JP2607219B2 - 紙の製造方法 - Google Patents

紙の製造方法

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JP2607219B2
JP2607219B2 JP5502175A JP50217593A JP2607219B2 JP 2607219 B2 JP2607219 B2 JP 2607219B2 JP 5502175 A JP5502175 A JP 5502175A JP 50217593 A JP50217593 A JP 50217593A JP 2607219 B2 JP2607219 B2 JP 2607219B2
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    • D21H21/00Non-fibrous material added to the pulp, characterised by its function, form or properties; Paper-impregnating or coating material, characterised by its function, form or properties
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、製紙に際して濾水ならびに歩留りを改善す
るにあたって、デンプン、セルロース誘導体あるいはグ
アールガムをベースとし、かつ陽イオン基を有さない陰
イオン歩留り向上剤と、アルミニウム化合物の酸性溶液
とを、リグノセルロース含有繊維をが有し、必要に応じ
て填料も含有する紙料に加える方法に関するものであ
る。紙料中に所望の陽イオン性水酸化アルミニウム錯体
を形成するには、アルミニウム化合物を加える前の紙料
のpHを約6以上としておく必要がある。本発明は、原則
削減に役立ち、かつ白水中のカルシウム含量に関わりな
く用いることが可能である。
背景技術 紙の製造にあたっては、製紙用繊維、水、そして通常
一種以上の添加剤から構成される紙料が、抄紙機のヘッ
ドボックスに供給される。ヘッドボックスは、紙料をす
き網(ワイヤー)の幅方向に均一に分配して、濾水、圧
搾、ならびに乾燥による均一な紙のウェブの形成を可能
とする。紙料のpHは、所定の質の紙を製造し、添加剤を
選択するうえで重要である。この十年で、世界各地の多
数の製紙工場が、酸性の紙料から、中性あるいはアルカ
リ性の条件へと転換した。これは、こうした転換を行う
と、炭酸カルシウムを填料として使用して、白色度の高
い紙を極めて競争力の高い価格で製造できることによる
ものである。
紙を製造する際には、濾水ならびに歩留りが優れてい
ることが望ましい。濾水(脱水)が優れているというこ
とは、抄紙機のスピードを上昇することができ、かつ/
または、その後の圧搾ならびに乾燥部でのエネルギー消
費量を削減しうることを意味している。また、微細繊
維、填料、ならびにサイズ剤等の添加剤の歩留りが優れ
ていると、それらの添加量を削減し、白水のリサイクル
を簡素化することが可能となる。
製紙にあたっての主要成分である繊維ならびに大半の
填料は、その性質上負の表面電荷を帯びており、すなわ
ちそれらは陰イオン性である。こうした電荷の正味の値
ならびに分布を変更することによって、濾水ならびに歩
留り効果を改善することがすでに知られている。通常、
陰イオン性であるセルロース含有繊維を強く引きつける
という理由で、陽イオン基を導入したデンプンを紙料に
加えることが行われてきた。しかし、白水が硬質である
製紙工場では、この陽イオンデンプンとカルシウムイオ
ンとが、陰イオン部位に対して拮抗してしまうので、こ
の効果は低減していた。最適な効果を得るには、デンプ
ン中の陽イオン基と陰イオン基との間のバランスを適当
なものとすることが必要であると考えられてきた。陽イ
オン基と陰イオン基の両方が導入されたデンプンは両性
であると称され、製紙では周知のものである。
陽イオンジャガイモデンプンまたは両性デンプンをア
ルミニウム化合物と組み合わせて、こうした効果をさら
に向上させることが以前から公知である。アール.トル
クサク(R.Trksak)によるタッピ・ペーパーメーカーズ
・カンファレンス1990(Tappi Papermakers Conference
1990)、第229〜237頁では、陽イオンジャガイモデン
プンあるいは両性トウモロコシデンプンと、ポリ塩化ア
ルミニウム(PAC)、ミョウバンあるいは塩化アルミニ
ウムとからなる系を使用して、アルカリ性条件下での濾
水ならびに歩留りを改善している。ピー.エイチ.ブル
ーワー(P.H.Brouwer)によるタッピー.ジャーナル(T
appi Journal)、74(1)、第170〜179ページ(1991
年)では、ミョウバンを陰イオンデンプン(アニオンデ
ンプン)と組み合わせて、濾水、ならびに包装用紙の光
沢および強さを改善している。この事例では、パルプな
らびに白水のpHは4.4であり、ミョウバンの添加量はパ
ルプ1トンあたり50kgである。
発明の開示 本発明は、製紙の際に、濾水ならびに微細繊維、填
料、サイズ剤などの添加剤の歩留りを改善するにあたっ
て、リグノセルロース含有繊維の紙料に、陽イオン基を
有さない陰イオン歩留り向上剤と、アルミニウム化合物
の酸性溶液とを加える方法に関するものである。
このように、本発明は、リグノセルロース含有繊維を
含有し、必要に応じて填料も含有する紙料を、すき網上
で紙層形成しかつ濾水することにより紙を製造するにあ
たって、デンプン、セルロース誘導体あるいはグアール
ガムをベースとし、かつ陽イオン基を有さない陰イオン
歩留り向上剤と、アルミニウム化合物の酸性溶液とを上
記紙料に加え、その際、アルミニウム化合物を添加する
前の上記紙料のpHを約6〜約11の範囲とする方法に関す
るものである。
本発明では、アルミニウム化合物を含有する酸性溶液
を、pHを約6以上とした紙料に加えると、紙料中で生成
した陽イオン性水酸化アルミニウム錯体と、歩留り向上
剤ならびにセルロース繊維の陰イオン基との間に相互作
用を生じさせうることを見いだした。
上述したように、従来、製紙においては陽イオン基を
導入したデンプンが使用されてきた。しかし、陽イオン
基、たとえば第三級アミノ基あるいは第四級アンモニウ
ム基を導入するよりは、陰イオン基、たとえば燐酸基を
導入する方がはるかに簡単かつ安価であるので、陰イオ
ンデンプンを使用する方が有利である。本発明では、陽
イオン基を有さない陰イオン歩留り向上剤(好ましくは
陰イオンデンプン)を、アルミニウム化合物を含有する
酸性溶液と組み合わせて使用すると、中性あるいはアル
カリ性紙料において、高率かつ経済性の高い濾水ならび
に歩留りを実現しうることを見いだした。
これらの成分は、任意の順序で紙料に加えることがで
きる。陽イオン性水酸化アルミニウム錯体は、リグノセ
ルロース含有繊維の存在下で生成するのが好ましい。し
たがって、本発明は特に、歩留り向上剤ならびにアルミ
ニウム化合物を、リグノセルロース含有繊維の紙料に添
加する際に、この添加を、必要に応じて加える填料の添
加とは別に行う方法に関するものでる。歩留り向上剤の
紙料への添加も、アルミニウム化合物の紙料への添加と
は別に行うことが好ましい。陽イオン基を有さない陰イ
オン歩留り向上剤をまず加えてから、アルミニウム化合
物を含有する酸性溶液を加えた場合にも、従来技術の方
法と比べると相当の改善が得られる。しかしながら、最
良の効果が得られるのは、アルミニウム化合物をまず紙
料に加えておいてから、陰イオン歩留り向上剤を加えた
場合である。紙料に、アルミニウム化合物ならびに陰イ
オン歩留り向上剤のみならず、陽イオン無機コロイドも
加える場合には、アルミニウム化合物の添加後に、無機
コロイドを加えるのが適当である。まずアルミニウム化
合物を加えておいてから歩留り向上剤ならびに第三の成
分としての陽イオン無機コロイドを加えるのが好適であ
る。
本発明の方法で使用する陰イオン歩留り向上剤は、デ
ンプン、セルロース誘導体およびグアールガムよりなる
群から選ばれるポリサッカライド(多糖)をベースとす
るものである。陽イオン基を有さない陰イオン歩留り向
上剤は、負に帯電した基(陰イオン基)を含み、導入さ
れた陽イオン基は含まない。セルロース誘導体の例とし
ては、カルボキシアルキルセルロース、たとえばカルボ
キシメチルセルロース(CMC)を挙げることができる。
陰イオン歩留り向上剤としては、陰イオンデンプンが好
ましい。本発明の利点は、ボリサッカライドをベースと
しかつ陽イオン基を有さない陰イオン歩留り向上剤がい
ずれのものであっても達せられるのではあるが、以下の
記載では、本発明を、陰イオンデンプンを使用した場合
について説明する。
陰イオン基は、もともと存在していたものでも、化学
処理によって導入したものでもよく、燐酸基、ホスホン
酸基、硫酸基、スルホン酸基あるいはカルボン酸の基と
するのが適当である。上記陰イオン基は、燐酸基とする
のが好適で、これは、かかる基の導入が比較的安価であ
るからである。また、燐酸基の陰イオン電荷密度が高い
ので、陽イオン性水酸化アルミニウム錯体に対する反応
性が増大する。
デンプン中の陰イオン基、特に燐酸基の量は、濾水な
らびに歩留り効果に影響を及ぼす。デンプン中の燐の総
量は、燐が、共有結合した燐酸基中ならびに脂質中に内
在しているので、陰イオン基の量の目安としては不適当
である。脂質としては数多くの脂肪物質があり、デンプ
ンの場合には、燐脂質、とくにリゾ燐脂質が重要であ
る。このように、燐の含量としては、デンプンのアミロ
ペクチンに共有結合した燐酸基中の燐の量を示す。燐の
含量は、乾燥物質で、燐を約0.01〜約1%の範囲とする
のが適当である。上限は、必ずしもこの値に限定されな
いものの、経済上の利用からこの値を選んだものであ
る。燐の含量は、乾燥物質で、燐を0.04〜0.4%の範囲
とするのが好適である。
陰イオンデンプンは、農産物、たとえばジャガイモ、
トウモロコシ、オオムギ、コムギ、タピオカ、キャッサ
バ、ソルガムあるいは米から製造することも、精製物、
たとえばワクシーメイズ(waxy maize)から製造するこ
ともできる。陰イオン基は、もともと存在するもので
も、化学処理によって導入したものでもよい。ジャガイ
モデンプンを使用するのが適当で、天然(native)のジ
ャガイモデンプンを使用するのが好適である。これは、
そのジャガイモデンプンには、共有結合した燐酸モノエ
ステル基が相当量含まれ(乾燥物質で約0.06〜約0.1%
の範囲の燐)、脂質の含量が極めて少ない(乾燥物質で
約0.05%)からである。本発明の別の好適な実施態様
は、燐酸化ジャガイモデンプンを使用することである。
本発明で使用するアルミニウム化合物は、それ自体
は、製紙の際に使用することが公知である。紙料中で加
水分解して陽イオン性水酸化アルミニウム錯体を生成し
うるものであれば、任意のアルミニウム化合物を使用す
ることができる。アルミニウム化合物は、ミョウバン、
塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムあるいはポリアル
ミニウム化合物とするのが適当である。ポリアルミニウ
ム化合物は、中性あるいはアルカリ性条件下で、ミョウ
バン、塩化アルミニウムならびに硝酸アルミニウムよ
り、陽イオン電荷の強度ならびに安定性がより顕著であ
る。したがって、アルミニウム化合物は、ポリアルミニ
ウム化合物とするのが好適である。
適当な化合物の例としては、一般式 Aln(OH)mX3n-m (I) を有するポリアルミニウム化合物を挙げることができ
る。式中、Xは、負のイオン、たとえばCl-、NO3 -ある
いはCH3COO-であり、nおよびmは、それぞれ、3n−m
が0より大であるような正の数である。XはCl-である
のが好ましく、この種のポリアルミニウム化合物はポリ
塩化アルミニウム(PAC)として知られている。これら
の化合物は、水溶液中で、加水分解アルミニウムイオン
の多核錯体を生成する。この錯体の構成は、たとえば、
濃度ならびにpHに左右される。
ポリアルミニウム化合物は、硝酸、燐酸、ポリ燐酸、
クロム酸、重クロム酸、珪酸、クエン酸、ショウ酸、カ
ルボン酸あるいはスルホン酸由来の陰イオンを含有する
こともできる。このさらに含有される陰イオンは硫酸イ
オンであるのが好適である。好適な硫酸含有ポリアルミ
ニウム化合物の例としては、ポリクロロ硫酸アルミニウ
ムがある。
ポリアルミニウム化合物は、塩基性であると規定され
る。なお、塩基性度は下記の比 塩基性度=m/3n*100 (II) として定義され、ここでnおよびmは、式Iで定義した
とおりの正の数である。上記塩基性度は、10〜90%の範
囲とするのが適当であり、20〜85%の範囲とするのが好
適である。
市販のポリアルミニウム化合物の例としては、スウェ
ーデン国のエカ・ノーベル社(Eka Nobel AB)が製造、
販売しているエコフロック(Ekoflock)が挙げられる。
この化合物の塩基性度は約25%で、硝酸塩ならびにアル
ミニウムの含量は、それぞれ約1.5ならびに10重量%で
ある(アルミニウムの含量はAl2O3換算である)。水溶
液中での優勢な錯体はAl3(OH)4 5+であり、このイオン
は、低度あるいは高度に希釈されると、Al13O4(OH)24
7+に転化される。非加水分解アルミニウム化合物、たと
えばAl(H2O)6 3+も存在している。
市販のこの種の化合物のもっと別の例としては、ドイ
ツ国のザクトレーベン化学(Sachtleben Chemie)から
販売されている、硫酸を含有しないザクトクラール(Sa
chtoklar:登録商標)、フランス国のアトケム(Atoche
m)から販売されている、硫酸を含有するダブリュー・
エイ・シー(WAC)、ならびにドイツ国のヘキスト社(H
oechst AG)から販売されている、高度に塩基性のポリ
塩化アルミニウム化合物、ロクロン(Locron)がある。
アルミニウム化合物の添加によって生じる効果は、紙
料のpH、ならびにアルミニウム化合物を含有する溶液の
pHによっても大きく左右される。本発明では、紙料のpH
を約6〜約11の範囲としてアルミニウム化合物を加える
と、濾水速度ならびに歩留り度が著しく増大する。アル
ミニウム化合物の添加の前の紙料のpHは、6〜10の範囲
とするのが適当で、6.5〜10の範囲とするのがさらに適
当である。さらに、アルミニウム化合物の添加の前の紙
料のpHを、6.5〜9.5の範囲とするのが好適で、7〜9の
範囲とするのがさらに好適である。
アルミニウム化合物の添加後の紙料のpHは、紙料の緩
衝効果に応じて、約6〜約10の範囲とする必要がある。
アルミニウム化合物の添加後の紙料のpHは、6.5〜9.5の
範囲とするのが適当であり、アルミニウム化合物の添加
後の紙料のpHを7〜9の範囲とするのが好適である。
紙料が中性あるいはアルカリ性の場合には、紙料への
添加時に陽イオン性水酸化アルミニウム錯体を生成させ
るうえで、アルミニウム化合物を含有する溶液のpHを酸
性とする必要がある。該溶液のpHは、約5.5未満とする
のが適当で、pHを1〜5の範囲とするのが好適である。
生成した各種の水酸化アルミニウム錯体が有する陽イ
オンの電荷は、時間の経過とともに低減し、この傾向
は、白水中のカルシウム含量が低い場合に特に顕著であ
る。陽イオンとしての性質が失われることの影響は、微
細繊維ならびに添加剤の歩留りの方に特に顕著にあらわ
れるものの、濾水にも影響が及ぶ。したがって、アルミ
ニウム化合物の添加は、紙料がすき網に流入して紙を形
成する直前に行うことが重要である。アルミニウム化合
物の紙料への添加は、紙料がすき網に流入して紙を形成
する前の約5分以内に行うのが適当である。アルミニウ
ム化合物の紙料への添加は、紙料がすき網に流入して紙
を形成する前の2分以内に行うのが好適である。
陰イオン歩留り向上剤の添加量は、乾燥繊維ならびに
必要に応じて加える填料に基づいて、約0.05〜約10重量
%の範囲とすることができる。陰イオン歩留り向上剤の
量は、乾燥繊維ならびに必要に応じて加える填料に基づ
いて、0.1〜5重量%の範囲とするのが適当で、0.2〜3
重量%の範囲とするのが好適である。
アルミニウム化合物の添加量は、乾燥繊維ならびに必
要に応じて加える填料に基づいて、Al2O3換算で、約0.0
01〜約0.5重量%の範囲とすることができる。アルミニ
ウム化合物の添加量は、乾燥繊維ならびに必要に応じて
加える填料に基づいて、Al2O3換算で、約0.001〜約0.2
重量%の範囲とするのが適当である。
白水中のカルシウムおよび/またはマグネシウムイオ
ンの含量が高い製紙工場では、品質の良い紙を効率的に
製造するのが往々にして困難である。製紙の際はマグネ
シウムの含量は通常低いので、カルシウムイオンの存在
に起因する問題が残ることになる。白水の場合、こうし
た正のイオンは水道水、石膏のような添加剤、および/
またはパルプ(たとえば、脱インキパルプを使用した場
合)に由来する可能性がある。カルシウムイオンは、繊
維、微細繊維、ならびに填料に吸着することによって、
陰イオン部位を中和してしまう。その結果、繊維の膨潤
が制限され、水素結合が不十分となって、生成する紙の
強度が低減してしまう。さらに、静電相互作用の可能性
が制限されるために、添加した陽イオン性の濾水剤なら
びに歩留り向上剤の効果が低減してしまう。
本発明は、製紙に際して、白水のカウシウム含量が多
岐にわたる場合でも使用することができる。しかし、従
来技術の方法と比べた場合の濾水ならびに微細繊維およ
び添加剤の歩留りの改善率は、カルシウム含量が増加す
るにつれて増大する。すなわち、本発明の方法は、カル
シウムが高濃度であっても影響を受けないのである。し
たがって、本発明の方法は、製紙に際して、すき網上で
紙料を濾水することによって得られた白水が1あたり
約50mg以上のCa2+を含有する場合に使用するのが適当で
ある。上記白水が1あたり100mg以上のCa2+を含有す
るのが好適であり、この系は、カルシウム含量が1あ
たり2000mgのCa2+となっても効果を有する。
本発明にしたがって紙を製造する際には、紙料に通常
のタイプの添加剤を添加することができる。この種の添
加剤の例としては、填料ならびにサイズ剤がある。填料
の例としては、チョークすなわち炭酸カルシウム、チャ
イナクレー、カオリン、タルク、石膏、ならびに二酸化
チタンがある。チョーク、すなわち炭酸カルシウムは、
酸性のアルミニウム化合物含有溶液を紙料に加えた場合
に、緩衝作用を有する。このことは、pHの低下が小さい
ものとなることを意味し、したがって、陽イオン性水酸
化アルミニウム錯体を生成するうえで特に有利である。
したがって、紙料が中性あるいはアルカリ性である場合
には、填料として炭酸カルシウムを使用するのが好適で
ある。填料の添加は、通常、水スラリーの形で行い、そ
の濃度は、この種の填料で使用される通常の濃度とす
る。サイズ剤の例としては、アルキルケテン二量体(AK
D)、アルキルあるいはアルケニル琥珀酸無水物(AS
A)、およびコロホニーロジンがある。本発明の方法と
の組み合わせでは、サイズ剤としてAKDを使用するのが
好適である。
本発明にしたがって紙を製造する際には、紙料に通常
の陽イオン無機コロイドを添加することもできる。かか
る陽イオンコロイドを添加した際に生じる効果は、白水
のカルシウム含量が高い場合であっても良好なものであ
る。上記コロイドの紙料への添加は、一般にゾルと称さ
れる分散系のかたちで行われ、表面積対容積の比が大き
いので、重力によって沈降することがない。コロイド、
ならびにコロイド状という用語は、粒子が極めて小さい
ことを示す。陽イオン無機コロイドの例としては、酸化
アルミニウムゾル、ならびに表面変性シリカ系ゾルがあ
る。上記コロイドは、シリカ系ゾルとするのが適当であ
る。これらのゾルは、市販のコロイドシリカのゾルから
製造することも、アルカリ金属の珪酸塩の酸性化によっ
て生成した重合体珪酸からなるシリカゾルから製造する
こともできる。これらのゾルを、多価金属、好ましくは
アルミニウム塩基性の塩と反応させて、ゾル粒子の正の
表面電荷を付与する。この種のコロイドは、PCT出願第W
O89/00062号に記載されている。
陽イオン無機コロイドの添加量は、乾燥繊維ならびに
必要に応じて加える填料に基づいて約0.005〜約1.0重量
%の範囲とすることができる。陽イオン無機コロイドの
量は、乾燥繊維ならびに必要に応じて加える填料に基づ
いて、0.005〜0.5重量%の範囲とするのが適当で、0.01
〜0.2重量%の範囲とするのが好適である。
アルミニウム化合物の添加を2つのバッチに分けて行
い、いわゆる陰イオントラッシュの影響に対処すること
もできる。この陰イオントラッシュが生じると、陽イオ
ン化合物を添加しても、陽イオン化合物が陰イオン繊維
の表面に到達する前にこのトラッシュによって中和され
てしまい、その結果、意図した濾水ならびに歩留り効果
が低減してしまう傾向がある。したがって、アルミニウ
ム化合物を含有する溶液の一部を、紙料がすき網に流入
して紙を形成するよりずっと前に加えておくと、陰イオ
ントラッシュ・キャッチャー(ACT)として作用するう
えで十分な時間を確保することができる。残りの溶液
を、紙料がすき網に流入する直前に加えると、陽イオン
性水酸化アルミニウム錯体が生成されかつ保持されて、
歩留り向上剤ならびにセルロース繊維の陰イオン基との
間に相互作用を生じることが可能となる。たとえば、ア
ルミニウム化合物を含有する溶液中の30%の量のアルミ
ニウム化合物をATCとして使用し、残りの70%の量のア
ルミニウム化合物を、陽イオン錯体の形成に使用するこ
とができる。
紙の製造とは、リグノセルロース含有繊維の紙料を、
すき網上で紙層形成し、濾水することによって、紙、板
紙、ボード、またはシートあるいはウェブ状のパルプを
製造することに関するものである。パルプのシートある
いはウェブは、乾燥したシートまたはウェブをスラッシ
ュとしてから、紙を製造するのに使用される。このパル
プのシートあるいはウェブは、添加剤を含有しないこと
が多いのもの、上記製造の間は、濾水剤ならびに歩留り
向上剤を存在させることができる。本発明の方法は、
紙、板紙またはボードを製造する際に使用するのが適当
である。
本発明は、各種のリグノセルロース含有繊維からの製
紙に使用することができる。前記の陰イオン歩留り向上
剤ならびにアルミニウム化合物は、たとえば、亜硫酸
法、硫酸塩法、ソーダ法、あるいばオルガノソルブ法に
よって蒸解した化学パルプに由来する繊維を含有する紙
料への添加剤として使用することができる。本発明にか
かる前記成分はまた、ケミカルサーモメカニカルパルプ
(CTMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、リファイ
ナーメカニカルパルプ、砕木パルプ、あるいはリサイク
ル繊維のパルプに由来する繊維を含有する紙料への添加
剤として使用することもできる。紙料は、これらの方法
を改変した方法によって得られた繊維、および/または
これらのパルプの組み合わせから得た繊維を含有してい
てもよく、木材は、針葉樹とすることも広葉樹とするこ
ともできる。本発明は、化学パルプ由来の繊維を含有す
る紙料から紙を製造する際に使用するのが適当である。
また、紙料の繊維含量は、乾燥物質で計算して、50重量
%以上とするのが適当である。
本発明ならびにその利点を以下の実施例によってさら
に詳しく例示するが、これらの実施例は本発明を例示す
るためのものであって、本発明はこれらの実施例によっ
て限定されるものではない。明細書、請求の範囲、なら
びに実施例に記載する「パーセント」ならびに「部」
は、特記しない限り、それぞれ、「重量パーセント」な
らびに「重量部」である。
実施例1 以下の試験では、陰イオン歩留り向上剤、ならびにア
ルミニウム化合物を含有する酸性溶液を加えた後に、SC
AN(スカンジナビア紙パルプ標準規格)−C21:65を準拠
した「カナダ標準濾水度(CSF)試験器」を用いて紙料
の濾水度を測定した。各種成分の添加時には紙料を800r
pmで撹拌し、各成分の滞留時間は、最初の成分について
は45秒間とし、次の成分については30秒間とした。パル
プ濃度(コンシステンシー)は、乾燥物質で0.3重量%
とした。各種成分の添加後に、フロキュレーションを生
じた紙料をCSF試験機に供給し、最後の成分を添加した3
5秒後に測定を行った。採取された水量が濾水効果の測
定値であり、これをCSF(ml)として示す。
各種成分を加えた後に採取された水は極めて清澄であ
り、本発明の方法によって、微細繊維の繊維フロックへ
の良好な保持効果が得られることが示された。
紙料は、針葉樹60%および広葉樹40%の硫酸塩パルプ
由来の繊維をCSFが200mlとなるまでリファイニングした
ものと、30%の填料である炭酸カルシウムとら構成し
た。
使用したポリ塩化アルミニウム(PAC)は、スウェー
デン国のエカ・ノーベル社(Eka Nobel AB)のエコフロ
ック(Ekoflock)であり、塩基性度が約25%、硫酸塩含
量ならびにアルミニウム含量がそれぞれ約1.5ならびに1
0重量%であった。なお、アルミニウム含量はAl2O3換算
である。
PACならびにミョウバンを含有する溶液のpHは、pH計
での読み取り値が、それぞれ、約1.7ならびに2.5であっ
た。
使用したデンプンは、95℃で20分間蒸煮することによ
って製造した。紙料に添加する前のデンプン溶液の濃度
は、いずれの実験でも0.5重量%とした。
表1は、濾水試験の結果を、紙料にPACを加えた後
に、天然ジャガイモデンプンを加えた場合について示
す。PACの添加量は、填料を含む乾燥紙料1トンあた
り、Al2O3換算で1.3kgとした。PACを添加する前の紙料
のpHは約8.6とし、添加後は8.4とした。カルシウムの含
量は、白水1あたり20mgとした。比較の目的で、ジャ
ガイモデンプンのかわりに陰イオン基を含まないデンプ
ンを使用した試験も行った。さらに、比較の目的で、天
然ジャガイモデンプンならびに天然タピオカデンプンの
みを紙料に加えた試験も行った。填料を含む紙料の濾水
度は、添加剤の添加を行う前は、225ml(CSF)であっ
た。以下に、結果をml(CSF)で示す。
表1から明らかなように、PACと天然ジャガイモデン
プンを加えると、天然ジャガイモデンプンを単独で加え
た場合とは反対に濾水度が上昇する。また、天然ジャガ
イモデンプンをPACと共に使用すると、PACと天然タピオ
カデンプンあるいは天然オオムギデンプンとの組み合わ
せよりはるかに効率的である。なお、天然タピオカデン
プンと天然オオムギデンプンは、陰イオン基を含まない
種類のデンプンである。この差は、デンプンの添加量を
増大させた場合に特に顕著である。
実施例2 表2は、実施例1において使用したものと同一の紙料
を用いた濾水試験の結果を、紙料にPACあるいはミョウ
バンを加えた後に天然ジャガイモデンプンを加えた場
合、あるいはこれらを逆の順序で加えた場合について示
す。PACならびにミョウバンの添加量は、填料を含む乾
燥紙料1トンあたり、Al2O3換算で1.3kgとしたPACある
いはミョウバンを添加する前の紙料のpHは約8.0とし、
添加後は7.8とした。カルシウムの含量は、白水1あ
たり160mgとした。比較の目的で、上記ジャガイモデン
プンのかわりに、陰イオン基を含まない天然タピオカデ
ンプンを使用した試験も行った。填料を含む紙料の濾水
度は、添加剤の添加を行う前は、240ml(CSF)であっ
た。以下に、結果をml(CSF)で示す。
表2から明らかなように、アルミニウム化合物を加え
てからデンプンを加えた方がより効率的である。このこ
とは、PACについても、ミョウバンについてもあてはま
る。また濾水については、PACは、添加の順序にかかわ
りなく、ミョウバンより一般的に有効である。さらに、
歩留り向上剤としては、天然ジャガイモデンプンを使用
した方が、天然タピオカデンプンを使用した場合より効
率的である。
実施例3 表3は、実施例1において使用したものと同一の紙料
を用いた濾水試験の結果を、紙料にPACを加えた後に天
然ジャガイモデンプンを加えた場合について示す。PAC
の添加量は、填料を含む乾燥紙料1トンあたり、Al2O3
換算で1.3kgとした。デンプンの添加量は、填料を含む
乾燥紙料1トンあたり、15kgとした。炭酸塩を添加した
後の紙料のpHは約8.6であったが、塩化カルシウムを加
えてカルシウム含量をそれぞれ白水1あたり160なら
びに640mgまで上昇させたところ、紙料のpHは8〜7.5の
範囲まで低下した。PACを添加した後の紙料のpHは、添
加前より約0.2pH単位低かった。比較の目的で、上記ジ
ャガイモデンプンのかわりに、陽イオンタピオカデンプ
ンを使用した試験も行った。そのタピオカデンプンは、
0.25%N(負)まで陽イオン化したものを使用した。さ
らに比較の目的で、1つの実験系で、紙料にNPSのみを
加えた。以下に、結果をml(CSF)で示す。
表3から明らかなように、陰イオン基を含む天然ジャ
ガイモデンプンを添加した場合の方が、陽イオンタピオ
カデンプンを添加した場合より、濾水度が大きく増大す
る。上記ジャガイモデンプンを用いた場合には、白水の
カルシウム含量の増加につれて濾水度が上昇するのに対
し、陽イオンタピオカデンプンを用いた場合には、カル
シウム含量が増加すると濾水度は急激に低下する。
実施例4 表4は、濾水試験の結果を、填料として炭酸カルシウ
ムのかわりに30%のチャイナクレーを使用した以外は、
実施例1で使用したものと同一である紙料を用いた場合
について示す。紙料のpHを4.2、8、あるいは9.8とし
て、PACを紙料に加えてから天然ジャガイモデンプンを
紙料に加えた。PACを添加した後の紙料のpHは、それぞ
れ、4.2、6.5ならびに8.2であった。PACの添加量は、填
料を含む乾燥紙料1トンあたり、Al2O3換算で1.3kgとし
た。デンプンの添加量は、填料を含む乾燥紙料1トンあ
たり、15kgとした。カルシウムの含量は、白水1あた
り20mgとした。比較の目的で、1つの実験系で、紙料に
NPSのみを加えた。以下に、結果をml(CSF)で示す。
表4から明らかなように、PACと天然ジャガイモデン
プンを加えた場合の濾水度は、pHが、本発明の範囲内の
値である8および9.8の場合に増大する。
実施例5 表5は、実施例1において使用したものと同一の紙料
を用いた濾水試験の結果を示す。紙料のpHを8として、
紙料にミョウバンを加えた後に天然ジャガイモデンプン
を加えた。ミョウバンを加えた後の紙料のpHは、7.8で
あった。ミョウバンの添加量は、填料を含む乾燥紙料1
トンあたり、Al2O3換算で1.3kgとした。デンプンの添加
量は、填料を含む乾燥紙料1トンあたり、5、10ならび
に15kgとした。カルシウムの含量は、白水1あたり20
mgとした。比較の目的で、天然ジャガイモデンプンを加
えるより前に、紙料にミョウバンを、紙料のpHを4.5と
して加えた。ミョウバンを加えた後の紙料のpHは4.3で
あった。この低いpHでは、填料として、炭酸カルシウム
のかわりにチャイナクレーを使用した。さらに比較の目
的で、1つの実験系で、紙料に天然ジャガイモデンプン
のみを加えた。填料を含む紙料の濾水度は、前記添加剤
の添加を行う前は、pHが8の場合に225ml(CSF)、pHが
4.5の場合に300ml(CSF)であった。以下に結果を、紙
料に添加剤を添加した前と後とでの結果の差として、ml
(CSF)で示す。
表5から明らかなように、ミョウバンならびに天然ジ
ャガイモデンプンを加えた際の濾水度は、pHを本発明の
範囲より低い値である4.5とした場合には、低減する
か、実質的に不変であるかのいずれかである。

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リグノセルロース含有繊維を含有し、必要
    に応じて填料も含有する紙料をすき網上で紙層形成しか
    つ濾水することによって紙を製造するにあたって、紙料
    の繊維含量が、乾燥物質で計算して50重量%以上であ
    り、該紙料に、陽イオン基を有さない陰イオン歩留り向
    上剤とアルミニウム化合物とを、該紙料がすき網に流入
    して紙を形成する前に添加する方法であって、 前記の陽イオン基を有さない陰イオン歩留り向上剤は、
    デンプンあるいはセルロース誘導体をベースとするもの
    であり、かつ必要に応じて用いる填料とは別に前記紙料
    に添加し、 前記アルミニウム化合物は、その酸性溶液として、前記
    紙料がすき網に流入して紙を形成する前の5分以内に該
    紙料に添加し、前記アルミニウム化合物の前記紙料への
    添加を、前記陰イオン歩留り向上剤より前に行い、 さらに該アルミニウム化合物を添加する前の上記紙料の
    pHを6〜11の範囲とすることを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】前記アルミニウム化合物を添加した後の前
    記紙料のpHが、6〜10の範囲内にあることを特徴とす
    る、請求の範囲第1項記載の方法。
  3. 【請求項3】前記の陰イオン歩留り向上剤が、陰イオン
    デンプンであることを特徴とする、請求の範囲第1項記
    載の方法。
  4. 【請求項4】前記の陰イオン歩留り向上剤が、天然ジャ
    ガイモデンプンであることを特徴とする、請求の範囲第
    1項あるいは第3項記載の方法。
  5. 【請求項5】前記のアルミニウム化合物がポリアルミニ
    ウム化合物であることを特徴とする、請求の範囲第1項
    記載の方法。
  6. 【請求項6】前記陰イオン歩留り向上剤の添加量が、乾
    燥繊維ならびに必要に応じて用いる填料について、0.1
    〜5重量%の範囲であることを特徴とする、請求の範囲
    第1項、第3項あるいは第4項記載の方法。
  7. 【請求項7】前記アルミニウム化合物を添加する前の前
    記紙料のpHが、7〜9の範囲内にあることを特徴とす
    る、請求の範囲第1項記載の方法。
  8. 【請求項8】白水中のカウシウムイオンの含量が白水1
    リットルあたり50mgCa2+以上であることを特徴とする、
    請求の範囲第1項記載の方法。
  9. 【請求項9】前記アルミニウム化合物の添加量が、乾燥
    繊維ならびに必要に応じて用いる填料に基づいてAl2O3
    換算で、0.001〜0.5重量%の範囲であることを特徴とす
    る、請求の範囲第1項記載の方法。
  10. 【請求項10】前記アルミニウム化合物の紙料への添加
    を、該紙料がすき網に流入して紙を形成する前の2分以
    内に行うことを特徴とする、請求の範囲第1〜9項いず
    れかに記載の方法。
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