JP2599831Y2 - 宇宙用気液分離装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、宇宙プラットフォーム
の排熱システム等に使用される宇宙用気液分離装置に関
する。

【０００２】

【従来の技術】宇宙プラットフォームの排熱システムと
して、小形軽量化等が図れる二相流排熱システムが提案
されている。この排熱システムにおいては、液冷媒がポ
ンプによりコールドプレート（蒸発器）に圧送され、こ
こで熱交換されて生じた蒸気がコンデンサに送られて凝
縮される。この場合、蒸気の一部がコンデンサをバイパ
スするように構成されているため、コンデンサの下流に
は液冷媒と蒸気が混合された二相流が生じる。

【０００３】従って、上記排熱システムにおいては、ポ
ンプキャビテーション防止のため適度のサブクール度を
持った液冷媒のみをポンプに供給すべく上記二相流を液
冷媒と蒸気に分離するための気液分離装置が用いられて
いる。そして、この気液分離装置は、無重力環境下で使
用されるため、回転胴を用いて遠心分離を行うものであ
った。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、上記気
液分離装置においては、回転胴を使用しているため重量
も大きくまた大きな振動源となる問題があった。

【０００５】そこで、本考案の目的は、振動の低減が図
れる宇宙用気液分離装置を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本考案は、無重力下で二相流を気液分離する宇宙用
気液分離装置において、円筒と円錐を組合せた容器を形
成し、該容器の円筒側に接線方向から二相流を導入する
導入ノズルを設けると共に、容器の内壁に遠心力で分離
した液体を円錐側頂部へ液の付着力で導く液案内手段を
設けて円錐側を液溜りとし、円錐側頂部に液導出口を形
成すると共に、円筒側中心に気体導出口を形成したこと
を特徴としている。

【０００７】

【作用】導入ノズルにより容器の円筒側に接線方向から
導入された二相流は、容器の内壁に沿って旋回し、遠心
力により液と蒸気とに分離され、蒸気は円筒側中心の気
体導入口から排出される。遠心力と液の付着力により容
器の内壁に分離付着した液は、ウイック等の液案内手段
により円錐側へ液の付着力で導かれて液溜りに集積さ
れ、液導出口から排出される。従って、回転胴を用いた
ものと異なり振動の低減が図れる。

【０００８】

【実施例】以下、本考案の一実施例を添付図面に基づい
て詳述する。

【０００９】宇宙プラットフォームの排熱システムを示
す図１において、１は冷媒が循環する閉ループの冷媒ラ
インで、この冷媒ライン１に沿ってポンプ２、コールド
プレート３、コンデンサ４、宇宙用気液分離装置５が順
に設けられている。コールドプレート３とコンデンサ４
を結ぶ管路１ａとコンデンサ４とポンプ２を結ぶ管路１
ｂはコンデンサ４をバイパスするバイパス管６で結ば
れ、気液分離装置５にはコンデンサ４からの液体として
の液冷媒とバイパス管６からの気体としての蒸気の二相
流が供給されるようになっている。

【００１０】このバイパス管６には気液分離装置５の出
口温度（液冷媒の温度）を温度センサ７により検出し、
液が適度のサブクールとなるよう出口温度を一定にすべ
く蒸気の流量を制御するための制御弁８が設けられてい
る。そして、気液分離装置５により分離された蒸気は管
路９を介してコンデンサ４の中間部に戻されるようにな
っている。なお、気液分離装置５により分離された蒸気
は専用のコンデンサにより凝縮して気液分離装置５の下
流に戻すようにしてもよい。

【００１１】上記気液分離装置５は、図２〜図４に示す
ように円筒１０と円錐１１を組合せて形成された容器１
２を備えている。この容器１２の円筒１０側には接線方
向から二相流を導入するように導入ノズル１３が設けら
れ、二相流が容器１２内を旋回して生じる遠心力により
液と蒸気に分離され、液が自らの付着力により容器１２
の内壁に付着するようになっている。そして、容器１２
の内壁（内周壁）には分離した液を円錐側１１へ導く細
溝で形成されたウイックからなる液案内手段が設けられ
ている。本実施例では、液案内手段として０．３〜０．
５ｍｍの細い溝１４が螺旋状に多数設けられ、旋回流の
力および毛細管現象によって液が円錐側へ円滑に移動さ
れるようになっている。なお、実施例の円錐１１側には
細い溝１５が放射状に設けられているが、上記円筒側の
細い溝１４と連続するように螺旋状に設けてもよい。

【００１２】円筒１０側から円錐１１側への二相流の拡
散を防止するために容器１２内にはこれを円筒１０側と
円錐１１側に仕切る仕切板１６が設けられている。この
仕切板１６には円筒１０側と円錐１１側を連通させて容
器１２内の圧力を均一にするための多数の小孔１７が設
けられており、また仕切板１６の外周と容器１２の内周
との間には隙間１８が設けられている。

【００１３】仕切板１６で仕切られた容器１２内の円錐
１１側には粗いウイックとして金網１９を波状に折り畳
んだものが収容され、液を集積する液溜り２１とされて
いる。この円錐１１側の頂部には液を容器１２外へ導出
する液導出口２２が形成され、この液導出口２２からポ
ンプ２によって液が導出されるようになっている。な
お、仕切板１６は支持脚２４を介して容器１２に固定さ
れているが、仕切板１６の固定手段はこれに限定されな
い。

【００１４】上記仕切板１６で仕切られた容器１２内の
円筒１０側の中心には蒸気などの気体導出口２５が円筒
１０側の端板１０ａを貫通して形成され、この気体導出
口２５から導出された蒸気がコンデンサ４へ供給される
ようになっている。また、上記端板１０ａには旋回流を
容器１２の内壁に指向させるスクロール板２３が設けら
れている。

【００１５】以上の構成からなる宇宙用気液分離装置５
によれば、導入ノズル１３により容器１２内の円筒１０
側に接線方向から導入された二相流は、容器１２の内壁
に沿って旋回し、遠心力により液と蒸気に分離され、蒸
気は円筒側中心の気体導出口２２から排出される。容器
１２は円筒１０と円錐１１の組合せからなるが、容器１
２内が仕切板１６により円筒１０側と円錐１１側に仕切
られているため、円筒１０側から円錐１１側への二相流
の拡散が防止され、遠心分離が効果的に行われる。

【００１６】遠心力と液の付着力とにより容器１２の内
壁に分離付着した液は、液案内手段である細い溝１４に
より円錐１１側へ導かれて液溜り２１に集積し、液導出
口２２から排出される。このようにいわゆるサイクロン
の原理と液の付着力を利用して二相流を液と蒸気に分離
するようにしたので、無重力下で二相流を液と蒸気に容
易に分離することができ、回転胴を用いた従来の宇宙用
気液分離装置と比較して振動を十分に低減させることが
できる。

【００１７】なお、上記実施例では、容器１２の内壁に
液案内手段を設ける例として、細い溝１４を設ける例で
説明したが、細い溝の代わりに金網又はウイック膜を張
って液案内手段としてもよい。

【００１８】

【考案の効果】以上要するに本考案によれば、円筒と円
錐を組合せた容器の円筒側に二相流導入ノズルにより接
線方向から二相流を導入していわゆるサイクロンの原理
と液の付着力を利用して蒸気と液に分離し、蒸気を円筒
側中心の気体導入側から排出し、液は液案内手段により
円錐側に液の付着力で導き液溜りに集積させて液導出口
から排出するようにしたので、無重力下で二相流を液と
蒸気に容易に分離することができ、回転胴を用いたもの
と異なり振動の低減が図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例である宇宙用気液分離装置を備
えた排熱システムを示す図である。

【図２】図１における気液分離装置を示す斜視図であ
る。

【図３】図２の気液分離装置の縦断面図である。

【図４】図３の気液分離装置内におけるスクロール板の
配置を示す平面図である。

【符号の説明】

５ 宇宙用気液分離装置 １０ 円筒 １１ 円錐 １２ 容器 １４ 細い溝（ウイック） ２１ 液溜り ２２ 液導出口 ２３ スクロール板 ２４ 支持脚 ２５ 気体導出口

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B01D 19/00 B64G 1/50 F25B 43/00

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 無重力下で二相流を気液分離する宇宙用
   気液分離装置において、円筒と円錐を組合せた容器を形
   成し、該容器の円筒側に接線方向から二相流を導入する
   導入ノズルを設けると共に、容器の内壁に遠心力で分離
   した液体を円錐側頂部へ液の付着力で導く液案内手段を
   設けて円錐側を液溜りとし、円錐側頂部に液導出口を形
   成すると共に、円筒側中心に気体導出口を形成したこと
   を特徴とする宇宙用気液分離装置。