JP2645377B2 - 信号分離方法及びこの信号分離方法で分離した信号の再現データを収納した記憶素子と、この記憶素子を用いた電子楽器 - Google Patents

信号分離方法及びこの信号分離方法で分離した信号の再現データを収納した記憶素子と、この記憶素子を用いた電子楽器

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JP2645377B2
JP2645377B2 JP63019261A JP1926188A JP2645377B2 JP 2645377 B2 JP2645377 B2 JP 2645377B2 JP 63019261 A JP63019261 A JP 63019261A JP 1926188 A JP1926188 A JP 1926188A JP 2645377 B2 JP2645377 B2 JP 2645377B2
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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この発明は電子楽器の音質を改善することに利用する
ことができる信号抽出方法及びこの信号抽出方法で取出
した信号のデータを記憶した記憶素子と、この記憶素子
を利用した電子楽器に関する。
「従来の技術」 ピアノ、ヴァイオリン、ギター、その他管楽器、打楽
器等の各種の自然楽器に対して、これら自然楽器の音を
擬似的に発生させる楽器を電子楽器と呼んでいる。
電子楽器の分野では限りなく自然楽器に近い音を発生
させることが究極の課題とされる。
電子楽器の音を自然楽器の音に限りなく近ずけるには
自然楽器の音に含まれる雑音成分をいかに再現するかに
掛っている。
つまりこの雑音成分とは例えばピアノ音の場合ハンマ
ーが弦を打つとき生じるカンという音、ウァイオリンの
弦を弓が擦り始めるときのギッという音等である。一方
音が持続している部分でもノイズがその楽器の顕著な特
徴となっているものもある。例えば尺八の呼気ノイズ
や、スネア・ドラムのシャーッという響線の音等がこの
例に当る。
またノイズではないがピアノにおいてダンパを離した
状態で打鍵した際に他の弦が共鳴するワーンという音も
ピアノ音の特徴である。
従来これら雑音を電子楽器の音に付加する試みがなさ
れている。その一つとして自然楽器から出された音を電
気信号に変換し、その電気信号をDA変換し、ROM又は電
池でバックアップされたRAM等の記憶素子に記憶し、こ
の記憶素子鍵盤のキイーの位置に対応した速度で読出す
ことによってキィーの位置に対応した音高を持つ音の信
号を得ることができる。この音の信号は元の楽器の音に
対応した波形を有し、然もその楽器固有の雑音成分も含
まれている。従ってこの点では元の楽器の音を忠実に再
現できるように見える。
然し乍ら記憶素子に記憶した楽器音の波形データは或
る一つの音高を持つ波形データである。この一つの音高
を持つ波形データを電子楽器では読出速度を変えて読出
すことによって再現する音の音高を選択できるようにし
ている。
ところで例えばピアノ音の頭部に付く衝撃音の部分
(雑音成分)の周波数も読出速度に応じて変化してしま
うため書込時に使った音高から離れるに従ってピアノら
しくない音になってしまう欠点がある。
このため従来より自然楽器の音の信号から雑音成分を
摘出し、これをAD変換して記憶素子に記憶させると共
に、例えば電圧制御発振器によって構成した楽音信号発
生器から所望の音高を持つ楽音信号を発生させ、この楽
音信号の発生と同期して記憶器に記憶した雑音データを
読出し、楽音信号に付加する方法が提案されている。
このようにする事によって雑音データは楽音の音高に
関係なく一定の速度で読出され元の雑音に近いかたちで
楽音信号に合成することができる。
このために楽音波形データと、その楽器が持つ雑音波
形データを分離して取出す技術が要求される。
従来はこの信号分離方法として例えば第9図に点線で
示すような特性を持つノッチフィルタを用い、このノッ
チフィルタの特性を利用して楽音波形データからコンポ
ーネント成分ω123,…を除去して雑音成分を読出
すと共に、この雑音成分を元信号から除去してコンポー
ネント成分ω123,…を求め、雑音波形データと、
楽音波形データを別々の記憶器に書込んでいる。
「発明が解決しようとする問題点」 従来の雑音成分の分離方法によれば、分離した雑音成
分が本来の雑音及び楽音に近似していない欠点がある。
つまり自然楽器の音の信号を急峻な減衰特性を持つノ
ッチフィルタに通し、このフィルタによって音の主成分
となるコンポーネント成分を除去して雑音成分を分離す
る方法を採った場合、急峻な狭帯域特性を持つフィルタ
は応答性が悪い。特に減衰特性を急峻にして通過帯域幅
を狭くすればする程応答性が悪くなる。
応答性の悪い回路を通じて取出した信号は立上がりが
遅いため例えばピアノのハンマが弦を打つとき生じるカ
ンというような雑音を忠実に再現することができる。
このためフィルタの減衰特性を緩くすると、雑音成分
にコンポーネント成分が混入して来るため益々悪い結果
となる。
この発明の目的は自然楽器音が持つ雑音成分を元信号
に近い形で取出すことができる信号分離方法を提案し、
合せてこの分離された信号を記憶した雑音データ記憶素
子及び楽音波形データ記憶素子と、この二つの記憶素子
を利用して楽音信号に雑音信号を再現して重畳すること
のできる電子楽器を提案する。
「課題を解決するための手段」 この出願の第1発明では、 自然楽器音が持つコンポーネント成分をフーリエ変換
して各コンポーネント成分について実数部の偶対称成分
と虚数部の奇対称成分を求め、これら実数部の偶対称成
分と虚数部の奇対称成分をそれぞれ演算によって消去
し、残された成分をフーリエ逆変換して雑音成分として
取出すようにした信号分離方法を提案する。
この出願の第2発明では、 第1発明で提案した信号分離方法によって分離した雑
音成分を元の信号から減算し、残された信号を自然楽器
音のコンポーネント成分として取出すようにした信号分
離方法を提案する。
この出願の第3の発明では、 第1の発明で提案した信号分離方法で取出した雑音成
分をDA変換してROM等に書込んで構成した雑音データ記
憶素子を提案する。
更にこの出願の第4発明では、 第2発明で提案した信号分離方法によって取出した楽
音波形データを記憶素子に記憶した楽音データ記憶素子
を提案する。
この出願の第5発明では、 第3の発明及び第4の発明で提案した記憶素子を利用
して構成した雑音発生手段と楽音信号を発生する楽音信
号発生手段と、 雑音発生手段で発生させた雑音と楽音発生手段で発生
させた楽音信号を重畳させる信号合成回路とを具備した
電子楽器を提案する。
「作 用」 この出願の第1の発明によれば自然楽器音が持つコン
ポーネント成分(倍音または部分音)は正弦波にエンベ
ロープがAM変調されたものであり、その側波帯はキャリ
ア周波数に関して上下に共役対称となる。
この共役対称となる性質を利用して共役対称となる部
分を消去し、残った成分を雑音として取出す。
コンポーネント成分の側波帯の実数部及び虚数部の共
役対称となる成分を消去する処理はコンピュータ等を利
用して演算処理して実行される。
コンポーネント成分が除去されて得られた雑音成分は
コンピュータからディジタル信号の形態で出力される。
従って第1の発明によれば演算処理によってコンポー
ネント成分を除去するから、残された雑音成分は本来の
雑音成分に近い波形を持つ信号として得ることができ
る。
この出願の第2の発明では雑音成分として取出した信
号を元の信号から減算する。このようにすれば元の信号
に含まれるコンポーネント成分、つまり元の信号に含ま
れる楽音信号だけを分離して取出すことができる。
このようにして取出した楽音信号は狭帯域フィルタを
通っていないから波形は元波形のまま残ることができ、
楽器の音質を向上させることができる。
この出願の第3及び第4の発明は雑音データ及びディ
ジタル信号を例えば半導体ROM等に書込み、雑音データ
を収納した雑音データ記憶素子と、楽音データを記憶し
た楽音データ記憶素子を得る。
楽音データを適当な読出速度で読出すことによって音
声が異なる楽音信号を得ることができる。
従ってこの出願の第5の発明では電子楽器において楽
音信号の発生と同期して雑音データを一定の読出速度で
例えばピアノのハンマが弦を打つときの一定の長さを持
つ雑音信号を再現することができる。よってこの雑音信
号を楽音信号に重畳することによって元の信号に近い波
形を持つ信号を得ることができ、自然楽器の音に近い楽
器を再現することができる。
「実施例」 第1図にこの出願の第1発明で提案する信号分離方法
を実行するための装置の概要を示す。
例えばピアノ等の自然楽器1から標準的な音高を持つ
音2を発生させる。音2はマイクロホン3で電気信号に
変換され、AD変換器4でディジタル信号に変換される。
AD変換器4から出力されるディジタル信号はコンピュ
ータ5に入力され、コンピュータ5において自然楽器1
が放った音2からこの音を構成するコンポーネント成分
ω123,…を除去して雑音成分を求める信号分離方
法を実行する。
コンピュータ5の演算処理によってコンポーネント成
分ω123,…が除去され、その残されたデータをピ
アノ1が持つ独特の雑音成分として、例えば半導体ROM
又は電池でバックアップされたRAMカードのような記憶
素子6Aに書込む。また元の信号から雑音成分を減算して
楽音データを取出し、この楽音データを記憶素子6Bに書
込む。
この出願の第1発明ではコンピュータ5において実行
する信号分離方法を提案するものである。
第2図にコンピュータ5で実行するプログラムの概要
を示す。プログラムはフーリエ変換プログラム101と、
フーリエ変換された周波数スペクトラム成分の正の周波
数成分を取出し、この正の周波数成分に−θの位相回
転を与えるプログラム102と、実数部除去演算プログラ
ム103と、虚数部除去演算プログラム104と、この二つの
演算プログラム103と104によってコンポーネント成分が
除去されて残された雑音成分に+θの位相回転を与
え、位相を元に戻すプログラム105と、正の周波数成分
の復素共役である負の周波数成分を求めて正の周波数成
分と合成するプログラム106と、正と負の周波数成分が
揃った状態の信号をフーリエ逆変換するプログラム107
と、フーリエ逆変換によって実波形データに戻された信
号を雑音信号とし、プログラム108とこれら雑音データ
と楽音データ9を出力するプログラム107とによって構
成される。
フーリエ変換プログラム101は周知のフーリエ変換プ
ログラムを利用することができる。
ここで、楽器音波形X(t)を次のようにモデル化す
る。尚ここでは説明を簡素化するためにビブラートなど
の周波数変動の無い楽器音について考える。
a1(t):第i正弦波の振幅エンベロープ ωi:第i正弦波の角周波数ω123,… θi:第i正弦波の位相 n(t):求めた雑音成分 X(t)のフーリエ変換をX(ω)、第i正弦波の振
幅エンベロープai(t)のフーリエ変換をAi(ω)、雑
音成分n(t)のフーリエ変換をN(ω)とする。
cos(ωit+θ)のフーリエ変換は 1/2δ(ω+ω)e−jθi+1/2δ(ω−ω)e
+jθi であるから、 ここにF〔 〕はフーリエ変換。※は畳み込み演算
子。δ( )はディラックのデルタ関数。
上式はデルタ関数の性質により と書ける。A(ω+ω)e−jθiは負の周波数成分
A(ω−ω)e+jθiは正の周波数成分である。
一部の打楽器等を除けば、自然楽器の各コンポーネン
ト成分の振幅エンベロープは比較的滑らかであり、その
フーリエ変換がそれほど広い周波数帯域を持つことはあ
まりない。そこで隣接するi及びi+1に対して、A
(ω−ω)の周波数帯域と、Ai+1(ω−ωi+1)の周
波数帯域は重ならないものと仮定して説明を続ける。
また、実数値関数のフーリエ変換は正負の周波数で復
素共役であるから、以後は簡単のため正の周波数領域の
みを考えることにする。
Ai(ω)の周波数帯域幅をΔiとし、X(ω)のω
−Δi≦ω≦ω+Δiの周波数範囲を考える。この範
囲に限ってみれば、 X(ω)=1/2Ai(ω−ω)e+jθi+N(ω) である。
一般に楽器音のコンポーネント成分は雑音成分N
(ω)よりはるかに強いので、スペクトラムのピーク角
周波数をω、その位相をθと見なして差し支えな
い。
この帯域内のX(ω)にプログラム102において−θ
の位相回転を与える。この位相回転操作は各コンポー
ネント成分の位相を実軸に合致させこれによって実成分
の算出を簡素化し、プログラム103と104における演算を
簡素に行なうようにするために行なわれる。
−θの位相回転を与えたものをY(ω)とすると、 Y(ω)=X(ω)・e−jθi=1/2Ai(ω−ω) +N(ω)・e−jθi となる。
ai(t)は実数値関係であったから、Ai(ω−ω
はωに関して上下の周波数で複素共役であるという性
質を持っている。
従って、このY(ω)からω=ωに関して共役対称
になっている成分を消去すればコンポーネント成分A
i(ω−ω)を除去することができる。
プログラム103と104の概要を第3図に示す。プログラ
ム103のステップでコンポーネント成分のキャリア周
波数ωを中心としてその上下+φと−φ離れた周波数
ω+φとω−φとにおける実成分YRLとYRHを特定す
る。
ステップでは実成分YRLとYRHが偶関数とみなせるか
どうかを判定する。つまり実成分YRLとYRHの符号が合致
しているか否かを判定する。実成分YRLとYRHの符号が合
致していれば偶対称とみなし、ステップに進む。異符
号であれば虚数部除去演算プログラム104にジャンプす
る。
ステップではA式によって除去量YR removeを決定
する。A式では側波帯成分YRLとYRHの何れか一方の絶対
値が小さい方を除去量として採用することを決定する。
Sign(YRL)は実成分YRLの符号を示している。ここでは
偶対称であるからYRHの符号を使っていてもよい。
除去量YR removeが決定されるとB式及びC式で実成
分Y(ω−φ)とY(ω+φ)からYR removeを除
去する演算を実行する。この演算によって第4図Bに示
すように実数部のコンポーネント成分Re〔Y(ω)〕が
ほぼ除去される。
実数部の除去演算処理が終了すると虚数部除去演算プ
ログラム104に進む。虚数部除去演算プログラム104のス
テップでは除去すべき虚数部の実成分YILとYIHを特定
する。
ステップでは実成分YILとYIHが同符号であるか否か
を判定する。同符号であれば虚部が奇対称になっていな
いからステップにジャンプする。実成分YILとYIHが第
5図に示すように異符号であれば奇対称となっており、
ステップに進む。ステップではA式によってYILとY
IHの絶対値が小さい方のスペクトラムを選択し、符号Si
gn(YIL)を乗じて除去量YI removoを決定する。
除去量YI removoが決まるとB式とC式を実行し、虚
数部のスペクトラムからコンポーネント成分を除去す
る。
従ってステップを終了した時点で一つのコンポーネ
ント成分の実数部と虚数部から実成分が除去される。ス
テップではコンポーネント成分ω123,…の全て
の成分について除去の処理が実行されたかを判定する。
全てのコンポーネント成分について除去の処理が実行さ
れていれば終了となる。除去の処理が残っている場合は
実数部除去演算プログラム103に戻り、他のコンポーネ
ント成分ω又はω3,…を除去する演算を実行する。
尚実数部除去演算プログラム103及び虚数部除去演算
プログラム104において除去量YRremovoをそれぞれスペ
クトラムYRLとYRH及びYILとYIHのそれぞれの絶対値が小
さい方の値を選択するようにしたから、実成分YRLとYRH
及びYILとYIHに雑音成分が重畳されていたとしても、雑
音成分はある程度除去されずに残される利点が得られ
る。
またB式及びC式を実行することによって雑音成分N
(ω)もωに関して共役対称な成分が失なわれてしま
うが、N(ω)がω−Δi≦ω≦ω+Δiで位相が
ランダムであるとすれば失われるパワーはそれ程大きく
はない。
プログラム103と104を終了するとコンピュータ5はプ
ログラム105を実行する。プログラム105では算出された
雑音成分(正の周波数成分のみ)に+θの位相回転を
与え、位相を元に戻す。
位相が元に戻されるとプログラム106で正の周波数成
分を基に共役対称である負の周波数成分を算出して正の
周波数成分と合成し、プログラム107でフーリエ変換
し、波形データに戻す。
雑音成分が求められると、コンピュータ5はプログラ
ム108で元の信号から雑音成分を減算し楽音成分を算出
する。楽音成分が算出されるとコンピュータ5はプログ
ラム109で雑音データと楽音データを出力する。
この雑音データ及び楽音データはディジタル信号であ
り、DA変換すればアナログ波形として再現することがで
きる。
第6図Aにピアノ音の波形X(t)を、また同図Bに
そのコンポーネント成分 の波形、同図Cに雑音成分n(t)の波形を示す。雑音
成分n(t)の前半t0〜t1の間はハンマが弦を打ったと
きの打撃音の部分の雑音波形、t1以後は他の弦が共鳴し
て生じた共鳴音成分を示している。
コンピュータ5から出力されるディジタルの雑音デー
タ及び楽音データは半導体ROM域は電池でバックアップ
されたRAM等の記憶素子6Aと6Bに書込まれる。
尚上述ではピアノの音から、その音に含まれる雑音成
分を抽出することを例示して説明したが、実際にはピア
ノ、ギター、トランペット等の各楽器別にその音に含ま
れる雑音成分及び楽音成分を求め、各楽器毎に雑音デー
タと楽音データを記憶素子6Aと6Bに収納する。従って記
憶素子6A及び6Bは各楽器別に記憶領域を具備し、指定さ
れた記憶領域に各楽器の持つ雑音データ及び楽音データ
を記憶する。
第7図及び第8図はこの出願の第5の発明の実施例を
示す。つまり雑音データが書き込まれた記憶素子と楽音
データが書込まれた記憶素子6Bを用いた電子楽器の実施
例を示す。
第7図の例では鍵盤7の何れか一つのキィーを押下操
作すると、そのキィーに割当てられた値を持つ電圧が出
力され、この電圧信号が電圧制御発振器8に与えられて
電圧制御発振器8から押下操作したキィーに対応した周
波数のクロックパルスを出力させる。
電圧制御発振器8から出力されるクロックパルスはア
ドレスカウンタ9に与えられ、アドレスカウンタ9から
クロックパルスの周波数に対応した速度で+1ずつ歩進
するアドレス信号を発生させ、このアドレス信号を楽音
データを収納した記憶素子6Bに与え、クロックパルスの
周波数に対応した速度で記憶素子6Bを読出す。
従って記憶器6Bから楽音データが押下されたキィーに
対応した速度で読出される。この読出された楽音データ
はディジタル合成回路13の一方の入力端子に入力する。
一方雑音データを収納した記憶素子6Aに対しても、電
圧制御発振器11と、アドレスカウンタ12が設けられる。
電圧制御発振器11の制御電圧入力端子は切替スイッチ10
に接続される。切替スイッチ10は一方の入力端子10Aに
鍵盤7から出力される電圧を適当に分圧して取出す分圧
回路15に接続し、他方の入力端子10Bを一定の電圧を発
生する定電圧源16に接続する。
切替スイッチ10を他方の入力端子10Bに転換し、電圧
制御発振器11に一定の電圧を与えると、電圧制御発振器
11は一定の周波数で発振する。この発振出力として得ら
れるクロックパルスをアドレスカウンタ12に与えるよう
に構成し、アドレスカウンタ12から出力されるアドレス
信号によって雑音データを収納した記憶素子6Aを読出
す。
従ってこの場合は記憶素子6Aは一定の速度で読出さ
れ、例えばピアノの雑音データを出力し、ピアノの楽音
データにピアノの雑音成分を付加する。尚鍵盤7からキ
ィーが押下操作される毎にアドレスカウンタ9と12にリ
セット信号を与え、アドレスカウンタ9と12を初期化し
てから動作を始めるようにしている。
一方切替スイッチ10を入力端子10A側に転換すると、
電圧制御発振器11には分圧回路15から鍵盤7で発生する
電圧を任意の比率で分圧した電圧信号が与えられ、キィ
ーの位置に対応して記憶素子6Aの読出速度が変化され
る。このとき分圧回路15の分圧比を適宜に設定すること
によって楽音データの読出速度と雑音データの読出速度
の比を自由に変えることができ、演奏者の好みに応じて
自由に設定することができる。
記憶素子6Aから読出された雑音データはディジタル合
成回路13の他方の入力端子に入力され、楽音データと合
成される。楽音データと雑音データが合成された合成出
力はDA変換器18でAD変換し、増幅器19で増幅されてスピ
ーカ20に与えられ音として放音される。
尚21は楽器設定器を示す。この設定器21によって記憶
素子6Aと6Bの読出領域を切替て読出す楽器のデータの種
類を切替る。
第8図の例では鍵盤7からキィーの位置を表わすディ
ジタル符号を出力させる。このディジタル符号を例えば
ROMによって構成したキィー番号をアドレス加算値に変
換する変換器22に与え、この変換器22からアドレスの加
算値を出力させる。アドレス加算値は累算器23と24に与
えられる。累算器23と24はクロックCPが与えられる毎に
アドレス加算値を累算し、アドレス加算値ずつ増加する
アドレス信号を出力する。このアドレス信号を記憶素子
6Aと6Bに与え、記憶素子6Aと6Bを読出す。
従って例えばアドレス加算値が+0.1の場合はクロッ
クCPが与えられる毎に累算値が+0.1ずつ増加し、アド
レスはクロックCPが10個入力される毎に+1ずつ歩進す
る。これに対しアドレス加算値が例えば+1になると累
算値は+1ずつ増加し、アドレスはクロックCPが1個入
力される毎に+1ずつ歩進する。従って前者の場合より
10倍の速度で記憶素子6Aと6Bを読出すことができ、この
読出速度の変化で再現される楽音信号と雑音信号の周波
数が変化され、キィーに対応した周波数の信号を再現す
ることができる。
尚この実施例でも雑音発生器に切替スイッチ10を設
け、ピアノ等の雑音を発生させる場合は切替スイッチ10
を入力端子10B側に倒し、設定器26から一定のディジタ
ル値を与え、累算器24の一定の速度で歩進するアドレス
信号を発生させる。
これに対しヴァイオリン等の楽器の波形データを読出
す場合は切替スイッチ10を入力端子10A側に切替る。こ
の切替によって変換器22と累算器24の間に乗算器25が挿
入される。乗算器25には設定器27から0以上の数値を有
するディジタル符号を与え変換器22から出力されるアド
レス加算値に乗算する。この乗算値を適宜変更すること
によって雑音データの読出速度と楽音データの読出速度
の比を変更することができる。
尚上述の実施例においてはコンポーネント成分を除去
する演算を行う場合にフーリエ変換された周波数スペク
トラム成分の正の周波数成分に−θの位相回転を与え
て演算処理を行った場合を説明したが、必ずしもその必
要は無く多少演算が繁雑になるが位相回転を与えないで
演算する事もできる。
「発明の効果」 以上説明したようにこの出願の第1の発明によれば楽
音信号の中のコンポーネント成分が実数部では偶対称で
虚数部は奇対称となる共役対称となっているから、この
共役対称を利用してコンポーネント成分を演算によって
消去するから、元の信号の波形を大きく変えずに雑音成
分を取出すことができる。
また除去の際に消去する量を上側波帯成分と下側波帯
成分を同量ずつ減算して消去する方法を採ったから、雑
音の誤除去率を小さくすることができる。よってこの点
でも元の信号に含まれる雑音成分を忠実に取出すことが
できる。
また雑音成分を忠実に取出せることから、第2の発明
でも元の信号に忠実な楽音データを取出すことができ
る。
更にこの出願の第3及び第4の発明によれば元の信号
に忠実な雑音データと楽音データを記憶素子に記憶させ
たから、この記憶素子を利用することによって楽音信号
と雑音信号を別々に発生させる電子楽器を提供すること
ができる。
よってこの出願の第5の発明によれば楽音データの読
出速度に関係なく、例えば常に一定の読出速度で雑音デ
ータを読出して楽音データに付加することができるか
ら、例えばピアノのハンマが弦を打つとき生じる雑音を
自然楽器の雑音に近い波形で再現することができる。
また雑音データの読出速度を楽音データの読出速度に
対して変化させることができるように構成することがで
きるから、演奏者の好みに応じて雑音データの読出速度
を設定することができ、自由度の高い電子楽器を提供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明による信号分離方法を実行する装置の
概要を説明するためのブロック図、第2図はこの発明に
よる信号分離方法を実行するプログラムの概要を説明す
るためのフローチャート、第3図はこの発明の信号分離
方法の要部となる部分のプログラムを説明するためのフ
ローチャート、第4図は実数部の偶対称成分とその消去
方法を説明するためのグラフ、第5図は虚数部の奇対称
成分とその消去方法を説明するためのグラフ、第6図は
自然楽器の音の波形と、その音の波形に含まれるコンポ
ーネント成分の波形及び雑音波形を説明するための波形
図、第7図及び第8図はこの出願の第5の発明で提案し
た電子楽器の実施例を説明するためのブロック図、第9
図は従来の技術を説明するためのグラフを示す。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】自然楽器音が放った音の信号をフーリエ変
    換して各コンポ−ネント成分について実数部の偶対称成
    分と虚数部の奇対称成分を求め、これら実数部の偶対称
    成分と虚数部の奇対称成分をそれぞれ演算によって消去
    し、残された成分をフーリエ逆変換して雑音成分として
    取出すようにした信号分離方法。
  2. 【請求項2】自然楽器音が放った音の信号をフーリエ変
    換して各コンポーネント成分について実数部の偶対称成
    分と虚数部の奇対称成分を求め、これら実数部の偶対称
    成分と虚数部の奇対称成分をそれぞれ演算によって消去
    し、残された成分をフーリエ逆変換して雑音成分として
    取出すと共に、この雑音成分を元の信号成分から減算
    し、残された信号成分を自然楽器音のコンポーネント成
    分として取り出すようにした信号分離方法。
  3. 【請求項3】自然楽器音が放った音の信号をフーリエ変
    換して各コンポーネント成分について実数部の偶対称成
    分の虚数部の奇対称成分を求め、これら実数部の偶対称
    成分と虚数部の奇対称成分をそれぞれ演算によって消去
    し、残された成分をフーリエ逆変換して雑音成分として
    取出し、この雑音成分を記憶した雑音データ記憶素子。
  4. 【請求項4】自然楽器音が放った音の信号をフーリエ変
    換して各コンポーネント成分について実数部の偶対称成
    分と虚数部の奇対称成分を求め、これら実数部の偶対称
    成分と虚数部の奇対称成分をそれぞれ演算によって消去
    し、残された成分をフーリエ逆変換して雑音成分として
    取出し、この雑音成分を元の信号成分から減算して自然
    楽器音のコンポーネント成分を取出し、このコンポーネ
    ント成分を記憶した楽音データ記憶素子。
  5. 【請求項5】請求項3及び4項記載の雑音データ記憶素
    子及び楽音データ記憶素子を信号発生源として利用し、
    楽器データ記憶素子から読出して形成した楽音信号に雑
    音データ記憶素子から読出して形成した楽音信号を重畳
    させて出力するように構成した電子楽器。
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