JP2653445B2 - 放射性廃棄物の除染システム - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の目的］ （産業上の利用分野） 本発明は、放射性汚染廃棄物の除染方法に係り、特
に、多量でしかもその廃棄物形状が多種多様である放射
性汚染金属廃棄物を効率的にかつ徹底除染を行うことの
できる放射性廃棄物の除染方法に関する。

（従来の技術） 原子力発電施設の寿命は30〜40年と言われており、寿
命となった原子力発電施設はある期間密閉管理された後
に解体撤去される。この原子力発電施設の廃止措置にと
もない発生する放射性汚染廃棄物は、比較的短期間に多
量に発生し、その上、発生する放射性汚染廃棄物は熱交
換器、タンク、配管、バルブといった形状、寸法および
放射能（汚染）レベル等が極めて多種多様である等の特
徴を有している。これらの廃棄物を切断し容器詰めを行
う等の処理を施し、放射性汚染廃棄物を保管、貯蔵もし
くは処分する場合に貯蔵施設もしくは処分施設は極めて
大規模なものが必要となるとともに処理等の作業に伴う
作業員の被曝が問題となる。

そのため、原子力発電施設の廃止措置にともない発生
する多量のしかも形状が極めて多種多様である等の特長
を有する放射性汚染金属廃棄物に対し効率的な除染方法
を提供することにより、放射性廃棄物の発生量を大幅に
低減することが可能となり放射性廃棄物の貯蔵施設もし
くは処分施設の規模を小さくできるとともに、一般の廃
棄物として取扱えるまで徹底除染された廃棄物について
は再利用することができるため資源の有効活用を行うこ
とも可能となる。さらに、放射性廃棄物の発生量を大幅
に低減できるため作業員の被曝を低減することが可能と
なる。

これまで原子力発電施設の保守、改良等により発生す
る放射性廃棄物に対して実施されている除染方法を原理
的に分類すると、化学的除染法、機械（物理）的除染
法、物理化学的除染法、電気化学的除染法に分類され
る。従来の除染方法は原子炉一次系の系統除染および機
器の供用中除染を主体に発展したきた背景から、金属母
材の健全性を損なわずに除染することを目的とし開発、
実用化されている。従って、これらの方法では、金属表
面の汚染のうち酸化被膜の除去までを行うことが目的で
あり、単一の除染方法により種々の廃棄物の除染が実施
されている。

（発明が解決しようとする問題点） しかしながら、原子力発電施設の廃止措置により発生
する機器、配管、バルブ等の表面には放射能汚染源であ
るクラッド（Co−60等）等の酸化被膜が長期間堆積して
おり、また結晶粒界に沿って放射能が母材内部まで浸透
しているものも存在するため、徹底的な除染を行うため
には従来開発されてきた除染方法では不十分である。従
って、従来の除染方法に加え、母材の表面層をも溶解す
るような強力な除染方法を組合わせた合理的な除染方法
が不可欠となる。さらに、原子力発電施設の廃止措置に
より発生する廃棄物は熱交換器、タンク、配管、バルブ
等形状が多種多様にわたるため、効率的な除染を行うた
めには廃棄物の形状をも考慮に入れ、廃棄物の形状によ
り除染性能が影響されない除染方法であると共に測定・
弁別系を合理的に組合せた除染方法が必要不可欠とな
る。

本発明は以上の事情に鑑みてなされたもので、その目
的とするところは原子力発電施設の保守、改良等や原子
力発電施設の廃止措置にともない短期間に多量に発生
し、しかも形状が極めて多種多様である等の特長を有す
る放射性汚染金属廃棄物を合理的な構成より成る除染方
法により廃棄物の形状に影響を受けることなく効率的に
除染でき、かつ非放射性廃棄物として扱うことができる
レベルまで徹底的に除染できる放射汚染金属廃棄物の除
染システムを提供することにある。

［発明の構成］ （問題点を解決するための手段） すなわち、本発明の放射性廃棄物の除染システムは、
受入れた放射性汚染金属廃棄物に対し前除染を実施した
後、廃棄物のリンスを行い、廃棄物の放射能レベルを測
定し、前除染済廃棄物の放射能レベルが所定のレベルま
で除染できた廃棄物と除染できなかった廃棄物とに測定
・弁別するとともに、測定により所定のレベルまで除染
できなかったと判断された廃棄物についてはさらにその
形状により弁別して、形状の単純な放射性汚染廃棄物に
対して電解研磨除染法を用いて、形状の複雑な放射性汚
染廃棄物に対しては酸化還元除染法に用いて本除染を実
施し、この本除染で使用した除染液を再生系で電解法に
より浄化再生することを特徴とする。

この除染システムにおいては、前除染には好ましくは
流動研磨除染法を使用する。また、本除染において形状
の複雑な放射性汚染廃棄物に対して好適な酸化還元除染
法としては、強酸液中に強酸化剤を含む除染液にて汚染
表面層を溶解除去するものが挙げられる。

（作用） このように構成された除染システムにおいては、受入
れた放射性汚染金属廃棄物はまず前除染にて、廃棄物表
面に付着しているクラッド（Co−60等）等の酸化物被膜
が剥離され除染液側に除去される。前除染が終わった廃
棄物はリンス槽で洗浄され、廃棄物の放射能レベルが測
定される。前除染にて所定の放射能レベルまで除染でき
なかった、放射能が結晶粒界に沿って母材内部まで浸透
しているような放射性汚染金属廃棄物については、さら
にその形状により単純形状と複雑形状に弁別され、それ
ぞれ単純形状に対しては電解研磨除染法、複雑形状に対
しては酸化還元除染法により本除染を行うことにより、
廃棄物の表面層がほぼ均一に溶解され除去される。ま
た、本除染に使用した除染液は再生系で電解法により浄
化再生され、本除染に再利用される。これにより、除染
廃液の発生量を大幅に低減することができる。

（実施例） 以下、本発明の実施例を第１図から第３図を参照しな
がら説明する。

第１図は本発明の第１の実施例を示したもので、図中
符号１は放射性汚染金属廃棄物を受けとる廃棄物の受入
れ部、符号２は受入れた廃棄物に対しまず実施される前
除染で、この前除染には、機械的な除染方法の一つであ
る流動研磨除染が使用される。３は、前除染後の廃棄物
を洗浄するためのリンス槽、４はリンス後の廃棄物の放
射能レベルを測定してその結果を基に廃棄物を所定の箇
所へ弁別する測定・弁別系４である。５は本除染部で、
本除染部には廃棄物の形状が板、配管等のような単純形
状ものを除染するための本除染６の廃棄物の形状がバル
ブ、ポンプ等のような複雑形状のものを除染する本除染
７から構成されている。廃棄物が配管等のような単純形
状ものを除染する本除染６には、電気化学除染法の一つ
である電解除染が使用される。また、廃棄物がバルブ、
ポンプ等のような複雑形状のものを除染する本除染７に
は、強力化学除染法の一つである酸化還元除染法が使用
される。８は本除染後の廃棄物を洗浄するためのリンス
槽、９はリンス後の廃棄物の放射能レベルを測定して廃
棄物を所定の箇所へ弁別する測定・弁別系である。10は
本除染に使用される除染液を浄化し再生するための再生
系である。上記構成を有するシステムにおいて、解体現
場から輸送容器等に収納されて搬入されてきた放射性汚
染金属廃棄物（図示せず）は廃棄物の受入れ１により受
入れられた後、廃棄物は容器から取出され、前除染２に
かけられる。前除染２は、容易な構成でしかも廃棄物表
面に付着するクラッド（Co−60）等を除去するのに適し
た、機械的な除染方法の一つである流動研磨除染が適用
される。ここで放射性汚染金属廃棄物表面に研磨剤を含
んだ流体（例えば水）が高圧下において吹付けられ、廃
棄物表面に付着したクラッド等の酸化被膜は研磨剤を含
んだ流体のアタックにより機械的に剥離され、剥離され
たクラッドは流体とともに除去される。前除染２から取
出された廃棄物はリンス槽３に移され、ここで廃棄物に
残った除染剤、クラッド等はリンス剤によりきれいに洗
浄除去され、乾燥される。

リンス槽３から取出された廃棄物は、測定・弁別系４
により廃棄物の放射能レベルが測定され、測定結果を基
に所定の放射能レベル（例えば、一般廃棄物と同等に取
扱えるバックグラウンドレベル）まで除染できた廃棄物
11と所定レベルまで除染できなかった廃棄物とに弁別さ
れる。測定系は、例えば電離箱、Ge検出器等の放射能レ
ベルを検出・測定可能な検出器から構成される。弁別装
置はクレーン、コンベヤ、ハンドリングロボット等が使
用でき、廃棄物の形状を把握する手段としては、ITV等
を弁別系に装着させれば容易に行うことができる。弁別
は、測定系の測定結果および廃棄物形状認識結果をフィ
ードバックし所定の箇所に廃棄物は弁別される。

放射能レベルの測定の結果、所定の放射能レベルまで
除染された廃棄物は再利用等にまわし資源の有効活用を
実施することが可能である。また、前除染２にて所定の
放射能レベルまで除染できなかった廃棄物は、その廃棄
物形状により単純形状廃棄物を除染する本除染６または
複雑形状廃棄物を除染する本除染７に形状弁別される。
例えば、除染対象廃棄物が板、配管等のような単純形状
ものは単純形状を除染する電解研磨除染６に弁別され
る。電解研磨除染は、電解液（リン酸等）中で廃棄物を
陽極として浸せきし、結晶粒界に沿って母材表面層内部
まで浸透している放射性汚染廃棄物の表面層を溶出さ
せ、汚染部分の表面層を除去する方法である。本除染法
の除染時間は他の方法に比べ短時間とすぐれているが、
除染可能な範囲が電極に接する両側のみであるため複雑
な形状の廃棄物には不向きである。従って、種々の形状
の廃棄物が混在した状態で本除染を適用すると単純形状
のものについては徹底的に除染できるものの、複雑形状
のものについては除染できない部分が残るため除染にむ
らが生じる。本発明では本除染の前行程に廃棄物の形状
弁別を実施することにより電解研磨除染側の除染対象物
を単純形状のみに限定することができ電解研磨除染法の
欠点を解決できるとともに、確実にしかも短時間で単純
形状廃棄物を均一に除染を行うことが可能となった。本
発明により、電解研磨除染の除染性能として、安定した
高い除染係数（DF）10⁴以上が得られる。

また、除染対象廃棄物がバルブ、ポンプ等のような複
雑形状のものは測定・弁別系４により複雑形状の廃棄物
を除染する酸化還元除染７側に弁別さる。酸化還元除染
（レドックス反応を利用したもの）７は電解除染法に比
べると除染時間は多少かかるが、レドックス除染液に接
液する廃棄物面は均一に除染できるため、複雑形状の廃
棄物に対して全体を均一に除染することが可能である。
すなわち、放射能が結晶粒界に沿って母材表面層内部ま
で浸透しているような放射性汚染廃棄物は、強酸液（例
えば、硝酸溶液）中に含まれる強酸化剤（Ce⁴⁺等）を加
えた除染液にて汚染表面層が溶出され、汚染部分の表面
層が除去される。本酸化還元除染の除染性能としては除
染係数（DF）10⁴以上が得られる。なお本除染６、７に
は、除染液を効率よく浄化、再生するための電解法を用
いた再生系10が装着されており、除染液はつねに浄化・
再生され、長時間使用することができる。そのため、除
染廃液の発生量は大幅に低減させることができる。

本除染が終了した廃棄物は本除染６、７から取出さ
れ、廃棄物に残存する除染剤または溶出クラッドを洗浄
するためリンス槽８に移動される。リンス槽８内で廃棄
物に残った除染剤、クラッド等がリンス液によりきれい
に洗浄除去され、乾燥された後廃棄物は測定・弁別系９
により廃棄物の放射能レベルが測定される。本測定結果
を基に廃棄物が所定の放射能レベル（例えば、一般廃棄
物として取扱えるバックグラウンドレベル）まで除染で
きた廃棄物12と所定のレベルまで除染できなかった廃棄
物とに弁別される。測定系は、例えば電離箱、Ge検出器
等の放射能レベルを検出・測定可能な検出器から構成さ
れる。弁別装置はクレーン、コンベヤ、ハンドリングロ
ボット等が使用でき、廃棄物の形状を把握する手段とし
ては、ITV等を弁別系に装着させれば容易に行うことが
できる。弁別は、測定系の測定結果および廃棄物形状認
識の結果がフィードバックされ所定の箇所へ廃棄物を弁
別する。放射能レベルの測定の結果、所定の放射能レベ
ルまで除染された廃棄物は再利用等にまわし資源の有効
活用を実施することができる。本除染にて所定の放射能
レベルまで除染できなかった廃棄物は、必要に応じ再び
本除染部５に戻され、再度本除染が実施される。

本発明の放射性廃棄物の除染システムにより、第１表
に示す異なる形状のものが混在する廃棄物9600tonを除
染した結果、第２表のような廃棄物とすることができ
た。

第２表から本発明の除染システムを適用することによ
り、放射性廃棄物9600tonを2400tonまで低減させうるこ
とができる（10^-6Ci/tonを放射性／非放射性廃棄物の区
分境界とした場合）。これは、受入れた廃棄物を前除染
し、その後、廃棄物の形状により適用除染方法を選定す
る合理的な除染システムとすることにより初めて達成で
きるものである。また、第１表に示す形状の異なる放射
性廃棄物9600tonを従来の除染方法により実施した場合
と本発明の除染システムで実施した場合との除染時間の
比較を行うと第３表に示す結果となる。

第３表から明らかなように本発明の除染システムでは
従来の除染時間を約３割短縮することができる。

第２図は前除染の後と本除染の後にそれぞれ放射能レ
ベルを測定し、その結果を基に廃棄物を所定の箇所に弁
別する測定・弁別系を、一つの測定・弁別系において併
用し実施する場合の第２の実施例を示したものである。
第１図と同様の機能を有する構成機器について同一の符
号で示してある。放射性汚染廃棄物の除染処理工程は第
１図で説明した実施例と同様のフローである。

次に、第３図は前除染の後と本除染の後に廃棄物に残
存する除染剤またはクラッド等を洗浄することを目的に
実施するリンスと廃棄物を所定の箇所に弁別する測定・
弁別系を各々一つのもので併用する場合の第３の実施例
を示したものである。第２図と同様、第１図を同様の構
成機器については同一の符号で示してある。放射性汚染
廃棄物の除染処理工程は第１図で説明した実施例と同様
のフローである。

また、図示しないが前除染の後と本除染を後にそれぞ
れ実施するリンスおよび前除染後と本洗浄し除去するこ
とを目的に実施するリンスについて、一つのリンス槽で
前除染後の廃棄物と本除染後の廃棄物の洗浄に併用する
場合の考えられる。

なお、本発明は第１図から第３図の実施例に限定され
るものではなく、例えば前除染、本除染の電解除染槽お
よび酸化還元除染槽、測定・弁別系、リンス槽はそれぞ
れ１基だけである必要はなく複数個設置してもよい。そ
れによって、さらに除染時間を短縮する効果を得ること
ができるとともにさらに多量の廃棄物の除染が可能とな
る。

以上本実施例によると以下のような効果を奏する。

まず、放射能が母材内部へ浸透していない汚染程度の
軽い放射性汚染金属廃棄物については前処理除染にて除
染できる。

放射能が結晶粒界に沿って母材内部まで浸透している
汚染の強固な廃棄物についても、本除染にて徹底除染す
ることができる。

さらに、本除染に廃棄物の形状（単純形状と複雑形
状）により適用する除染方法を選択することにより、そ
れぞれの廃棄物を効率的にしかも確実に除染することが
可能である。

本除染に除染廃液の再生系を装着させることにより除
染液の浄化、再生が可能となり、除染廃液の発生量を少
なくすることができる。

放射性廃棄物の発生量を大幅に低減できるため、廃棄
物の貯蔵施設規模を小さくすることが可能である。

［発明の効果］ 本発明による放射性廃棄物の除染システムによれば、
原子力発電施設の保守、改良等や原子力発電施設の廃止
措置に伴い短期間に多量に発生し、形状が極めて多種多
様である等の特徴を有する放射性汚染廃棄物に対し、効
率的にしかも徹底除染することができる。その結果、放
射性廃棄物の発生量を大幅に低減できるため廃棄物の貯
蔵もしくは処分費用を大幅に低減できるとともに、作業
員の被曝低減に大きく寄与することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図から第３図は本発明に係る放射性廃棄物の除染シ
ステムのそれぞれの実施例を示す工程図である。 １……廃棄物の受入れ部 ２……前除染 ３……リンス槽 ４……測定・弁別系 ５……本除染部 ６……電解研磨除染 ７……酸化還元除染 ８……リンス槽 ９……測定・弁別系 10……再生系 11、12……所定レベル以下廃棄物

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】受入れた放射性汚染金属廃棄物に対し前除
   染を実施した後、廃棄物のリンスを行い、廃棄物の放射
   能レベルを測定し、前除染済廃棄物の放射能レベルが所
   定のレベルまで除染できた廃棄物と除染できなかった廃
   棄物とに測定・弁別するとともに、測定により所定のレ
   ベルまで除染できなかったと判断された廃棄物について
   はさらにその形状により弁別して、形状の単純な放射性
   汚染廃棄物に対して電解研磨除染法を用いて、形状の複
   雑な放射性汚染廃棄物に対しては酸化還元除染法を用い
   て本除染を実施し、この本除染で使用した除染液を再生
   系で電解法により浄化再生することを特徴とする放射性
   廃棄物の除染システム。
2. 【請求項２】前記前除染には流動研磨除染法を使用する
   ことを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の放射性廃
   棄物の除染システム。