JP2575012Y2 - 波形解析機能付きメモリコーダ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、交流電気鉄道用変電所
における、き電回路故障時および電気車負荷の電気量測
定に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】交流電気鉄道では、き電用変電所から電
車線路を通して電気車へ交流電力が供給（き電）され
る。交流き電回路で故障が発生すると、き電用変電所に
おいて保護継電器により故障を検出して、遮断器により
故障を除去している。

【０００３】保護継電器が動作すると故障現象の分析の
ため、保護継電器の動作をトリガとして、外部トリガに
よりメモリコーダを起動し、保護継電器動作時の電圧お
よび電流波形を出力して、故障現象の解析を行ってい
る。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】従来のメモリコーダ
は、電圧および電流波形を出力するのみであり、故障現
象および保護継電器動作との関連を調査するためには、
出力された波形を手作業によりサンプリングして、更に
フーリエ級数により解析することが必要であった。

【０００５】一方、メモリコーダの内部トリガによる記
録については、一定レベル以上で動作させるものは既に
存在するが、車両用変圧器の励磁突入電流の波形など変
化分の大きい一過性の電流波形について記録するのは困
難であった。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案は、上記問題点を
解決するもので、電圧および電流波形を１波形につきｎ
個サンプリングして一定時間に亘りメモリに記憶して、
１周期の電流波形についてフーリエ級数解析を行うと共
に、１サンプリングづつずらしながら連続して波形解析
を行い、記録紙に電圧および電流の原波形ならびに電圧
に対する電流の位相、および基本波電流に対する低次高
調波の含有率を連続出力することを特徴とするものであ
る。

【０００７】本考案では、電気車電流は変化分ΔＩの増
加が小さいことに比べ、電気車車両用変圧器の無負荷励
磁突入電流や故障電流は電流の変化分が大きいことを利
用して、電流の変化分を検出して、内部トリガとしてメ
モリコーダを起動させる機能を持ち、他のトリガと選択
できることを特徴とするものである。

【０００８】

【作用】交流電気鉄道用変電所において、き電回路故障
時の現象をリアルタイムに詳細かつ正確に把握すること
ができ、き電回路の故障現象解析および保護継電器動作
の解析に貢献する。

【０００９】

【実施例】本考案の波形解析機能付きメモリコーダを図
面に基づいて説明する。図１は本考案の波形解析機能付
きメモリコーダの基本構成で、交流電気鉄道用変電所１
で計器用変圧器４の出力電圧および計器用変流器５の出
力電流を本考案の波形解析機能付きメモリコーダ８に入
力する。電車線２およびレール３で構成されたき電回路
で短絡故障が発生すると、変電所で保護継電器７が動作
して、本考案の波形解析機能付きメモリコーダ８が動作
を開始する。

【００１０】波形解析機能付きメモリコーダ８はマイク
ロコンピュータで構成し、入力された電圧ｖおよび電流
ｉはアナログ／デジタル変換部でデジタル信号に変換さ
れる。１つの波形の周期が２πなる波形に関して、ａ₀
を直流分、ｎを高調波の次数、ωを角周波数、ｔを時間
とすると次のフーリエ級数に展開することができる。

【００１１】

【数１】

【００１２】図２において電流波形ｉはデジタル信号化
されており、図２に示すように電圧波形ｖを基準にして
一周期についてｍ等分されているとすると、分割点ｋ
（ｋ＝１〜ｍ）における瞬時値ｆ（θ）は次式となる。

【００１３】

【数２】

【００１４】この瞬時値を用いて、数１の係数ａ_o、ａ_n
およびｂ_n は次式で表される。

【００１５】

【数３】

【００１６】今、数３をまとめて

【００１７】

【数４】

【００１８】とすれば、数１は

【００１９】

【数５】

【００２０】となる。数５において基本波電流ｉ₁ に対
する高調波電流ｉ_n の比をとれば高調波含有率が求ま
る。

【００２１】図２の波形においてフーリエ級数解析を行
う場合、フーリエ解析の開始点を１サンプリングずつず
らして一周期について解析を行えば連続したフーリエ級
数解析が可能になる。図３は以上のようにして求めた電
流波形の分析例であり、原電流波形１１を１周期に亘り
フーリエ級数解析した電流の基本波成分１２、フーリエ
級数解析した電流の基本波電流に対する第３調波含有率
１３、フーリエ級数解析した電流の基本波電流に対する
第２調波含有率１４、フーリエ級数解析した電流の直流
分１５を示している。この結果、電流波形に含まれる低
次高調波の変化を連続して分析するとともに、記録紙上
に出力することを特徴としている。

【００２２】本考案の波形解析機能付きメモリコーダは
保護継電器接点等による外部トリガで起動するが、更
に、電流の変化分を検出して起動する内部トリガを有し
ている。図４は電気車１８が異電源切替セクション１６
に進入した場合であり、切替開閉器１７が投入されると
図５に示すように、電気車１８の車両用変圧器に大きな
値の車両用変圧器の無負荷励磁突入電流１９が流れる。
この電流は値が大きいため、保護継電器７が不要動作す
る要因となることがある。

【００２３】また、き電回路で短絡故障が発生した時に
も大きな電流が流れる。そこで、本考案の波形解析機能
付きメモリコーダは、電流の変化分ΔＩを検出して、整
定値以上のΔＩを検出すればメモリコーダを起動する内
部トリガも有している。

【００２４】

【考案の効果】以上説明したように本考案によれば、交
流電気鉄道用変電所において、保護継電器動作等による
外部トリガ又は電流の変化分検出による内部トリガによ
り、電圧および電流の原波形を取り込み、連続的にフー
リエ級数解析を行って、記録紙上に電圧と電流の原波
形、電圧に対する電流位相、および電流波形の低次高調
波含有率を出力することにより、電力系統の現象解析に
役立つものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の波形解析機能付きメモリコーダの原理
である。

【図２】デジタル信号に対するフーリエ級数解析の原理
である。

【図３】本考案の波形解析機能付きメモリコーダの出力
のうち、電流波形の連続的フーリエ級数解析結果の例で
ある。

【図４】電気車用主変圧器による無負荷励磁突入電流の
発生回路の原理である。

【図５】電気車用主変圧器の無負荷励磁突入電流波形例
である。

【符号の説明】

１ 交流電気鉄道用変電所 ２ 電車線 ３ レール ４ 計器用変圧器 ５ 計器用変流器 ６ 電車線とレールの短絡故障 ７ 保護継電器 ８ 波形解析機能付きメモリコーダ ９ 原電圧波形 10 フーリエ級数解析を行うデジタル化した原電流波形 11 フーリエ級数解析する原電流波形の例 12 フーリエ級数解析した電流の基本波成分 13 フーリエ級数解析した電流の第３調波含有率 14 フーリエ級数解析した電流の第２調波含有率 15 フーリエ級数解析した電流の直流分 16 異電源切替セクション 17 切替開閉器 18 電気車 19 車両用変圧器の無負荷励磁突入電流

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 内藤 嘉則 神奈川県相模原市北里二丁目９番９号 昭和電子工業株式会社内 審査官 武田 悟 (56)参考文献 特開 平４−240574（ＪＰ，Ａ) 実開 平６−16881（ＪＰ，Ｕ) 実開 平２−71266（ＪＰ，Ｕ) 実公 昭63−24448（ＪＰ，Ｙ２)

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 変電所で電圧および電流波形を入力し、
   内部トリガ又は外部トリガにより電圧および電流の原波
   形を記録紙に出力するメモリコーダにおいて、電流波形
   をフーリエ級数解析して基本波と低次数の高調波を求め
   る手段と、電圧に対する電流位相と電流基本波に対する
   低次高調波電流の含有率を電圧と電流の原波形と同時に
   出力する手段とを具備することを特徴とする波形解析機
   能付きメモリコーダ。
2. 【請求項２】 メモリコーダのトリガとして、接点入力
   による外部トリガおよび電流の設定値で動作する内部ト
   リガの他に、電流の変化分を検出して内部トリガを可能
   とすることを特徴とする請求項１記載の波形解析機能付
   きメモリコーダ。