JP2644374B2 - 磁気軸受構造体 - Google Patents

磁気軸受構造体

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の背景 本発明は、広くは磁気軸受構造体の改良に関し、より
詳しくは、半径方向の極性をもつ制御可能な電磁界と軸
線方向の極性をもつ比較的一定の磁界との組合せを利用
して、静止部材に対して安定した方法で回転部材を懸架
する磁気軸受構造体に関する。
電磁軸受は、磁界により有効に浮動すなわち浮揚される
回転軸のような本体を支持するのに極めて有効である。
このようにすれば、回転軸と静止構造体とが摩擦接触す
ることはなく、従って、軸又は軸の回りの本体を比較的
摩擦のない状態で回転させることができる。また、この
構成は、機械的な騒音を生じさせる原因となる機械的摩
擦がなく且つ他の形式の軸受構造体では得られない耐久
性をもつという明らかな長所を有している。更に、摩擦
作用が従来の軸受構造体より小さいため、電磁軸受によ
ればより高速の回転が得られる。
一般に磁気軸受はメインテナンスが殆ど不要であり、
且つ従来の他の軸受では破壊され又は作動不能となる腐
食性流体が存在するような悪環境においても容易に作動
することができる。また、磁気軸受は、宇宙空間のよう
な真空中、又は物理的に接触する軸受を使用しないでポ
ンプロータを支持しなければならないキャンドポンプ中
で移動本体を支持するのに適している。
浮揚ギャップの付勢に使用される従来の電磁石は、必
要な磁界を発生させるのに大量の電力を要するという点
で不充分である。一般に、従来の電磁軸受は、本質的に
効率が良くないと考えられている大形の電磁コイル及び
電子制御回路を必要とする。より優れた安定性及び制御
が得られるようにするため、電磁石と組み合わせて永久
磁石を使用する幾つかの提案がなされている。しかしな
がら、電磁石及び永久磁石の両方を用いる従来の設計
は、空間的見地から効率が悪く且つかなり複雑でもあ
る。
磁気軸受構造体の開発における主要な考察の1つは、
いわゆるエアギャップをなくすことにある。いわゆるエ
アギャップは、電磁石及び永久磁石の磁束経路の一部を
形成して、支持構造体と浮揚構造体との間にブリッジを
構成する。実際には、懸架本体すなわち回転本体を配置
するのに、幾分かのエアギャップはやむをえない。従っ
て、或る程度のエアギャップは避けられないが、エアギ
ャップは絶対最小限まで減らすことが望まれている。
純物理学的見地からすれば、エアギャップは、あらゆ
る形式の磁気構造体の効率を大きく低下させる。エアギ
ャップは、磁束伝達効率の点で、鉄心媒体の約1/2,000
である。従って、非効率的であり、0.1インチ(約2.5m
m)のエアギャップをもつ磁気軸受構造体は、20インチ
(約500mm)の鉄心をもつ磁気軸受よりもずっと効率が
悪いのである。
更に、永久磁石の磁束伝導率の束縛に打ち勝つことも
重要である。永久磁石は、磁束を発生するにも係わら
ず、磁束に対しては非常に劣悪な導体である。入手可能
な最も効率の良い永久磁石は希土類合金磁石である。し
かしながら、そのような永久磁石でも透磁率は非常に小
さく、磁気回路におけるエアギャップと非常に良く似た
挙動をする。希土類合金磁石の透磁率が低いため、永久
磁石を通る電磁界を駆動するには大電力を要し、従って
電気的効率は低くなる。このため、永久磁石を通して電
磁界を伝達することは好ましくない。
従って、半径方向の極性をもつ制御可能な電磁界及び
軸線方向の極性をもつ一定磁界の両方を利用する新規な
電磁軸受構造体であって、軽量で高電力効率が得られ且
つコンパクトで空間的効率の良い電磁軸受構造体が要望
されている。また、浮揚構造体と支持構造体との間のギ
ャップを最小にすることによって装置の磁気効率を最適
化でき、且つ永久磁石を通して磁束を駆動するための超
磁力を電磁コイルが発生する必要のない電磁軸受構造体
に対する要望もある。更に、浮揚構造体を、サーボ制御
回路を用いて所望の位置に維持するのに比較的小形の電
磁コイルを用いることができる電磁軸受構造体も要望さ
れている。そのような新規な軸受構造体は、関連構造体
間に高密度の一定磁束を付与することを目的として電磁
石及び永久磁石を同時に使用すべきであり、且つハウジ
ング内の浮揚軸並びに全体として支持構造体を包囲する
浮揚円筒体を回転できるように磁気軸受構造体の形状を
定めるべきである。本発明はこれらの要望を満たし且つ
他の関連する利点が得られるものである。
発明の要約 本発明は、静止部材に対して懸架すなわち浮揚された
位置(浮揚位置)に回転部材を支持することができる改
良された電磁軸受構造体を提供することにある。概略的
に説明すると、本発明の軸受構造体は、静止部材に関連
しており且つ互いに軸線方向に間隔を隔てた第1及び第
2の手段であって、回転部材のそれぞれの部材を包囲す
る、半径方向の極性をもつ制御可能な電磁界を発生する
第1及び第2の手段を有している。また、本発明の軸受
構造体には、静止部材に関連しており且つ前記第1電磁
界発生手段と第2電磁界発生手段との間に配置された手
段が設けられていて、該手段は軸線方向の極性をもつ磁
界を発生することができる。第1及び第2の電磁界発生
手段及び軸線方向の極性をもつ磁界発生手段からの実質
的に全ての磁束が、回転部材と静止部材との間の対をな
すエアギャップのみを介して半径方向に指向されて、静
止部材に対する回転部材の磁束カップリングを形成す
る。本発明の電磁軸受構造体のこの構成は、半径方向の
極性をもつ制御可能な電磁界と、軸線方向の極性をもつ
比較的一定の磁界とをユニークに組み合わせて、軽量で
高出力効率をもつコンパクトで空間効率の良い装置を構
成する。また、軸線方向の極性をもつ一次磁界を使用し
ているため、回転部材の渦電流及びヒステリシス損が大
幅に低減される。
本発明の電磁軸受構造体の最も基本的な形態において
は、軸線方向の極性をもつ比較的一定の磁界を用いて高
密度の磁束を発生しており、この磁束は、回転部材と静
止部材との間の対をなすエアギャップを通るように半径
方向に指向される。これにより、回転部材を包囲する全
体として均一な磁界が形成され、この磁界は、完全な状
態の下では、静止部材に対して回転部材を理論的に懸架
すなわち浮揚させることができる。そのような完全な状
態が存在することは稀であり、従って静止部材に対する
回転部材のあらゆる変位により、回転部材が引っ張られ
て静止部材の一部と接触する。これは、一定磁界により
創出される「ネガティブスプリング」効果として知られ
ている。
この「ネガティブスプリング」効果を打ち消すため、
本発明では半径方向の極性をもつ制御可能な電磁界を用
いて、回転部材を静止部材に対して最適心出し位置に安
定化させる。
回転部材の位置の変化は、「ポジティブスプリング」
効果(すなわち、高弾性復帰力)を生じさせる活動的な
電磁サーボ制御装置により相殺される。本発明の電磁軸
受構造体は、回転部材の半径方向変位を検出できる位置
に配置されたセンサを有している。本発明のサーボ制御
回路は、電磁界の力を制御することにより、浮揚された
部材のあらゆる変位を補正することができる。この方法
においては、位置センサからの信号は、サーボ制御装置
が回転部材を安定化させて回転部材を最適心出し位置に
維持することを可能にする。
本発明の1つの好ましい形態においては、第1及び第
2の電磁界発生手段が1対の弧状リングを備えている。
該弧状リングは積層構造及び高透磁率を有しており、静
止ハウジングの両端部近くに配置されている。各弧状リ
ングには複数の電磁コイルが周方向に配置されており、
これらの電磁コイルは、回転部材(第1の好ましい形態
においては軸である)から半径方向に間隔を隔てて配置
されている。
軸線方向の極性をもつ磁界を発生する手段は、2つの
弧状リング及び該リングに関連した電磁コイルの間で、
軸から半径方向外方においてハウジングに固定された永
久磁石を備えている。この永久磁石は、軸線方向の極性
を有しており且つ永久磁石から弧状リングまで延びてい
る円筒状の磁極片により弧状リングに対して磁気的にリ
ンクされている。
回転軸が低透磁率の材料で作られている場合には、軸
の周囲のスリーブとして、透磁性アーマチャが設けられ
る。積層構造に作ることができる透磁性のロータがアー
マチャに固定される。このロータは、各弧状リングと全
体的に対面して1対のエアギャップを形成する。永久磁
石及び電磁石により発生される実質的に全ての磁束が、
このエアギャップを通るように指向される。
ハウジングに対する軸の並進移動(直線移動)を磁気
的に防止する手段は、リングとロータとの対向面に設け
られた少なくとも1つの周方向溝を備えている。エアギ
ャップを横切る高密度の磁界により、周方向溝同士が整
合されて、ハウジングに対する軸の並進移動が制御され
る。
弧状リング内に配置される電磁コイルは、所望量の電
磁束を付与できるように、従って軸を包囲する半径方向
に向いた電磁界を制御できるように、サーボ制御回路に
より制御される。本発明による電磁軸受構造体のこの構
成により、永久磁石を通る磁束を駆動する超磁力を要す
ることなく、電磁コイルからの磁束の発生を変化させ
て、軸の最適位置を確保することができる。また、この
方法により、本発明の電磁軸受構造体は高出力効率を維
持することができる。
本発明の第2実施例においては、電磁軸受構造体が、
回転軸に対して非連続面を呈しているリングを使用して
いる。第1実施例及び第2実施例の両方共、軸はハウジ
ング内で回転する。
本発明の第3実施例においては、永久磁石が、軸線方
向の極性をもつ一定磁束の電磁石で置換されている。作
業上の条件により、或る用例においては、永久磁石では
なく電磁石を用いることを要する場合がある。例えば、
電磁石は、多くの永久磁石よりも高温で機能することが
知られている。
もう1つの実施例においては、本発明の電磁軸受構造
体は、回転部材が静止部材を外的に包囲すなわち取り囲
むように構成されている。本願に示す種々の実施例にお
ける原理及び構成は同じであり、全ての実施例が空間的
経済性及び出力効率上の利点を有している。
本発明の他の特徴及び利点は、例えば本発明の原理を
示す添付図面に関連して述べる以下の説明により明らか
になるであろう。
図面の簡単な説明 第1図は、本発明の好ましい実施例による電磁軸受構
造体の一部の斜視図であり、軸受構造体の各端部に隣接
して配置された半径方向の極性をもつ制御可能な電磁コ
イル及びこれらの電磁コイルの間に配置された軸線方向
の極性をもつ永久磁石により発生された磁束経路を例示
的に示すものである。
第2図は、第1図に示した電磁軸受構造体の部分的側
面図であり、電磁コイルに対する永久磁石の関係、及び
回転軸と静止ハウジングとの間の2つのエアギャップ
(電磁コイル及び永久磁石からの実質的に全ての磁束が
このエアギャップを通る)を示すものである。
第3図は、第2図の3−3線に沿う方向から見た部分
断面図である。
第4図は、本発明の電磁軸受構造体の第2実施例の一
部を示す第1図と同様な斜視図である。
第5図は、本発明の電磁軸受構造体の第3実施例につ
いての第1図と同様な部分的斜視図であり、中空円筒状
の回転部材が磁束発生機構用静止ハウジングを全体的に
包囲している状態を示すものである。
第6図は、本発明の電磁軸受構造体に関連して使用さ
れるサーボ制御回路の機能的作動を示す概略的である。
第7図は、第6図に概略的に示したサーボ制御回路の
概略的な回路構成図である。
好ましい実施例についての詳細な説明 図示のように、本発明は、第1図〜第3図において参
照番号10で全体を示す改良された電磁軸受構造体に関す
る。軸受構造体10は、静止の外側ハウジング12と、該ハ
ウジング12を通って軸線方向に延びている円筒状の回転
軸14とを有している。ハウジング12は、2つのエアギャ
ップ16を通る高密度の磁束を発生する手段を有してお
り、ハウジング12内で回転軸14を懸架すなわち浮揚させ
ることができる。
本発明によれば、第1図〜第3図における本発明の第
1の好ましい実施例に関連して示すように、ハウジング
12の内面上の中央部にはディスク状の永久磁石18が配置
されており、該永久磁石18は回転軸14の一部を包囲して
いる。永久磁石18は軸線方向の極性を有しており、全体
として円筒状の磁極片20が永久磁石18のN極面及びS極
面に当接しており且つここからハウジング12の両端部へ
と延びている。
1対の弧状リング22(各リング22は、積層板で形成さ
れ且つ高透磁率をもつものが好ましい)が、それぞれの
磁極片20と当接関係をなしてハウジング12の各端部に配
置されている。各弧状リング22には、互いに周方向に間
隔を隔てて配置された複数のスロット24が設けられてお
り、個々のスロット24内には能動制御電磁コイル26が受
け入れられている。
説明の目的上、回転軸14は高透磁率をもつ材料で作ら
れているとする。そのような場合、回転軸14の、ハウジ
ング12により包囲される部分の上にはアーマチャすなわ
ちスリーブ28が配置され、このスリーブ28も高透磁率材
料で形成するのが好ましい。スリーブ28には、弧状リン
グ22と整合した関係をなして1対のロータ30が固定され
ている。ロータ30と該ロータ30に対面する弧状リング22
の表面との間の間隔が、前述のエアギャップ16を形成し
ている。また、ロータ30及びリング22の対向面にはそれ
ぞれ円形溝34及び32が設けられていて、ハウジング12と
回転軸14との間に軸線方向の復帰力を付与し、これによ
り、回転軸14がハウジング12内で懸架されているときの
回転軸14の軸線方向移動即ちZ軸線方向変位を防止でき
るようになっていることに注目すべきである。エアギャ
ップ16を横切る方向に高密度の磁束が作用すると、対向
面のランドと溝とを整合させようとする磁気抵抗心出し
力(reluctance centering force)が生じる。
電磁軸受構造体10は、ハウジング12に対する回転軸14
の変位を検出するセンサを用いている。この点について
説明すると、X軸位置センサ36及びY軸位置センサ38が
設けられていて、それぞれ、回転軸14のX軸線方向変位
及びY軸線方向変位を検出する。これらのセンサ36、38
の目的は、回転軸14の最適心出し位置からの移動を検出
することにある。位置センサ36、38が回転軸14の偏心を
検出すると、これらのセンサ36、38は、サーボ回路40
(第6図及び第7図により詳しく示してある)への電気
信号を発生する。これにより、サーボ回路40は電磁コイ
ル26への信号を発生して、回転軸14をその最適心出し位
置に再位置決めさせる復帰力を生じさせる。
本発明の電磁軸受構造体10の上記基本的構造を念頭に
おきその機能について以下に詳細に説明する。永久磁石
18は、矢印42で示す経路を有する磁束を発生している。
永久磁石18は比較的一定で高密度の磁束を発生し、この
磁束は、永久磁石18から磁極片20を通り、一方の弧状リ
ング22へと軸線方向に導かれ、弧状リング22において回
転軸14に向かって半径方向に方向を変える。磁束経路42
は、一方のエアギャップ16を跨ぎ、ロータ30を介してア
ーマチャ(スリーブ)28に導かれ、反対側のエアギャッ
プ16を通って永久磁石18に戻る。軸線方向の極性をもつ
永久磁石18により発生された磁束は、1対のエアギャッ
プ16のみを通って半径方向に指向され、ハウジング12に
対する回転軸14の磁束カップリングを形成する。完全な
条件の下で、回転軸14がハウジング12内で正確に心出し
されていて、回転軸14の全周にわたって均一なエアギャ
ップ16が存在するものとすれば、理論的には、永久磁石
18により形成される高密度磁束が、準安定状態である半
径方向に向いた力系を創出するであろう。回転軸14のあ
らゆる偏心により、回転軸14は、ハウジング12内で一方
の側又は他方の側に引かれるであろう。これが、いわゆ
る、永久磁石18により付与される一定磁束の「ネガティ
ブスプリング」効果である。
弧状リング22により回転軸14の周囲に配置された電磁
コイル26は、「ネガティブスプリング」効果を打ち消す
ようにサーボ回路40により制御され、「ポジティブスプ
リング」効果すなわち、回転軸14を弧状リング22間で心
出しされた状態に維持する高弾性復帰力(high stiffne
ss restoring force)を発生させる。参照番号44は、電
磁コイル26の磁束経路を示すものである。各電磁コイル
26は半径方向の極性をもつ制御可能な電磁界を発生する
ことができ、この電磁界においては、磁束経路44がエア
ギャップ16を横切る方向を向いており且つアーマチャ28
及び高透磁率の弧状リング22を通って回転軸14の周囲に
導かれる。
使用に際し、永久磁石18により発生される磁界は、回
転軸14を真の心出し位置から弧状リング22と係合する位
置に変位させる傾向を有している。そのような変位は、
サーボ回路40への入力信号を与えるX軸位置センサ36及
びY軸位置センサ38により検出される。サーボ回路40
は、弧状リング22内に配置された電磁コイル26への電流
を選択的に制御して、回転軸14を真の心出し位置に維持
するボジティブな勾配を与える。サーボ回路40及び電磁
コイル26の使用により、回転軸14の変位が大きくなれば
なる程、大きな復帰力が発生されるようになっている。
従って、ハウジング12内の浮揚位置すなわち懸架位置に
回転軸14を支持するのに必要な、エアギャップ16を通る
高密度の磁界が形成される。電磁コイル26は回転軸14を
安定化し、上記構成により、従来の形式の電磁軸受構造
体よりも非常に効率の良い軸受構造体を得ることが可能
になる。
比較的一定の磁束を発生する軸線方向の極性をもつ永
久磁石18と、可変磁束を発生する半径方向の極性をもつ
制御可能な電磁コイル26とを、上記のように幾何学的に
簡単な構成に配置することにより、従来の入手可能な電
磁アクチュエータに比べ、大きな単位サイズ及び重量当
たりの力を発生させることができる。また、この構成に
より、特に効率の良いコンパクトなパッケージを達成す
ることができる。
第4図には、本発明の第2の好ましい実施例が示され
ており、第1図〜第3図の第1実施例における部品と機
能的に同じ部品については第4図においても同じ番号が
用いられている。第4図の電磁軸受構造体46は、第1図
〜第3図の電磁軸受構造体10と極めて良く似ている。こ
の電磁軸受構造体46でも、軸線方向の極性をもつ永久磁
石18を用いて、回転軸14を全体的に包囲する一定磁束の
磁界を発生させている。第4図の実施例と第1図〜第3
図の実施例との間の主な相違点は、弧状リング22及び電
磁コイル26の構造にある。第4図の実施例におけるリン
グ22は、磁極片20に対して磁気的に連結されているけれ
ども、ロータ30に対面する連続面を形成するものではな
い。それどころか、第4図の実施例のリング22は、エア
ギャップ16を集中的に形成する4つの突出部材48を備え
ている。このことから、回転軸14の各端部を包囲するエ
アギャップ16は、本発明の目的のために連続的なものと
する必要がないことが理解されよう。
第5図には、本発明の更に別の実施例が示されてい
る。第5図の電磁軸受構造体56においては、回転軸がハ
ウジング12内に配置されておらず、中空円筒状の回転部
材14がハウジング12を外部から包囲するように配置され
ている。第5図の回転部材14は、第1図乃至第4図の軸
14と機能上同等のものである。この構成においては、ハ
ウジング12に固定された磁束発生機構が回転部材14を内
的に包囲している。ハウジング12は、支持ベース62の上
方に突出した突出部60に取り付けられた静止支持体58を
備えている。
第6図には、本発明による磁気軸受構造体に関連して
使用されるサーボ回路40の概略構成が示されている。サ
ーボ回路40には、X軸位置センサ36及びY軸位置センサ
38により検出された回転軸14或いは回転部材の変位につ
いての変位信号を表す入力信号ZCが入力される。磁気軸
受構造体の一定磁束及び制御可能な磁束の力学系は、KF
で示す力利得(force gain)及びネガティブスプリング
定数−Kにより近似される。サーボ回路40は出力補正信
号ZOを出す。この出力補正信号ZOにより、第1回に関し
て回転軸14がゼロ位置に維持され且つ弧状リング22間に
懸架されるように、回転軸14の半径方向位置(すなわ
ち、X軸線方向位置及びY軸線方向位置)が安定化され
且つ制御される。
回転軸14或いは回転部材の半径方向位置は本来的に不
安定であり、サーボ回路40は安定性に対して充分に減衰
した応答を与える。サーボ回路40による制御は、半径方
向センサの出力信号を補償し、これを、補償回路の一部
を形成する電磁増幅器の入力にフィードバックすること
により達成される。
第6図には、「補償」と表示したボックスにより補償
回路が概略的に示されており、この補償回路は、実際に
は進み/遅れ回路で構成されている。この進み/遅れ回
路は、ネガティブスプリング定数をキャンセルするか、
できる限りゼロのレベルに近づくようにする。また、進
み/遅れ回路は、ポジティブスプリング効果を付加して
半径方向の所望の弾性復帰を達成し、充分な減衰を与え
てリンギング(ringing)を防止し、且つあらゆる共振
を減衰させる。
第7図は、機能的に説明することにより、本発明のサ
ーボ回路40の一部を構成する幾つかの主要部品をより完
全に示すものである。入力信号ZCは、加算ノードいわゆ
る加算接続点64に入力され、次いでアウタループ補償器
66に入力される。次に、アウタループ補償器66の出力は
別の加算ノード68に入力されその出力は前述の補償を行
うための一群の回路部品に入力される。
より詳しく説明すると、加算ノード68の出力は、先ず
電流駆動装置70に入力され、次いで磁気アクチュエータ
72に入力される。磁気アクチュエータ72の出力はセンサ
74に入力され、該センサ74の出力は復調フィルタ76及び
臨界速度制御フィルタ78に入力される。次に、これらの
両フィルタ76、78の出力が加算され、補正信号ZOが作ら
れる。
アウタループ補償器のフィードバック回路82と共に、
インナループ補償器のフィードバック回路80も設けられ
ている。アウタループ回路(アウタループ補償器のフィ
ードバック回路)82は、加算ノード64でのネガティブ入
力を有する単一導体で構成されている。インナループ補
償器のフィードバック回路80は、導体の途中に配置され
たインナループ補償器84を備えており、該インナループ
補償器84は加算ノード68にネガティブ入力信号を入力す
る。
アウタループ回路82は、インナループ回路80の回りで
閉じられ、位置コマンド入力信号のためのフィードバッ
ク信号を加算接続点64に入力する。通常の作動状態の下
では、このコマンド入力信号はゼロであるか、軸受のあ
らゆる非対称性をオフセットするバイアスを有してい
る。
臨界速度フィルタ78及び復調フィルタ76は、臨界速度
での回転軸14の振動を制限するのに有効なノッチフィル
タである。これらのノッチフィルタは、臨界速度の動的
解析予測に基づいて設計するこができる。また、これら
のフィルタは軸の臨界周波数でのサーボ利得を増減さ
せ、これにより、臨界周波数での磁気軸受の反力が軸の
共振応答に寄与しないようにしている。所望ならば、こ
れらのフィルタは、実際のロータ応答特性にチューニン
グできるように調節可能なもので構成することができ
る。
センサ74は、磁気軸受ハウジングの作動を検出する種
々のセンサであり、X軸位置センサ36及びY軸位置セン
サ38に限定されるものではない。これらのセンサ74は、
例えば、制御アルゴリズムを変えるのに使用される温度
センサ等で構成することができる。
以上から、本発明による改良された電磁軸受構造体
は、一定磁束を発生する軸線方向の極性をもつ磁力源と
半径方向の極性をもつ制御可能な電磁界とを用いて、静
止本体すなわちハウジングに対して懸架された位置に回
転軸或いは回転部材を支持できることが理解されよう。
本発明の磁気軸受構造体は、軽量で高出力効率をもつ非
常にコンパクトで空間効率に優れた装置である。本発明
の磁気軸受構造体は、電磁コイルが、永久磁石を通る磁
束を駆動する起動力を生じさせる必要がないため、磁気
効率が最適化される。また、制御可能な電磁石とは独立
して、高密度の磁束が発生されるため、比較的小形の電
磁コイルを使用でき、これにより、電力損失を小さくで
き且つ小形の制御増幅器の使用が可能になる。
以上、本発明の3つの実施例について詳細に説明した
が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の
変更を施すことができるであろう。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】回転可能な第1部材(14)を静止した第2
    部材(12)に対して懸架された位置に支持し、前記第1
    部材が前記第2部材に対して軸線を中心に回転できるよ
    うにする電磁軸受構造であって、 前記第2部材に位置決めされた一対の弧状リング(22)
    と、 前記第2部材のまわりに周方向に、前記第1部材から半
    径方向に間隔を隔てて、前記リングの各々に位置決めさ
    れた複数の電磁コイル(26)と、 前記コイル(26)に制御された電流を供給し前記リング
    (22)と前記第1部材の間のエアギャップ(16)を横切
    って前記各リングから延びる夫々の磁界を発生させるた
    めの手段とを有し、前記磁界は前記軸線に対して半径方
    向の極性をもち、 前記軸線方向の極性を有し、該軸線を包囲し、前記第2
    部材の中で前記一方のリングから他方のリングまで延び
    る磁界を発生させる、前記第2部材と関連した補助手段
    (18)を有し、軸線方向の極性を有する磁界を発生させ
    る補助手段は、前記弧状リングに磁気的に連結され、そ
    れによって前記電磁コイル及び前記補助手段から実質的
    に全ての磁束が、前記リングと前記第1部材の間の前記
    一対のエアギャップの中を半径方向に通り、前記第1部
    材の前記第2部材への磁束カップリングをつくる電磁軸
    受構造において、 軸線方向の極性を有する前記磁界を発生させる前記補助
    手段が永久磁石手段(18)を備え、該永久磁石手段(1
    8)が前記静止した部材(12)に取付けられ、且つ、前
    記回転可能な部材(14)の一部を包囲する、軸線方向の
    極性を有する弧状の永久磁石(18)を備え、 前記永久磁石(18)は、前記一対の弧状リング(22)及
    びこれに関連した電磁コイル(26)の間に配置され、且
    つ、該永久磁石(18)からの軸線方向に指向された磁束
    が前記エアギャップ(16)を半径方向に通って再指向さ
    れ高密度の磁界を形成するように、前記2つのエアギャ
    ップを通して前記回転可能な第1部材(14)に磁気的に
    リンクされ、前記回転可能な第1部材(14)にリンクさ
    れた磁界を提供し、 前記リング(22)は、高透磁率を有する積み重ねられた
    積層板からなり、前記第2部材(12)の端部に位置決め
    され、各リング(22)は前記電磁コイル(26)を受け入
    れるための円周方向に間隔をおいた複数の独立したスロ
    ット(24)を有し、 更に、前記永久磁石手段(18)と前記一対の弧状リング
    (22)の間で延びる弧状に形作られた磁極片(20)を含
    む、 ことを特徴とする電磁軸受構造。
  2. 【請求項2】前記回転部材の、静止部材に対する並進運
    動を磁気的に抑制するための手段(32、34)を含む、 請求の範囲第1項に記載の電磁軸受構造。
  3. 【請求項3】前記並進運動抑制手段が、回転可能な部材
    (14)の一部分に固定され且つこれを囲み、前記静止部
    材(12)に位置決めされた弧状リング(22)と対向関係
    に位置決めされた、磁束伝導ロータ(30)を含み、 前記ロータ(30)と弧状リング(22)の間のギャップが
    前記エアギャップ(16)を構成し、 更に、各ロータ(30)が、前記対向する弧状リング(2
    2)の対向する表面に設けられた溝(32)と整列する、
    少なくとも1つの周方向の溝(34)を有する、 請求の範囲第2項に記載の電磁軸受構造。
  4. 【請求項4】前記電磁コイルが、サーボ制御装置によっ
    て制御されており、 シャフトの変位を表す変位信号を受け、出力補正信号を
    出すアウタループ補償ネットワーク(66−76)と、 該アウタループ補償ネットワーク(66−76)からの出力
    を受け、インナループ補償を行うインナループ補償ネッ
    トワーク(84)と、 フィードバック信号を構成する、アウタループ補償ネッ
    トワークの出力からフィードバック信号を受ける第1の
    加算ノード(64)と、 インナーループ補償ネットワークの出力からフィードバ
    ック信号を受けるように配置された第2の加算ノード
    (68)を有し、前記インナーループ補償ネットワークが
    インナーループ補償器を含み、 前記アウタループ補償ネットワークに設置された補償手
    段(66)とを有する、 請求の範囲第1項に記載の電磁軸受構造。
  5. 【請求項5】前記サーボ制御装置は、前記アウタループ
    補償ネットワークが電流駆動装置(70)と磁気アクチュ
    エータ(72)を有する、 請求の範囲第4項に記載の電磁軸受構造。
  6. 【請求項6】回転可能な第1部材(14)を静止した第2
    部材(12)に対して懸架された位置に支持し、前記第1
    部材が前記第2部材に対して軸線を中心に回転できるよ
    うにする電磁軸受構造であって、 前記第2部材に位置決めされた一対の弧状リング(22)
    と、 前記第2部材のまわりに周方向に、前記第1部材から半
    径方向に間隔を隔てて、前記リングの各々に位置決めさ
    れた複数の電磁コイル(26)と、 前記コイル(26)に制御された電流を供給し前記リング
    (22)と前記第1部材の間のエアギャップ(16)を横切
    って前記各リングから延びる夫々の磁界を発生させるた
    めの手段とを有し、前記磁界は前記軸線に対して半径方
    向の極性をもち、 前記軸線方向の極性を有し、該軸線を包囲し、前記第2
    部材の中で前記一方のリングから他方のリングまで延び
    る磁界を発生させる、前記第2部材と関連した補助手段
    (18)を有し、軸線方向の極性を有する磁界を発生させ
    る補助手段は、前記弧状リングに磁気的に連結され、そ
    れによって前記電磁コイル及び前記補助手段からの実質
    的に全ての磁束が、前記リングと前記第1部材の間の前
    記一対のエアギャップの中を半径方向に通り、前記第1
    部材の前記第2部材への磁束カップリングをつくる電磁
    軸受構造において、 軸線方向の極性を有する前記磁界を発生させる前記補助
    手段が永久磁石手段(18)を備え、該永久磁石手段(1
    8)が前記静止した部材(12)に取付けられ、且つ、前
    記回転可能な部材(14)の一部を包囲し、 前記永久磁石手段(18)は、前記一対の弧状リング(2
    2)及びこれに関連した電磁コイル(26)の間に配置さ
    れ、且つ、該永久磁石手段(18)からの軸線方向に指向
    された磁束が前記エアギャップ(16)を半径方向に通っ
    て再指向され高密度の磁界を形成するように、前記2つ
    のエアギャップを通して前記回転可能な第1部材(14)
    に磁気的にリンクされ、前記回転可能な第1部材(14)
    にリンクされた磁界を提供し、 前記電磁コイルが、サーボ制御装置によって制御されて
    おり、 シャフトの変位を表す変位信号を受け、出力補正信号を
    出すアウタループ補償ネットワーク(66−76)と、 該アウタループ補償ネットワーク(66−76)からの出力
    を受け、インナループ補償を行うインナループ補償ネッ
    トワーク(84)と、 フィードバック信号を構成する、アウタループ補償ネッ
    トワークの出力からフィードバック信号を受ける第1の
    加算ノード(64)と、 インナーループ補償ネットワークの出力からフィードバ
    ック信号を受けるように配置された第2の加算ノード
    (68)を有し、前記インナーループ補償ネットワークが
    インナーループ補償器を含み、 前記アウタループ補償ネットワークに設置された補償手
    段(66)とを有する、 ことを特徴とする電磁軸受構造。
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