JP2580533B2 - 遺伝子突然変異検出用トランスジェニックマウス - Google Patents

遺伝子突然変異検出用トランスジェニックマウス

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JP2580533B2
JP2580533B2 JP6096826A JP9682694A JP2580533B2 JP 2580533 B2 JP2580533 B2 JP 2580533B2 JP 6096826 A JP6096826 A JP 6096826A JP 9682694 A JP9682694 A JP 9682694A JP 2580533 B2 JP2580533 B2 JP 2580533B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、遺伝子突然変異の検出
に有用な新しいトランスジェニックマウスに関するもの
である。
【0002】
【技術的背景】近年 産業界で使用される化学物質の種
類は増加の一途をたどり、わが国の産業界において利用
されている化学物質は50,000種を越えると言われ
ている。ところで、化学物質のヒト遺伝子DNAに対す
る毒作用を予知することを目的とした試験法として変異
原性試験があるがこの試験については、バクテリアから
マウスに至るまでさまざまな生物種を用いる試験系が標
準化され、労働安全衛生法、薬事法、化学物質審査法に
おいてその実施が義務付けられている。
【0003】この変異原性試験を大別すると染色体の
異常を検出する染色体異常試験と点突然変異を検出す
る遺伝子突然変異試験とに分けることができる。染色体
異常試験は細胞遺伝学的手法を用いるものであり、この
方法により、哺乳類培養細胞はもとより実験動物やヒト
の染色体異常をも検出することが可能であり、マウスを
用いる染色体異常試験や小核試験は変異原性試験の標準
的な試験法として各国のガイドラインで推奨されてい
る。これに対し遺伝子突然変異試験はエームステスト
などの微生物試験系や哺乳類細胞を用いる培養細胞系
は盛んに用いられているが、動物個体を用いる試験とし
てはマウス・スポットテストやマウス特定座位試験があ
るのみで、かねてからより簡便、迅速な個体レベルの遺
伝子突然変異検出系の開発・普及が望まれている。
【0004】外来遺伝子DNAをマウス授精卵に注入し
個体にまで発生させる発生工学的手法は、導入遺伝子の
個体レベルにおける機能を研究するために開発された技
術であるが、動物個体を用いて遺伝子突然変異を検出す
る系を開発する際にも有用なものである。現在、大腸菌
のlacZ,lacI遺伝子をマーカーとした遺伝子突
然変異検出用トランスジェニックマウスが開発され市販
されている。lacZ遺伝子を組み込んだマウスはMu
ta Mouseと呼ばれHazletonWashi
ngton社より販売され、lacI遺伝子を組み込ん
だマウスはBig Blue Mouseと呼ばれSt
ratagene社より市販されている。
【0005】これらの試験系は、同一個体から生殖細胞
を含む多くの臓器で遺伝子突然変異を検出できる優れた
特徴を持っているが、一方でプラークの色で突然変異
体を検出するため変異体を検出するのに要する労力、時
間が少なくない、試験の費用がかさむ、マーカー遺
伝子のサイズが大きい(lacZは約3kb、lacI
は約1kb)ため、変異部位の同定に手間取る、などの
欠点が指摘されていた。
【0006】本発明者らは、個体レベルで遺伝子突然変
異を検出するための、より高性能なトランスジェニック
マウス試験系の開発を目的に、種々研究を行ない、先
に、マウス授精卵に導入する遺伝子突然変異検出用シャ
トルベクターの開発に成功した(特願平5−30319
2号)。すなわち、本発明者らは、先にマウス授精卵に
導入することにより高性能なトランスジェニックマウス
を得ることのできる下記の特徴を有する新規なラムダー
ファージDNAを提供した。ラムダーファージDNAの
塩基配列において、その塩基配列中に2つのloxP配
列、2つのHind III認識配列、大腸菌gpt遺
伝子配列、プラスミド複製開始点を有する塩基配列およ
び薬剤耐性遺伝子配列を組みこんだ新規なラムダーファ
ージDNAであって、それらの配列の順序が、ラムダー
ファージDNAのしフトアームからライトアームに向っ
てまず、
【0007】(1) Hind III認識配列、次
に、(2) loxP配列、次に、(3) 大腸菌gp
t遺伝子配列、プラスミド複製開始点を有する塩基配列
および薬剤耐性遺伝子配列の3つの配列を任意の順序の
組み合わせにより位置させた配列、次に、(4) 前記
のloxP配列と同方向のloxP配列、次に、(5)
Hind III認識配列の順序において組みこまれ
ていることを特徴とする新規なラムダーファージDN
A。
【0008】本発明は、上記の新規なラムグーファージ
DNAをマウス授精卵に注入し、個体に発生させ全身に
当該DNAを持つマウス(=トランスジェニックマウ
ス)を提供するものである。
【0009】
【発明の開示】本発明は、化学物質の遺伝子に対する変
異原性を迅速・簡便に検出しうる下記の新規なトランス
ジェニックマウスを提供するものである。体細胞と生殖
細胞に下記のラムダファージDNAを有することを特徴
とするトランスジェニックマウス。ラムダーファージD
NAの塩基配列において、その塩基配列中に2つのlo
xP配列、2つのHind III認識配列、大腸菌g
pt遺伝子配列、プラスミド複製開始点を有する塩基配
列および薬剤耐性遺伝子配列を組みこんだ新規なラムダ
ーファージDNAであって、それらの配列の順序が、ラ
ムダーファージDNAのレフトアームからライトアーム
に向ってまず、(1) Hind III認識配列、次
に、(2) loxP配列、次に、(3) 大腸菌gp
t遺伝子配列、プラスミド複製開始点を有する塩基配列
および薬剤耐性遺伝子配列の3つの配列を任意の順序の
組み合わせにより位置させた配列、次に、(4) 前記
のloxP配列と同方向のloxP配列、次に、(5)
Hind III認識配列の順序において組みこまれ
ていることを特徴とする新規なラムダーファージDN
A。
【0010】このトランスジェニックマウスを用いて、
医薬品、食品添加物など種々の化学物質の遺伝子に対す
る突然変異誘発性を調べることにより種々の化学物質の
安全性に関する試験法を確立することができるので本発
明のトランスジェニックマウスは極めて有用なものであ
る。
【0011】この試験法の手順の概要は以下のとおりで
ある。 本発明に係る前記のラムダーファージDNAを全身
に持つトランスジェニックマウスに試験化学物質を投与
する。 このトランスジェニックマウスの臓器あるいは血液
からラムダーファージDNAを抽出し、染色体上のgp
t遺伝子配列を欠損した大腸菌の菌体内あるいは菌体外
でgpt遺伝子を含むDNAを環状プラスミドとする。 gpt遺伝子を上記の環状プラスミド上に持つ大腸
菌を6−チオグアニンと抗生物質(アンピシリンあるい
はクロラムフェニコール)を含む培地上に塗布し、2−
3日間、37℃で培養し、培地上に生じたコロニー数を
計測する。また、gpt遺伝子をプラスミド上に持つ大
腸菌を抗生物質のみを含む培地上に塗布し、同様に培養
し、培地上に生じたコロニー数を計測する。
【0012】上記の大腸菌は染色体上のgpt遺伝子配
列が欠損しているため、大腸菌のグアニシ・フォスフォ
リボシル転移酵素(これはgpt遺伝子の産物である)
活性はプラスミド上のgpt遺伝子のみに依存する。グ
アニン・フォスフォリボシル転移酵素は6−チオグアニ
ンを代謝しDNAに取り込まれるようにするため、グア
ニン・フォスフォリボシル転移酵素活性の高い大腸菌は
6−チオグアニンを含む培地上で生育することができな
い。突然変異を起こしていない野生型のgpt遺伝子を
プラスミド上に持つ大腸菌は、グアニン・フォスフォリ
ボシル転移酵素活性が高いため、培地上にコロニーを形
成することができず、突然変異を起こしたgpt遺伝子
配列をプラスミド上に持つ大腸菌は、グアニン・フォス
フォリボシル転移酵素活性が低いため、6−チオグアニ
ンを効率よく代謝できず、培地上にコロニーを形成す
る。
【0013】したがって、化学物質によつマウス体内で
gpt遺伝子配列に沢山突然変異が起これば、6−チオ
グアニンと抗生物質を含む培地上に沢山のコロニーが形
成される。換言すれば、化学物質がマウス体内にあるg
pt遺伝子に突然変異を起こした程度は、培地上に生じ
たコロニー数を数えることにより推測することができ
る。また、コロニーからプラスミドを単離し、プラスミ
ド上のgpt遺伝子の塩基配列を決定することにより、
突然変異の種類および場所を正確に決定することができ
る。
【0014】培地中に加える抗生物質は、プラスミドを
持たない大腸菌が培地上で増殖することを防いでいる。
プラスミドを持たない大腸菌は、たとえ6−チオグアニ
ンが含まれていなくても、抗生物質が存在すると培地上
で、コロニーを形成することができない。プラスミド上
に薬剤耐性遺伝子を持つ大腸菌だけが、抗生物質を含む
培地上にコロニーを作ることができる。
【0015】突然変異の頻度は抗生物質と6−チオグ
アニンを含む培地上に生じた大腸菌コロニーの数を抗
生物質のみを含む培地上に生じた大腸菌コロニーの数で
除して求めることができる。この突然変異頻度を表わす
数値が高いほど、試験に用いた化学物質の突然変異を起
こす力が強いと言うことができる。突然変異を起こす力
の強い物質は、ヒトに対し潜在的な危険性を持つ物質で
あるので、上記の試験方法はヒトに対する化学物質の安
全性を調べる上で重要な役割を果たすものである。
【0016】本発明に係る新規なラムダーファージの作
製方法は、前記の特願平5−303192号明細書中に
も記載されているが、本明細書中においても繰り返し、
以下に述べる。ラムダーファージの右腕(ライトアー
ム)、左腕(しフトアーム)およびloxP配列はラム
ダー・イエス・ベクターより調製した。ラムダー・イエ
ス・ベクターはスタンフォード大学医学部Ronald
W.Davis博士よつ供与を受けた。ベクターから
各部品すなわち右腕、左腕およびloxP配列を取り出
し遺伝子突然変異検出用ベクターの作製に用いることに
ついては、Davis博士の了承を得て行った。
【0017】1) ラムダーEG1、同EG2の作製
(図1参照) EcoRVとHind IIIで切断したpBR32
2ベクターに、pSV2gptプラスミドから調製した
大腸菌のgpt遺伝子を含む0.8kbDNA断片を連
結しpYG131プラスミドを作製した。 pYG131プラスミドをSalIとBamHIで切
断後、pSE936プラスミドから調製したloxP配
列をタンデムに2コピー含む0.4kbDNA断片を連
結しpYG133プラスミドを得た。なお、上記のpS
E936プラスミドは、ラムダ・イエス・ベクターをN
otIで切断した後、環状プラスミドとしたものであ
る。 pYG133プラスミドをHind IIIで切断
後、DNAポリメラーゼを用い末端を平滑にし、セルフ
・ライゲーションしてHind III部位を持たない
pYG135プラスミドを作製した。
【0018】pYG135プラスミドをNotIで線
状にした後、NotI部位をHind III部位に変
換する合成オリゴヌクレオチド・リンカーおよびラムダ
ー・ファージの右腕、左腕とともにT4 DNA li
gaseで処理した。 パッケージングにより、連結したDNAをファージと
して回収した後、大腸菌LE392に感染させプラーク
を得た。 プラークからDNAを調製し、調製したファージが目
的とする構造を有していることを制限酵素を用い確認し
た。
【0019】2) ラムダーEG3の作製(図2参照) ラムダーEG3は上述のラムダーEG1、EG2と同様
の方法で作製したが、出発材料のプラスミドとしてpB
R322の代わりにpACYC184を用いた。したが
ってラムダーEG3ではプラスミドの複製開始点がpA
CYC184由来のものとなっているほか、薬剤耐性因
子がクロラムフェニコール耐性となっている。
【0020】3) ラムダーEG5、同6、同7の作製
(図3参照) ラムダーEG1およびEG2の開発過程で作製したプラ
スミドpYG135をScaIで切断した後、クロラム
フェニコール耐性遺伝子を含む約1.3kbDNA断片
を挿入し、クロラムフェニコール耐性遺伝子の方向が異
なる2種類のプラスミドpYG137とpYG138を
作製した。これらのプラスミドをNotIで線状にした
後、ラムダーEG1およびEG2を作製したのと同一の
方法でラムダー・ファージの右腕、左腕に達結し、pY
G137から作製したものをラムダーEG5、EG6そ
してpYG138から作製したものをラムダーEG7と
した各ラムダーEGの配列構造は下記のとおりである
(図4参照)。
【0021】上記で作製したラムダーEG1、2、3、
5、6、7はラムダー・ファージを基本としたシャトル
型ベクターで、ファージの右腕と左腕の間に、両端にl
oxP配列を同方向に持つpBR322系(EG3の場
合にはpACYC184系)のプラスミドDNAが線状
になって挿入されている。このプラスミドDNA領域に
はクロラムフェニコール耐性遺伝子(EG1、EG2で
はアンピシリン耐性遺伝子)、プラスミドの複製開始点
(ori)および遺伝子突然変異検出のマーカーとなる
大腸菌のグアニン・フォスフォリボシル転移酵素遺伝子
(gpt)が含まれている。またプラスミド領域とファ
ージの右腕および左腕の連結部位には、それぞれ制限酵
素Hind IIIの認識部位が作られている。各ラム
ダーEGの回収方法は下記のとおりである(図5参
照)。
【0022】上述の各ラムダーEGは遺伝子突然変異検
出用トランスジェニックマウスの作製に極めて有用であ
る。上述の新規なラムダーファージDNAをマウス授精
卵に導入して得られたトランスジェニックマウスを試験
化合物で処理したマウスの臓器からDNAを単離し、そ
の中に含まれる目的遺伝子の回収を行う。トランスジェ
ニックマウスからの遺伝子の回収方法は例えば以下の3
とおりの方法を行うことができる。
【0023】1) 単離したDNAをパッケージング・
エクストラクトで処理しファージとした後、Cre蛋白
質を発現している大隅菌に感染させ大腸菌の菌体内でフ
ァージをプラスミドに変換する。 2) 単離したDNAをCre蛋白質と試験管内で反応
させ、プラスミドに変換し、次いで電気的に大腸菌に導
入する。 3) 単離したDNAをHind IIIで処理し、次
いで、T4 DNAIigaseによりプラスミドに変
換し、電気的に大腸菌に導入する。
【0024】次に変異体の検出方法について述べる(図
5参照)。突然変異の検出は、トランスジェニックマウ
スから回収したプラスミドを上記した3方法のいずれか
で大腸菌に導入し、6−チオグアニンを含む培地上に塗
布し、6−チオグアニン耐性となった変異株(プラスミ
ド上のgpt遺伝子に変異を持つ株)を選抜することに
より行う。生存菌数の測定は、大腸菌を希釈してから6
−チオグアニンを含まない培地上に塗布し、生存菌数当
たりの突然変異体数を計測する。更に突然変異体につい
てはそのプラスミドを単離し、gpt遺伝子の塩基配列
決定を行い、突然変異部位の同定を行う。
【0025】本発明の遺伝子突然変異検出用マウスを使
用することにより、以下の利点を備えた試験系が得られ
る。第1の利点は、大腸菌のgpt遺伝子を突然変異検
出のマーカー遺伝子としているため、6−チオグアニン
を用いるポジティブ・セレクションが可能であるという
点である。突然変異は希な現象であり、自然突然変異頻
度は10−5−10−6である。lacIやlacZを
用いるトランスジェニックマウス試験系では、10万個
以上の多数のプラークの中から色調の変化した変異体を
検索する(カラー・セレクション)ため、変異体の検出
には多数の細菌培養用シャーレと高価な色素(X−Ga
l)が必要である。
【0026】これに対し、6−チオグアニンを用いるポ
ジティブ・セレクション法では、gpt遺伝子に変異を
おこした大腸菌のみが培地上でコロニーを形成するた
め、10万個以上の多数の大腸菌を1枚のシャーしに蒔
いて変異体を検索することが可能である。したがって、
ポジティブ・セレクション法を用いれば迅速かつ簡便
に、多数の化合物について変異原性の検索を行うことが
可能となる。また6−チオグアニンは廉価な試薬であ
り、X−Galを使うカラー・セレクション法に比べ、
変異体検出に要する費用を軽減することができる。
【0027】第2の利点は、ファージとして回収した遺
伝子を大腸菌の菌体内で自動的にプラスミドに変換する
ことができることである。本発明に係る上記のファージ
の中央部分に配置された2つのloxP配列は、それぞ
れ34塩基対の短いDNA配列で、Creと呼ばれる部
位特異的組換え蛋白質により認識される。2つの同方向
loxP部位に挟まれたDNA領域は、Cre蛋白質が
存在すると直鎖DNAから環状プラスミドとして切つ出
される。したがって回収したファージをCre蛋白質を
発現している大腸菌に感染させると、ファージはプラス
ミドに変換し、プラスミドを持った大腸菌のみがクロラ
ムフェニコールあるいはアンピシリンの入った培地上で
コロニーを形成する。このため、その後の操作、すなわ
ちプラスミドの単離および塩基配列の決定が容易であ
る。
【0028】第3の利点は、突然変異検出のマーカーと
なる遺伝子(gpt)のサイズが小さく(456 b
p)塩基配列の決定が容易であることである。gptの
大きさはlacZ遺伝子の1/6、lacI遺伝子の約
半分であり、したがって、塩基配列決定により多数の変
異体について突然変異部位を同定することが可能であ
る。
【0029】第4の利点は、遺伝子を回収するのに前述
した3つの方法をとることが可能であることである。し
たがって、ファージのパッケージングが何らかの理由で
達成し得ない場合には、第2、第3の方法によって目的
遺伝子を回収することができる。これはトランスジェニ
ックマウスから回収した貴重なDNAがロスなく分析さ
れることを可能にする。
【0030】第5の利点は、培養細胞で得られた変異原
性試験の結果を個体レベルで検討する際に特に有用であ
るという点である。大腸菌のgpt遺伝子を組み込んだ
チャイニーズハムスターAS52細胞は培養細胞を用い
た遺伝子突然変異の検出系として広く用いられている。
このため、同じ遺伝子を組み込んだトランスジェニック
・マウスは培養細胞系で得られた結果を、個体レベルで
確認するのに有用となる。
【0031】本発明に係わる新規なトランスジェニック
マウスの作製方法を以下に述べる。マウスは、遺伝的に
均一にした「近交系マウス」が使用される。
【0032】 9週齢以上の雌C57BL/6Jマウ
スに排卵誘導剤を投与し、同系統の無処理の雄マウスと
交配後、膣栓が確認された雌マウスの卵管膨大部より授
精卵をWhitten培養液(下記注1)に回収し、D
NAを注入するまで5%濃度のCO2イシキュベーター
内で培養した。 注1:参考文献、Whitten,W,K,(197
1)Embryo medium.Nutrient
requirements for the Cult
ure of preimplantation em
bryos inVitro.Adv.Biosc
i.,6:129−141。
【0033】 修正Whitten培養液(下記注
2)に授精卵を移し、授精卵の雄性前核に約2p1(約
500−1000コピー)のDNA溶液を排卵推定後9
−16時間の間にマイクロインジェクション法(下記注
3)により導入し、再度Whitten培養液に移しC
O2インキュベーター内で一晩培養した。 注2:Satoshi Takeda and Yut
aka Toyoda(1991)Expressio
n of SV 40−lacZ gene in m
ouse preimplantation embr
yo afterpronuclear microi
njectlon。MolecularReprodu
ction and Development,30,
90−94。 注3:1) 授精卵へのDNA注入、発生工学実験マニ
ュアル(野村達次 監修、勝木元也 編)41−46ペ
ージ、講談社、1989年 2) Microinjection of DNA
into pronuclei,In:Manipul
ating the mouse embryo(ed
ited by B.Hogan,F.Costant
ini and E.Lacy),pp.157−18
2。Cold Spring Harbor Labo
ratory,U.S.A.,1986。
【0034】 2細胞胚に発生した卵を修正Whit
ten培養液に移し、精管印断した雄マウスと交配さ
せ、朝、腟栓が確認された偽妊娠雌マウスに各々の卵管
膨大部に発生した2細胞胚を8−15個移植した。
【0035】 自然分娩させ、生育させた小マウスの
目から採血し、DNAを抽出した。
【0036】 大腸菌gpt遺伝子検出用プライマー
を用いてPCR法(下記注4)によりgpt遺伝子が導
入されている小マウスの検索を行った。gpt遺伝子が
確認された小マウスについては更にドット・プロット法
(下記注5)により導入された遺伝子のコピー数(下記
注6)の測定を行った。 注4:PCR法(polymerase chain
reaction法)耐熱性のDNA複製酵素を用い、
遺伝子を増幅する方法であって、この方法によりトラシ
スジェニックマウスのDNAのなかに、導入したラムダ
ーファージDNAの存在を定性的に調べることができ
る。 注5:ドットプロット法:DNA同士の相補性を利用
し、試料となるDNAの中に探している遺伝子が存在す
るか否か、また存在するとすればどの程度存在するかを
調べる方法であり、調査対象遺伝子を放射能で標識して
から熱変性させ1本鎖にし、同じく熱変性により1本鎖
にした試料DNAとゆっくりと会合させ、試料DNAに
放射能標識が結合するか否か、また結合した場合にはそ
の放射活性を調べることにより遺伝子の量が推定され
る。 Analysis of DNA sequences
by blotting and hybridiz
ation.In:Current protocol
s in molecular biology(ed
ited byF.M.Ausubel,R.Bren
t,R.E.Kingston,D.D.Moore,
J.G.Seidman,J.A.Smith,K.S
truhl).pp.2,9.1.−2,9.17.G
reene Publishing Associat
es and Wiley−Interscienc
e.U.S.A.,1992。 注6:コピー数:DNAを授精卵に導入すると、通常D
NAがいくつかつながった状態でマウスの染色体のある
1カ所に導入される。導入されたラムダーファージの1
個分をさして1コピーと称する。例えば、EG3ファー
ジを組み込んだトランスジェニックマウスはこのファー
ジを40−50個直列に持っており、コピー数は40−
50である。コピー数が増加すると、個体あたりの突然
変異の標的となる遺伝子の数が増加するので、より高い
感度で突然変異を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1A】本発明に係るトランスジェニックマウスに導
入する新規ラムダーファージDNAの作製の2つの実施
例(ラムダーEG1、ラムダーEG2)を図示したもの
である。
【図1B】図1Aのつづき。本発明に係るトランスジェ
ニックマウスに導入する新規ラムダーファージDNAの
作製の2つの実施例(ラムダーEG1、ラムダーEG
2)を図示したものである。
【図2A】上記の新規ラムダーファージDNAの作製の
他の実施例(ラムダーEG3)を図示したものである。
【図2B】図2Aのつづき。上記の新規ラムダーファー
ジDNAの作製の他の実施例(ラムダーEG3)を図示
したものである。
【図3A】上記の新規ラムダーファージDNAの作製の
他の実施例(ラムターEG4)を図示したものである。
【図3B】図3Aのつづき。上記の新規ラムダーファー
ジDNAの作製の他の実施例(ラムダーEG4)を図示
したものである。
【図3C】図3Bのつづき。上記の新規ラムダーファー
ジDNAの作製の他の実施例(ラムダーEG4)を図示
したものである。
【図4A】ラムダーEG1、EG2、EG3の各配列構
造を示す図である。
【図4B】ラムダーEG5、EG6、EG7の各配列構
造を示す図である。
【図5A】上記の新規ラムダーファージをマウス授精卵
に導入し、トランスジェニックマウスを作製し、このト
ランスジェニックマウスからDNAを抽出し、大腸菌の
菌体内あるいは菌体外で環状プラスミドを形成させ、そ
の環状プラスミドを染色体上のgpt遺伝子配列を欠損
した大腸菌に導入し、その大腸菌を6−チオグアニンと
抗生物質を含む培地上に塗布、培養して、環状プラスミ
ド上のgpt遺伝子配列に突然変異を持つ大腸菌細胞を
検出する方法を図示したものである。
【図5B】図5Aのつづき。上記の新規ラムダーファー
ジをマウス授精卵に導入し、トランスジェニックマウス
を作製し、このトランスジェニックマウスからDNAを
抽出し、大腸菌の菌体内あるいは菌体外で環状プラスミ
ドを形成させ、その環状プラスミドを染色体上のgpt
遺伝子配列を欠損した大腸菌に導入し、その大腸菌を6
−チオグアニンと抗生物質を含む培地上に塗布、培養し
て、環状プラスミド上のgpt遺伝子配列に突然変異を
持つ大腸菌細胞を検出する方法を図示したものである。
【図5C】図5Bのつづき。上記の新規ラムダーファー
ジをマウス授精卵に導入し、トランスジェニックマウス
を作製し、このトランスジェニックマウスからDNAを
抽出し、大腸菌の菌体内あるいは菌体外で環状プラスミ
ドを形成させ、その環状プラスミドを染色体上のgpt
遺伝子配列を欠損した大腸菌に導入し、その大腸菌を6
−チオグアニンと抗生物質を含む培地上に塗布、培養し
て、環状プラスミド上のgpt遺伝子配列に突然変異を
持つ大腸菌細胞を検出する方法を図示したものである。
【図5D】図5Cのつづき。上記の新規ラムダーファー
ジをマウス授精卵に導入し、トランスジェニックマウス
を作製し、このトランスジェニックマウスからDNAを
抽出し、大腸菌の菌体内あるいは菌体外で環状プラスミ
ドを形成させ、その環状プラスミドを染色体上のgpt
遺伝子配列を欠損した大腸菌に導入し、その大腸菌を6
−チオグアニンと抗生物質を含む培地上に塗布、培養し
て、環状プラスミド上のgpt遺伝子配列に突然変異を
持つ大腸菌細胞を検出する方法を図示したものである。
【図6】上記の新規ラムダーファージがCre蛋白質に
より、2つのloxP配列部位において切り出され、そ
の間のDNA領域が環状プラスミドを形成する趣旨を図
示したものである。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 体細胞と生殖細胞に下記のラムダファー
    ジDNAを有することを特徴とするトランスジェニック
    マウス。ラムダーファージDNAの塩基配列において、
    その塩基配列中に2つのloxP配列、2つのHind
    III認識配列、大腸菌gpt遺伝子配列、プラスミ
    ド複製開始点を有する塩基配列および薬剤耐性遺伝子配
    列を組みこんだ新規なラムダーファージDNAであっ
    て、それらの配列の順序が、ラムダーファージDNAの
    レフトアームからライトアームに向ってまず、 (1) Hind III認識配列、次に、 (2) loxP配列、次に、 (3) 大腸菌gpt遺伝子配列、プラスミド複製開始
    点を有する塩基配列および薬剤耐性遺伝子配列の3つの
    配列を任意の順序の組み合わせにより位置させた配列、
    次に、 (4) 前記のloxP配列と同方向のloxP配列、
    次に、 (5) Hind III認識配列 の順序において組みこまれている新規なラムダーファー
    ジDNA。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のマウスを使用し、そのマ
    ウスからDNAを抽出し、in vitroパッケージ
    ング法によりマウス体内に導入したラムダーファージD
    NAをファージ粒子として回収し、Cre recom
    binaseを発現する大腸菌であって、染色体上のg
    pt遺伝子配列が欠損している大腸菌に感染させ、その
    大腸菌内においてCre recombinaseによ
    ってラムダーファージDNA配列中のloxP配列部位
    を切断、結合せしめることにより環状DNA(=プラス
    ミド)を生成させ、その大腸菌を6−thioguan
    ineおよび抗生物質を含む培地上に塗布し、培養する
    ことにより環状DNA(=プラスミド)上のgpt遺伝
    子配列に突然変異を持つ大腸菌細胞を検出する方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のマウスを使用し、そのマ
    ウスからDNAを抽出し、制限酵素Hind IIIに
    よって切断した後、2つのHind III切断部位を
    DNA ligaseにより結合せしめて環状DNA
    (=プラスミド)を生成させ、その環状DNAを染色体
    上のgpt遺伝子配列が欠損している大腸菌に導入した
    後、その大腸菌を6−thioguanineおよび抗
    生物質を含む培地上に塗布し、培養することにより環状
    DNA(=プラスミド)上のgpt遺伝子配列に突然変
    異を持つ大腸菌細胞を検出する方法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載のマウスを使用し、そのマ
    ウスに変異原物質あるいは発癌物質であることが疑われ
    る物質を投与した後、請求項2あるいは請求項3記載の
    方法を用いてgpt遺伝子配列に突然変異を持つ大腸菌
    細胞を検出し、マウス体内で起きた突然変異の表示とし
    て6−thioguanine耐性大腸菌コロニー数を
    計測することにより化学物質の突然変異原性を評価する
    ための試験方法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のマウスを使用し、そのマ
    ウスの細胞を培養することにより得た細胞に、変異原物
    質、あるいは発癌物質であることが疑われる物質を投与
    し、請求項2あるいは請求項3記載の方法を用いてgp
    t遺伝子配列に突然変異を持つ大腸菌細胞を検出し、培
    養細胞内で起きた突然変異の表示として6−thiog
    uanine耐性大腸菌コロニー数を計測することによ
    り化学物質の突然変異原性を評価するための試験方法。
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