JP2613155B2 - 圧潰特性に優れた電縫油井管およびその製造方法 - Google Patents
圧潰特性に優れた電縫油井管およびその製造方法Info
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- JP2613155B2 JP2613155B2 JP23741392A JP23741392A JP2613155B2 JP 2613155 B2 JP2613155 B2 JP 2613155B2 JP 23741392 A JP23741392 A JP 23741392A JP 23741392 A JP23741392 A JP 23741392A JP 2613155 B2 JP2613155 B2 JP 2613155B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電縫鋼管の円周方向ヤ
ング率が一般的に知られている値21000(kgf/
mm2 )よりも高く、これに伴い圧潰特性に優れた電縫
油井管、およびその製造方法に関するものである。
ング率が一般的に知られている値21000(kgf/
mm2 )よりも高く、これに伴い圧潰特性に優れた電縫
油井管、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、油井は益々深井戸化しており、こ
れに伴い圧潰特性に優れた油井用鋼管に対する要求が高
まっている。また、耐圧潰特性が高くなることにより、
油井管の厚みを薄くすることが可能となり、これにより
油井の軽量化、すなわち鋼材の削減ができるので、この
点からも客先からは圧潰特性に優れた油井用鋼管に対す
る要求が大きくなっている。
れに伴い圧潰特性に優れた油井用鋼管に対する要求が高
まっている。また、耐圧潰特性が高くなることにより、
油井管の厚みを薄くすることが可能となり、これにより
油井の軽量化、すなわち鋼材の削減ができるので、この
点からも客先からは圧潰特性に優れた油井用鋼管に対す
る要求が大きくなっている。
【0003】圧潰特性に優れた電縫油井管に関する先行
技術文献としては、特開昭59−260442号公報が
ある。これは、電縫鋼管製造後低温での熱処理を行い、
歪時効を有効に利用することにより、パイプ内外表面部
の降伏強度を高め、これにより圧潰特性に優れた電縫油
井管を得ようとするものである。油井用鋼管の圧潰特性
を支配する要因として一般的に、降伏強度、残留応力、
真円度、偏肉度等が挙げられる。また、鋼のポアソン比
やヤング率についても圧潰特性を支配する要因と考えら
れている。上記先行技術を含め、鋼管の降伏強度、残留
応力、真円度、偏肉度等を改善して圧潰特性を向上しよ
うという試みは多数なされているが、鋼のポアソン比や
ヤング率を改善して鋼管の圧潰特性を向上しようという
試みは、まったくなされていなかった。これは、これら
の値が一般的に不変値とされていたからである。
技術文献としては、特開昭59−260442号公報が
ある。これは、電縫鋼管製造後低温での熱処理を行い、
歪時効を有効に利用することにより、パイプ内外表面部
の降伏強度を高め、これにより圧潰特性に優れた電縫油
井管を得ようとするものである。油井用鋼管の圧潰特性
を支配する要因として一般的に、降伏強度、残留応力、
真円度、偏肉度等が挙げられる。また、鋼のポアソン比
やヤング率についても圧潰特性を支配する要因と考えら
れている。上記先行技術を含め、鋼管の降伏強度、残留
応力、真円度、偏肉度等を改善して圧潰特性を向上しよ
うという試みは多数なされているが、鋼のポアソン比や
ヤング率を改善して鋼管の圧潰特性を向上しようという
試みは、まったくなされていなかった。これは、これら
の値が一般的に不変値とされていたからである。
【0004】一般に鋼のヤング率は、21000(kg
f/mm2 )と考えられている。冶金学的には、フェラ
イトの<111>方向のヤング率は29000(kgf
/mm2 )であることが知られているが、このフェライ
トの<111>方向を1方向に揃える技術がこれまでな
かったので、ヤング率を21000(kgf/mm2)
以上に向上することが不可能と考えられていた。
f/mm2 )と考えられている。冶金学的には、フェラ
イトの<111>方向のヤング率は29000(kgf
/mm2 )であることが知られているが、このフェライ
トの<111>方向を1方向に揃える技術がこれまでな
かったので、ヤング率を21000(kgf/mm2)
以上に向上することが不可能と考えられていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来から一
定値とされてきたヤング率(圧潰特性に影響を与えるの
は鋼管円周方向のヤング率)を積極的に高めることによ
り、圧潰特性を向上させる電縫油井管、およびその製造
方法を提供することを目的とするものである。
定値とされてきたヤング率(圧潰特性に影響を与えるの
は鋼管円周方向のヤング率)を積極的に高めることによ
り、圧潰特性を向上させる電縫油井管、およびその製造
方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、結晶方向
を<111>方向に整合させることにより、ヤング率を
高めることが可能であると考えた。即ち、コイルの直角
方向である鋼管の円周方向の結晶方位を<111>方向
に整合させることにより、この方向のヤング率を210
00(kgf/mm2 )よりも大きくし、これによって
電縫鋼管の圧潰特性を向上できることを見出した。
を<111>方向に整合させることにより、ヤング率を
高めることが可能であると考えた。即ち、コイルの直角
方向である鋼管の円周方向の結晶方位を<111>方向
に整合させることにより、この方向のヤング率を210
00(kgf/mm2 )よりも大きくし、これによって
電縫鋼管の圧潰特性を向上できることを見出した。
【0007】そこで本発明者らは、従来から一定値とさ
れてきたヤング率を向上するために、多数の実験と詳細
な検討を加えた結果、熱延での仕上圧延の条件が大きな
ポイントであることを見出した。つまり、熱延での仕上
圧延温度を、Ar3+150℃以下の、いわゆる低温仕
上圧延で、鋼の集合組織の形成を助長し、ヤング率が向
上することを見出した。また、仕上圧延温度をさらに下
げて、いわゆる2相域とした場合、さらに集合組織の形
成が助長されることを見出した。
れてきたヤング率を向上するために、多数の実験と詳細
な検討を加えた結果、熱延での仕上圧延の条件が大きな
ポイントであることを見出した。つまり、熱延での仕上
圧延温度を、Ar3+150℃以下の、いわゆる低温仕
上圧延で、鋼の集合組織の形成を助長し、ヤング率が向
上することを見出した。また、仕上圧延温度をさらに下
げて、いわゆる2相域とした場合、さらに集合組織の形
成が助長されることを見出した。
【0008】さらに、この時の圧下に関しては、ある程
度の強圧下でなければ効果はなく、その温度範囲での仕
上圧延での圧下率が50%以上必要なことも併せて明ら
かにした。また、これら集合組織形成によるヤング率向
上のメカニズムを詳細に調査した結果、この温度範囲で
仕上圧延を行った場合、{211}<110>フェライ
ト圧延安定方位が形成され、これにより熱延の幅方向に
<111>方位が整合されることがわかった。
度の強圧下でなければ効果はなく、その温度範囲での仕
上圧延での圧下率が50%以上必要なことも併せて明ら
かにした。また、これら集合組織形成によるヤング率向
上のメカニズムを詳細に調査した結果、この温度範囲で
仕上圧延を行った場合、{211}<110>フェライ
ト圧延安定方位が形成され、これにより熱延の幅方向に
<111>方位が整合されることがわかった。
【0009】さらに本発明者らは、この{211}<1
10>フェライト圧延安定方位が、そのX線回折の強度
比でI/I0 >2.0の際に顕著なヤング率の向上があ
ることも、併せて見出した。ここでI0 は、完全なラン
ダム方位を有した材料に対する{211}<110>フ
ェライト圧延安定方位のX線回折強度を示し、Iは上記
製造方法にて集合組織を有した材料の{211}<11
0>フェライト圧延安定方位のX線回折強度を示してい
る。
10>フェライト圧延安定方位が、そのX線回折の強度
比でI/I0 >2.0の際に顕著なヤング率の向上があ
ることも、併せて見出した。ここでI0 は、完全なラン
ダム方位を有した材料に対する{211}<110>フ
ェライト圧延安定方位のX線回折強度を示し、Iは上記
製造方法にて集合組織を有した材料の{211}<11
0>フェライト圧延安定方位のX線回折強度を示してい
る。
【0010】さらに付け加えるならば、上記製造方法に
て{211}<110>フェライト圧延安定方位が形成
される理由は、オーステナイト相の圧延集合組織とオー
ステナイト/フェライト変態の格子関係で説明できるこ
とも明らかにした。本発明は、このような知見に基づ
き、鋼管の円周方向ヤング率が高く、圧潰特性に優れた
電縫油井管の製造を可能にしたもので、その要旨とする
ところは下記のとおりである。 (1)低炭素鋼ホットコイルを素材として製造する電縫
鋼管において、X線回折での{211}<110>方位
の強度比がI/I0 >2.0であることを特徴とする圧
潰特性に優れた電縫油井管。 (2)電縫鋼管用素材としてホットコイルを製造するに
際して、その鋼のAr1〜Ar3+150℃温度範囲の仕
上圧延での累積圧延率を50%以上とすることを特徴と
する圧潰特性に優れた電縫油井管の製造方法。 (3)前項2の条件で製造したホットコイルを用いて成
形した電縫鋼管を、200〜600℃の温度範囲で焼き
戻しすることを特徴とする圧潰特性に優れた電縫油井管
の製造方法。
て{211}<110>フェライト圧延安定方位が形成
される理由は、オーステナイト相の圧延集合組織とオー
ステナイト/フェライト変態の格子関係で説明できるこ
とも明らかにした。本発明は、このような知見に基づ
き、鋼管の円周方向ヤング率が高く、圧潰特性に優れた
電縫油井管の製造を可能にしたもので、その要旨とする
ところは下記のとおりである。 (1)低炭素鋼ホットコイルを素材として製造する電縫
鋼管において、X線回折での{211}<110>方位
の強度比がI/I0 >2.0であることを特徴とする圧
潰特性に優れた電縫油井管。 (2)電縫鋼管用素材としてホットコイルを製造するに
際して、その鋼のAr1〜Ar3+150℃温度範囲の仕
上圧延での累積圧延率を50%以上とすることを特徴と
する圧潰特性に優れた電縫油井管の製造方法。 (3)前項2の条件で製造したホットコイルを用いて成
形した電縫鋼管を、200〜600℃の温度範囲で焼き
戻しすることを特徴とする圧潰特性に優れた電縫油井管
の製造方法。
【0011】
【作用】本発明においては、電縫鋼管用素材において集
合組織を発達させ、X線回折での{211}<110>
方位の強度比をI/I0 >2.0とすることによって鋼
管の円周方向のヤング率を高くし、結果として電縫鋼管
の圧潰特性を向上することに成功している。{211}
<110>方位のX線回折強度比をI/I0 >2.0に
規定したのは、{211}<110>方位のX線回折強
度比がI/I0 ≦2.0では集合組織が充分発達せず、
結果としてヤング率および圧潰特性の向上が得られない
ことに基づくものである。
合組織を発達させ、X線回折での{211}<110>
方位の強度比をI/I0 >2.0とすることによって鋼
管の円周方向のヤング率を高くし、結果として電縫鋼管
の圧潰特性を向上することに成功している。{211}
<110>方位のX線回折強度比をI/I0 >2.0に
規定したのは、{211}<110>方位のX線回折強
度比がI/I0 ≦2.0では集合組織が充分発達せず、
結果としてヤング率および圧潰特性の向上が得られない
ことに基づくものである。
【0012】次に本発明の熱延の条件、および電縫鋼管
の製造条件について述べる。上記成分の鋼を熱間仕上圧
延するに際して、加熱条件についてはAc3温度以上、
望ましくは1000〜1300℃であるが、熱間仕上圧
延を行うに際して、Ar3+150℃〜Ar1での累積圧
下率を少なくとも50%は確保する必要がある。これは
本発明の主旨が、フェライト圧延集合組織の発達にある
ことから必要不可欠の条件であり、Ar3+150℃超
で熱延仕上圧延を完了するか、Ar3+150℃以下で
仕上げてもその温度域での仕上圧延での累積圧下率が5
0%未満の場合は、フェライト圧延安定方位である{2
11}<110>は充分に発達せず、圧潰特性が不十分
である。また熱延仕上圧延温度の下限はAr1温度であ
り、この温度未満では低温圧延による再結晶組織が生成
し易く、これによりフェライト圧延安定方位である{2
11}<110>組織が消失して、本発明の効果が得ら
れない。
の製造条件について述べる。上記成分の鋼を熱間仕上圧
延するに際して、加熱条件についてはAc3温度以上、
望ましくは1000〜1300℃であるが、熱間仕上圧
延を行うに際して、Ar3+150℃〜Ar1での累積圧
下率を少なくとも50%は確保する必要がある。これは
本発明の主旨が、フェライト圧延集合組織の発達にある
ことから必要不可欠の条件であり、Ar3+150℃超
で熱延仕上圧延を完了するか、Ar3+150℃以下で
仕上げてもその温度域での仕上圧延での累積圧下率が5
0%未満の場合は、フェライト圧延安定方位である{2
11}<110>は充分に発達せず、圧潰特性が不十分
である。また熱延仕上圧延温度の下限はAr1温度であ
り、この温度未満では低温圧延による再結晶組織が生成
し易く、これによりフェライト圧延安定方位である{2
11}<110>組織が消失して、本発明の効果が得ら
れない。
【0013】以上の工程を経た後、空冷あるいは強制冷
却してコイルに捲き取られるが、その捲き取り温度に関
しては特に規定はない。ただ、あまり高温で捲き取る
と、集合組織の消失する可能性があるので、捲き取り温
度は720℃以下が望ましい。仕上圧延から捲き取りま
での冷却速度に関しては制限はなく、通常の熱間仕上圧
延で用いられる冷却速度の範囲内であれば許容される。
却してコイルに捲き取られるが、その捲き取り温度に関
しては特に規定はない。ただ、あまり高温で捲き取る
と、集合組織の消失する可能性があるので、捲き取り温
度は720℃以下が望ましい。仕上圧延から捲き取りま
での冷却速度に関しては制限はなく、通常の熱間仕上圧
延で用いられる冷却速度の範囲内であれば許容される。
【0014】ホットコイルから成形して電縫鋼管を製造
するわけであるが、その製造方法に関しても特に制限は
ない。ところで、以上の方法で製造された電縫鋼管のう
ち、鋼種によっては靭性の良くないものがあり、靭性改
善のために電縫鋼管成形後、焼き戻し処理の必要な場合
がある。その際、焼き戻し温度としては、あまり高温で
焼き戻すと集合組織を消失させるため、上限を600℃
とした。しかし、焼き戻し温度が低くて200℃未満に
なるとほとんど焼き戻しの効果がなくなり、靭性が改善
されない場合があるため、その下限を200℃とした。
するわけであるが、その製造方法に関しても特に制限は
ない。ところで、以上の方法で製造された電縫鋼管のう
ち、鋼種によっては靭性の良くないものがあり、靭性改
善のために電縫鋼管成形後、焼き戻し処理の必要な場合
がある。その際、焼き戻し温度としては、あまり高温で
焼き戻すと集合組織を消失させるため、上限を600℃
とした。しかし、焼き戻し温度が低くて200℃未満に
なるとほとんど焼き戻しの効果がなくなり、靭性が改善
されない場合があるため、その下限を200℃とした。
【0015】また、600℃超の温度に再加熱されるノ
ルマ処理やQT処理は集合組織を消失させるため、上記
特性を得ることはできない。本発明は低炭素鋼に適用し
て好結果を得ることができる。好ましい成分組成として
は、 C :0.03〜0.30% Si:0.02〜0.50% Mn:0.50〜2.00% Al:0.001〜0.100% N :0.0005〜0.0100% を基本成分とする低炭素鋼、または前記基本成分の他に
強度鋼の要求特性によって、 Cu:2.0%以下 Ni:9.5%以下 Cr:5.5%以下 Mo:2.0%以下 Nb:0.15%以下 V :0.3%以下 Ti:0.15%以下 B :0.0003〜0.0030% Ca:0.0080%以下 の1種または2種以上を添加してもよい。
ルマ処理やQT処理は集合組織を消失させるため、上記
特性を得ることはできない。本発明は低炭素鋼に適用し
て好結果を得ることができる。好ましい成分組成として
は、 C :0.03〜0.30% Si:0.02〜0.50% Mn:0.50〜2.00% Al:0.001〜0.100% N :0.0005〜0.0100% を基本成分とする低炭素鋼、または前記基本成分の他に
強度鋼の要求特性によって、 Cu:2.0%以下 Ni:9.5%以下 Cr:5.5%以下 Mo:2.0%以下 Nb:0.15%以下 V :0.3%以下 Ti:0.15%以下 B :0.0003〜0.0030% Ca:0.0080%以下 の1種または2種以上を添加してもよい。
【0016】Cは鋼材の強度を高める作用があり、0.
03%以上添加されるが、0.30%を超えて添加され
ると靭性を著しく劣化するため、その含有量を0.03
〜0.30%とした。Siは固溶体強化作用があり、鋼
材の強度および延性を改善する作用があり、0.02%
以上添加されるが、0.50%を超えて添加されると鋼
材の靭性を劣化するため、その含有量を0.02〜0.
50%とした。
03%以上添加されるが、0.30%を超えて添加され
ると靭性を著しく劣化するため、その含有量を0.03
〜0.30%とした。Siは固溶体強化作用があり、鋼
材の強度および延性を改善する作用があり、0.02%
以上添加されるが、0.50%を超えて添加されると鋼
材の靭性を劣化するため、その含有量を0.02〜0.
50%とした。
【0017】MnもCと同様、鋼材の強度を高める作用
があり、0.50%以上添加されるが、その含有量が
2.00%を超えると製鋼作業を困難として経済的でな
いばかりでなく、溶接性を阻害することから、その含有
量を0.50〜2.00%とした。Alは製鋼段階の脱
酸のために必要であり、その下限を0.001%とし
た。また、0.100%を超えて添加されると介在物の
量を増加して鋼の清浄性が失われること、および製鋼作
業に支障をきたすことなどから、その範囲を0.001
〜0.100%とした。
があり、0.50%以上添加されるが、その含有量が
2.00%を超えると製鋼作業を困難として経済的でな
いばかりでなく、溶接性を阻害することから、その含有
量を0.50〜2.00%とした。Alは製鋼段階の脱
酸のために必要であり、その下限を0.001%とし
た。また、0.100%を超えて添加されると介在物の
量を増加して鋼の清浄性が失われること、および製鋼作
業に支障をきたすことなどから、その範囲を0.001
〜0.100%とした。
【0018】Nは一般に不可避的不純物として鋼中に含
まれるものであるが、あまり低Nを狙うと製鋼上のコス
トが著しく増加するため、その下限を0.0005%と
した。またN量が増加すると鋼材の溶接性を劣化し、ま
た連続鋳造スラブの表面キズの発生等を助長するため、
その上限を0.0100%とした。Cuは強度上昇、耐
食性向上に有用で添加されるが、2.0%を超えて添加
しても強度の上昇代がほとんどなくなるので、含有量の
上限は2.0%とする。
まれるものであるが、あまり低Nを狙うと製鋼上のコス
トが著しく増加するため、その下限を0.0005%と
した。またN量が増加すると鋼材の溶接性を劣化し、ま
た連続鋳造スラブの表面キズの発生等を助長するため、
その上限を0.0100%とした。Cuは強度上昇、耐
食性向上に有用で添加されるが、2.0%を超えて添加
しても強度の上昇代がほとんどなくなるので、含有量の
上限は2.0%とする。
【0019】Niは低温靭性の改善に有用で添加される
が、高価な元素であるため含有量は9.5%を上限とす
る。Crは強度上昇や耐食性向上に有用で添加される
が、多くなると低温靭性、溶接性を阻害するため、含有
量は5.5%を上限とする。Moは強度上昇に有用であ
るが、多くなると溶接性を阻害するため、含有量は2.
0%を上限とする。
が、高価な元素であるため含有量は9.5%を上限とす
る。Crは強度上昇や耐食性向上に有用で添加される
が、多くなると低温靭性、溶接性を阻害するため、含有
量は5.5%を上限とする。Moは強度上昇に有用であ
るが、多くなると溶接性を阻害するため、含有量は2.
0%を上限とする。
【0020】Nbはオーステナイト粒の細粒化や強度上
昇に有用で添加されるが、多くなると溶接性を阻害する
ので含有量の上限は0.15%とする。Vは析出強化に
有用であるが、多くなると溶接性を阻害するため、含有
量は0.3%を上限とする。Tiはオーステナイト粒の
細粒化に有用で添加されるが、多くなると溶接性を阻害
するため、含有量は0.15%を上限とする。
昇に有用で添加されるが、多くなると溶接性を阻害する
ので含有量の上限は0.15%とする。Vは析出強化に
有用であるが、多くなると溶接性を阻害するため、含有
量は0.3%を上限とする。Tiはオーステナイト粒の
細粒化に有用で添加されるが、多くなると溶接性を阻害
するため、含有量は0.15%を上限とする。
【0021】Bは微量の添加によって、鋼の焼入性を著
しく高める効果を有する。この効果を有効に得るために
は、少なくとも0.0003%を添加することが必要で
ある。しかし、過多に添加するとB化合物を生成して靭
性を劣化させるので、上限は0.0030%とする。C
aは硫化物系介在物の形態制御に有用で添加されるが、
多くなると鋼中介在物を形成して鋼の性質を悪化させる
ため、含有量は0.0080%を上限とする。
しく高める効果を有する。この効果を有効に得るために
は、少なくとも0.0003%を添加することが必要で
ある。しかし、過多に添加するとB化合物を生成して靭
性を劣化させるので、上限は0.0030%とする。C
aは硫化物系介在物の形態制御に有用で添加されるが、
多くなると鋼中介在物を形成して鋼の性質を悪化させる
ため、含有量は0.0080%を上限とする。
【0022】このようにして得られた電縫鋼管は、一般
的なヤング率21000(kgf/mm2 )に対して、
鋼管円周方向のヤング率を最大で10%程度向上させる
ことができる。
的なヤング率21000(kgf/mm2 )に対して、
鋼管円周方向のヤング率を最大で10%程度向上させる
ことができる。
【0023】
【実施例】表1に供試材の化学成分を示し、表2に鋼管
の熱延条件と、得られた鋼管の円周方向ヤング率、圧潰
圧力を示す。この時、鋼管のサイズはすべて、外径33
9.7mm、肉厚9.6mmに統一した。
の熱延条件と、得られた鋼管の円周方向ヤング率、圧潰
圧力を示す。この時、鋼管のサイズはすべて、外径33
9.7mm、肉厚9.6mmに統一した。
【0024】また、ヤング率の測定に関しては、共振法
と鋼の音速測定法の2種を採用し、両者の測定値がほぼ
同一であることを確認した。また{211}<110>
方位の強度比の測定には、X線回折法を用いた。表2で
示した鋼管No.A1、B1、C1、D1、E1、F
1、G1、H1、I1、J1、K1、L1、M1、N
1、O1、P1、Q1、R1、S1、T1、U1、V1
はそれぞれ本発明実施鋼であり、{211}<110>
方位の強度比をI/I0 >2.0として、本発明の狙い
とする鋼管周方向ヤング率向上(約10%)と、それに
よる圧潰圧力の向上を達成している。
と鋼の音速測定法の2種を採用し、両者の測定値がほぼ
同一であることを確認した。また{211}<110>
方位の強度比の測定には、X線回折法を用いた。表2で
示した鋼管No.A1、B1、C1、D1、E1、F
1、G1、H1、I1、J1、K1、L1、M1、N
1、O1、P1、Q1、R1、S1、T1、U1、V1
はそれぞれ本発明実施鋼であり、{211}<110>
方位の強度比をI/I0 >2.0として、本発明の狙い
とする鋼管周方向ヤング率向上(約10%)と、それに
よる圧潰圧力の向上を達成している。
【0025】これに対し、A2、B2、C2、D2、E
2、F2は、Ar3+150℃〜Ar1の仕上圧延での累
積圧下率が50%未満のため集合組織が発達せず({2
11}<110>方位のX線回折強度比がI/I0 ≦
2.0)、ヤング率が低く、圧潰圧力が高くない。
2、F2は、Ar3+150℃〜Ar1の仕上圧延での累
積圧下率が50%未満のため集合組織が発達せず({2
11}<110>方位のX線回折強度比がI/I0 ≦
2.0)、ヤング率が低く、圧潰圧力が高くない。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【発明の効果】以上詳細に説明した通り、本発明は電縫
鋼管の円周方向ヤング率が従来知られている21000
(kgf/mm2 )よりも約10%高く、圧潰特性に優
れた電縫油井管およびその製造方法を提供するものであ
る。本発明では、電縫鋼管の円周方向ヤング率を高める
ことにより圧潰特性を向上させるため、これまでは鋼管
の寸法(外径、肉厚)によってのみ左右されていた弾性
域サイズの鋼管に対しても非常に効果的である。
鋼管の円周方向ヤング率が従来知られている21000
(kgf/mm2 )よりも約10%高く、圧潰特性に優
れた電縫油井管およびその製造方法を提供するものであ
る。本発明では、電縫鋼管の円周方向ヤング率を高める
ことにより圧潰特性を向上させるため、これまでは鋼管
の寸法(外径、肉厚)によってのみ左右されていた弾性
域サイズの鋼管に対しても非常に効果的である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 E21B 17/00 E21B 17/00
Claims (3)
- 【請求項1】 低炭素鋼ホットコイルを素材として製造
する電縫鋼管において、X線回折での{211}<11
0>方位の強度比がI/I0 >2.0であることを特徴
とする圧潰特性に優れた電縫油井管。 - 【請求項2】 電縫鋼管用素材としてホットコイルを製
造するに際して、その鋼のAr1〜Ar3+150℃温度
範囲の仕上圧延での累積圧延率を50%以上とすること
を特徴とする圧潰特性に優れた電縫油井管の製造方法。 - 【請求項3】 請求項2の条件で製造したホットコイル
を用いて成形した電縫鋼管を、200〜600℃の温度
範囲で焼き戻しすることを特徴とする圧潰特性に優れた
電縫油井管の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23741392A JP2613155B2 (ja) | 1991-09-07 | 1992-09-04 | 圧潰特性に優れた電縫油井管およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22751591 | 1991-09-07 | ||
JP3-227515 | 1991-09-07 | ||
JP23741392A JP2613155B2 (ja) | 1991-09-07 | 1992-09-04 | 圧潰特性に優れた電縫油井管およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05212439A JPH05212439A (ja) | 1993-08-24 |
JP2613155B2 true JP2613155B2 (ja) | 1997-05-21 |
Family
ID=26527727
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP23741392A Expired - Lifetime JP2613155B2 (ja) | 1991-09-07 | 1992-09-04 | 圧潰特性に優れた電縫油井管およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2613155B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3263348B2 (ja) * | 1997-10-07 | 2002-03-04 | 住友鋼管株式会社 | 非熱処理型高加工性電縫鋼管の製造方法 |
KR100514119B1 (ko) * | 2000-02-28 | 2005-09-13 | 신닛뽄세이테쯔 카부시키카이샤 | 성형성이 우수한 강관 및 그의 제조방법 |
JP4654818B2 (ja) * | 2005-07-29 | 2011-03-23 | Jfeスチール株式会社 | 高剛性鋼管およびその製造方法 |
-
1992
- 1992-09-04 JP JP23741392A patent/JP2613155B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH05212439A (ja) | 1993-08-24 |
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