JP2640770B2 - 芳香族c−グリコシド結合化合物の製造方法 - Google Patents

芳香族c−グリコシド結合化合物の製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、フェノール性水酸基のオルト位に各種の糖
若しくはデオキシ糖又はそられの誘導体がC−グリコシ
ド結合した化合物の有利な合成法に関する。
〔従来の技術〕
ストレプトミセス属に属す生産菌は、フェノール性水
酸基のオルト位に糖若しくはデオキシ糖又はそれらの誘
導体がC−グリコシド結合した抗生物質を多数生産す
る。そのうち代表的なものとしては、ラクトキノマイシ
ン生産菌が産生するラクトキノマイシン(公開特許62−
10086)が有り、これはナフトキノン系抗腫瘍性抗生物
質である。
その他、アントラキノン系抗腫瘍性抗生物質であるビ
エノマイシン、カボマイシン、ケリアマイシン等同様な
特徴を有する化合物が多数知られている。
上記抗生物質の特徴である芳香族C−グリコシド結合
の形成法には、保護した糖又はデオキシ糖又はそれらの
誘導体と母核との分子間反応による方法(グリニャール
型反応、フリーデルクラフツ型反応)が知られている。
〔例えばJ,Am,Chem,Soc,67 1972(1945)やAust,J,Che
m,282011(1975)等〕 〔発明が解決しようとする問題点〕 しかしながら、この方法において最も良く用いられる
グリニャール試薬とグリコシルハライドの反応による方
法では、母核に予め位置特異的にハロゲン、例えばBr基
を導入する必要があり、また−OMeの加水分解等の工程
を有するため、工程が多くなる問題がある。
またグリコシルハライドと母核とのフリーデルクラフ
ツ型反応は、塩化アルミニウムを用いて加熱する必要が
あり、反応条件が厳しい問題がある。更に上記した方法
ではその性質上比較的単純な化合物の合成にのみ適用さ
れるものであると共に收率が低い問題がある。
フェノール性水酸基のオルト位に糖若しくはデオキシ
糖又はそれらの誘導体がC−グリコシド結合した部分構
造を持つ化合物は重要な薬理活性を有している。また、
母核に対し糖若しくはデオキシ糖若しくはそれらの誘導
体を種々変更した化合物を合成し、その薬理作用の検討
を行い、より優れた医薬品の開発を目指すために簡便な
効率のよいC−グリコシド結合化合物の製造法が必要で
ある。
しかしながら、上記抗生物質の特徴であるフェノール
性水酸基のオルト位に糖若しくはデオキシ糖又はそれら
の誘導体を直接導入する方法は、従来、全く知られてい
ないものであった。
そこで、本発明者らは、先に芳香族O−グリコシド化
合物をルイス酸触媒の存在下に転位反応を行わせ、その
フェノール性水酸基のオルト位に糖が結合した芳香族C
−グリコシド化合物に変換する方法を提案した(特願昭
62−225898号(特開昭64−68388号公報))。
しかしながら、フェノール性水酸基を有する化合物の
中でそのフェノール性水酸基に隣接する位置に置換基が
存在する場合、その芳香族O−グリコシド化合物の合成
に際し、置換基の立体障害のため、困難が生じることが
わかった。
本発明の目的は、フェノール性水酸基に隣接する位置
に置換基が存在する場合にも、上記抗生物質の特徴であ
るフェノール性水酸基のオルト位に簡便に収率よく糖若
しくはデオキシ糖又はそれらの誘導体を導入することが
できる芳香族C−グリコシド結合化合物の製造方法を提
供することにある。
〔問題を解決するための手段〕 上記した目的を達成するために、鋭意検討した結果、
アルキルグリコシド類又はアリルグリコシド類とフェノ
ール性水酸基を有する化合物とをルイス酸存在下で縮合
して前記フェノール性水酸基のオルト位に糖若しくはデ
オキシ類又はそれらの誘導体がC−グリコシド結合した
化合物を製造する方法を到達するに至った。
本発明において、アルキルグリコシド類は、OH基、ア
ミノ基がアシル基又はアルキル基で保護された糖若しく
はデオキシ糖又はそれらの誘導体のアルキルO−グリコ
シド化合物である。
また、アリルグリコシド類は、OH基、アミノ基がアシ
ル基又はアルキル基で保護された糖若しくはデオキシ糖
又はそれらの誘導体のアリルO−グリコシド化合物であ
る。
OH基、アミノ基がアシル基又はアルキル基で保護され
た糖若しくはデオキシ糖又はそれらの誘導体には、例え
ば、グルコース、ラムノース、ガラクトース等の6炭糖
類、アラビノース、リボース、リキソース等の5炭糖
類、ダウノサミン、エイコサミン、バンコサミン等のア
ミノ糖類、エバニトロース、ルブラニトロース等のニト
ロ糖類を例示することができる。
上記したアルキルグリコシド類及びアリルグリコシド
類におけるOH基、アミノ基を保護するアシル基又はアル
キル基は、直鎖状又は分岐してもよく、特に炭素数5以
下のものが望ましい。
本発明において、フエノール性水酸基を有する化合物
には、下記のようなベンゼン誘導体、ナフタレン誘導
体、アントラセン誘導体、フラボン誘導体等の化合物を
例示することができる。
(ただし、Rはハロゲン、アルキル基、アルコキシ基で
ある。) ここで、アルキル基、アルコシキ基は直鎖状又は分岐
してもよく、炭素数は5以下が望ましい。
(Rは置換可能な全ての基を含み、OH基、NH2基、又はC
OOH基の場合には、これらの基がアシル基、アルキル基
で保護される。) 本発明において、上記した化合物の他にテトラサイク
リン誘導体も包含される。
次に本発明の製造方法を説明する。
又は 本発明は、OH基、アミノ基がアシル基又はアルキル基
で保護された糖若しくはデオキシ糖又はそれらの誘導体
からなるアルキルグリコシド化合物(1)又はアリルグ
リコシド化合物(2)とフエノール性水酸基をもつ化合
物(3)を種々の溶媒の混合溶液に種々のルイス酸を作
用させてフエノール性水酸基のオルト位にOH基、アミノ
基がアシル基又はアルキル基で保護された糖若しくはデ
オキシ糖又はそれらの誘導体がC−グリコシド結合した
化合物(4)に導く方法を確立したものである。
次に本発明の方法を4,6−ジ−O−アセチル−2,3−ジ
オキシ−α,β−D−エリトロ−ヘキソシド(5)と4
−クロロ−1−ナフトール(6)に適用した場合に関し
て説明する。
4,6−ジ−O−アセチル−2,3−ジオキシ−α,β−D
−エリトロ−ヘキソシド(5)と4−クロロ−1−ナフ
トール(6)を塩化メチレンに溶解して室温で3当量の
三フッ化ホウ素エーテレートを加え、10時間反応させ
た。
反応液を水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾液を
濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルを用い
たカラムクロマトグラフィに付し、主生成物であるC−
β−D−グルコピラノシド(7)を得た。
本発明の製造方法に用いる溶媒は、塩化メチレンの他
にクロロホルム、四塩化炭素、トリクレン、ベンゼン、
トルエンあるいはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
又、ルイス酸としては、三フッ化ホウ素エーテレート
の他に塩化第一スズ、四塩化チタン、塩化亜塩、塩化ア
ルミニウム等が挙げられる。
本反応が極めて収率よく進行するのは塩化メチレン中
三フッ化ホウ素エーテレートを用いた時である。
ルイス酸使用量は1〜5当量が好ましく、より望まし
くは3当量である、ルイス酸の使用量が1当量より少な
いと反応が遅く、5当量よりも多いと副反応が生じやす
く收率が低下する。
反応温度は−30℃〜50℃が望ましい。反応温度が−30
℃よりも低い場合、反応が遅すぎ、一方、反応温度が50
℃よりも高いと副反応が生じやすい。より望ましい反応
温度は0℃〜20℃であり、最も望ましい反応温度は官能
基およびその数により異なる。
反応時間についてはルイス酸使用量、官能基及びその
数により大きく異なり、1時間〜24時間の範囲である。
〔実施例〕
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明す
る。
実施例1 メチル−4,6−ジ−O−アセチル−2,3−ジデオキシ−
α,β−D−エリトロ−ヘキソシド275mgと4−クロロ
−1−ナフトール200mgを塩化メチレン8mlに溶解し、そ
の中に三フッ化ホウ素エーテレート279μの塩化メチ
レン2ml溶液を加え、室温で5時間反応させた。
反応液を飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシ
ウムで乾燥した。濃縮乾固して得られた油状物をシリカ
ゲルカラムクロマトグラフィ処理(展開溶媒:ヘキサン
−酢酸エチル100:5)により単離してC−グリコシド
(1)408mg(93%)を白色結晶として得た。
mp 131−132℃ NMR(CDCl3) 2.07(s,3H)、2.1H(s,3H)、1.70−2.50(m,4H)、
3.70−4.00(m,1H)、4.25−4.35(m,2H)、4.70−5.05
(m,2H)、7.15(s,1H)、7.45−7.70(m,2H)、8.05−
8.40(m,2H)、8.58(s,1H) MS m/e(相対強度) 394(27)、392(80)、256(35)、254(100) 〔α〕=+43.9゜(CHCl3) 元素分析 C H 理論値 61.15 5.39 実測値 61.16 5.39 実施例2 メチル−4,6−ジ−O−アセチル−2,3−ジデオキシ−
α、β−D−エリトロ−ヘキソシド283mgと5−メトキ
シ−1−ナフトール200mgを塩化メチレン8mlに溶解し、
その中に三フッ化ホウ素エーテレート286μの塩化メ
チレン2ml溶液を加え、室温で5時間反応させた。
反応液を飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシ
ウムで乾燥した。濃縮乾固して得られた油状物をシリカ
ゲルカラムクロマトグラフィ処理(展開溶媒:ヘキサン
−酢酸エチル100:5)により単離してC−グリコシド
(2)372mg(83%)を白色結晶として得た。
mp 119−121℃ NMR(CDCl3) 2.09(s,3H)、2.15(s,3H)、1.60−2.50(m、4
H)、3.70−3.90(m,1H)、3.96(s,3H)、4.20−4.35
(m,2H)、4.70−5.05(m,2H)、6.79(d,1H,J=8.0H
Z)、7.10(d,1H,J=8.0Hz)、7.36(t,1H,J=8.0H
z)、7.72(d,1H,J=8.0Hz)、7.85(d,1H,J=8.0H
z)、8.50(s,1H) MS m/e(相対強度) 388(100)、346(15)、250(86)、211(38) 〔α〕=+43.6゜(CHCl3) 元素分析 C H 理論値 74.40 7.02 実測値 74.67 7.17 実施例3 フェニルテトラ−O−メチル−D−グルコピラノシド
217mgと1−ナフトール100mgを塩化メチレン5mlに溶解
しておき、その中に三フッ化ホウ素エーテレート87μ
の塩化メチレン1ml溶液を加える。
反応液を飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシ
ウムで乾燥した。濃縮乾固して得られる油状物をシリカ
ゲルカラムクロマトグラフィ処理(展開溶媒:ヘキサン
−酢酸エチル100:5)により単離してC−グリコシド
(3)113mg(45%)を無色油状物として得た。
NMR(CDCl3) 3.04(s,3H)、3.45(s,3H)、3.61(s,3H)、3.68
(s,3H)、3.25−3.80(m,6H)、4.46(d,1H,J=9.3H
z)、5.50(br s,1H)、7.25−8.40(m,3H) MS m/e(相対強度) 362(M+,60)、187(100)、101(95) 高分解能質量分析 362.1765(C20H26O6の理論値:362.1730) 〔α〕=−9.5゜(CHCl3) 実施例4 メチルテトラ−O−メチル−D−グリコピラノシド87
mgと2−ナフトール50mgを塩化メチレン2mlに溶解して
おき、その中に三フッ化ホウ素エーテレート43μを加
え室温で2時間反応させた。
反応液を飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシ
ウムで乾燥した。濃縮乾固して得られた油状物をシリカ
ゲルカラムクロマトグラフィ処理(展開溶媒:ヘキサン
−酢酸エチル100:5)により単離してC−グリコシド
(4)116mg(93%)を無色油状物として得た。
NMR(CDCl3) 2.71(s,3H)、3.41(s,3H)、3.62(s,3H)、3.68
(s,3H)、3.60−370(m,6H)、5.24(d,1H,J=9.5H
z)、7.10−8.00(m,6H)、8.50(br s,1H) MS m/e(相対強度) 362(M+,100)、255(26)、187(30)、100(20)、
88(27) 高分解能質量分析 362.1758(C20H26O6の理論値:362.1730) 〔α〕=+90゜(CHCl3) 実施例5 メチル−N,O−ジアセチル−α−L−エイコサミニド7
8mgと4−クロロ−1−ナフトール50mgを塩化メチレン2
mlに溶解し、その中に三フッ化ホウ素エーテレート80μ
の塩化メチレン0.5mlを加え室温で24時間反応させ
た。さらに三フッ化ホウ素エーテレート80μの塩化メ
チレン0.5mlを加え24時間反応させた。
反応液を飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシ
ウムで乾燥した。濃縮乾固して得られた油状物をシリカ
ゲルカラムクロマトグラフィ処理(展開溶媒:ヘキサン
−酢酸エチル100:5)により単離してC−グリコシド
(5)90mg(82%)を白色状物として得た。
mp 215−216℃ NMR(CDCl3) 1.37(d,3H,J=6.0Hz)、1.93(s,3H)、2.12(s,3
H)、2.30−2.60(m,2H)、3.60−4.70(m,3H)、4.88
(dd,1H,J=11.5,2.5Hz)、5.92(d,1H,J=7.5Hz)、7.
13(s,1H)、7.45−7.65(m,2H)、8.00−8.30(m,2
H)、8.53(s,1H) MS m/e(相対強度) 390(2)、178(76)、168(100) 〔α〕D 20=+62.0゜(CHCl3) 元素分析 C H N 理論値 61.30 5.66 3.57 実測値 61.20 5.60 3.72 〔発明の効果〕 以上のように本発明によれば、フェノール性水酸基に
隣接する位置に置換基が存在する場合にもフェノール性
水酸基のオルト位に糖若しくはデオキシ糖又はそれらの
誘導体を簡便に効率良く導入することができる。
したがって、本発明によって、重要な薬理活性を有す
る可能性のある芳香族C−グリコシド化合物を混和な条
件で、かつ少ない製造工程により收率よく極めて容易に
製造することができる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルキルグリコシド類又はアリルグリコシ
    ド類とフェノール性水酸基を有する化合物とをルイス酸
    存在下で縮合して前記フェノール性水酸基のオルト位に
    糖若しくはデオキシ類又はそれらの誘導体がC−グリコ
    シド結合した化合物を製造することを特徴とする芳香族
    C−グリコシド結合化合物の製造方法。
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