JP2574719B2 - 三次元多軸織物複合材料の製造方法及び製造装置 - Google Patents

三次元多軸織物複合材料の製造方法及び製造装置

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JP2574719B2 JP6024716A JP2471694A JP2574719B2 JP 2574719 B2 JP2574719 B2 JP 2574719B2 JP 6024716 A JP6024716 A JP 6024716A JP 2471694 A JP2471694 A JP 2471694A JP 2574719 B2 JP2574719 B2 JP 2574719B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、三次元多軸織物プリフ
ォームを強化基材とし、熱硬化性樹脂をマトリックスと
した三次元多軸織物複合材料の製造方法及びその製造装
置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】軽量性と高強度を有する繊維強化複合材
料は、航空・宇宙・海洋等における先端的技術分野にお
いて重視されている。これらの分野では、繊維の強度を
最大限に利用するために、製品の形状とその部位に作用
する外力に応じた繊維配列や輪郭とを有するように立体
的に賦形されたニアネットシェープの織物や、縦、横、
垂直方向など、多軸方向に繊維が配列した三次元多軸織
物(これらを総称して立体織物と呼ばれる。)の製織技
術、及びこれに樹脂などをマトリックスにして一体化さ
せ、所要の立体的形状に成形する技術、の確立が望まれ
ている。
【0003】このような複合材料の成形技術を確立でき
れば、裁断や接合の手段を用いずに、曲面や凹凸を有す
る複雑な形状の成形や、製品の部位に作用する外力に応
じた繊維配列の製織を可能とし、得られる複合材料には
物性としての欠陥がなく、過度の負荷条件の下での物性
に対する高い信頼性を得ることができる。
【0004】しかるに、熱硬化性樹脂をマトリックスと
した繊維強化複合材料の成形においては、成形中に発生
する樹脂の硬化反応による体積収縮、および硬化反応終
了後の冷却過程で発生する樹脂の体積収縮により、複合
材料内部に残留応力が発生する。上記繊維強化複合材料
が二次元複合材料、例えば、積層構造物などの場合は、
積層面に垂直な方向に強化基材の収縮が可能であるた
め、成形中にこの方向に加圧することにより残留応力の
緩和が期待される。このため、二次元複合材料の成形に
おいては、プレス成形、オートクレープ成形などの方法
がよく用いられている。
【0005】これに対し、三次元多軸織物複合材料の場
合は、強化繊維による三次元的拘束が生じるため、成形
中に発生する上記残留応力が緩和されず、二次元複合材
料の場合に比べその内部に欠陥が発生し易いという問題
がある。更に、強化基材である三次元多軸織物プリフォ
ームに変形を生じさせることなく成形する必要があるた
め、プレス成形、オートクレープ成形などのような特定
方向に圧力を加える成形方法は使用できない。このた
め、三次元多軸織物複合材料の成形では、レジントラン
スファー成形などの成形方法を用いるのが一般的であ
る。
【0006】この方法は、金型中に三次元多軸織物プリ
フォームを装填し、該金型内に熱硬化性樹脂を充填、含
浸した後、硬化させるという方法である。図3は、この
方法による従来の複合材料製造装置の一例を示す概略図
である。この装置によって複合材料を製造するに際して
は、金型10内に三次元多軸織物プリフォーム11を装
填して、予め脱泡した熱硬化性樹脂12を上記金型10
内に充填、含浸すべく樹脂加圧装置13により樹脂タン
ク14からバルブ17及び18を介して供給する。この
場合、必要に応じて真空装置15により金型10内を真
空状態にする。含浸終了後バルブ19を閉じ、上記金型
10に周設されたヒータ16により加熱し、樹脂加圧装
置13により150kg/cm2G 程度に調節された圧力を付
与しつつ、硬化、成形が行われる。このようにして複合
材料の硬化・成形を行う方法は、日本産業技術振興協会
発行(1989)の第6回次世代産業基盤技術シンポジ
ウム予稿集( p.239)に報告されている。
【0007】しかしながら、このレジントランスファー
成形などの成形方法では、成形された複合材料の端部の
一部にクラックが認められるという問題があった。更
に、この方法では、このようなクラックの発生を防止す
るために、硬化過程において比較的高い圧力を付与する
としても、これに耐え得る金型は高価なものになり、ま
た、金型の保圧のために大型のプレス装置などのバック
アップ装置が必要となり、装置全体も非常に高価なもの
になる。更にまた、三次元多軸織物複合材料の場合、そ
の複雑形状に適するニアネットシェープ成形が望ましい
が、金型構造が複雑になり、しかもユーザの要望に応じ
て多種の製品を成形する金型を準備する必要があるた
め、その実現性には問題があった。
【0008】一方、三次元織物複合材料の成形に際し、
この複合材料を液状の加熱・加圧媒体中に浸漬した状態
で静水圧力下で成形する方法が報告されている(特開平
3−284937号公報)が、この方法は、主として熱
可塑性樹脂をマトリックスの対象とする方法であり、熱
硬化性樹脂をマトリックスの対象とする三次元多軸複合
材料の成形に適したものではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、三次
元多軸織物プリフォームを基材とし、熱硬化性樹脂をマ
トリックスとした三次元多軸織物複合材料の製造におい
て、使用条件に合わせた、無欠陥で機械的物性に優れた
三次元多軸織物複合材料を安価に成形できる製造方法及
び装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、基本的には、三次元多軸織物プリフォー
ムを基材とし、熱硬化性樹脂をマトリックスとした三次
元多軸織物複合材料の製造方法において、上記熱硬化性
樹脂の硬化過程でその流動性が実質的に消滅する点での
比容積が、常温又はそれよりも低い上記複合材料の使用
予定温度における比容積に比して小さくなるのに必要な
圧力を、上記熱硬化性樹脂の硬化過程で、それが流動性
を示す段階からその流動性が実質的に消滅するまで付与
して成形するものである。
【0011】上記方法においては、特に、三次元多軸織
物プリフォームを容積可変な成形容器中に装填すると共
に、該成形容器内に熱硬化性樹脂を充填し、これを圧力
媒体を充填した圧力容器に収容して、圧力媒体の加圧に
より必要な静水圧を付与するのが、装置の簡単化のため
に有効である。また、上記方法においては、熱硬化性樹
脂の硬化過程における容積変化に応じて圧力を増減し、
この容積変化量が少なくなるように上記圧力を制御して
成形することが望ましい。
【0012】一方、上記方法を実施するための装置は、
三次元多軸織物プリフォームを装填すると共に、上記熱
硬化性樹脂を充填して、該三次元多軸織物プリフォーム
を含浸させる容積可変な成形容器と、該成形容器を収容
すると共に、上記熱硬化性樹脂に圧力を付与する圧力媒
体を収容した圧力容器と、上記成形容器に充填された上
記熱硬化性樹脂を制御された温度に加熱する加熱装置
と、上記熱硬化性樹脂に付与する圧力媒体の静水圧を制
御する圧力制御装置とを備えることにより構成される。
【0013】
【作用】三次元多軸織物プリフォームを基材とし、熱硬
化性樹脂をマトリックスとした三次元多軸織物複合材料
の製造方法において、上記熱硬化性樹脂の硬化過程でそ
の流動性が実質的に消滅する点での比容積が、常温又は
それよりも低い上記複合材料の使用予定温度における比
容積に比して小さくなるのに必要な圧力を、上記熱硬化
性樹脂の硬化過程で、それが流動性を示す段階からその
流動性が実質的に消滅するまで付与して成形するが、こ
れにより、成形される複合材料における熱硬化性樹脂に
は、その使用予定温度において応力が作用していない
か、または圧縮側の応力が作用するため、使用条件に合
わせた無欠陥で機械的物性に優れた三次元多軸織物複合
材料を成形できる。
【0014】上記方法においては、特に、三次元多軸織
物プリフォームを容積可変な成形容器中に装填すると共
に、該成形容器内に熱硬化性樹脂を充填し、これを圧力
媒体を充填した圧力容器に収容して、圧力媒体の加圧に
より必要な静水圧を付与すると、装置の簡単化のために
有効である。また、上記方法において、熱硬化性樹脂の
硬化過程における容積変化に応じて圧力を増減し、この
容積変化量が少なくなるように上記圧力を制御して成形
すると、一層無欠陥で機械的物性に優れた三次元多軸織
物複合材料を得ることができる。
【0015】
【実施例】以下、本発明の一実施例を、図面を参照して
説明する。三次元多軸織物プリフォームを強化基材と
し、熱硬化性樹脂をマトリックスとした三次元多軸複合
材料の成形時に発生する欠陥は、成形時の熱硬化性樹脂
の容積変化(主として収縮)により発生する。三次元多
軸織物複合材料の場合、成形時に強化繊維による三次元
的拘束があるため、収縮による残留応力Pは、次式で表
現することができる。
【0016】 P = K × (vG −vR )/vG (1) ここで、 K :熱硬化性樹脂の体積弾性率、 vG :ある特定の成形圧力下における硬化過程で実質的
にその流動性が消滅する点における樹脂の比容積、 vR :複合材料を実際に使用する圧力(一般には大気
圧)下での常温又は使用温度における樹脂の比容積、 を示す。また、一般的に三次元多軸織物複合材料に用い
られる強化繊維は、炭素繊維、金属繊維あるいはセラミ
ック繊維などであるため、上記(1)式では、その線膨
張係数は樹脂の線膨張係数に比べ小さく無視し得るもの
としている。
【0017】この(1)式で、[(vG −vR )/v
G ]の項は、成形時の残留歪量を示す項である。この項
が正の値をとる場合には、樹脂に引張り応力が作用し、
樹脂に欠陥を発生させる原因となるが、ゼロまたは負の
値をとる場合には、樹脂には応力が作用していないか、
または圧縮側の応力が作用するため、樹脂に欠陥が発生
しなくなる。したがって、樹脂の硬化過程において、流
動性が実質的に消滅する点での樹脂の比容積が、常温ま
たは樹脂の使用予定温度での樹脂の比容積に比して小さ
くなるのに必要な圧力を付与することにより、複合材料
には欠陥が発生しなくなる。
【0018】特定圧力下における樹脂の硬化過程で、そ
の流動性が実質的に消滅する点でのその比容積の値は、
種々の方法により測定することが可能である。例えば、
ピストンを有するシリンダーの圧力容器内に樹脂を封入
し、特定の圧力下で硬化させたときの体積変化を測定す
る方法、またはPVT測定装置を用いて体積変化を測定
する方法(三谷ら、Proceedings of the third Japan i
nternational SAMPE symposium, Dec. 7-9, 1993, p 83
4 )などである。このような方法を用いて種々の圧力下
で樹脂が硬化して流動性が実質的に消滅する点での比容
積の値を求め、その値を大気圧下、常温(複合材料の使
用温度が常温以下である場合にはその使用温度)での比
容積の値と比べることにより、欠陥を発生しない圧力値
を求めることができる。
【0019】本発明においてマトリックスとして用いる
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、あるいはフェノ
ール樹脂など、いかなる熱硬化性樹脂を用いることも可
能であるが、成形性および複合材料の物性を考慮すると
エポキシ樹脂を用いるのがより好ましい。強化基材とし
て使用する三次元多軸織物プリフォームは、炭素繊維、
金属繊維あるいはセラミック繊維などの強化繊維の繊維
束を多軸方向に配列して製織したものを用いることがで
きる。複合材料の機械特性を考慮した場合には、この強
化繊維として炭素繊維を用いるのが望ましい。また、必
要に応じて、予め強化繊維を熱硬化性樹脂を用いてロッ
ド状に成形し、この一方向性ロッド状複合材料を多軸方
向に配列して製織した三次元多軸織物プリフォームを用
いることも可能である。
【0020】図1は、本発明の一実施例に係る三次元多
軸織物複合材料の製造装置を示している。本装置は、圧
力容器1と、それを加熱するヒータ2(加熱装置)と、
その加熱温度を制御する温度制御装置3と、成形圧力を
制御する圧力制御装置4と、圧力容器1内に収容される
成形容器5とを備えている。
【0021】上記圧力容器1は、各種形状の複合材料の
成形に共通に使用できるもので、その外周にヒータ2を
周設し、このヒータ2の加熱温度は温度制御装置3によ
り制御され、後述する硬化温度サイクルにより、複合材
料の硬化、成形が行われる。この硬化温度サイクルにお
ける温度を確認するために、圧力容器1に温度計を付設
している。また、圧力容器1には、圧力制御のためのた
めの圧力計などを取付けている。また、圧力容器1の内
部には成形容器5を収容し、この成形容器5の周囲は、
上記圧力制御装置4により圧力制御される圧力媒体6に
よって充填される。
【0022】三次元多軸織物プリフォームを装填する成
形容器5は、ピストン5aを有するシリンダー構造を成
す容積可変なものであり、このピストン5aを上記圧力
媒体6が押圧することにより、成形容器5内の樹脂7に
静水圧を付与できるようになっている。成形容器5の内
部には、三次元織物多軸プリフォーム8が装填されると
共に、予め脱泡した樹脂7が充填され、プリフォーム8
が樹脂7によって完全に含浸されている。
【0023】使用する成形容器5は、圧力容器1中で静
水圧を受けるが、成形容器5の内部に充填された樹脂7
の圧力とバランスするため、必ずしも成形時の圧力に耐
える構造を有する必要はなく、プリフォーム8の形状を
保持するのに十分な強度を有し、かつ樹脂7の充填時に
容器が変形しない程度の強度を有すればよい。但し、成
形時に樹脂7の体積変化を妨げない構造のものである必
要がある。よって、従来のように、この成形容器に相当
する金型を耐圧構造とする必要はなく、金型に代わる成
形容器5の設計が容易になると共に、その製作に要する
コストが安価となる。
【0024】成形容器の構造の例としては、図2に示す
ようなものを含めて各種のものが考えられるが、成形に
際して不都合がなければいかなる構造および材質のもの
を用いても差し支えない。図2の構造例においては、図
1の要素と同一要素に同一符号を付している。同図
(a)は、ピストンをベローズ5bで置き換えたベロー
ズ構造のものであり、同図(b)は、ゴム状のフィルム
5cを用いて容器口部を閉鎖し、エポキシ樹脂7の容積
変化に応じて変形する構造のもの、同図(c)及び同図
(d)は、樹脂7と圧力媒体6とが直接接触してもよい
場合に用いる圧力媒体6に対して解放されている構造の
もので、同図(c)では多孔のシート5dを、同図
(d)では小孔5eを開設している。
【0025】これらの構造以外に、例えば、成形容器を
変形容易な薄肉の容器としたもの、プラスチックなどの
剛性の低い材料を用いた容器を使用して、容器全体が変
形する構造のもの、変形容易な薄肉の容器中に三次元織
物多軸プリフォーム8の形状保持のため、更に樹脂7の
移動が容易な解放型の容器を設置する構造のものを用い
ることもできる。また、成形品が容易に取り出せるよう
に容器が分割できる構造をもつものも使用できる。更
に、容器の材質としては成形条件下で耐えるものが適当
であるが、樹脂7が実質的に流動性を示さなくなる点に
おいて耐え得るものであればその後破損するようなもの
であってもよい場合がある。
【0026】上記構成を有する製造装置により三次元多
軸織物複合材料を製造するに際しては、成形容器5中に
三次元多軸織物プリフォーム8を装填すると共に、熱硬
化性性樹脂7を充填・含浸させ、更にこの成形容器5を
圧力容器1中に配置する。プリフォーム8に対する樹脂
の含浸方法としては、大気圧中でポンプなどを用いて樹
脂7を送液するが、プリフォーム8を収容した成形容器
5全体を真空容器中に納めて送液するなど、プリフォー
ム8を予め適宜手段で真空雰囲気におくのが有効であ
る。更に、予めプリフォーム8を真空状態にし、予め脱
泡した樹脂7により含浸するのが、成形状態を良好にす
る意味で望ましい。樹脂の含浸時には、樹脂が硬化時に
体積減少を起こす分だけ余分に成形容器5中にいれてお
く必要がある。
【0027】樹脂を含浸した後、成形容器5を圧力容器
1中に配置し、圧力媒体6を封入した後、所定の温度、
圧力条件で成形を実施する。ここで、圧力媒体6として
は、シリコンオイルなどの液体で必要な温度、圧力下で
安定であるものが好ましい。成形時に必要な圧力は、圧
力媒体6からピストン5aを経由して成形容器5中の樹
脂7に伝達される。樹脂7が硬化初期にまだ流動性を示
す状態では、樹脂7は成形容器5中で静水圧を持つこと
となる。
【0028】成形時には、熱硬化性樹脂の硬化過程でそ
の流動性が実質的に消滅する点での熱硬化性樹脂の比容
積が、常温又はそれよりも低い複合材料の使用予定温度
における硬化完了後の樹脂の比容積に比べて小さくなる
のに必要な圧力を、熱硬化性樹脂の硬化過程で、それが
まだ流動性を示す段階からその流動性が実質的に消滅す
るまで付与することが必要であり、これにより、複合材
料には欠陥が発生するのを抑止することができる。
【0029】このような熱硬化性樹脂の成形に当たって
は、複数の温度段階を経由して硬化する場合がある。こ
れは、例えば、比較的低い温度で樹脂を樹脂の流動性が
消滅するまで硬化した後、さらに温度をあげて後硬化を
行う、という方法である。この場合、初期の比較的低い
温度で樹脂の流動性が実質的に消滅するまで硬化が進行
する場合には、熱硬化性樹脂の硬化過程で流動性が実質
的に消滅する点での樹脂の比容積が、常温又はそれより
も低い複合材料の使用予定温度における硬化完了後の樹
脂の比容積に比べ小さくなるのに必要な圧力を、樹脂が
まだ流動性を示す段階から、樹脂が硬化して流動性が実
質的に無くなるまで樹脂に付与し、更に流動性がなくな
った樹脂を後硬化するに当たって温度を上昇させる時、
流動性を示さない樹脂が熱膨張するため、この熱膨張分
を相殺するための圧力をさらに加えることが、欠陥のな
い複合材料成形を行うという観点で望ましい。後硬化終
了後の冷却時には、この樹脂が熱収縮するため、その熱
収縮分を相殺するように圧力を低下させることが望まし
い。
【0030】また、一般的に、熱硬化性樹脂は、硬化過
程で硬化反応に伴う容積変化(主に収縮)や温度変化に
伴う容積変化(昇温時の膨張および冷却時の収縮)等の
複雑な容積変化挙動を示す。そのため、硬化過程でのこ
の樹脂の容積変化挙動、圧縮率変化挙動を予め求めてお
き、硬化過程で樹脂の容積変化に応じて圧力を変化さ
せ、この容積変化を発生させないようにすることは、成
形時における残留応力の発生をなくし、内部欠陥を発生
させることなく複合材料を成形するために、最も望まし
いことである。このような硬化過程でのこの樹脂の容積
変化挙動、圧縮率変化挙動は、たとえばPVT測定装置
を用いて容易に測定することができるものである。
【0031】このような方法で成形した熱硬化性樹脂を
マトリックスとする三次元多軸織物複合材料は、欠陥が
なく、機械物性が極めて優れたものとなる。特に、硬化
過程で、樹脂の容積変化が発生しない条件で成形した複
合材料は、樹脂内の残留応力を完全に制御することが可
能となる。そして、室温の硬化樹脂の比容積を基準とし
て、成形過程での樹脂の比容積が常に基準とする比容積
となるように圧力を変動させて成形した場合には、室温
において残留応力の無い複合材料が得られることにな
る。また、低温で使用する材料の場合、冷却時に樹脂の
収縮による欠陥が発生し易いが、使用予定温度での硬化
樹脂の容積を基準として成形することにより、その使用
予定温度において残留応力の無い複合材料を得ることが
できる。さらに、複合材料を使用する応力条件に最適な
残留応力をもつ複合材料を成形することが、同様の方法
で可能となる。
【0032】以下に、比較例と共に本発明の方法の実施
例を示す。 実施例1 マトリックス用の樹脂は、主剤のエピコート828(油
化シェル(株)製)と硬化剤のエタキュアー100(Et
hyl Corp. 製)を重量比100:24で混合したものを
脱泡して使用した。この樹脂の比容積を求めるため、こ
の樹脂を、大気圧下で、下記硬化温度サイクルで硬化さ
せた。硬化温度サイクルは、先ず、80℃で15時間保
定後、30分かけて100℃まで昇温し、100℃で2
時間保持し、さらに、1時間かけて180℃まで昇温
し、180℃で4時間保持した後、約12時間かけて外
気温度(約20℃)まで冷却する、というものである。
この硬化後の樹脂の比容積は、20℃において0.86
0cm3/g であった。
【0033】この樹脂を、ピストンを有するシリンダー
構造の圧力容器に評量して充填し、80℃で15時間硬
化した後の、所定の圧力下、80℃における樹脂の比容
積をピストンの移動量より測定した。その結果、11kg
/cm2の加圧下で硬化した場合には0.869cm3/g 、1
50kg/cm2の加圧下で硬化した場合には0.863cm3/
g 、450kg/cm2の加圧下で硬化した場合には0.85
3cm3/g であった。ここで、80℃で15時間硬化処理
した樹脂は固化しており、流動性を示さなかった。
【0034】三次元多軸織物プリフォームとしては、断
面0.81mm角、繊維含有率70%のエポキシ樹脂をマ
トリックスとした炭素繊維強化ロッド状一方向性複合材
料を用い、ロッド方式の三次元3軸プリフォームを作成
した。この3軸プリフォームは、X・Y軸方向に9本×
18本、Z軸方向に10本×10本のロッドを組み合わ
せて作成したものであり、サンプルサイズは約16×1
6×30mmである。この三次元3軸プリフォームを、内
径30mm、高さ45mmのポリプロピレン製の成形容器
(市販のフィルム用容器で外力により容易に変形す
る。)に装填し、それに予め脱泡した上記エポキシ樹脂
を含浸し、気泡が残らないように注意しつつ蓋をした。
【0035】その後、この成形容器を圧力容器中に配置
し、シリコンオイルを圧力媒体として、この圧力媒体を
圧力制御装置により所要の硬化温度サイクルに加圧制御
しつつ樹脂を硬化させ、成形した。硬化温度サイクル
は、上述した比容積の測定時と同一条件とした。尚、上
記ポリプロピレン製の成形容器は、120℃付近で耐熱
性がなくなり、最終処理温度では容器自体は破損する
が、80℃での処理で実質的な固化が終了しているた
め、複合材料の成形には何ら差し支えなかった。
【0036】表1は、このようにして成形された複合材
料における欠陥の発生状況を示すものである。
【表1】
【0037】この表1からわかるように、圧力450kg
/cm2の下、温度80℃で15時間保持した場合のその樹
脂の比容積が、外気温度20℃での樹脂の比容積0.8
60cm3/g に比して小さくなるため、この条件下で硬
化、成形した複合材料には内部欠陥が存在していない。
【0038】実施例2 成形圧力以外は上記実施例1と同条件で処理した。成形
圧力は、80℃において初期に900kg/cm2G の圧力を
かけ、15時間後に450kg/cm2G となるように徐々に
圧力を低下させ、次に、100℃で550kg/cm2G 、1
80℃で950kg/cm2G の圧力を付与し、冷却中は12
時間かけて950kg/cm2G から大気圧に低下させた。こ
のような硬化過程で成形した結果、複合材料内部及び周
辺の樹脂部分を含めて欠陥のない成形品が得られた。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の三次元多
軸織物複合材料の製造方法及び装置によれば、三次元多
軸織物プリフォームを基材とし、熱硬化性樹脂をマトリ
ックスとした三次元多軸織物複合材料の製造において、
使用条件に合わせた、無欠陥で機械的物性に優れた三次
元多軸織物複合材料を安価に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る三次元多軸織物複合材
料の製造装置を示す説明図である。
【図2】(a)〜(d)は、上記製造装置の成形容器の
構造例を示す模式的断面図である。
【図3】従来の三次元多軸織物複合材料の製造装置を示
す概略図である。
【符号の説明】
1 圧力容器 2 ヒータ(加熱装置) 3 温度制御装置 4 圧力制御装置 5 成形容器 6 圧力媒体 7 エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂) 8 三次元3軸プリフォーム(三次元多軸織物プリフォ
ーム)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】三次元多軸織物プリフォームを基材とし、
    熱硬化性樹脂をマトリックスとした三次元多軸織物複合
    材料の製造方法において、 上記熱硬化性樹脂の硬化過程でその流動性が実質的に消
    滅する点での比容積が上記複合材料の使用予定温度にお
    ける比容積に比して小さくなるのに必要な圧力を、上記
    熱硬化性樹脂の硬化過程で、それが流動性を示す段階か
    らその流動性が実質的に消滅するまで付与して成形す
    る、ことを特徴とする三次元多軸織物複合材料の製造方
    法。
  2. 【請求項2】複合材料の使用予定温度が常温であること
    を特徴とする請求項1に記載の三次元多軸織物複合材料
    の製造方法。
  3. 【請求項3】三次元多軸織物プリフォームを容積可変な
    成形容器中に装填すると共に、該成形容器内に熱硬化性
    樹脂を充填し、これを圧力媒体を充填した圧力容器に収
    容して、圧力媒体の加圧により必要な静水圧を付与する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元多軸織
    物複合材料の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項1ないし3のいずれかに記載の方法
    において、熱硬化性樹脂の硬化過程における容積変化に
    応じて圧力を増減し、この容積変化量が少なくなるよう
    に上記圧力を制御して成形する、ことを特徴とする三次
    元多軸織物複合材料の製造方法。
  5. 【請求項5】三次元多軸織物プリフォームを基材とし、
    熱硬化性樹脂をマトリックスとした三次元多軸織物複合
    材料の製造装置において、 上記三次元多軸織物プリフォームを装填すると共に、上
    記熱硬化性樹脂を充填して、該三次元多軸織物プリフォ
    ームを含浸させる容積可変な成形容器と、 該成形容器を収容すると共に、上記熱硬化性樹脂に圧力
    を付与する圧力媒体を収容した圧力容器と、 上記成形容器に充填された上記熱硬化性樹脂を制御され
    た温度に加熱する加熱装置と、 上記熱硬化性樹脂に付与する圧力媒体の静水圧を制御す
    る圧力制御装置と、を備えたことを特徴とする三次元多
    軸織物複合材料の製造装置。
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