JP2566898B2 - 繊維とフェノール系樹脂とからなる複合構造体の製造方法 - Google Patents

繊維とフェノール系樹脂とからなる複合構造体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、繊維と樹脂とからなる
複合体に係り、更に詳しくは繊維と粉末状熱硬化性フェ
ノール系樹脂とからなる成形加工用に適した複合構造体
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、繊維強化プラスチック構造体を製
造する方法としては、特開昭60−158227号公報
に記載の通気性シート状構造体の製造方法が知られてい
る。この方法は、高い弾性率を有する単繊維と実質的に
未密着の粒状プラスチック材料とを含むウェブを形成
し、次に前記単繊維とプラスチック材料を互いに結合さ
せる様に前記ウェブを処理するものである。しかし、こ
の方法は、補強繊維で形成した三次元網目構造に比べて
粒状プラスチック材料の粒径が小さい場合には、該粒状
プラスチック材料が製造時において、補強繊維の間から
流れ出てしまい、樹脂の歩留りが悪くなるという問題点
があった。このため、用いられるプラスチック材料は、
網目構造の大きさに比べ、ある程度大きい粒径のものを
用いる必要がある。しかしながら、このようにして得ら
れた構造体は、例えば成形用の材料として使用した場合
に、構造体中における樹脂の均一性が得られにくいとい
う欠点があった。
【0003】また補強繊維として、一般に高強度繊維と
して知られているガラス繊維や炭素繊維等の無機繊維、
あるいは有機合成繊維を用いた場合には、通常、繊維同
士の交絡が十分でなく、構造体として強度の弱いものし
か得ることができない。
【0004】そこでこの点を改善するために、上記公報
においては、加熱によってプラスチック材料を互いに結
合せしめる方法を開示している。しかしながら、粒状プ
ラスチック材料に代えて粒状をした熱硬化性樹脂を用い
た場合には、熱履歴による樹脂の変質を避けることがで
きないという問題点がある。
【0005】そこで、同公報においては、更に結合剤を
付与して結合部を形成する方法を提案している。しかし
この方法では、ウェブ形成後に結合剤をスプレーあるい
は浸漬排水によって付与する工程を必要とし、更に得ら
れた構造体の物性(例えば難燃性等)は結合剤による影
響を受けることが避けられないのである。
【0006】一方、抄造法による繊維材料と粉末体の複
合化においては、従来、硫酸バンドなどによって粉末の
表面電位を中和し粉末を凝集せしめる方法が行われてき
たが、この方法は多量の粉末を用いる場合や無機繊維の
ような滑らかな表面を持つものを用いる場合には十分な
凝集力を得ることができなかった。
【0007】また、特開昭62−41399号には、紙
中に多量の粉末体を内添する方法として、繊維と粉末体
とを分散させた液体中にカチオン性高分子物質とアニオ
ン性高分子物質とを逐次添加する方法を開示している。
しかしこの方法では、内添する粉末体と共に繊維をも凝
集せしめるため、地合が著しく低下するという欠点があ
った。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上述の
問題点に鑑み鋭意研究した結果、特定の粉末状フェノー
ル系樹脂を特定の界面活性剤を含む液体中で繊維材料と
共に分散させることにより、繊維材料が良好に分散する
と共に粉末状樹脂が繊維に凝集状態で包着し、更に粉末
状フェノール系樹脂と繊維材料との混合を二工程に分け
て行うことにより、繊維の配合量を適宜加減することが
でき、且つ樹脂及び繊維の均一分散性に優れたものの得
られることを見いだし、本発明を完成したものである。
【0009】本発明の目的は、繊維とフェノール系樹脂
とからなる複合構造体を製造するに際し、フェノール系
樹脂の熱的特性を変化させることなく、また繊維の網目
構造に比べ比較的小さな粒径の粉末状樹脂を使用して
も、粉末状樹脂が構造体から漏出・脱落することなく樹
脂歩留りが高く、厚いものを抄造しても樹脂含有量斑が
できず、更に得られた複合構造体が好ましい強度を有す
るものである、繊維とフェノール系樹脂とからなる複合
構造体の製造方法を提供することにある。また、他の目
的については後述の説明によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】本発明の目的は、繊維材料と粉末状熱硬化
性フェノール系樹脂とからなる混合分散液を有孔支持体
に注ぎ、脱液して複合構造体を製造する方法において、
前記混合分散液が、界面活性剤を含む液体に繊維材料と
粉末状熱硬化性フェノール系樹脂とを分散せしめた分散
液を所定時間保持して前記粉末状熱硬化性フェノール系
樹脂を繊維に包着した形で凝集させて得た繊維/樹脂凝
集体分散液と、繊維材料を分散させて得た繊維分散液と
を混合して得たものであって、且つ前記界面活性剤がポ
リエチレングリコール型ノニオン系界面活性剤であり、
前記粉末状熱硬化性フェノール系樹脂が粒径0.1〜1
50μmで且つ少なくともその50重量%が100タイ
ラーメッシュの篩を通過し得るものであることを特徴と
する、繊維とフェノール系樹脂とからなる複合構造体の
製造方法によって達成される。
【0011】本発明に用いられる繊維材料は、繊維長が
好ましくは100mm以下のものであり、単繊維の直径が
好ましくは5〜20μmのものである。繊維長が長いも
のほど均一に分散し難くなる。繊維長の下限は、繊維同
士が交絡し得るものであれば特に限定されるものではな
く、例えばアスペクト比が20以上のものを挙げること
ができる。また、繊維材料の材質は、特に限定されるも
のでなく、その目的に応じ適宜選択すればよい。本発明
に用いられる繊維材料としては、例えば、ガラス繊維,
炭素繊維,金属繊維,セラミック繊維等の無機繊維、ノ
ボロイド繊維,ポリアミド繊維,ポリエステル系繊維,
ポリオレフィン系繊維等の有機合成繊維、炭化ケイ素,
窒化ケイ素等のウィスカー類等を挙げることができる。
【0012】上記繊維材料は、複合材料を製造する際に
適宜施されている表面処理をしたものであっても良い。
この様な表面処理としては、例えばガラス繊維に対する
アミノシラン処理やエポキシシラン処理等のカップリン
グ剤処理等を挙げることができる。また、繊維材料は脱
糊剤処理され、分散液中で容易に開繊することが好まし
い。このため、繊維材料を分散液中で脱糊剤処理する方
法でもよいが、予め焼却、精練、溶媒洗浄等の適宜な方
法により脱糊剤処理を施した繊維材料を用いてもよい。
【0013】本発明に用いられる粉末状熱硬化性フェノ
ール系樹脂とは、アルデヒド類とフェノール類とから合
成される熱硬化性の、粉末状あるいは粒状の樹脂であ
り、例えばレゾール樹脂のほか特公昭62−30211
号公報あるいは特公昭62−30213号公報で提案さ
れ、商品名「ベルパール」(鐘紡製)として市販されて
いる特殊フェノール樹脂を挙げることができる。また、
その粒径は、0.1〜100μmで且つその50重量%
が100タイラーメッシュの篩を通過し得る大きさであ
り、実質的に非水溶性のものである。ここで、実質的に
非水溶性とは、大部分が水に不溶であって、また水中で
軟化あるいは表面のべたつき等を起こさず、分散が可能
であることを言う。
【0014】本発明において、100タイラーメッシュ
の篩通過量T(重量%)とは、乾燥試料を必要に応じ十
分に手で揉みほぐした後、その約10gを取り、これを
精秤し、5分間かけて少しずつ100タイラーメッシュ
の篩い振とう機(篩の寸法:200mmφ、振とう条件:
200rpm)に投入し、試料投入完了後さらに10分
間振とうさせ、次式にて求めた値である。 T(重量%)=(W0 −W1 )/W0 ×100 ここで、W0 は投入量(g)、W1 は100タイラーメ
ッシュ篩を通過せずに篩上に残存した量(g)である。
【0015】本発明に用いるポリエチレングリコール型
ノニオン系界面活性剤とは、界面活性作用を有する非イ
オン性分子である。このようなものとしては例えば、ポ
リエチレングリコールラウリルアルコール付加物等のポ
リエチレングリコールの高級アルコール付加物、ポリエ
チレングリコールノニルフェニルエーテル,ポリエチレ
ングリコールオクチルフェノール等のポリエチレングリ
コールの長鎖アルキル置換フェノール付加物、ポリエチ
レングリコールステアリン酸付加物等のポリエチレング
リコールエステル型ノニオン系界面活性剤、あるいはポ
リエチレングリコール/ポリプロピレングリコールの共
重合体等を挙げることができる。特にポリエチレングリ
コール/ポリプロピレングリコールの共重合体は、発泡
性が小さく、凝集力が強いため好適である。
【0016】本発明において、上記ポリエチレングリコ
ール型ノニオン系界面活性剤は、前記繊維材料を分散さ
せると共に、前記粉末状熱硬化性フェノール系樹脂同士
を凝集させるという一見相反すると思われるような効果
を奏するものである。また、上記ポリエチレングリコー
ル型ノニオン系界面活性剤を、前記繊維材料と前記粉末
状熱硬化性フェノール系樹脂とを投入する液体中に添加
する量は、界面活性剤の種類、水温及びその目的に応じ
適宜選定すればよいが、通常0.01〜5重量%であ
る。過剰に添加しても、その効果は飽和することにな
る。
【0017】本発明において、前記繊維材料(以下、単
に「繊維」と略記することがある)と、前記粉末状熱硬
化性フェノール系樹脂(以下、「粉末状フェノール樹
脂」と略記することがある)とを分散せしめた分散液を
得る方法は特に限定されるものでなく、前記ポリエチレ
ングリコール型ノニオン系界面活性剤と繊維と粉末状フ
ェノール樹脂とを同時に水に投入してもよいが、ポリエ
チレングリコール型ノニオン系界面活性剤を含有する液
に繊維を投入し撹拌して分散せしめた液に、粉末状フェ
ノール樹脂を投入して撹拌し分散せしめる方法が、均一
分散液を容易に得られる点で好ましい。即ち、繊維が分
散していない状態で粉末状フェノール樹脂を投入する
と、粉末状フェノール樹脂の凝集固着により未分散状態
の繊維の交絡点が固定される結果、繊維の分散状態が悪
くなるのである。
【0018】なお、繊維分散液に前記粉末状フェノール
樹脂を分散混合するには、粉末状のまま直接添加しても
よいが、予め水性懸濁液としたものを添加する方が、速
やかに均一な分散状態が得られるので好適である。
【0019】ここで添加する粉末状フェノール樹脂の量
は、その目的に応じ適宜選定すればよいが、例えば繊維
としてガラス繊維を用いた場合、粉末状フェノール樹脂
/繊維の割合は重量比で、好ましくは2/98〜98/
2、更に好ましくは5/95〜95/5である。また、
成形用の材料に用いるものでは、30/70〜90/1
0程度が好適である。
【0020】次に本発明においては、上述の方法で得ら
れた分散液を所定時間保持することが肝要である。本発
明においては、所定時間保持することによって、粉末状
熱硬化性フェノール樹脂が凝集することになる。かかる
工程により、粉末状フェノール樹脂は、繊維間で凝集し
たり、その凝集物が繊維の表面に付着したり、繊維を包
み込む様に包着したりする以外に、繊維同士の交絡部を
包み込むように包着した凝集体となり、繊維/樹脂凝集
体分散液が得られる。繊維同士の交絡部に包着すること
で、繊維同士が固定化され、このため構造体としての強
度が向上することになる。更に、繊維に付着していない
凝集物も見かけ上の大きさが大きくなると共に、繊維表
面へ付着し易い性質を有するため、後の抄造工程におい
て、粉末状樹脂の歩留りが著しく向上することになる。
【0021】上記繊維/樹脂凝集体分散液の調製は小容
量の水中で行なうことが、大きな樹脂凝集物を得易い点
から好ましく、例えば水1 lに対して粉末状フェノール
樹脂を20〜30g程度の割合で投入するのが好適であ
る。
【0022】一方、上記分散液に投入される繊維の量
は、分散液中において均一に分散でき、繊維/樹脂凝集
体分散液を得るのに良好な流動性を有する範囲であれ
ば、特に限定されるものではなく、繊維に付着していな
い粉末状フェノール樹脂凝集物をできる限り作らないこ
とが望ましい。このため、投入される繊維の量は、投入
される粉末状フェノール樹脂量の5〜10重量%程度が
好ましい。繊維に付着していない粉末状フェノール樹脂
凝集物が多いと、得られた構造体内の厚さ方向での濃度
斑の原因となることがある。
【0023】上述の分散液を保持する時間は、ポリエチ
レングリコール型ノニオン系界面活性剤の種類、粉末状
樹脂の種類、液の温度に応じて適宜設定すればよいが、
時間が長いほど凝集が進行することになる。この保持工
程では、撹拌を行っても行わなくてもよいが、撹拌が強
すぎると凝集物が再分散し、後工程での樹脂歩留りが低
下する。一方、撹拌が弱いか、行わない場合には、繊維
が絡み合い始めたり、均一な凝集物が得られない場合が
ある。本発明においては、粉末状樹脂を十分に凝集せし
めることにより、抄造工程における粉末状樹脂の、漏出
や脱落が殆ど見られなくなるのである。
【0024】本発明の方法で得られる繊維/樹脂凝集体
は、例えば、図1の様な構造を有するものである。図1
は、本発明に係る繊維/樹脂凝集体の一例の構造を説明
する要部拡大模式図である。粉末状フェノール樹脂1
は、粉末状樹脂同士が凝集状態で存在すると共に、この
粉末状樹脂1の凝集物4が繊維材料2の交絡部3に包着
し、繊維材料2同士を交絡部3で固定している。また、
他の凝集物5は繊維に包着又は付着するものであり、凝
集物6は繊維材料2から形成される網目構造中に遊離状
態で分散するものである。
【0025】次いで、上述のようにして得られた繊維/
樹脂凝集体分散液を、繊維を分散せしめた繊維分散液と
混合して、繊維材料と粉末状フェノール樹脂とからなる
混合分散液と成す。ここで繊維分散液を得る方法は、特
に限定されるものでなく、一般的な抄紙法の場合と同様
にして得ることができる。即ち、必要に応じて分散剤を
添加混合した水に繊維を投入し、これを攪拌混合する方
法である。
【0026】上記繊維分散液に分散せしめる繊維は、上
述の繊維/樹脂凝集体分散液を調製する際に投入した繊
維と同様のものであっても異なるものであってもよい。
一般的に分散せしめる繊維は、その繊維長が長いものほ
ど分散液中において絡まり易く、また分散液の粘度も高
くなる傾向にある。ところで本発明の方法においては、
上記繊維分散液は繊維を大量の水で分散させることが可
能であるため、大量の繊維あるいは比較的繊維長の長い
繊維でも容易に分散することができる。即ち、分散せし
める繊維の投入量は繊維長及び使用目的等に応じ適宜設
定すれよいが、見方を変えれば、投入する繊維の量に応
じて分散液の量を加減すればよいのである。例えば長さ
13mmのガラス繊維を分散せしめる場合における繊維の
投入量は、分散液の水の重量に対して5重量%程度まで
が好ましい範囲である。
【0027】本発明の方法は、このようにして得られた
繊維/樹脂凝集体分散液と繊維分散液との混合分散液を
通常行われている抄造法により脱液し、複合構造体と成
すものである。即ち、得られた混合分散液を有孔支持体
に注ぎ、堆積せしめた後、脱液することにより、繊維と
粉末状熱硬化性フェノール系樹脂とからなる複合構造体
と成すのである。
【0028】本発明の方法で得られる複合構造体は、繊
維/樹脂凝集体とこれと混合した繊維とが複雑に交絡し
あい、さらに繊維/樹脂凝集体から遊離した粉末状フェ
ノール樹脂の凝集物が繊維に包着あるいは付着する等に
より、繊維が緻密に絡み合った構造となる。
【0029】上述の方法て得られた複合構造体は、加熱
して粉末状フェノール樹脂同士を軽く融着あるいは乾燥
してもよい。ただし、成形用の材料として用いる場合に
は、樹脂を加熱し過ぎると、粉末状熱硬化性フェノール
系樹脂の熱特性が変化するので、加熱の温度、時間には
注意する必要がある。
【0030】一般的には繊維は、その繊維長が長いもの
ほど分散し難く、また分散液中での繊維濃度が高いもの
ほど分散し難い傾向にある。また、本発明の方法におい
ては、粉末状樹脂は投入量の多いほど凝集し易い傾向に
ある。このため、繊維材料と粉末状フェノール樹脂とか
らなる混合分散液を一度に調製しようとすると、繊維材
料の投入量を少なくし、粉末状フェノール樹脂の投入量
を多くする必要がある。したがって、混合分散液を一度
に調製して通常の抄造法で複合構造体を製造する場合に
は、繊維材料の割合の高いものを得るのは容易ではな
い。
【0031】しかしながら本発明の方法によれば、一
旦、粉末状フェノール樹脂の投入割合の多い繊維/樹脂
凝集体粉分散液を調製し、しかる後、これとは別に繊維
材料を分散した繊維分散液を調製して、両分散液を混合
すればよく、繊維分散液中の繊維の量を調製すること
で、得られる複合構造体の繊維の配合割合を適宜増やす
ことが可能となる。更に、繊維分散液は、良好なる分散
状態を得るため、大量の液で繊維を分散させることもで
きるため、分散し難い繊維長の長い繊維材料をも容易に
分散混合することが可能となる。
【0032】一方、本発明において、粉末状フェノール
樹脂の凝集をポリエチレングリコール型ノニオン系界面
活性剤を含有する液中で繊維を投入しないで行い、得ら
れた樹脂凝集物の分散液に繊維分散液を混合する方法で
混合分散液を調製した場合には、得られた混合分散液を
有孔支持体に注いだ際、樹脂凝集物が速く沈降して有孔
支持体の表面付近に多く集まり、粉末状フェノール樹脂
を均一に分散した複合構造体を得ることができない。
【0033】
【実施例】以下、本発明をその実施例により更に詳しく
説明する。尚、その前に本明細書における各種測定法に
ついて説明する。
【0034】〈樹脂歩留まり〉樹脂投入量をR(g)、
得られた複合構造体を120℃で30分間乾燥した後の
重量を精秤してS(g)とする。この複合構造体から8
cm×8cmの正方形を切り出し、重量を精秤してA(g)
とする。次に400℃のオーブン中で10時間かけて樹
脂成分を焼却した後、これを精秤してB(g)とする。
樹脂歩留まりは、次式により求めた。 樹脂歩留まり(%)=[{ (A-B)×S}/(R×A)]×10
0 測定する構造体中より5ヶ所サンプリングして、その平
均値を求めた。
【0035】〈地合〉得られた複合構造体の繊維の分散
状態の均一性を、熟練者が目視により観察した。 ○ 極めて均一に分散していた。 × 分散繊維中に一部凝集繊維束がみられた。
【0036】実施例1 繊維径7μm、長さ3mmの炭素繊維チョップドストラ
ンド1gを500mlの水中に投入し、続いてポリエチレ
ングリコール型ノニオン系界面活性剤として「アデカプ
ルロニック L101」(商品名、旭電化工業製)を2
g添加した。これを、攪拌機により3000rpmで、
2分間攪拌し、繊維を均一に分散せしめた。この繊維分
散液に、平均粒径20μmの粉末状熱硬化性フェノール
樹脂(商品名:ベルパールS890、鐘紡製)20gを
予め300mlの水に均一に分散させた懸濁液を添加し、
1分間緩やかに攪拌したのち30秒間静置して、繊維と
粉末状フェノール樹脂との繊維/樹脂凝集体分散液と成
し用意した。
【0037】一方、これとは別に繊維径7μm、長さ1
3mmの炭素繊維チョップドストランド6gを角型シー
トマシン(25cm×25cm、80mesh)中の25℃、2
5 lの水中に投入し、ポリエチレンオキサイド系分散剤
「PEO−PF」(商品名、住友精化製)の0.1%水
溶液200mlを加えて1分間攪拌し、繊維を均一に分散
した。次いで、この繊維分散液に先に用意した繊維/樹
脂凝集体分散液を加えて更に30秒間攪拌、均一な混合
分散液と成し、これを脱液して、厚さ約1mmの複合構
造体を得た。攪拌中の抄造液及び濾水に発泡はみられな
かった。
【0038】得られた複合構造体の性状は表1に示す通
りであり、樹脂歩留まりが向上し、更に繊維/樹脂凝集
体の複雑な構造によって繊維の再凝集が妨げられるため
地合の向上も見られた。また、この構造体の切断面を顕
微鏡で観察したところ、粉末状熱硬化性フェノール樹脂
が凝集状態で分散すると共に、繊維同士の交絡部に粉末
状熱硬化性フェノール樹脂の凝集物が包着しているのが
見られた。
【0039】比較例1 実施例1で2回に分けて投入した2種類の繊維材料を一
緒に投入して複合構造体を作成した。
【0040】即ち、繊維径7μm、長さ3mmの炭素繊
維チョップドストランド1gと、繊維径7μm、長さ1
3mmの炭素繊維チョップドストランド6gを角型シー
トマシン(25cm×25cm、80mesh)中の25℃、2
5 lの水中に投入し、ポリエチレンオキサイド系分散剤
として「PEO−PF」(商品名、住友精化製)の0.
1%水溶液200mlを加えて1分間攪拌し、繊維を均一
に分散した。これに実施例1で用いたのと同様の粉末状
熱硬化性フェノール樹脂20gを予め200mlの水に均
一に分散させた懸濁液を添加、更に実施例1で用いたの
と同様のポリエチレングリコール型ノニオン系界面活性
剤を2g添加して、1分間緩やかに攪拌したのち30秒
間静置して粉末状熱硬化性フェノール樹脂を凝集させた
後、脱液して約1mmの厚みの複合構造体を得た。結果
は、表1に示す通りであった。
【0041】比較例2 粉末状熱硬化性フェノール樹脂の凝集を繊維材料を混合
しないで行い、得られた樹脂凝集物と繊維材料とを混合
分散液と成し、複合構造体を作成した。
【0042】即ち、実施例1で用いたのと同様の粉末状
熱硬化性フェノール樹脂20gを予め800mlの水に均
一に分散させ、これに実施例1で用いたのと同様のポリ
エチレングリコール型ノニオン系界面活性剤を2g添加
して1分間攪拌した後、30秒静置して粉末状熱硬化性
フェノール樹脂凝集物の分散液を得た。
【0043】一方、別に繊維径7μm、長さ13mmの
炭素繊維チョップドストランド6gと繊維径7μm、長
さ3mmの炭素繊維チョップドストランド1gとを25
℃、25 lの水中に投入し、実施例1で用いたのと同様
のポリエチレンオキサイド系分散剤の0.1%水溶液2
00mlを加えて1分間攪拌し、繊維を均一に分散し
た。次いで、上記繊維分散液に上記樹脂凝集物に分散液
を加えてさらに30秒間攪拌、均一な混合分散液と成
し、これを脱液して、約1mmの厚みの複合構造体を得
た。
【0044】結果は、表1に示す通りであり、粉末状熱
硬化性フェノール樹脂凝集物の沈降速度が速く、繊維よ
りも先に凝集物が、抄造網面上に堆積した。
【0045】
【表1】
【0046】実施例2 実施例1において投入した繊維長3mmの炭素繊維チョ
ップドストランドの量を1gに代えて25gとし、繊維
長13mmの炭素繊維チョップドストランドの量を6g
に代えて450gとし、粉末状熱硬化性フェノール樹脂
の量を20gに代えて475gとし、更にポリエチレン
グリコール型ノニオン系界面活性剤の添加量を2gに代
えて10gとした以外は、実施例1と同様にして複合構
造体を作成した。
【0047】得られた複合構造体は、厚さが約5cmの
ものであった。この複合構造体内の厚さ方向に於ける粉
末状フェノール樹脂の濃度斑を調べるため、構造体を抄
造面に対し水平に二等分し、各々について複合構造体中
の樹脂含有率を調べた。結果は、表2に示す通りであっ
た。
【0048】比較例3 実施例2で2回に分けて投入した2種類の繊維材料を比
較例1と同様一緒に投入して複合構造体を作成した。
【0049】即ち、比較例1において投入した繊維長3
mmの炭素繊維チョップドストランドの量を1gに代え
て25gとし、繊維長13mmの炭素繊維チョップドス
トランドの量を6gに代えて450gとし、粉末状熱硬
化性フェノール樹脂の量を20gに代えて475gと
し、更にポリエチレングリコール型ノニオン系界面活性
剤の添加量を2gに代えて10gとした以外は、比較例
1と同様にして厚さ5cmの複合構造体を得た。
【0050】得られた複合構造体の結果は表2に示す通
りであり、厚さ方向の樹脂含有量に班が見られた。
【0051】
【表2】
【0052】比較例4 実施例1において用いたポリエチレングリコール型ノニ
オン系界面活性剤を使用しない以外は、実施例1と同様
にして複合構造体を作成した。結果は、表3に示す通り
であった。
【0053】比較例5 実施例1において用いたポリエチレングリコール型ノニ
オン系界面活性剤に代えて、多価アルコール型ノニオン
系界面活性剤であるソルビタンパルミチン酸モノエステ
ルを用いた以外は、実施例1と同様にして複合構造体を
作成した。結果は、表3に示す通りであった。
【0054】比較例6 実施例1において用いたポリエチレングリコール型ノニ
オン系界面活性剤に代えて、アニオン系界面活性剤であ
るドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた以外
は、実施例1と同様にして複合構造体を作成した。結果
は、表3に示す通りであった。
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】本発明の方法では、粉末状フェノール樹
脂をポリエチレングリコール型ノニオン系界面活性剤含
む液体中で分散せしめるため、粉末状フェノール樹脂が
容易且つ強力に凝集する。このため、粉末状フェノール
樹脂の粒径が繊維の網目状構造に比べ相対的にかなり小
さい場合でも、また得られる構造体の厚さが極薄い(例
えば0.5〜1mm程度)場合でも、抄造工程における
粉末状フェノール樹脂の漏出が殆ど見られず、樹脂歩留
りを高くすることが可能となる。更に、凝集した粉末状
フェノール樹脂が繊維表面に付着したり繊維同士の交絡
部に包着し固定するため、複合構造体として機械的強度
の優れたものが得られる。特に湿紙強度が高いものとな
り、連続製造法への適用が可能となる。
【0057】本発明の方法によれば、繊維/樹脂凝集体
分散液とは別に、繊維分散液を調製しこれを混合するた
め、複合構造体における繊維の割合を容易に多くするこ
とが可能となり、さらに通常分散し難い繊維長の長い繊
維も容易に均一に分散することができる。
【0058】また、従来法では構造体が厚さ1〜30c
m程度の非常に厚いものの場合には、粉末状フェノール
樹脂の構造体内厚さ方向での濃度斑が問題になるが、本
発明の方法によれば、繊維と樹脂との混合分散を2段階
に分けて行うため、粉末状フェノール樹脂の良好な均一
分散性を抄造工程後も保持することができ、厚さ方向で
の濃度斑を生ずることがない。
【0059】また、本発明の方法によれば、抄造液及び
濾液が発泡すること無く、繊維が浮上分離するといった
不都合も起こらないため、繊維分散性の良い地合に優れ
た複合構造体を効率よく製造することができる。一方、
濾液も非発泡性であるために排水処理時の泡による阻害
も見られない。
【0060】更に、繊維へ樹脂を固着せしめるに際し結
合剤を用いる必要がないため、加熱を特に必要とするも
のではない。このため、得られた複合構造体は、熱履歴
が少なく、粉末状フェノール樹脂の特性を損なうことも
ない。したがって、本発明の方法で得られた複合構造体
は、例えば成形加工用途に使用するものとして極めて好
適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法で得られる繊維/樹脂凝集体の一
例を説明する要部拡大模式図である。
【符号の説明】
1 粉末状熱硬化性フェノール系樹脂 2 繊維材料 3 交絡部 4 交絡部に包着した凝集物 5 繊維表面に付着した凝集物 6 繊維構造体中に遊離分散している凝集物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B29K 105:06

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維材料と粉末状熱硬化性フェノール系
    樹脂とからなる混合分散液を有孔支持体に注ぎ、脱液し
    て複合構造体を製造する方法において、前記混合分散液
    が、界面活性剤を含む液体に繊維材料と粉末状熱硬化性
    フェノール系樹脂とを分散せしめた分散液を所定時間保
    持して前記粉末状熱硬化性フェノール系樹脂を繊維に包
    着した形で凝集させて得た繊維/樹脂凝集体分散液と、
    繊維材料を分散させて得た繊維分散液とを混合して得た
    ものであって、且つ前記界面活性剤がポリエチレングリ
    コール型ノニオン系界面活性剤であり、前記粉末状熱硬
    化性フェノール系樹脂が粒径0.1〜150μmで且つ
    少なくともその50重量%が100タイラーメッシュの
    篩を通過し得るものであることを特徴とする、繊維とフ
    ェノール系樹脂とからなる複合構造体の製造方法。
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