JP2604209B2 - ディーゼル機関のＮＯｘ低減方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ディーゼル機関のNOx低減方法に関するも
のである。

〔従来の技術〕

一般に燃焼により生成されるNOxは、空気中の窒素が
酸化されて生成するThermal NOxと、燃料中の窒素分が
酸化されて生成するFuel NOxに大別されるが、前記Ther
mal NOxは燃料濃度の希薄な混合気を燃焼させることに
よって燃焼ガス温度を低くし、これの生成を抑制するこ
とが知られている。

ディーゼル機関においては、燃焼室内に過剰に空気が
存在するので、希薄燃焼させ、かつ燃焼室内のガス温度
分布を均一にすれば、燃焼室内のガス温度をThemai NOx
の生成が抑制される温度レベルに保つことが可能であ
る。

ところが従来のディーゼル機関においては、燃焼室内
に噴射された燃料が燃焼するまでの極く短い時間内に燃
料と空気とを十分に拡散・混合させることができないた
め、希薄混合気になる以前に燃焼し、燃焼ガス温度が高
温となる。しかも、その燃焼ガス温度を速やかに低下せ
しめ、かつ燃焼室内のガス温度の分布を均一にするほど
十分に燃焼ガスと空気との混合は行なわれない。

したがって燃焼室内にはかなり高温の部分が局所的に
存在し、この高温部で多量のThermal NOxが生成されて
いる状況にある。

かかることから、従来このディーゼル機関の排ガス中
のNOxを低減させる方法として、燃料噴射時期を制御す
る方法、排気を再循環させる方法、水噴射による方法、
乳化燃料を利用する方法や排煙脱硝処理による還元除去
法などが提案されている。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、前記した燃料噴射時期を制御する方法
を、排気を再循環させる方法、水噴射による方法や乳化
燃料を利用する方法は何れも機関の性能あるいは信頼性
を低下させるという問題があり、一方排煙脱硝装置によ
る還元除去法においては特別の排煙脱硝装置を必要とす
るため、イニシャルコスト及びランニングコストが高
く、したがって実用上問題がある。

従って、本発明はディーゼルエンジンの構造を大幅に
変更することなく、NOxを低減する方法を提供すること
を目的とし、更に、低コストで低NOx化を実現できるデ
ィーゼルエンジンを提供することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

本発明は前記したような従来技術の問題点を解決する
ためになされたものであって、シリンダヘッドに形成し
た燃焼室の円周方向に多数の燃料噴射弁を配列し、前記
燃料噴射弁には少なくとも平面的に噴射方向の異なる複
数個の微小噴口を開口しており、隣接する燃料噴射弁か
ら噴射された複数の微細な噴霧がシリンダ内壁面に沿っ
て面状に、しかも重なって分布し、かつ混合気内の燃料
濃度分布及び燃焼室内のガス温度の分布が均一になるよ
うに噴射することを特徴とするディーゼル機関のNOx低
減方法を提供するものである。

更に複数の微小噴口を持つ燃料噴射弁を燃焼室の円周
方向に多数配列しており、この配列する中心からの角度
（間隔）は燃焼室の大きさによるが、10〜45度の範囲で
あることが好ましい。

燃料噴射弁は燃焼室の周囲に沿って多数配列する必要
があるが、この列は１列であってもかなりの効果がある
が、複数列にすると更にNOx低減効果がある。

〔作 用〕 車輛用等の小型のディーゼル機関に取付ける燃料噴射
弁は、通常１〜４個程度で、燃料噴霧の貫徹力はシリン
ダの半径を遥かに越えている。これに対して大型のディ
ーゼル機関の場合には燃料噴霧が到達する距離は直径に
比較してかなり短い。

本発明は船舶機関のような大型ディーゼル機関に適用
されるもので、燃焼室の円周方向に多数の燃料噴射弁を
配列し、この燃料噴射弁には少なくとも平面的に噴射方
向を異ならせて複数個の微小噴口を開口しており、更に
隣接する燃料噴射弁から噴射された複数の微細な噴霧が
シリンダ内壁面に沿って面状に、しかも重なって分布さ
せている。

前記のように燃料噴霧は燃焼室に沿って円周方向に、
面状で、しかも幾重にも重なって分布することから、燃
料噴射弁から噴射されてから燃焼するまでの短い時間内
に希薄混合気を積極的に形成することになる。

この希薄混合気は、微細な燃料噴霧が幾重にも重なっ
て形成されることから燃料濃度分布が均一になってい
る。従って、希薄予混合気に近い状態でシリンダ内に形
成された状態で燃焼が行なわれることになり、燃焼温度
を低くすることができる。

しかし、燃焼過程の進行に伴なって混合気の温度が上
昇すると、燃焼に至るまでの時間が短縮される可能性が
ある。そのときは、希釈混合気になる以前に燃焼し、燃
焼ガスの温度が上昇する。ところが、周囲から低温のガ
スが流入しており、燃焼ガスは流入したガスと混合して
温度が低下する。噴口径が微小である場合、燃焼ガス温
度はThermal NOxの生成を抑制する温度レベルまで非常
に速やかに低下するので、殆どThermal NOxは生成され
ない。

また、シリンダヘッドに形成した燃焼室の円周方向に
配置した多数の燃料噴射弁を配設し、この燃料噴射弁
に、少なくとも平面的に噴射方向の異なるように複数個
の微小噴口を開口しており、隣接する燃料噴射弁から噴
射された複数の微細な噴霧がシリンダ内壁面に沿って面
状に、しかも重なって分布させるので、噴霧は燃焼室内
を隈無く覆い、未燃焼領域と既燃焼領域は入り乱れて、
燃焼室内のガス温度の分布は非常にほぼ均一になる。

このようにして、燃焼過程のあらゆる段階において、
燃焼室内のあらゆる部分のガス温度は、Thermal NOxの
生成を抑制しうる温度レベルに保持される。

〔実 施 例〕

以下、第１図乃至第４図に基づき本発明によるディー
ゼル機関のNOx低減方法の一実施例を説明する。

第１図はディーゼル機関のシリンダ上部の断面図であ
って、シリンダ１の上部には排気口２を有するシリンダ
カバー３が取付けられるとともに、このシリンダカバー
３には半径方向に複数個（図示例では３個）の燃料噴射
弁４を直列的に間隔を置いて配置して燃料噴射弁群５を
形成している。更にこの燃料噴射弁群５を燃焼室に沿っ
て円周方向に10〜45度程度の間隔を置いて複数群配置し
ており、従って多数の燃料噴射弁４は、燃焼室に沿って
円周方向に、直径の異なる複数の円周上に配置されてい
ることになる。

前記各燃料噴射弁４の先端には、第２図に示すようゐ
直径が0.1〜0.3mm程度の微小噴口６が複数個（図示例で
は３個）平面的に方向を変え、更に縦断面から見て噴射
する高さを変えて開口されている。なお、７は排気弁、
８はピストン、９は燃焼室である。

かかる構成において、今、各燃料噴射弁４の微小噴口
６から一挙に燃料を燃焼室９内に噴霧すると、第３図に
一部平面破断図に示すように各噴霧10は燃焼室９内にお
いて円周方向と、半径方向に幾重にも重なり、混合気内
の燃料濃度分布がほぼ均一になる。そしてこの混合気は
希薄予混合気に近い状態になり、かかる混合気を燃焼さ
せるのである。

燃料の燃焼過程を示せば、第４図に示すように、燃料
噴射弁４の微小噴口６を出た燃料は微粒化し、周囲の空
気を取り込んで噴霧10aを形成する。噴霧10a内で燃焼滴
は蒸発し、燃料蒸気が空気と混合する。この噴霧10aは
燃焼室９内を前進しながら横方向にも広がり、時間経過
とともに噴霧10a内の空気は増え、燃料蒸気と空気との
混合が進んだ噴霧10bとなる。

そして燃焼の条件が見たされると混合機は燃焼領域ａ
で燃焼して燃焼ガスとなる。燃焼ガスとなった後も領域
ａの中には周囲から空気が流入し、噴口径が微小である
ほど速やかに燃焼ガスの温度は低下する。なお、燃焼室
内のガス温度分布を均一にするためには、各噴霧10は、
好ましくはこの燃焼領域ａが燃焼室９内を覆うように形
成するのがよい。

また、燃焼室内にスワールなどのガス流動を誘起すれ
ば、燃焼室内のガス温度の分布は、より一層均一にな
る。

〔発明の効果〕

以上の説明のように、本発明に係るディーゼル機関の
NOx低減方法は、シリンダヘッドに形成した燃焼室の円
周方向に多数の燃料噴射弁を配列し、前記燃料噴射弁に
は少なくとも平面的に噴射方向の異なる複数個の微小噴
口を開口しており、隣接する燃料噴射弁から噴射された
複数の微細な噴霧がシリンダ内壁面に沿って面状に、し
かも重なって分布し、かつ混合気内の燃料濃度分布及び
燃焼室内のガス温度の分布が均一になるように噴射する
ように構成されている。

従って、燃焼室の円周方向に配列された多数の燃料噴
射弁の、噴射方向を変えて開口した微小噴口より燃料を
微粒化して噴霧させる。この複数の噴霧は燃焼室の円周
方向にも半径方向にも積極的に重ならせて、燃焼室内を
燃料噴霧で幾重にも埋めつくして、燃焼室内の燃料濃度
分布を全体的に均一化することができる。

このように燃料濃度分布が均一化されると、燃焼室内
のガス温度の分布を均一化することができ、燃焼室に過
剰に充填された空気を燃焼に有効に使うことができ、局
部的に高温域を生じることが無くなる。従って機関の性
能悪化を来すこともなく、特別に排煙脱硝装置を必要と
せず、効果的にNOxの低減を図ることができ、実用上極
めて有効である。

【図面の簡単な説明】

図は、本発明によるディーゼル機関のNOx低減法の一実
施例を説明するものであり、第１図はシリンダ上部の断
面図、第２図は燃料噴射弁の先端部拡大図、第３図は噴
霧状態説明図、第４図は燃料の燃焼過程説明図である。 １……シリンダライナー、２……排気口、３……シリン
ダカバー、４……燃料噴射弁、５……燃料噴射弁群、６
……微小噴口、７……排気弁、８……ピストン、９……
燃焼室、10……噴霧。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダヘッドに形成した燃焼室の円周方
   向に多数の燃料噴射弁を配列し、前記燃料噴射弁には少
   なくとも平面的に噴射方向の異なる複数個の微小噴口を
   開口しており、隣接する燃料噴射弁から噴射された複数
   の微細な噴霧がシリンダ内壁面に沿って面状に、しかも
   重なって分布し、かつ混合気内の燃料濃度分布及び燃焼
   室内のガス温度の分布が均一になるように噴射すること
   を特徴とするディーゼル機関のNOx低減方法。
2. 【請求項２】シリンダヘッドに形成した燃焼室の円周方
   向に10〜45度の間隔を置いて多数の燃料噴射弁を配列
   し、前記燃料噴射弁には少なくとも平面的に噴射方向の
   異なる複数個の微小噴口を開口しており、隣接する燃料
   噴射弁から噴射された複数の微細な噴霧がシリンダ内壁
   面に沿って面状に、しかも重なって分布し、かつ混合気
   内の燃料濃度分布及び燃焼室内のガス温度の分布が均一
   になるように噴射することを特徴とするディーゼル機関
   のNOx低減方法。