JP2599142B2 - 潤滑性塗料組成物 - Google Patents

潤滑性塗料組成物

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JP2599142B2
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敏昭 佐藤
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Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の目的〕 (産業上の利用分野) 本発明は,塗料組成物に関し,さらには,金属用塗料
として有用であり,塗膜に優れた潤滑性を与えるととも
に潤滑剤が塗膜表面から脱離したり,塗膜との接触物に
移行して被接触物を潤滑剤で汚染することのない潤滑性
塗料組成物に関する。
(従来の技術) 鉄,アルミニウム等の金属製品には,美観および金属
の腐食防止の目的で印刷および塗装がなされることが多
い。これらの金属用塗料には,塗装板あるいは製品の移
送を良好に行い,移送中における塗膜面の傷付き防止の
目的で潤滑剤を添加することが一般的に行われている。
これらの潤滑剤は,パーム油もしくはカルナバワックス
のような天然ワックスや合成ワックスあるいはシリコー
ン系の添加剤が用いられてきた。
しかしながら、これらの従来型潤滑剤は,塗料表面
に浮き出ているワックス類が他の物質との接触により脱
落し被接触面を汚す,水,溶媒等との接触により添加
剤が抽出され潤滑性が経時変化する,塗装面にハジ
キ,アイホール等が発生することがある,等の問題点が
あり,高度に潤滑性がありしかも塗膜表面からの脱離も
しくは接触物への移行が少なく,経時的にも安定した潤
滑性を与える塗料用潤滑剤もしくは塗料の開発が要望さ
れていた。
特に金属缶外面塗料の場合,印刷.塗装を行った塗装
板を製缶工程を経て製缶を行い,さらに内容物を充填
し,殺菌処理を行う等,塗装後に種々の機械的工程を経
るため,上記の特性は金属缶の性能を維持する極めて重
要な特性となっているが,現在満足できる水準にないの
が実情であった。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明者は、現状を解決するため,塗膜表面からの脱
離もしくは被接触物への移行が極めて少なく,かつ,環
境による潤滑性の変化あるいは組成物の保存安定性に優
れ,塗装性に悪影響を与えない塗料用潤滑剤の開発を目
的として鋭意研究を重ねてきた。
〔発明の構成〕
(問題点を解決するための手段) その結果,本発明者は,官能基を有するワックスの塗
料用樹脂とを反応させ,その生成物を塗料中に配合せし
めることにより上記目的を達成できることを見い出し
た。
すなわち,本発明は,カルボキシル基もしくは水酸基
を有するポリオレフィン系ワックスもしくは天然ワック
スと,カルボキシル基もしくは水酸基と反応し得る官能
基を有する塗料用樹脂との反応生成物を含んでなる潤滑
性塗料組成物である。
本発明におけるカルボキシル基もしくは水酸基を有す
るポリオレフィン系ワックスの例としては,ポリエチレ
ンを酸化処理して得られる酸変性ポリエチレンワックス
がある。これらは,アライド社のAC629,AC680,AC330,三
井石油化学工業(株)製のハイワックス4052E,4202Eが
市販品として入手できる。
また,エチレンもしくはプロピレンとアクリル酸,メ
タクリル酸を共重合させたもの,あるいは,ポリエチレ
ンもしくはポリプロピレンを主成分とする合成ワックス
に,アクリル酸,メタアクリル酸,マレイン酸,イタコ
ン酸等の重合性不飽和カルボン酸あるいはその酸無水物
をグラフト重合させることにより得られる変性ポリオレ
フィンワックスであってもよく,これらは,ハイワック
ス1105A,2203A,アライド社製AC−540等として入手でき
る。これらのカルボキシル基含有ポリオレフィンワック
スは,酸価が10〜100KOHmg/gの範囲にあることが望まし
い。
また,水酸基含有ポリオレフィンワックスとしては,
バレコ社製ポリワックスOH425,550,700として入手でき
る。
本発明におけるカルボキシル基もしくは水酸基を有す
る天然ワックスとしては,その成分中に遊離脂肪酸もし
くは遊離アルコールを含有するものであり,例えば,カ
ルナバワックス(遊離脂肪酸含有量3〜4%;遊離アル
コール含有量10〜12%,以下同じ順序で記す。),キャ
ンデリラワックス(10〜20%;10〜15%),木ロウ(3.7
〜5.6%;1.2〜1.6%)等の植物系ワックス,蜜ロウ(7
〜16%;1〜2ぱ),ラノリンワックス(微量;3〜5%)
等の動物系ワックス,モンタンワックス(酸価115〜17
5;ケン化価135〜175)のような鉱物系ワックスを挙げる
ことができる。天然ワックスを重合性カルボン酸等で変
性してカルボキシル基を導入したものを使用してもよ
い。
本発明における塗料組成物は,ワックスと塗料用樹脂
との反応生成物を含有するものである。したがって,塗
料用樹脂に含有される官能基としては,エポキシ基,カ
ルボキシル基,水酸基,イソシアネート基,アミノ基等
の官能基であり,これらの官能基を有する合成樹脂とし
ては,アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、変性アルキッ
ド樹脂、オイルフリーアルキッド樹脂、ポリエステル樹
脂、ポリエステルポリオール樹脂、エポキシ樹脂、フェ
ノール樹脂、ビニル樹脂、変性ビニル樹脂、カプロラク
トン変性樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ユリア
樹脂、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂を挙げる
ことができる。
本発明においてワックスと塗料用樹脂の反応生成物
は,例えば,ワックス5〜90重量%と樹脂10〜95重量
%,好ましくは30〜90重量%を含む混合物を,150〜230
℃に加熱して溶融させた後,酸もしくはアルカリ触媒の
存在下または不存在下で反応させることによって得られ
る。反応は原料を有機溶剤に溶解して行ってもよい。こ
の際使用される酸触媒としては,塩酸,リン酸,p−トル
エンスルホン酸等があり,アルカリ触媒としては,水酸
化ナトリウム,水酸化カリウム,有機アミン類等があ
る。ワックスの使用量が90重量%以上では単独で使用し
た場合に近くなるので好ましくない。反応の終点は樹脂
の官能基当量,ワックスに含有されるカルボキシル基も
しくは水酸基の当量によって異なり,また使用用途によ
っても異なるものの,ワックスの官能基濃度が5ないし
100%低下する範囲で選定される。反応終了後,冷却す
るかもしくは冷溶剤で希釈する等の方法で反応生成物を
析出させ,ボールミル,サンドミル,アトライタ等の分
散機により適度な粒径まで分散することができる。
得られた反応生成物の塗料への添加量は,通常,塗料
100重量部に対して固形分として0.01ないし10重量部の
範囲である。ワックスとの反応に使用される塗料用樹脂
は添加される塗料の樹脂と同じ種類である必要はない。
本発明における塗料は,アクリル系塗料,アルキド系
塗料,ポリエステル系塗料,エポキシ系塗料,ウレタン
系塗料等の熱硬化性塗料が好ましい。
本発明塗料組成物は,アルミニウム板,クロメート処
理鋼板,ニッケル処理鋼板,スズメッキ鋼板,リン酸処
理鋼板,銅板等の金属板もしくはこれらの金属板の成型
物,または,プラスチック,紙等に塗装することによっ
て潤滑性塗膜表面に形成することができる。
(実施例) 以下,実施例について説明する。例中,「部」「%
は,それぞれ「重量部」,「重量%」である。
実施例 1 アクリル樹脂(オレスターQ−171,三井東圧化学
(株)製,水酸基価45,樹脂分50%)80部(固形分)と
酸変性ポリエチレンワックス(三井石油化学工業(株)
製三井ハイワックス2203A,酸価30)20部を四ッ口フラス
コに投入し加熱溶解した。温度140℃にて7時間反応を
行ない樹脂混合物の酸価が10KOHmg/gとなったところ
で,キシレン200部を加えた後取り出した。これをアト
ライターにより微粉砕し,固形分20%の分散体を得た。
この分散体の1部(固形分)をポリエステル樹脂(三
井東圧化学(株)製アルマテックスP646)80部とメラミ
ン樹脂(三井東圧化学(株)製サイメル350)20部を樹
脂成分(固形分)とし,硬化触媒としてp−トルエンス
ルホン酸1部を配合したポリエステル系塗料に配合し,
アルミニウム板に乾燥膜厚が6μとなるように塗装し,1
70℃で10分間加熱硬化させ,塗装板試料を作成した。
上記で得られた塗装板を,塗膜表面をガーゼで拭いた
前後における塗膜表面から脱離した潤滑剤粒子の有無を
光学顕微鏡で観察することにより,潤滑剤脱離性試験を
行ったが潤滑剤の塗膜表面から脱離は認められなかっ
た。
また,塗装板試料の動摩擦係数を測定したところ0.11
であった。同じ試料の30分間ボイル処理後のものについ
て測定したところ,0.12であり,動摩擦係数にはほとん
ど変化が認められなかった。
なお,動摩擦係数は塗装板試料上に5cm×5cmのステン
レスブロック(荷重500g)を乗せ15m/分の速度でこのブ
ロックを引張ることにより測定した。
実施例 2 実施例1においてアクリル樹脂にかえてエポキシ樹脂
(油化シェルエポキシ(株)製エポン828,エポキシ当量
200)を使用する他は実施例1と同様にして分散体を得
た。
この分散体を使用して実施例1と同様にしてポリエス
テル塗料を調製し,実施例1と同様に作成した塗装板に
ついて潤滑剤脱離試験を行ったが潤滑剤の脱離は認めら
れなかった。
また塗装板の動摩擦係数を測定したところ,未処理で
0.12であり,ボイル処理後も変化は認められなかった。
実施例 3 実施例1においてアクリル樹脂に代えてポリエステル
樹脂(三井東圧(株)製,オレスターQ−173,水酸基価
265)を使用し,酸変性ポリエチレンワックスに代えて
カルナバワックス(酸価5KOHmg/g)を使用した他は実施
例1と同様にして分散体を得た。
この分散体を使用して実施例1と同様にしてポリエス
テル塗料を調製し,実施例1と同様に作成した塗装板に
ついて潤滑剤脱離試験を行ったが潤滑剤の脱離は認めら
れなかった。
また塗装板の動摩擦係数を測定したところ,未処理で
0.10であり,ボイル処理後も変化は認められなかった。
実施例 4 実施例1においてアクリル樹脂に代えてメラミン樹脂
(三井サイアナミド(株)製,サイメル303)を使用
し,酸変性ポリエチレンワックスに代えてモンタンワッ
クス(酸価20KOHmg/g)を使用した他は実施例1と同様
にして分散体を得た。
この分散体を使用して実施例1と同様にしてポリエス
テル塗料を調製し,実施例1と同様にして作成した塗装
板について潤滑剤脱離試験を行ったが潤滑剤の脱離は認
められなかった。
また塗装板の動摩擦係数を測定したところ,未処理で
0.09,ボイル処理後は0.10であった。
実施例 5 実施例1においてアクリル樹脂に代えてアクリル樹脂
(三井東圧化学(株)製アクリル樹脂,酸価30KOHmg/
g)を使用し,ラノリンワックス(水酸基価10)を使用
した他は実施例1と同様にして分散体を得た。
この分散体を使用して実施例1と同様にしてポリエス
テル塗料を調製し,実施例1と同様にして作成した塗装
板について潤滑剤脱離試験を行ったが潤滑剤の脱離は認
められなかった。
また塗装板の動摩擦係数を測定したところ,未処理で
0.10,ボイル処理後は011であった。
実施例 6 実施例1において得られた分散体の1部(固形分)を
ポリエステル樹脂にかえてアクリル樹脂(三井東圧化学
(株)製,オレスターQ−174)80部とメラミン樹脂
(サイメル350)20部を成分(固形分)とするアクリル
系塗料に配合し,実施例1と同様にして作成した塗装板
について潤滑剤脱離試験を行ったが潤滑剤の脱離は認め
られなかった。
また塗装板の動摩擦係数を測定したところ,未処理で
0.12,、ボイル処理後は0.13であった。
実施例 7 実施例1において得られた分散体の1部(固形分)を
ポリエステル樹脂にかえて変性アルキド樹脂(大日本イ
ンキ化学工業(株)製スチレゾールM1157)80部とメラ
ミン樹脂(サイメル350)20部を成分(固形分)とする
アルキド系塗料に配合し,実施例1と同様にして作成し
た塗装板について潤滑剤脱離試験を行ったが潤滑剤の脱
離は認められなかった。
また塗装板の動摩擦係数を測定したところ,未処理で
0.13,ボイル処理後も変化は認められなかった。
比較例 1 実施例1で使用したポリエステル系塗料にポリエチレ
ンワックス(シャムロックケミカル社製ネプチューン
1)を実施例1の潤滑剤固形分と同量配合し,以下は実
施例1と同様して塗装板を作成した。
この塗装板について潤滑剤脱離試験を行ったところ,
潤滑剤の塗膜表面からの脱離が認められた。
また塗装板の動摩擦係数を測定したところ,未処理で
は0.10であったものが,ボイル処理後は0.25となり,塗
膜潤滑性は大きく低下した。
比較例 2 実施例1で使用したポリエステル系塗料に実施例3で
使用したカルナバワックスを実施例1の潤滑剤固形分と
同量配合し,以下は実施例1と同様して塗装板を作成し
た。
この塗装板について潤滑剤脱離試験を行ったところ,
潤滑剤の脱離が認められた。
また塗装板の動摩擦係数を測定したところ,未処理で
は0.11であったものが,ボイル処理後は0.16となり,塗
膜潤滑性は大きく低下した。
比較例 3 実施例1で使用したポリエステル系塗料に実施例4で
使用したモンタンワックスを実施例1の潤滑剤固形分と
同量配合し,以下は実施例1と同様して塗装板を作成し
た。
この塗装板について潤滑剤脱離試験を行ったところ,
潤滑剤の脱離が認められた。
また塗装板の動摩擦係数を測定したところ,未処理で
は0.10であったものが,ボイル処理後は0.17となり,塗
膜潤滑性は大きく低下した。
〔発明の効果〕
本発明の塗料組成物は,塗膜を常温ないし加熱した状
態でこすっても潤滑剤粒子は塗膜表面から脱落せず,接
触によって移行することも少なく,従来の塗料用潤滑剤
より極めて良好な性能を示すものである。このような性
能は工業用塗料,特に金属缶外面,王冠,キャップ外面
の塗料にとっては極めて有用である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カルボキシル基もしくは水酸基を有するポ
    リオレフィン系ワックスもしくは天然ワックスと、カル
    ボキシル基もしくは水酸基と反応し得る官能基を有す
    る、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、変性アルキッド
    樹脂、オイルフリーアルキッド樹脂、ポリエステル樹
    脂、ポリエステルポリオール樹脂、エポキシ樹脂、フェ
    ノール樹脂、ビニル樹脂、変性ビニル樹脂、カプロラク
    トン変性樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ユリア
    樹脂、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂の群から
    選ばれる1種以上の塗料用樹脂との反応生成物を含んで
    なる潤滑性塗料組成物。
  2. 【請求項2】ポリオレフィン系ワックスが酸化ポリエチ
    レンもしくはエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体で
    ある特許請求の範囲第1項記載の潤滑性塗料組成物。
  3. 【請求項3】天然ワックスがカルナバワックスもしくは
    モンタンワックスである特許請求の範囲第1項記載の潤
    滑性塗料組成物。
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