JP2600850B2 - テトラヒドロカンナビノール誘導体 - Google Patents

テトラヒドロカンナビノール誘導体

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はテトラヒドロカンナビノール(以下THCと記
す)誘導体に関する。THCは大麻の主要麻薬成分であ
る。本発明を用いて作製した抗THC抗体は、生体内や大
気中のTHCの極微量検出に有効である。
従来の技術 大麻の主要麻薬成分であるTHCを微量検出するには抗T
HC抗体を用いた免疫反応を用いる方法が有効である。抗
THC抗体を作製するためには免疫原としてTHCを生体に注
射する必要がある。ところがTHCは低分子(Mw=314)で
あるため単独では免疫応答を引き起こせない。このよう
な物質はハプテンと呼ばれる。ハプテンはタンパク質等
の高分子と結合させ複合体(ハプテン−タンパク質コン
ジュゲート)にすることで免疫原となる。THCをタンパ
ク質と結合させTHC−タンパク質コンジュゲートにする
ためには、タンパク質と結合が可能な官能基をTHCに導
入したTHC誘導体を作製する必要がある。抗THC抗体を作
成するためのTHC誘導体は、P.T.ツイらによって報告さ
れている。(例えばP.T.Tsui,K.A.Kelly and A.H.Seho
n,Can.J.Biocem.,52(1974))。
発明が解決しようとする課題 従来作製されていたTHC誘導体は、THCにエステル結合
を用いて官能基を導入していた。しかしエステル結合は
容易に加水分解をするため、動物体内で十分な期間免疫
反応を誘期する点で信頼性に欠けている。タンパク質1
分子に結合したTHCの分子数の定量測定を行うにはTHC誘
導体を放射性同位体でラベルした物質を用いて測定して
いた。しかし、この方法はTHCの放射性同位が入手困難
であり、さらに放射性物質を扱うので簡便でなかった。
課題を解決するための手段 下記の構造を有するTHC誘導体。
作用 上記構成をとることにより、THCはエーテル結合で官
能基を導入したため、加水分解が阻止され安定性が向上
する。さらに官能基としてアミノ基を導入することで、
すでに生化学分野の情報として確立されている我々の定
量法が使用可能となり、放射性同位体を用いることなく
定量することができる。
メチレン基の数nは、20以上ではコンジュゲートの溶
解性が劣るため本発明の用途には不適である。また、良
好な免疫反応を起こすためには、ハプテンとタンパク質
がある程度離れている方が望ましいという観点から、2
≦n≦20が理想的である。
実施例 以下にメチレン基の数nを4とした場合の本発明の実
施例について説明する。
THC誘導体の作製 (A)THC−BPIの作製 THC 816mg(2600μmol)を乾燥ベンゼン2mlに溶解
し、水素化ナトリウム 104mg(5200μmol)を加えた。
この溶液に、ブロモブチルフタルイミド(BBPI)733mg
(2600μmol)を乾燥ベンゼン2mlに溶解したものを徐々
に加えた。溶液の温度を80℃に保ち10時間還流し、目的
物であるテトラヒドロカンナビノール−0−ブチルフタ
ルイミド(THC−BPI)を得た。反応の確認はTLCでおこ
なった。THC−BPIは分取(吸着剤シリカゲル、展開液
n−ヘキサン/ジエチルエーテル=4/1)で採し、140mg
を得た。
(B)THC−NH2の作成 THC−BPI 140mg(270μmol)を95%エタノール2mlに
溶解したものに、ヒドラジン 270mg(5400μmol)を95
%エタノール2mlに溶解した溶液を徐々に加えた。
2時間還流し後、分取TLC(吸着剤シリカゲル、展開
液 クロロホルム/メタノール=95/5、アンモニア飽
和)で目的物であるTHC−NH2を採取した。反応の確認は
TLCでおこなった。
THC−CGGコンジュゲートの作製 (A)THC−SPDPの作成 THC−NH2 20mg(52μmol)をエタノール 2.0mlに溶解
したものに、N−サクシンイミジル3−(2−ピリジル
ジチオ)プロピオネート(以下SPDP、ファルマシア製、
FW=312.4)11mg(34μmol)をエタノール 2.0mlに溶解
した溶液を徐々に加え、室温で30分間撹拌した。TLCで
反応前後の溶液のチェックを行い、SPDPの消失を確認し
た。分取TLC(吸着剤シリカゲル、展開液 クロロホル
ム/メタノール=95/5、アンモニア飽和)で目的物であ
るTHC−SPDPを採取した。
(B)CGG溶液の作製 チキンγグロブリン(CGG)100mgを、0.1molのNaClを
含むph7.0のリン酸バッファー(以下PBS)50mlに分散し
撹拌した。
(C)CGG−SPDPの作製 SPDP 20mg(0.64mmol)を、エタノール15mLに緩やか
に加熱をしつつ溶解した。CGG溶液50mlを撹拌しながら
このSPDP溶液を10分間にわたって滴下後、さらに一晩4
℃で撹拌した。余分のSPDPを除くためSephadex G−25
(ファルマシア製)のゲルクロマトグラフィー(16mm径
×70cm)にこの溶液を流し、CGGとSPDPの結合物(CGG−
SPDP)を得た。なお、以降の本実験におけるゲルクロマ
トグラフィーは全て同一条件で行った。
(D)CGG−SPDPの還元 8.6μMのCGG−SPDPのPBS溶液50mlに、100mMジチオス
レイトール(DTT)を含むPBS溶液1mlをゆっくり滴下
し,最終濃度2mMにし、2−ピリジルスルフィド基を還
元した。30分後この溶液をゲルクロマトグラフィーにか
け低分子を除去し、7.7μMのCGG−SH溶液50mlを得た。
(E)CGG−THCの作製 7.7μMのCGG−SH溶液50mLに、7.7μMのTHC−SPDPの
エタノール溶液1.5mLをゆっくり滴下し、室温で20分間
撹拌ののち冷蔵室で一晩撹拌した。カラムクロマトグラ
フィーで精製し11.3μMのCGG−THCのPBS溶液30mlを得
た。
(F)CGG1分子当りのTHC量の測定 CGG1分子当りに結合したTHCの分子数を知るために、C
GG、CGG−SPDP、CGG−THCそれぞれのSH残基を4−ピリ
ジルヂサルファイド(4PDS)を用いた324nmの吸光度測
定で定量した。その結果CGGD21分子当りTHCが9分子結
合していることがわかった。また酵素免疫測定法により
CGGにTHCが導入されていることを確認した。
THC−BSAコンジュゲートの作製 (A)BSA溶液の作製 牛血清アルブミン(BSA)100mgを0.1molのNaCl含むpH
7.0のリン酸バッファー(以下PBS)30mlに分散し撹拌し
た。
(B)BSA−THCの作製 BSA溶液30mLに、27mMのTHC−SPDPのエタノール溶液0.
15mLをゆっくり滴下し、室温で20分間撹拌ののち4℃で
一晩撹拌後、カラムクロマトグラフィーで精製し、35μ
MのBSA−THCのPBS溶液36mlを得た。
(C)BSA一分子当りのTHC量の測定 BSA1分子当りに結合したTHCの分子数を知るために、B
SA、BSA−SPDP、BSA−THCそれぞれのSH基量を4−ピリ
ジルジサルファイド(4PDS)を用いた324nmの吸光度測
定で調べた。その結果BSA一モル当りTHCが0.4モル結合
できていることがわかった。また酵素免疫測定法により
BSAにTHCが導入されていることを確認した。
THC誘導体の安定性の評価実験 本発明によるTHC誘導体(I)と、ツイらの作製したT
HC誘導体(II)の安定性を比べる評価実験をした。PH7.
0に調整したPBS50mlにI、IIを溶解し、この溶液それぞ
れを室温(20℃)でゆるく撹拌し5日間放置した。その
後溶液中のTHC誘導体量を定量した結果、IIに比べIが
はるかに安定であることが確認できた。
タンパク質1分子当りのTHCの定量測定 THC誘導体が結合するときのタンパク質1分子当りのS
H基量の変化を測定することにより、THC量を測定した。
SH基の変化量は4−ピリジルヂサルファイド(4PDS)試
薬を用いた吸光度より求めた。
4PDSはピリジン二分子がジスルフィド結合しており、
SH基と一方のピリジンは結合し、もう一方は4−チオピ
リヂン(4−TP)となる。この4TPの324nmの吸光度変化
を測定してTHCの結合数を測定した。その結果CGG1分子
当りTHCが9分子結合できていることがわかった。
発明の効果 本発明によれば、加水分解の影響なく安定で、タンパ
ク質と結合して、容易に定量が行えるTHC誘導体が得ら
れ、さらにこれをタンパク質と結合することにより、抗
THC抗体の作製が可能なTHC−タンパク質コンジュゲート
が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 光亦 忠泰 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−192770(JP,A) 米国特許3649650(US,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の構造を有するテトラヒドロカンナビ
    ノール誘導体。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のテトラヒドロカンナビノ
    ール誘導体とタンパク質とを結合しており、免疫機構を
    有する実験動物の体内に導入した際、免疫原性を発揮す
    る性能を有したテトラヒドロカンナビノール−タンパク
    質コンジュゲート。
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