JP2570655B2 - スラスト軸受の製造方法 - Google Patents

スラスト軸受の製造方法

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JP2570655B2 JP62054387A JP5438787A JP2570655B2 JP 2570655 B2 JP2570655 B2 JP 2570655B2 JP 62054387 A JP62054387 A JP 62054387A JP 5438787 A JP5438787 A JP 5438787A JP 2570655 B2 JP2570655 B2 JP 2570655B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、音響機器,映像機器.事務用機器などに
使用されるスラスト軸受の製造方法に関する。
〔従来の技術〕
従来、音響機器,映像機器などの磁気ヘッド用回転シ
リンダの軸受装置として、たとえば第4図に示す構造の
ものが知られている。
この軸受装置は、固定軸10の下端部を下部シリンダ30
に圧入等により固着し、上部シリンダ32に固着されたス
リーブ20を固定軸10の周りに回転可能に嵌挿し、固定軸
10の外周面にヘリングボーン状の動圧発生用の溝11a,11
bを設けてスリーブ20を半径方向に支持する動圧形のラ
ジアル流体軸受を構成し、固定軸10の軸方向上端面(平
面)を、スリーブ20の軸方向上端部の内周面に圧入によ
り固着された球状体からなるスラスト受け22と潤滑剤を
介して、または介さないで対向させて、スリーブ20を軸
方向に支持するピボット形のスラスト軸受を構成してい
る。
上記のスリーブ20の上端部内周面には、固定軸10の上
端部とスラスト受け22との間の空間を外気に連通させる
空気抜き溝23が軸方向に設けてあり、スリーブ20の中間
部にも半径方向に貫通する空気抜き穴24を設けて固定軸
10の外周面とスリーブ20との間の空間を外気に連通さ
せ、軸受組立時における空気抵抗を軽減するとともに油
等の潤滑剤中に含まれる気泡を外部へ荷がすようにして
いる。
軸受装置の回転駆動モータとしては、円筒状のロータ
マグネット34をスリーブ20の外周面に固着されたディス
ク33に取り付け、ロータマグネット34の外周面に円筒面
で対向するステータコイル35を下部シリンダ30の側壁に
取り付けている。
また、下部シリンダ30には、スリーブ20の外周に配設
した円筒状の固定側ロータリトランス36を取り付け、固
定側ロータリトランス36の外周面に円筒面で対向する回
転側ロータリトランス37を前記ロータマグネット34の内
周面に取り付け、上部シリンダ32に取り付けられた磁気
ヘッド38から取り出した信号を回転側ロータリトランス
37を経て固定側ロータリトランス36に伝達するようにし
ている。
上記の軸受装置は、スリーブ20と固定軸10との間のラ
ジアル軸受すきまに油,グリースなどの潤滑剤を充填し
て駆動するか、あるいは空気などの気体を潤滑剤に用い
て駆動するようになっている。
回転駆動モータのステータコイル35に通電すると、ロ
ータマグネット34に回転力が発生してスリーブ20とこれ
に固着された各付属品とは一体となって回転するが、ス
リーブ20が回転すると、固定軸10の動圧発生用の溝11a,
11bによる動圧が発生してラジアル軸受すきまに流体膜
が生成され、この流体膜の圧力によりスリーブ20は固定
軸10に対して非接触状態を保って半径方向に支持される
とともに、スラスト受け22が固定時10の上端面と点接触
するのでスリーブ20は固定軸10の上端面によって軸方向
に支持されて回転する構成になっている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
上記のように、固定軸10の一方の軸方向端面と固定軸
10に回転可能に嵌挿されたスリーブ20の軸方向端部に固
着された球体状のスラスト受け22とによるピボット形の
スラスト軸受を備えた磁気ヘッド用回転シリンダの軸受
装置においては、固定軸10よりも硬質の素材からなるス
ラスト受け22が一般に使用されているが、従来の軸受装
置の固定軸10はスラスト受け22に対する対向端面が平面
であるため、スラスト受け22との接触点において極めて
大きな面圧を受けて摩耗量が大きくなり、これにより上
部シリンダ32に取り付けられた磁気ヘッド38の高さが軸
受使用中に漸次低くなるという事態が発生している。
この発明者らが行った実験例によると、固定軸10には
焼入れしたステンレス丸鋼(SUS420J2)、スラスト受け
22には焼入れした軸受用鋼球(SUJ2)をそれぞれ使用し
た場合、潤滑剤に油を用いても数百時間経過した時点で
固定軸10の端面に5μm以上の摩耗量が生ずるという結
果が得られた。
しかしながら、この種の軸受装置においては、軸受使
用中に磁気ヘッド38の高さの変化をできるだけ少なくす
ることが必要とされており、たとえば高さの変化を5μ
m以内に抑えることが要求されているため、このような
要求を満足するスラスト軸受の開発が要望されている。
この発明は、上記のような要望に応えるためになされ
たものであり、球状体のスラスト受けと点接触する軸体
の端面の摩耗が少ないスラスト軸受の製造方法を提供す
ることを目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
この発明のスラスト軸受の製造方法は、軸体の外周面
に、軸体よりも硬質の球体が一方の軸方向端部に固着さ
れた円筒状体を嵌挿し、軸体と球体との少なくとも一方
に軸方向の押圧荷重を与えて球体に対向する軸体の端面
に球体による塑性変形を生ぜしめ、この軸体の端面に球
体の半径よりも大きい半径を有する凹球面を形成するも
のである。
〔実施例〕
以下、この発明の実施例について図面を参照して説明
する。
第1図は、この発明の方法により製造されたスラスト
軸受を前述の第4図で説明した磁気ヘッド用回転シリン
ダに適用した実施例を示す縦断側面図である。
同図に示すように、固定軸10の軸方向上端面12には固
定軸10の軸心線とほぼ同一線状に曲率中心を有する凹球
面13が形成されており、この凹球面13により、球状体か
らなるスラスト受け22を支持するスラスト軸受が構成さ
れている。
固定軸10の軸方向上端面12に形成された凹球面13の半
径RSは、第2図に示すようにスラスト受け22の半径RK
りも大きくなっている。
上記以外の各部の構成については第4図と同一である
から、同一部分に同一符号を付すに止め、繰り返しての
説明は省略する。
次に、上記構成のスラスト軸受について製造方法を説
明する。
固定軸10として使用する軸体の外周面に嵌挿可能な内
径をもつ円筒状体を用意し、この円筒状体の一方の軸方
向端部の内周面に軸体よりも硬質の球体を圧入等により
固定した治具(図示を省略)を使用して、この治具に軸
体を挿入し、軸体を固定して治具の球体を軸体の端面に
押圧して所定の押圧荷重を与えるか、または固定した治
具の球体に対して軸体を押圧するか、あるいは治具と軸
体との双方を軸方向に押圧して軸体の端面に治具の球体
による押圧荷重を与える。なお、この円筒状体の一方の
端部内周面には軸体と球体との間の空気を外気に連通さ
せる空気抜き溝が設けられている。
これにより、軸体の端面が軸体よりも硬質の球体によ
って塑性変形され、軸体の端面には球体の半径よりも大
きな半径をもつ凹球面が形成される。
上記の治具の円筒状体と軸体との間の半径方向すきま
を、製品として使用するスリーブと軸体との間の半径方
向すきまよりも小さくでき、軸体の端面に軸体の軸心か
らの偏心が少ない、即ち、軸体の軸心線とほぼ同一線上
に曲率中心を有する凹球面を形成することができる。
また、治具の球体の半径を製品として使用するスラス
ト受けの半径とは異なるものを用いることにより、それ
ぞれの球体の半径に応じた半径をもつ凹球面を軸体の端
面に形成することができる。
なお、上記の治具の代わりに、製品として使用するス
ラスト受けを製品として使用するスリーブに圧入等によ
り固定し、これに他の付属部品を取り付けたもの、また
は取り付けないものを使用してもよく、この場合は軸体
についてもあらかじめ下部シリンダに圧入等により固定
しておいて、または固定しないで、前記と同様の操作を
行うことにより、軸体の端面に凹球面を形成することも
できる。このようにした場合には、軸体にスラスト受け
が固着されたスリーブを嵌挿して所定の押圧荷重を与え
ると同時に組立ても完成したスラスト軸受装置が得られ
る。
上記の方法によって製造した試験品とこれについて行
った摩耗試験の結果は、次の通りである。
球体は直径約1.5mmの軸受用鋼球(SUJ2)に焼入れ,
焼戻し処理を施したもの(硬度HRC62〜64)を使用し
て、これを軸受用部品のスリーブの端部に圧入により固
定し、軸体は球体よりも直径が僅かに小さい直径約1.5m
mのステンレス丸鋼(SUS420J2)に焼入れ,焼戻し処理
を施したもの(硬度HRC50〜55)を使用して、軸体を軸
方向に押圧して球体に約10kgfの押圧荷重を与えたとこ
ろ、軸体の端面に直径が約3mmの凹球面が形成された。
このように、製品として使用するスラスト受けである球
体へ軸体の端面を押圧しても、軸体の端面に球体より大
きな直径を有する凹球面を塑性変形により形成すること
ができた。
この試験品をそのまま使用して摩耗試験を行った結
果、従来品の軸体の端面には前述のように数百時間で5
μm以上の摩耗量が生じたのに対し、この発明の試験品
の軸体の端面には同一時間経過後においても、殆ど摩耗
量が生じていないことが確認された。
なお、球体の硬度はHRC60〜67が好ましく、また軸体
の硬度はHRC40〜55が好ましい。しかし、球体は軸体よ
りも硬質であればよいので、軸体として焼入れ焼戻しを
しない材料を用いても、硬度の高い材料を用いてもよ
く、球体は軸体より硬質であれば硬度は高くても低くて
もよい。
なお、焼入れ焼戻し前の硬度の低い軸体の端面に凹球
面を塑性変形によって形成すると、焼入れ焼戻し工程を
経て軸体の硬度が高くなるまでは、軸体の凹球面および
外径面等に傷が付きやすい。また、凹球面には熱処理変
形が生ずる。
しかし、焼入れ焼戻し後のある程度硬度の高い軸体の
端面に凹球面を塑性変形によって形成すると、軸体はあ
る程度硬度が高いので凹球面および外径面等へは傷が付
きにくい。また、凹球面には熱処理変形が生じない。
さらに、軸体とスラスト受けとの材質についても、前
記実施例に限定されず、任意の材質のものを使用するこ
とができる。
また、第3図に示すようにスラスト受け22を、スラス
ト受け22の直径より小さい直径を有する平面40を備えた
半球体即ち擬球体としてもよい。このようにすると、ス
リーブ20とスラスト受け22とを備えた回転部材の軸方向
寸法を短くできる。
前記実施例で説明した回転シリンダにおいては、固定
軸の周りのスリーブとその付属部品とが回転する構造に
なっているが、これとは反対にスリーブを下部シリンダ
に固定し、上部シリンダに固着した軸体がスリーブに支
持されて回転する構造のスラスト軸受についても前記同
様にこの発明を適用することができる。
また、スリーブと軸体との間に構成されるラジアル軸
受については、前記実施例で説明した動圧形流体軸受に
限定されるものではなく、静圧形流体軸受でもよく、ま
た流体軸受以外のすべり軸受,あるいは転がり軸受を用
いることもできる。
なお、周囲温度変化が少なくて油等の潤滑剤からの気
泡の排出が少ない使用条件の場合には、中間部の空気抜
き穴24を省略することもできる。
また、ロータマグネットとステータコイルとが平面で
対向する平面対向形モータを用いてもよい。ロータマグ
ネットとステータコイルとが円筒面で対向する周面対向
形モータでも、平面対向形モータでも、スリーブ20の軸
体10からの抜けを防止するために、ロータマグネットと
ステータコイルとで生ずる軸方向吸引力によって、スラ
スト受け22が軸体10の方へ吸引されるようにしておくこ
とが好ましい。
〔発明の効果〕
以上説明したように、この発明のスラスト軸受の製造
方法によれば、円筒状体に固定された球体と円筒状体に
挿入された軸体との少なくとも一方に押圧荷重を与え
て、軸体の端面に塑性変形を生じさせる構成になってい
るから、極めて簡単な操作で、しかも曲率精度の高い凹
球面を軸体の端面に形成することができ、スラスト軸受
の大量加工に適した製造方法が得られるだけでなく、球
体と円筒状体とに製品の部分であるスラスト受けとスリ
ーブとを用いた場合には、格別の治具が不用となり、軸
受部品を利用して簡単にスラスト軸受を製造することが
でき、製造と同時にスラスト軸受装置としての組立ても
完成するという効果が得られる。
また、この発明の方法により製造されたスラスト軸受
は、球体のスラスト受けに対向する軸体の端面に、スラ
スト受けの半径よりも半径が大きく、かつ軸体の軸心線
とほぼ同一線上に曲率中心を有する凹球面を形成するこ
とかできるので、軸体に嵌挿されたスリーブにスラスト
受けを固着すると、軸体とスリーブとのいずれか一方の
回転時において、スリーブの内周面に固着されたスラス
ト受けと軸体の凹球面との接触点(スラスト荷重の支持
点)は軸体の軸心線とほぼ同一線上の位置を保持し続け
るから、スラスト受けと軸体の凹球面との接触面圧が小
さくなり、摩耗量を著しく減少することが可能となるの
で、磁気ヘッドが取り付けられる回転シリンダのよう
に、軸方向の高さの変化が厳しく制限される装置に最も
好適なスラスト軸受が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の方法により製造されたスラスト軸受
を磁気ヘッド用回転シリンダに適用した実施例を示す縦
断側面図、第2図は第1図の要部を拡大して示す側面
図、第3図はこの発明の他の実施例を示すスラスト受け
とスリーブとの縦断側面図、第4図は従来の磁気ヘッド
用回転シリンダを示す縦断側面図である。 図中、10は軸体、12は軸体の端面、13は凹球面、20はス
リーブ、22はスラスト受け、RSは軸体の凹球面の半径、
RKはスラスト受けの半径である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】球状のスラスト受けと、これに軸方向に対
    向する軸体の端面との間にスラスト軸受が構成されてな
    るスラスト軸受の製造方法において、前記軸体の外周面
    に、軸体よりも硬質の球体が一方の軸方向端部に固着さ
    れた円筒状体を嵌挿し、軸体と球体との少なくとも一方
    に軸方向の押圧荷重を与えて球体に対向する軸体の端面
    に球体による塑性変形を生ぜしめ、軸体端面に球体の半
    径よりも大きい半径を有する凹球面を形成することを特
    徴とするスラスト軸受の製造方法。
  2. 【請求項2】球体および円筒状体として、スラスト受け
    およびスリーブを使用する特許請求の範囲第1項記載の
    スラスト軸受の製造方法。
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