JP2581794B2 - シールド工法におけるシールド掘削機の推進方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、トンネルを構築するシールド工法におい
て、シールド掘削機の方向変更を行う際のシールド掘削
機の推進方向に関するものである。

［従来の技術］ シールド工法は、一般的に軟弱な地盤に対してトンネ
ルを掘削する際に適用され、シールド掘削機によって、
切羽の安定と周辺地山の崩壊を積極的に防御しつつトン
ネルを掘削し、かつ、トンネル周壁にセグメント等によ
り覆工を施していくトンネル工法である。

第５図は符号１は、このようなシールド工法に用いら
れる一般的なシールド掘削機の平断面を示しており、こ
のシールド掘削機１は、外殻を形成する円筒状のスキン
プレート２と、スキンプレート２内の前部に設けられそ
の前方開口を塞ぐ隔壁３と、この隔壁３前方に設けら
れ、かつその軸が隔壁３を貫通するカッタ４と、スキン
プレート２内にその周方向に沿って所定数配設されたシ
ールドジャッキ５…とを備えている。

各シールドジャッキ５は、第６図に示すように、シリ
ンダ5aと、このシリンダ5a内に、油圧により伸縮作動す
るよう嵌装されたロッド5bと、このロッド5b先端に固定
されたスプレッダ5cとから構成されている。シリンダ5a
の前後には、作動油の供給・排出をなすための油圧管接
続口5dがそれぞれ設けられている。スプレッダ5cは、そ
の先端綿全体がセグメントＳ前端綿に当接してロッド5b
の押圧力がセグメントＳに対して均等に伝達されるよ
う、ロッド5bに対してある程度の範囲内で揺動可能に取
り付けられている。

これらシールドジャッキ５…は、、シリンダ5aの後端
面が、隔壁３の後方であってスキンプレート２内面に沿
って設けられた支持板６に当接させられ、かつ、スキン
プレート２内面に沿って固定されたエレクタ装置（図示
略）を支持するリング状の支持枠７を貫通して配設され
ている。

このようなシールド掘削機１によれば、カッタ４によ
って地山を掘削しながら、各シールドジャッキ５先端の
スプレッダ5cを、覆工用セグメントＳの前端部に当接さ
せた状態でロッド5bを一定の圧力で伸長し、セグメント
Ｓに反力を取ってシールド掘削機１を推進してトンネル
を掘進していく。また、掘削したトンネル周壁に、エレ
クタ装置によりセグメントＳを組み付けて一次覆工を施
す。

ところで、このようなシールド掘削機１を直進させて
真っ直ぐなトンネルを掘進しようとしても、地山の状態
や推進抵抗の不均一等により、シールド掘削機１の掘進
方向が曲がってしまい、方向の修正を要することがあ
る。また、構築するトンネルは真っ直ぐなものとは限ら
ずカーブしたものも勿論あり、このような場合には、シ
ールド掘削機１の掘進方向を変更（カーブ）させればよ
いわけである。

このように、シールド掘削機１の方向を変更（修正）
させる際、従来は、第５図および第６図に示すように、
変更する方向（第５図矢印Ａで示す方向）における内側
（右側）の支持枠７部分に、トンネル後方から挿入した
鋼棒（ワイヤでも可）８の先端を固定するとともに、そ
の後端を、たとえばトンネル周壁に覆工したセグメント
Ｓに固定して、シールド掘削機１における変更方向の内
側を前進不可能に拘束し、一方、変更方向における外側
（左側）に配設されているシールドジャッキ５を伸長さ
せている。これにより、シールド掘削機１は、外側のみ
が推進させられることにより、内側方向に向かって掘進
方向が変更する。

［発明が解決しようとする課題］ しかしながら、上記のようにしてシールド掘削機１の
方向を変更させる方法においては、支持枠７に対する鋼
棒８の固定点を中心としてシールド掘削機１が僅かな角
度旋回するわけで、前進する距離をほとんど延ばすこと
ができず、スムーズなカーブを描いてシールド掘削機１
を推進させるには、鋼棒８の支持枠７に対する固定と、
全てのシールドジャッキ５の伸長とを交互に繰り返すこ
とが必要で、きわめて能率が悪いとともに、支持枠７に
対する固定を解除した場合にシールド掘削機１が外側に
戻ってしまう現象が起きていた。また、シールド掘削機
１の推進にともなって、鋼棒８が切断してしまうといっ
た不具合も生じていた。

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、シ
ールド掘削機の方向変更がスムーズかつ能率よく実施し
得るシールド工法におけるシールド掘削機の推進方向を
提供することを目的とする。

［課題を解決するための手段］ 本発明は上記目的を達成するためになされたものであ
って、外殻略円筒状になすシールド掘削機の前部に備え
られたカッタによって地山に掘削しながら、シールド掘
削機の後部にその周方向に沿って複数備えられたシール
ドジャッキを覆工用セグメントの端部に反力を取って伸
長させてシールド掘削機を推進させることにより、トン
ネルを掘進していくシールド工法において、シールド掘
削機の掘進方向の変更を行う際、変更する方向における
内側に配されたシールドジャッキの固定部および伸縮部
のうちのいずれか一方をシールド掘削機に固定し、か
つ、他方を固定構造物に連結部材を介して連結してこの
シールドジャッキの縮小方向に一定圧力を与えるととも
に、変更する方向における外側に配されたシールドジャ
ッキを伸長作動させるようにし、しかも、掘削方向内側
に位置する前記シールドジャッキに対して前記一定圧力
を越える引張荷重が加えられた際には当該シールドジャ
ッキの伸張を許容せしめることを特徴としている。

［作用］ 本発明のシールド工法におけるシールド掘削機の推進
方法によれば、連結部材を介して固定構造物に連結され
た変更方向における内側のシールドジャッキの伸縮部を
進出方向に一定圧力を与えると同時に、外側のシールド
ジャッキを伸張させることにより、シールド掘削機は、
変更方向の内側が推進を拘束させた状態で、外側のみが
推進させられて、掘進方向が変更する。このとき、変更
方向の内側に配されたシールドジャッキが縮小方向に一
定圧力を与えられていることから、シールド掘削機は内
側に引っ張られる作用を受け、これにより、シールド掘
削機は、外側に戻る現象を防ぎつつ方向を変更する。

また、このとき、方向変更するシールド掘削機によっ
て縮小方向に圧力を与えられている内側のシールドジャ
ッキの伸縮部は引っ張り作用を受けるが、このシールド
ジャッキの伸縮圧力を、ある範囲を越えた場合には圧力
がリークされるように適宜な一定値に設定しておくこと
により、その値を超えてシールド掘削機により引っ張ら
れた内側のシールドジャッキは、シールド掘側機に固定
された固定部あるいは伸縮部のうちのいずれか一方がシ
ールド掘側機とともに前進することが可能となり、この
結果、シールドジャッキのストローク分の推進が断続す
ることなくスムーズに進行する。つまり、本発明におい
ては進路変更を行いつつ同時に掘進できるものであり、
したがってスムーズなカーブを描くような進路変更が可
能である。

［実施例］ 以下、第１図ないし第３図を参照して本発明の一実施
例を説明する。図中第５図および第６図と同一構成要素
については同一の符号を付しその説明を省略する。

本実施例を実施するにあたっては、まず、第２図に示
すように、前記各シールドジャッキ５におけるシリンダ
（固定部）5a底部にフランジ９を一体に固定し、このフ
ランジ９を、前記支持板６に、ゴム板等の緩衝材10を介
して複数組のボルト11aおよびナット11bを用いて固定す
る。すなわち、シリンダ5aを、支持板６を介してスキン
プレート２を一体に固定する。また、ロッド（伸縮部）
5bに、後述する鋼棒を連結させるためのブラケット12
を、溶接等の手段により固定する。

このような状態にシールドジャッキ５が固定されたシ
ールド掘削機１によれば、通常のように、カッタ４によ
って地山を掘削し、セグメントＳに反力を取って各シー
ルドジャッキ５を一定に伸長させることにより、シール
ド掘削機１は直進して真っ直ぐなトンネルが形成され
る。

このように、シールド掘削機１を直進させている途中
に、たとえばスキンプレート２が受ける地山の抵抗が不
均一であってシールド掘削機１の向きが曲がってしまい
進行方向の修正を要する場合、あるいは、カーブ部分を
掘削する場合、以下のようにしてシールド掘削機１の方
向を変更させる。この点が、本発明に係るものである。

第１図に示すように、シールド掘削機１を変更させる
方向（この場合矢印Ａのごとく右側）の内側（右側）に
配された１つもしくは数個のシールドジャッキ５を選
び、このシールドジャッキ５のロッド5bに、前記ブラケ
ット12を介してトンネル後方から挿入した鋼棒（ワイヤ
でも可：連結部材）８の先端を固定する。そして、この
鋼棒８の後端を、たとえばトンネル周壁に覆工したセグ
メントＳ等の固定構造物を固定し、ロッド5bを、鋼棒８
を介してセグメントＳに連結する。鋼棒８とセグメント
Ｓとの間は、シールド掘削機１の方向変更が許容される
よう、ある程度離しておく。これにより、方向変更の準
備が完了したことになる。

次いで、鋼棒８が連結されたロッド5bを、適当な圧力
で縮小方向に圧力を与え、一方、変更方向における外側
（左側）に配設されている１つもしくは数個のシールド
ジャッキ５のロッド5bを伸長させる。

これにより、シールド掘削機１は、変更方向の内側に
推進を拘束された状態で、外側のみが推進させられるこ
とにより、内側方向に向いて掘進方向が変更する。この
とき、方向変更の内側に配されたシールドジャッキ５の
ロッド5bが縮小方向に圧力を与えられていることから、
シールド掘削機１は内側に引っ張られる作用を受け、こ
れにより、シールド掘削機１は、外側に戻る現象を防ぎ
つつ方向を変更する。

また、このとき、ロッド5bを伸長させる外側のシール
ドジャッキ５によって、縮小方向に圧力を与えられてい
る内側のシールドジャッキ５のロッド5bは、引っ張り作
用を受けるが、ロッド5bの縮小圧力を、ある範囲を超え
た場合には、リークするように適宜な一定値に設定して
おくことにより、その値を超えてシールド掘削機１によ
り引っ張られた内側のシールドジャッキ５は、シリンダ
5aがスキンプレート２とともに前進することが可能とな
る。したがって、ロッド5bのストローク分（セグメント
Ｓによる１リング分）の推進が断続することなくスムー
ズに進行する。すなわち、進路変更と掘進とを同時に行
うことができ、スムーズなカーブを描くような進路変更
が可能である。

さらに、シールド掘削機１の掘進方向が所望の角度よ
りも若干大きく変更した場合には、内側のシールドジャ
ッキ５のロッド5bを逆に伸長させることにより、簡単に
修正が図れる。また、シリンダ5aは、緩衝材10を介して
支持板６に固定されているから、シールド掘削機１の変
動が直接シールドジャッキ５に伝わらず、損傷が起こり
にくい。

上記実施例では、各シールドジャッキ５のシリンダ5a
を、支持板６に固定しているが、第３図のように、シリ
ンダ5aを支持枠７に固定しても、同様の作用を得られ
る。すなわち、この場合、シリンダ5aの支持枠７前方に
あたる位置にフランジ13を固定し、このフランジ14を、
支持枠７に緩衝材14を介して、複数組のボルト11a、ナ
ット11bによって固定している。シリンダ本体5aの底部
は、支持板７に固定されたリング15内に嵌合されてぐら
つかないようになっている。

また、第４図は、上記シールドジャッキ５とは形式が
異なったシールドジャッキ16を用い、これをシールド掘
削機１に装置した例を示している。

すなわち、このシールドジャッキ16は、シリンダ16a
と、このシリンダ16a内に嵌装されたロッド16bと、シリ
ンダ16a先端に揺動可能に取り付けられたスプレッダ16c
からなり、ロッド16b側に作動油の接続口16dがそれぞれ
設けられていることにより、シリンダ16a側が伸縮する
ものである。すなわち、ロッド16bが固定部、シリンダ1
6aが伸縮部となるわけである。

このシールドジャッキ16は、第４図に示すように、ロ
ッド16b底部にフランジ17を固定し、このフランジ17を
緩衝材18を介して支持板６に複数組のボルト11a、ナッ
ト11bにより固定し、一方、支持枠７を貫通するシリン
ダ16a先端に、ブラケット19を介して鋼棒８を連結して
いる。

［発明の効果］ 以上説明したように、本発明のシールド工法における
シールド掘削機の推進方法によれば、外殻略円筒状をな
すシールド掘削機の前部に備えられたカッタによって地
山を掘削しながら、シールド掘削機の後部にその周方向
に沿って複数備えられシールドジャッキを覆工用セグメ
ントの端部に反力を取って伸長させてシールド掘削機を
推進させることにより、トンネルを掘進していくシール
ド工法において、シールド掘削機の掘進方向の変更を行
う際、変更する方向における内側に配されたシールドジ
ャッキの固定部および伸縮部のうちのいずれか一方をシ
ールド掘削機に固定し、かつ、他方を固定構造物に連結
部材を介して連結してこのシールドジャッキの縮小方向
に一定圧力を与えるとともに、変更する方向における外
側に配されたシールドジャッキを伸長作動させるように
し、しかも、掘進方向内側に位置するシールドジャッキ
に対して前記一定圧力を越える引張荷重が加えられた際
には当該シールドジャッキの伸長を許容せしめることを
特徴とするから、シールド掘削機は縮小作動するシール
ドジャッキにより内側に引っ張られる作用を受け、これ
により、外側に戻る現象を防ぎつつ確実に方向を変更す
ることができ、また、その際、シールドジャッキのスト
ローク分の推進を、断続することなくスムーズに進行さ
せることができるから、進路変更しつつ同時に推進を行
うことが可能となり、スムーズなカーブを描くような進
路変更が可能となる。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は本発明の一実施例を説明する図で
あって、第１図はシールド掘削機の平断面図、第２図は
要部拡大図、第３図はシールドジャッキの固定構造の変
形例を示す平面図、第４図は形式の異なるシールドジャ
ッキを用いた場合の平断面図、第５図は従来方法を説明
するためのシールド掘削機の平断面図、第６図はその要
部拡大図である。 １……シールド掘削機、 ４……カッタ、 ５、16……シールドジャッキ、 5a……シリダ（固定部）、 5b……ロッド（伸縮部）、 ８……鋼棒（連結部材）、 16a……シリンダ（伸縮部）、 16b……ロッド（固定部）。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 久保 裕之 東京都中央区京橋２丁目16番１号 清水 建設株式会社内 (72)発明者 東 洋二 東京都中央区京橋２丁目16番１号 清水 建設株式会社内 (72)発明者 西岳 茂 兵庫県神戸市兵庫区和田崎町１丁目１番 １号 三菱重工業株式会社神戸造船所内 (72)発明者 杉山 雅彦 兵庫県神戸市兵庫区和田崎町１丁目１番 １号 三菱重工業株式会社神戸造船所内 (56)参考文献 実開 昭62−133791（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】外殻略円筒状をなすシールド掘削機の前部
   に備えられたカッタによって地山を掘削しながら、シー
   ルド掘削機の後部にその周方向に沿って複数備えられた
   シールドジャッキを覆工用セグメントの端部に反力を取
   って伸張させてシールド掘削機を推進させることによ
   り、トンネルを掘進していくシールド工法において、 シールド掘削機の掘進方向の変更を行う際に、変更する
   方向における内側に配されたシールドジャッキの固定部
   および伸縮部のうちのいずれか一方をシールド掘削機に
   固定し、かつ、他方を固定構造物に連結部材を介して連
   結してこのシールドジャッキの伸縮方向に一定圧力を与
   えるとともに、変更する方向における外側に配されたシ
   ールドジャッキを伸張差動させるようにし、 しかも、掘進方向内側に位置する前記シールドジャッキ
   に対して前記一定圧力を越える引張荷重が加えられた際
   には当該シールドジャッキの伸張を許容せしめることを
   特徴とするシールド工法における掘削機の推進方法。