上記条件で故障診断と
故障補償とを行うと、例えばヨーレイトセンサ故障の場
合は、代替値としては推定値 dφ01/ dtと推定値 dφ02
/ dtが一致した条件( dφ01/ dt= dφ02/dt )の下で
それが適用される結果、前記の第1実施例で触れた故障
補償の場合よりも、代替値としてより正しい値のものを
用いることができるようになり、精度を高めることがで
きる。この点については、横加速度センサ故障の場合も
同様であって、α01= α02が成立する条件下でのα01
またはα02値を代替値として用いて正確な舵角制御を継
続させることが可能である。
【0074】図18は、本実施例に従い故障検出部17にお
いて実行されるヨーレイトセンサ及び横加速度センサに
ついての故障補償処理を含む簡便な故障診断プログラム
の一例を示すフローチャートである。本プログラムで
は、まず、ヨーレイトセンサ13の出力値 dφ/ dtと同一
次元オブザーバによるヨーレイト推定値 dφ01/ dtとが
等しいか否かをチェックし(ステップ51)、 dφ/dt= d
φ01/ dtであれば更に、横加速度センサ14の出力値αと
最小次元オブザーバによる横加速度推定値α01とが等し
いか否かをチェックし(ステップ52)、結果、α= α01
であれば正常と判断する(ステップ53)。
【0075】本実施例によった場合のシュミレーション
結果も、前記第2実施例で示したシュミレーション結果
と同様であって、センサ正常な時の結果は前記図12に示
すものと、ヨーレイトセンサが故障した時の結果は前記
図13に示すものと、また横加速度センサが故障した時の
結果は前記図14に示すものと、夫々同一である。ここ
で、これらにおける特にヨーレイト及び横加速度の夫々
についてのセンサ出力 dφ/dt 、センサ出力αと、前記
ステップ51,52 で適用した推定値 dφ01/dt 、推定値α
01との関係に着目すると、正常時には、図12(c),(d) の
各(ロ),(ハ)に示す如く、 dφ/dt = dφ01/dt、
α= α01が成立し、従ってかかる場合に正常と判断する
ものである。車両の状態量を検出する少なくとも2種の
状態量検出手段としてのヨーレイトセンサ13、横加速度
センサ14を夫々単一のセンサとして有し、それらセンサ
の一方の出力を、他方のセンサの出力と、舵角と、車速
から推定する構成の場合には、夫々センサの出力を他方
のセンサの出力を基に相互に推定することになり、それ
故、かかる相互推定値たる dφ01/dt、α01とセンサ出
力値 dφ/dt、α間で上述の関係が成立すれば(後述も
するが、図13(c),(d)及び図14(C),(d) の各(ロ),
(ハ)にみられるように、相互推定に係るセンサのいず
れかに故障が発生すれば、それがいずれであっても上記
関係は成立しない)、ヨーレイトセンサ13と横加速度セ
ンサ14に関し、センサ故障は生じていないとみることが
できる。
【0076】ステップ52で横加速度センサ出力値αと推
定値α01とが等しくないときは、システム異常と判断す
る(ステップ54)。即ち、 dφ/ dt = dφ01/ dtかつα
≠α01の場合であるが、このような場合は、ヨーレイト
センサ13、横加速度センサ4がともに正常であるという
状態でもないし、他方、図13及び図14に示されるよう
に、どらちのセンサ故障のときでもそのときは dφ/ dt
≠ dφ01/ dtかつα≠α01が同時に成立する点からみれ
ば、それらのセンサ13,14 故障の状態でもないのである
から、ここではシステム異常と判断することとする。な
お、α≠α01かつdφ/ dt≠ dφ01/ dtの場合も同様の
判断でよい。
【0077】前記ステップ51で dφ/ dt≠ dφ01/ dtの
とき(図13の(c) の(ロ),(ハ)の時刻 0.8秒以後、
または図14の(c) の(ロ),(ハ)の時刻0.8秒以後の
状態参照)、故障検知対象センサ13,14 についてセンサ
故障があるとみて, 本プログラム例では、横加速度セン
サ出力値αと前後輪舵角からの横加速度推定値α02とが
等しいかどうかについてのチェック処理(ステップ55)
に進む。ここで、該チェックに先立ち前記ステップ52と
同様のチェックを実施し、α≠α01の場合に上記の出力
値αと推定値α02とに関する比較判断を行えば、 dφ/
dt≠ dφ01/dtかつα≠α01の条件を確認して診断を進
めることができる。しかして、α= α02なら図13(d) の
(ロ)と(ニ)に示されるような関係であり、よってこ
の場合はヨーレイトセンサ13の故障と判断し(ステップ
56)、ヨーレイトセンサの出力の代わりに既述の如くヨ
ーレイト推定値を用いて舵角制御を続ける(ステップ5
5)。
【0078】一方,α≠α02なら図14(d) の(ロ)と
(ニ)に示されるような関係であることから、この場合
は横加速度センサ14の故障と判断し(ステップ58)、横
加速度センサの出力の代わりに既述の如く横加速度推定
値を用いて舵角制御を続けることとする(ステップ5
9)。なお、センサ13と14のいずれの故障であるかを区
別するのに、図13の(c) の(ロ),(ニ)の関係と、図
14の(c) の(ロ),(ニ)の関係を使用するようなプロ
グラムを組むこともできる。
【0079】故障検知対象センサをヨーレイトセンサ13
及び横加速度センサ14とする本実施例は、上述のような
構成でこれを実施することもできる。それらセンサの故
障検出において、予備のセンサを設けることもなくセン
サ故障を判断し得るし、また、ヨーレイトセンサ、横加
速度センサを夫々2個ずつ設けた場合でも、故障時その
2個のうちのどらちかのセンサが故障したのかが判断で
きないときは、舵角制御のための演算はその2個のうち
の一方のセンサが故障しただけで停止しなければならな
くなるのに対し、センサが故障した際にも制御を続ける
ことができる。
【0080】なお、上記実施例では車両の舵角制御装置
における前後輪舵角を第1の状態量としたが、第1の状
態量としては前後輪舵角の少なくとも一方を用いるよう
にし、第2、第3の状態量としては、ヨーレイトと横加
速度を用いるか、またはヨーレイトと横加速度を用いる
か、または横加速度と横方向速度を用いるかのいずれか
の態様で実施することもできる。更に、本発明は舵角制
御装置の他、車両の運動に関する状態量を検出しそれに
基づき車両の制御をする制御装置、例えば、サスペンシ
ョンのアクティブ制御装置(3つの状態量としてサスペ
ンションストローク、ヨーレイト及び横加速度を用い
る)に適用可能である。
【0081】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、第1の状
態量検出手段の出力から第2の状態量検出手段の出力
を、及び第1又は第2の状態量検出手段の少なくとも一
方の出力から第3の状態量検出手段の出力を夫々推定
し、その夫々の推定量と第2、第3の状態量検出手段の
出力を比較した夫々の比較結果の組合わせからどの検出
手段が故障かを判定することができるので、状態量検出
手段に同種のものを2以上設けないでも故障診断を行う
ことができる。従って、車両の制御を行うために必要な
状態量が増加しても、状態量検出手段の増加によるコス
ト増加を最小限に抑えることができる。また、故障が生
じた状態量検出手段の特定ができ、故障発生後の措置を
より適切なものとすることができる。
【0082】請求項2記載の発明によれば、第2、第3
の状態量検出手段のうちの一方の状態量検出手段の出力
を、夫々その他方の状態量検出手段の出力と第1の状態
量検出手段の出力から推定し、第2、第3の状態量検出
手段のいずれか一方が故障したときに該一方の状態量検
出手段の出力に代えて上記推定値を用いることにより、
第2、第3の状態量検出手段が故障した際にも制御を続
けることができる。従って、第2、第3の状態量検出手
段について、故障発生時の適切な故障補償を行わせるこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の概念図である。
【図2】本発明の一実施例に係る舵角制御システムの構
成図である。
【図3】前後輪舵角からヨーレイト及び横加速度を推定
する方法の一例を示す演算ブロック図である。
【図4】故障診断の一例を示すフローチャートである。
【図5】シュミレーション結果の一例を示す図にして、
センサ正常時の結果を示す図である。
【図6】同じく、ヨーレイトセンサ故障時の結果を示す
図である。
【図7】同じく、横加速度センサ故障時の結果を示す図
である。
【図8】同じく、前輪実舵角センサ故障時の結果を示す
図である。
【図9】同じく、後輪実舵角センサ故障時の結果を示す
図である。
【図10】同実施例に係る変形例における故障診断の一
例を示すフローチャートである。
【図11】本発明の他の実施例の説明に供するヨーレイ
ト及び横加速度の相互推定のための方法の一例を示す演
算ブロック図である。
【図12】相互推定値を含めた場合のシュミレーション
結果を示す図にして、センサ正常時の結果を示す図であ
る。
【図13】同じく、ヨーレイトセンサ故障時の結果を示
す図である。
【図14】同じく、横加速度センサ故障時の結果を示す
図である。
【図15】同じく、前輪実舵角センサ故障時の結果を示
す図である。
【図16】同じく、後輪実舵角センサ故障時の結果を示
す図である。
【図17】本発明の更に他の実施例に係る舵角制御シス
テムの構成図である。
【図18】故障補償処理を含む故障診断の一例を示すフ
ローチャートである。
【符号の説明】
1L,1R 前輪 2L,2R 後輪 6 信号処理部 7 制御演算部 8 舵角制御部 10,10a,10b 操舵角センサ 11,11a,11b 前輪舵角センサ(第1の状態量検出手段) 12,12a,12b 後輪舵角センサ(第1の状態量検出手段) 13 ヨーレイトセンサ(第2の状態量検出手段) 14 横加速度センサ(第3の状態量検出手段) 15,15a,15b 車速センサ 16 状態量推定部(第2の状態量推定手段,第3の状態
量推定手段) 17 故障検出部(判定手段;故障補償手段)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の運動に関する状態量を検出しその
    状態量に基づき車両を制御する車両の制御装置であっ
    て、車両の運動に関する状態量のうち、少なくとも3種
    の状態量を検出する第1、第2、第3の状態量検出手段
    を有する状態量検出手段群と、該状態量検出手段群のう
    ちの第1の状態量検出手段の出力から、第2の状態量検
    出手段の出力の推定値を出力する第2の状態量推定手段
    と、該第1又は第2の状態量検出手段の少なくとも一方
    の出力から、第3の状態量検出手段の出力の推定値を出
    力する第3の状態量推定手段とを有する状態量推定部
    と、前記第2、第3の各状態量検出手段の出力と該状態
    量推定部による夫々の推定値とを比較した夫々の比較結
    果の組合わせから前記状態量検出手段群のうちのどの検
    出手段が故障かを判定する判定手段とを具備してなるこ
    とを特徴とする車両の制御装置。
  2. 【請求項2】 車両の運動に関する状態量を検出しその
    状態量に基づき車両を制御する車両の制御装置であっ
    て、請求項1記載の状態量検出手段群を有すると共に、
    該状態量検出手段群における第2、第3の状態量検出手
    段のうちの一方の状態量検出手段の出力を、夫々その他
    方の状態量検出手段の出力と第1の状態量検出手段の出
    力から推定する状態量推定部を有し、該第2、第3の状
    態量検出手段のいずれか一方が故障したときには、該状
    態量推定部の出力を当該故障した一方の状態量検出手段
    の出力の代わりに用いる故障補償手段を有することを特
    徴とする車両の制御装置。
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