JP2641307B2 - 荷電粒子ビームモニター - Google Patents

荷電粒子ビームモニター

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、荷電粒子ビームモニター、例えば、荷電
粒子加速装置などで用いられる荷電粒子ビームの形状及
び位置を測定する荷電粒子ビームモニターに関するもの
である。
[従来の技術] 第3図は例えばIEEEトランザクションVo1.NS−22,No.
3 1975年6月号、に発表されたJ.キユープラス等著の
論文「ベバラックにおける重イオンビーム用マルチワイ
ヤーチェンバーシステム」に開示された従来の荷電粒子
ビームモニターの組立図である。
図において、符号(1)は、荷電粒子ビームモニター
のビーム入射窓、(2)はビーム入射窓(1)の次に積
層される陰極ワイヤー面、(3)は陽極X方向ワイヤー
面、(4)は陽極X方向ワイヤー面(3)と同じワイヤ
ー間隔をもつ陽極Y方向ワイヤー面、(5)は上記陽極
ワイヤー面と陰極ワイヤー面との間に一定の隙間を保つ
ために必要に応じて積層されるスペーサー、(6a)は陰
極ワイヤー面(2)に設けられたガス供給口、(6b)は
他の陰極ワイヤー面(2)に設けられたガス排出口、
(7)は上記陽極、陰極両ワイヤー面(2)(3)
(4)、スペーサー(5)及びビーム入射窓(1)を積
層し、締め付けるためのボルトである。
次に上記従来装置の動作について説明する。
図示されていないO−リングや接着剤等適当な方法に
より、上記積層間の気密性が保たれている荷電粒子ビー
ムモニター内に、ガス供給口(6a)よりガスを注入し、
また、ガス排出口(6b)よりガスを排気することによ
り、ガスを充満させる。
次いで、陰極ワイヤー面(2)に負の高電圧を印加
し、陽極ワイヤー面(3)内の各ワイヤーとの間に大き
な電場勾配を作る。
ここに高速荷電粒子が入射すると、荷電粒子ビームモ
ニター内部の荷電粒子入射軌道近傍のガスが電離し、電
離したガスイオンと電子は上記軌道近傍の陽極ワイヤー
面(3)と陰極ワイヤー面(2)との間に形成された電
場勾配に沿って移動加速され、陽極ワイヤー面(3)
(4)内のワイヤー又は陰極ワイヤー面(2)内のワイ
ヤーに電荷を誘起し、この電荷が集められて当該ワイヤ
ーより信号として取り出される。
その結果、信号の出力されたワイヤーの位置を知るこ
とにより、荷電粒子の通過した位置を知ることが可能と
なる。
[発明が解決しようとする課題] 従来の荷電粒子ビームモニターは、以上のように構成
されているので、陽極X方向及びY方向ワイヤー面
(3)(4)では、同じ空間分解能でしか、荷電粒子ビ
ームの位置を、検出できなかった。このため、例えばX
方向とY方向とで異なる拡がりを持つ荷電粒子ビームの
形状を測定する際、荷電粒子ビーム幅に比べて、陽極X
方向又はY方向のワイヤーの間隔が狭く、従って荷電粒
子ビームの全幅を十分に覆えない場合や、あるいは、逆
に上記ワイヤー間隔が広すぎて、ビーム形状が正確に測
定できないなどの問題点があり、これらの問題点を解決
したいという課題を有していた。
この発明は、上記のような課題を解決するためになさ
れたもので、X方向とY方向とで異なる拡がりを持つ荷
電粒子ビームを、適切かつ正確に測定できる荷電粒子ビ
ームモニターを得ることを目的とする。
[課題を解決するための手段] この発明に係る荷電粒子ビームモニターは、異なる方
向に対しそれぞれ異なった空間位置分解能を備えるよう
に構成しているものである。
[作 用] この発明における荷電粒子ビームモニターは、上記の
ように構成されているので、X方向又はY方向に異なっ
て拡った楕円形状ビームであっても、X−方向、Y−方
向それぞれのビームの拡りに応じた適切な空間位置分解
能で、ビーム形状や位置を測定することができ、従っ
て、拡ったビームを非常に多数の狭い間隔の陽極ワイヤ
ーで測ったり、あるいは、狭いビームを広い間隔の陽極
ワイヤーを持つ大寸法の荷電粒子ビームモニターで測定
することがなく、適切なワイヤー間隔で測ることができ
て、経済的である。
[実施例] 以下、この発明をその一実施例を示す図に基づいて説
明する。
第1図において、符号(1)は荷電粒子ビームモニタ
ーのビーム入射窓、(8)は陽極面、例えば、ワイヤー
を比較的密に張った陽極ワイヤー面、(9)は陽極面、
例えば、ワイヤーを相対的に粗に張った陽極ワイヤー
面、(10)は陽極ワイヤー面(8)と(9)とに挟まれ
た陰極面、例えば、陰極ワイヤー面、(11)は陽極ワイ
ヤー面(9)とスペーサー(5)とに挟まれた陰極面、
例えば、陰極ワイヤー面である。
なお、図中、符号(2)(5)(7)で示すものは、
従来装置において同一符号で示したものと同一又は同等
のものである。
このように、この発明の異なる方向に対しそれぞれ異
なった空間位置分解能を備えさせるために、この実施例
にあっては、陽極ワイヤー面のワイヤー間隔を例えばX
方向、Y方向で異なる値とし、かつ、上記異なる陽極ワ
イヤー面と陰極ワイヤー面との間隔を上記陽極ワイヤー
間隔に応じた適切な間隔値として、陽極X方向ワイヤー
及びY方向ワイヤー共に等しい電場勾配が形成されるよ
うにし、等しいガス増幅率が得られるようにしている。
また、第2図で示すものは、楕円形状断面をもつ荷電
粒子ビーム(12)をこの実施例による荷電粒子ビームモ
ニターによって観測した結果を摸式的に示したものであ
り、(8a)はワイヤー間隔を比較的密に張った陽極ワイ
ヤー面(8)の断面、(9a)はワイヤー間隔を相対的に
粗に張った陽極ワイヤー面(9)の断面であり、(12
a)は荷電粒子ビーム(12)のX−方向の荷電粒子密度
分布の観測例、(12b)は荷電粒子ビーム(12)のY−
方向の観測例である。
次に、上記実施例の動作について説明する。
従来技術の動作で説明したように、荷電粒子は、荷電
粒子ビームモニター内で、その軌跡に沿って、ガスを電
離してイオンガスを創り出し、該軌跡に最も近い所に電
気力線を創り出している陽極ワイヤー、あるいは該軌跡
近傍の両側の2本の陽極ワイヤーに信号を誘起する。こ
のため、信号を出力した陽極ワイヤーの位置を知ること
によって、荷電粒子の入射の位置を知ることができ、ま
た、多数の荷電粒子が入射すれば、その密度分布が測定
できる。
すなわち、第1図に示す陽極ワイヤー面(8)のよう
に、陽極ワイヤー間隔が狭い程荷電粒子の入射位置を正
確に知ることができ、また同図に示す陽極ワイヤー面
(9)のように、陽極ワイヤー間隔が広い程荷電粒子の
入射位置は粗くしか測定できない。従って、狭い空間に
全荷電粒子数の大部分が存在するような荷電粒子ビーム
の空間密度分布を測定するためには、狭いワイヤー間隔
を持った陽極ワイヤー面を持つ荷電粒子ビームモニター
が必要であり、この場合の荷電粒子ビームの空間的拡が
りは小さいため、陽極ワイヤー本数も小数ですむ。
また、広い空間的拡がりを持つ荷電粒子ビームに対し
ては、上記とは逆に、広いワイヤー間隔の陽極ワイヤー
面を持つ荷電粒子ビームモニターが適当である。
更に、ガスに荷電粒子ビームが照射されて生成された
ガスイオンと電子のうち、電気力線に沿って移動・加速
される電子は、更にガス分子と衝突を起こし、新たにガ
ス分子を電離し、イオン増殖作用を生ずるが、これをガ
ス増幅といい、ガス増幅の大きな荷電粒子ビームモニタ
ー程大きな信号を得る。一般にガス増幅率は、例えば陰
極ワイヤー面(2),(10),(11)に一定の電圧を印
加した場合に、陽極ワイヤー間隔が広い程、陽極−陰極
間隔が狭い程大きくなり、例えば次に示すR.W.ヘンドリ
ック(R.W.Hendricks)著、ニュークレア インスツル
メント アンド メソッズ(Nuclear Instrument and M
ethods)1972年 第102巻 第309頁−第312頁に記載のD
iethornの式で評価することができる。
ここで、aは陽極ワイヤー半径であり、bは個々の陽
極ワイヤーが、本荷電粒子ビームモニターと同じ動作原
理を持つ単独の円筒形モニターと見做したときの円筒半
径であり、例えば富谷武浩著ニュークレア インスツル
メント アンドメソッズ(Nuclear Instrument and Met
hods)1972年第100巻 第179頁−第191頁に記載の富谷
の式によって計算できる。陽極ワイヤー間隔と、陽極−
陰極間距離との関数である。ただし、Vは印加電圧であ
り、ΔVとKは荷電粒子ビームモニター中のガス特有の
定数であり、pは同ガスの圧力である。
従って、異なる陽極ワイヤー間隔を持つ陽極面であっ
ても、上式のbが等しくなるように陽極−陰極間距離を
選ぶことにより、同じ電圧印加により等しいガス増幅率
が得られ、各陽極ワイヤー面が等しい感度で荷電粒子ビ
ームの密度分布を測定することができる。
この実施例では、陽極ワイヤー面(8)と陰極ワイヤ
ー面(2)及び(10)との隙間の距離を短かくし、陽極
ワイヤー面(9)と陰極ワイヤー面(10)及び(11)と
の隙間の距離をより長くとる。
なお、この実施例では、陽極ワイヤー面を(8),
(9)の2面としたが、更に多層にしてもよい。
また、陰極(2),(10),(11)をワイヤーにて構
成したが、導体板によって形成してもよい。
[発明の効果] 以上のように、この発明によれば、荷電粒子ビームモ
ニターを、異なる方向に対してそれぞれ異なった空間位
置分解能が得られるように構成しているので、X,Y方向
に非対称な密度分布を有する荷電粒子ビームを同一の荷
電粒子ビームモニターで、正確適切に測定することがで
きる荷電粒子ビームモニターが得られる効果を有してい
る。また、複数の陽極面間には共通の陰極面が介在され
て一体構造となっており、かつ各陽極面とその両側の陰
極面との距離は、同じ電圧印加で等しいガス増幅率が得
られるようにワイヤー間隔に応じて互いに異なっている
ため、陽極面間の放電特性を合わせ、高電圧電源を共通
化することができ、ワイヤー間隔が異なっても、各陽極
面で等しい感度で荷電粒子ビームの密度分布を測定する
ことができるという効果も有している。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一実施例による荷電粒子ビームモニ
ターを示す構成図、第2図はこの実施例により測定され
る2方向の荷電粒子ビーム断面の密度分布図、第3図は
従来の荷電粒子ビームモニターを示す構成図である。 (2)(10)(11)……陰極面(陰極ワイヤー面)、
(8)(9)……陽極面(陽極ワイヤー面)。 なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ワイヤー方向が互いに異なる複数の陽極面
    と、これらの陽極面の両側に配置されている複数の陰極
    面とを備え、上記陽極面及び上記陰極面間に充満された
    ガスに荷電粒子が入射されることによって、上記ガスが
    イオン化され、同イオン及び電子が上記陽極面と上記陰
    極面との間に形成された電気力線に従って移動するとき
    に上記陽極面と上記陰極面とに誘起される信号を取り出
    すマルチワイヤー式の荷電粒子ビームモニターにおい
    て、異なる方向に対し空間位置分解能が異なるように上
    記複数の陽極面におけるワイヤー間隔が互いに異なって
    おり、また上記複数の陽極面間には共通の陰極面が介在
    されて一体構造となっており、かつ上記各陽極面とその
    両側の陰極面との距離は、同じ電圧印加で等しいガス増
    幅率が得られるようにワイヤー間隔に応じて互いに異な
    っていることを特徴とする荷電粒子ビームモニター。
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