JP2638800B2 - 正抵抗温度係数発熱体 - Google Patents

正抵抗温度係数発熱体

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JP2638800B2 JP62098968A JP9896887A JP2638800B2 JP 2638800 B2 JP2638800 B2 JP 2638800B2 JP 62098968 A JP62098968 A JP 62098968A JP 9896887 A JP9896887 A JP 9896887A JP 2638800 B2 JP2638800 B2 JP 2638800B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、暖房器具や一般加熱器具に用いられる正抵
抗温度係数を有する発熱体に関するものである。
従来の技術 ポリエチレン,エチレン酢酸ビニル共重合体,アイオ
ノマー,ポリプロピレン,ポリフッ化ビニリデン等の結
晶性重合体に、カーボンブラック等の導電性微粉末を分
散した組成物は、その融点近傍において、結晶部分が無
定形化するさいの急激な物性変化によって抵抗値が急激
に増大することが知られている。そして、その特性を応
用して、所定の温度に達すると電力が急激に低下し、温
度の暴走を抵抗体自身が防止すると共に、熱負荷の変動
に応じて、温度を一定に保つ方向に電力が自動的に制御
される、いわゆる自己制御発熱体として応用されてき
た。
第3図は、特公昭55−40161号公報に代表される、従
来技術に基づく正抵抗温度係数発熱体の例を示すもので
あり、図において1は電気絶縁性と熱伝導性に優れたセ
ラミック基板であり、2a及び2bは電極である。そして、
3は結晶性重合体とカーボンブラックを主成分とする正
抵抗温度係数抵抗体である。一般に、セラミック系の焼
結体は電気絶縁体でありながら極めて良好な熱伝導特性
を示すため、正抵抗温度係数抵抗体のほぼ全面において
一様な温度分布を維持する能力が高く、それに伴って、
正常な抵抗値分布と電位分布による安定な発熱状態を保
持する事が可能であり、高出力の正抵抗温度係数発熱体
を構成する場合に非常に有利であった。しかし、大面積
の発熱体や、長尺の発熱体を構成する場合には、アルミ
ナ焼結体等のセラミック系の材料は製造技術的にも、強
度的にも実用に供し得るものではなかった。
そこで、セラミック系の基板材料に代わるものとし
て、特公昭57−43995号公報あるいは、第4図に示した
ような電気絶縁フイルム4と金属均熱板5から成る複合
材料基板が用いられてきたが、樹脂の熱伝導率はセラミ
ックに比べて約2桁程低く、複合材料の熱伝導率がセラ
ミックを上回ることはなかった。したがって、これらの
発熱体の電力密度は極めて低水準にあった。その結果、
多くの用途において、発熱体の出力が不充分であるか、
もしくは発熱体の装架面積が必要以上に大きくなり、誘
導による漏れ電流が危険に水準に達したり、材料コスト
が代替え手段を大幅に上回ったりして、用途が極めて限
定されていた。
そこで、正抵抗温度係数発熱体の構造に着目して、特
開昭60−28195号公報や第5図に示すように、一対の電
極間2a,2bの距離を互いに接近させることにより、基板
の均熱効果に依存しないで、抵抗体3自身の熱の拡散能
力を大幅に高める方法が検討されるようになり、応用範
囲の広い、高出力の正抵抗温度係数発熱体を実現する道
が開かれた。
しかしながら、第5図に示したような正抵抗温度係数
発熱体は、高出力を発生するための構造しては非常に優
れていたが、カーボンブラック等の比較的低抵抗の導電
性微粉末を分散することによって構成される正抵抗温度
係数抵抗体の耐電圧破壊特性や、非常に高抵抗が要求さ
れる体積固有抵抗値の領域を考慮すると、解決しなけれ
ばならない課題が山積していた。まず、電極間隔が非常
に接近した正抵抗温度係数発熱体を構成するためには耐
電圧破壊特性に優れた導電性微粉末を選定するだけでな
く、充分な抵抗温度特性を得ることによって、正抵抗温
度特性のピーク抵抗値を越えて暴走することのないよう
に配慮することが非常に重要な課題となった。また、体
積固有抵抗値も従来の100〜102Ωcmに対して、103〜105
Ωcmの半導体領域が必要となり、導電性微粉末の組成比
を大幅に低減しなければならなくなった。その結果、導
電性微粉末同志の接触点の数も激減し、抵抗温度特性が
結晶性重合体の融点のみによって制御されるだけではな
く、より低温域の線膨張係数によると思われる不安定な
成分をより多く含むようになった。さらに、経時変化に
おいて、結晶性重合体の結晶成長や導電性微粉末の凝集
によって、抵抗値や抵抗温度係数の大幅な変化が生じる
ようになり、様々な障害が生じた。例えば、室温におけ
る抵抗値とピーク抵抗値との比が4〜6桁となるような
優れた正抵抗温度特性を示す材料組成を選択すると、室
温における抵抗値と安定温度域における抵抗値との比が
不必要に高まり、大電力を要する機器においては突入電
力が許容値を大幅に上まわって電流ブレーカが誤作動す
る可能性が避けられなかった。また、経時変化におい
て、温度と電力の安定性に欠け、実用上の許容範囲から
大幅に外れるようになった。このように、導電性微粉末
の組成比を調整するだけでは固有抵抗値103Ωcm以上、
ピーク抵抗値/常温抵抗値104以上の有用な正抵抗温度
係数抵抗体を作り出すことができなかった。
一方、以上に述べた開発の流れとは別に、正抵抗温度
係数抵抗体と固定抵抗体を積層することにより出力の増
大と抵抗値の安定化を発熱体の構成で解決しようとした
試みが、特開昭51−76647号公報に示されている。この
主眼は電極間の熱拡散よりも構成面にあるのであるが、
高出力かつ高安定性の正抵抗温度係数発熱体を実現する
ためには、電極間距離を非常に近接させることは不可欠
であり、そのための詳細な検討が不充分であった。
発明が解決しようとする問題点 以上に述べたように、高出力の正抵抗温度係数発熱体
を構成するためには、電極間隔を接近させることが非常
に有効であった。また、発熱体の突入電力を低減し、抵
抗値の安定化をはかるためには、より所となる定抵抗層
を電気的に直列に介在させることも非常に有効であると
考えられる。しかしながら、このような薄肉構造の抵抗
体を多層構造とするためには、構成材料や加工法等に多
くの課題が存在した。正抵抗温度係数抵抗体に関しては
既に述べたとうりであるが、これに積層される定抵抗層
に関しては、より所となり得る安定した抵抗層を形成す
ること、正抵抗温度係数抵抗体層との間の安定な境界面
を形成し、相互に混合し合わないことの2つの課題があ
った。
まず、安定した抵抗層を形成することに関しては、体
積固有抵抗値が正抵抗温度係数抵抗体とほぼ同水準の10
4Ωcmと非常に高抵抗領域であることと、求められる特
性値が固定抵抗であり、充分な精度と安定度を要求され
ることから、正抵抗温度係数抵抗体と同じようなカーボ
ンブラックを用いることは容易なことではなかった。カ
ーボンブラックは素材自身の体積固有抵抗値が相当低い
ため、104Ωcmの値を出力すためには、非常に少ない添
加量が要求され、微妙なカーボンブラック組成比の調整
が必要であるばかりでなく、そのカーボンブラックの配
列を崩さないためにも極めて高精度の加工法が不可欠で
あった。そして、長期の使用に際しても、発熱体として
機能するために、多くの安全基準を満たさなければなら
なかった。
そして、正抵抗温度係数抵抗体層との間の境界面に関
しては、それぞれの抵抗体層が非常に薄膜であるため
に、材料の移行現象、あるいは、境界面の拡散現象によ
って、電気的に直列に接続されていなければならないの
が、局所的な並列接続箇所が発生して、正抵抗温度特性
が極一部であっても失なわれることは絶対に避けなくて
はならない。しかし、抵抗体の加工後に正規の抵抗値を
得るために実施するアニール工程等においては、ある程
度のカーボンブラックの拡散は避けられず、これを未然
に防止するためには、抵抗体材料構成上の対策が不可欠
であった。
本発明は上記2点の課題に鑑み、非常に高抵抗である
ために不安定要因の増大した正抵抗温度係数抵抗体を補
って、固定抵抗体が有効に機能するようになり、実用に
供し得る正抵抗温度係数発熱体を提供するものである。
問題点を解決するための手段 上記問題点を解決する本発明の技術的手段は、結晶性
重合体組成物中に導電性微粉末を分散してなる薄肉正抵
抗温度係数抵抗体層と、前記結晶性重合体に溶融密着可
能な重合体中に10Ωcm以上の固有抵抗値を有するととも
に1μm以上の粒子径を有する導電性微粉末を多量に分
散してなる抵抗度係数が比較的小さい薄肉抵抗体層とを
電気的に直列に積層することにより構成された薄肉積層
抵抗体層と、前記薄肉積層抵抗体層の両面に設けられた
一対の金属板電極と、これを外層する電気絶縁体からな
り、前記結晶性重合体及び前記結晶性重合体に溶融密着
可能な前記重合体の融点以上でアニール熱処理されてな
る正抵抗温度係数発熱体を適応するものである。
作用 この技術的手段による作用は次のようになる。すなわ
ち、結晶性重合体中に導電性微粉末を分散することによ
って得られる、常温体積固有抵抗値が103Ωcm以上の非
常に高抵抗領域にある薄肉状正抵抗温度係数抵抗体組成
物は、結晶性重合体の融点の近傍において顕著な正抵抗
温度係数を示すだけでなく、より低温域における線膨張
係数による影響や、結晶性重合体の結晶成長もしくは導
電性微粉末の凝集等による組成物の微細構造の影響を強
く受けるようになり、安定性に欠け、単品では実用に耐
えられるものではなくなる。しかし、この薄肉状正抵抗
温度係数抵抗体に対して、10Ωcm以上の比較的高い固有
抵抗値を有する導電性微粉末を多量に含有してなる、正
抵抗温度係数抵抗体とほぼ同一の抵抗値に調整された安
定性に優れた抵抗層を積層することにより、その複合薄
肉抵抗層は、合成抵抗値としてより安定な抵抗値を示す
ようになる。この複合薄肉抵抗層のそれぞれの対抗する
面に一対の電極を配置することにより、突入電力が調整
された、抵抗値の安定な正抵抗温度係数発熱体を構成す
ることができる。また、この複合薄肉抵抗層は、アニー
ル等の熱処理工程において、1μm以上の大きな粒子径
を有する導電性微粉末は拡散によって移行することな
く、当初の位置に留まる。万一、導電性微粉末が移行し
たとしても、非常に高抵抗の材料なので正抵抗温度係数
抵抗体の特性を左右することもない等の特長があり、そ
れぞれの機能を独立に保持することができるものであ
る。
実施例 以下、本発明の一実施例を添付図面にもとずいて説明
する。第1図において、6は厚さ0.5mmの正抵抗温度係
数抵抗体で、7は6の正抵抗温度係数抵抗体と一体に構
成された厚さ0.5mmの固定抵抗体である。8および9は
正抵抗温度係数抵抗体6もしくは固定抵抗体7に接合さ
れた一対の金属板電極であり、10は全体を絶縁被覆する
塩化ビニールの外装材である。正抵抗温度係数抵抗体6
は、高密度ポリエチレンにサーマルブラックを30重量%
混練することにより、ピーク抵抗値と常温抵抗値の比
が、6桁を上回る正抵抗温度特性を得たものを用いてい
る。固定抵抗体7は、高密度ポリエチレンに導電性の酸
化チタンを75重量%分散することにより正抵抗温度係数
抵抗体6とほぼ同等の抵抗値としたものを用いている。
酸化チタンは103Ωcmの固有抵抗値で、平均粒子径5μ
mのものを用いた。第1図のような構成の発熱体におい
て100Vを印加するためには、固有抵抗値が104Ωcmレベ
ルの非常に高抵抗が抵抗体に要求されるが、単に、カー
ボンブラックの添加量を調整するだけでは、突入電力に
対応する20℃の抵抗値と安定温度域である100℃の抵抗
値の変化倍率は15倍を大きく越え、固有抵抗値が100〜1
02Ωcmの場合の抵抗温度特性を平行移動することはでき
ない。
次に、本発明の有効性を調べるために、正抵抗温度係
数抵抗体6を2層重ねた場合と、高密度ポリエチレンに
ケッチェンブラックを混練することにより正抵抗温度係
数をほとんど無くした固定抵抗体と正抵抗温度係数体抵
抗6とを2層重ねた場合と、本発明の方式によるものと
の3者の比較実験を行った。そのアニール後の結果を第
2図に示している。図から明らかなように、正抵抗温度
係数抵抗体6を2層重ねた場合は、20℃と100℃の抵抗
値の変化倍率は15倍であるのに対して、本発明に基づく
場合は、8倍に改善されている。また、カーボンブラッ
ク系の固定抵抗体を用いた場合は、同じく8倍である
が、正抵抗温度特性のピーク抵抗値の値が2桁程低下し
ていて、2つの層の機能が独立でなくなったことを示し
ている。これは、電極体8および9を接合する際、ある
いは、アニールする際に、カーボンブラックが拡散した
結果であるものと思われる。
以上に示したように、本発明は、薄肉抵抗体構造の高
出力正抵抗温度係数発熱体の突入電力の低減に有効なも
のであるが、このような固定抵抗体の介在は、確固たる
抵抗値を固定化することになり、不安定な抵抗値領域で
使用される正抵抗温度係数発熱体の抵抗値の安定化に大
いに寄与するものである。
なお、正抵抗温度係数抵抗体を構成する材料として
は、高密度ポリエチレンとサーマルブラックとの組合わ
せに限定されるものではなく、中密度ポリエチレン,低
密度ポリエチレン,リニアポリエチレン,エチレン酢酸
ビニル共重合体,エチレンアクリル酸共重合体,アイオ
ノマ,ポリアミド,ポリ弗化ビニリデン,ポリエステル
等の結晶性樹脂、さらに、チャンネルブラック,ファー
ネスブラック,アセチレンブラックランプブラック等の
カーボンブラックの中で顕著な正抵抗温度特性を示す導
電材料との組合わせを用いても、同等の効果を有するも
のである。また、固定抵抗体に関しては、上記の結晶性
樹脂に接合可能な樹脂と、10Ωcm以上の固有抵抗値を有
し、正抵抗温度係数をほとんど生じ得ない導電性粒子と
の組合わせにおいて使用可能である。このような導電性
粒子としては、チタン酸カリウムのような無機繊維フィ
ラーに導電性酸化チタンを処理したものや、炭化珪素粉
末等、粒子状,繊維状,ポーラス状,中空状の様々な形
状の素材を用いることが可能である。また、抵抗値の組
合わせにおいても、固定抵抗体の抵抗値の比率を高める
ことによって、一層、抵抗値の安定化が可能であり、そ
の場合においても正抵抗温度係数発熱体の発熱特性には
余り影響がなく、むしろ、抵抗値の安定化の面に大きく
寄与する傾向が得られる。
発明の効果 以上に述べてきたように、正抵抗温度係数抵抗体材料
を非常に接近した電極間で発熱させることにより高出力
化を達成しようとする場合等に、半導体領域に近い固有
抵抗値を有する正抵抗温度係数抵抗体材料が必要となる
が、単に、組成比を調整しただけでは微粉末同志の接触
点の数が大幅に減少するために、正抵抗温度係数が異常
に増大したり、経時変化によって、抵抗値と抵抗温度特
性が大きく変動する等、不安定で実用に耐えられない発
熱体しか得られなかったが、本発明によれば、この点を
克服することが可能となった。その結果、電極間距離を
接近させることにより、高抵抗かつ高安定性の正抵抗温
度係数発熱体を実現することが可能となった。この構成
を用いた正抵抗温度係数発熱体は、突入時に比較して安
定時の電力が非常に大きくなる問題と、発熱温度並びに
電力の長期安定性の問題を解決することができ、発熱体
の用途として、パネルヒータや床暖房機器等の大出力機
器用途にも展開が可能となった。また、高出力化正抵抗
温度係数発熱体は装架率を低くすることが可能であるた
めに、大型機器を構成した場合にも、発熱体からの誘導
漏れ電流を低減することが可能であるという特長があ
る。これまで、この特長を有効に生かすことができなか
ったが、本発明によって、これも可能となった。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示すもので、正抵抗温度係
数発熱体の一部を切り出した斜視図である。第2図は本
発明に基づく抵抗体と従来技術に基づく抵抗体との抵抗
温度特性を比較した図である。第3図,第4図,第5図
は従来技術に基づく正抵抗温度係数発熱体の斜視図を示
すものである。 6……正抵抗温度係数抵抗体、7……固定抵抗体、8,9
……金属板電極、10……外装材。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】結晶性重合体組成物中に導電性微粉末を分
    散してなる薄肉正抵抗温度係数抵抗体層と、前記結晶性
    重合体に溶融密着可能な重合体中に10Ωcm以上の固有抵
    抗値を有するとともに1μm以上の粒子径を有する導電
    性微粉末を多量に分散してなる抵抗温度係数が比較的小
    さい薄肉抵抗体層とを電気的に直列に積層することによ
    り構成された薄肉積層抵抗体層と、前記薄肉積層抵抗体
    層の両面に設けられた一対の金属板電極と、これを外層
    する電気絶縁体とからなり、前記結晶性重合体及び前記
    結晶性重合体に溶融密着可能な前記重合体の融点以上で
    アニール熱処理されてなる正抵抗温度係数発熱体。
  2. 【請求項2】正通抵抗度係数抵抗体の体積固有抵抗値が
    103Ωcmよりも高抵抗値である特許請求の範囲第1項記
    載の正抵抗温度係数発熱体。
  3. 【請求項3】積層された薄肉抵抗体層の総厚さが1mm以
    下である特許請求の範囲第1項または第2項記載の正抵
    抗温度係数発熱体。
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