JP2564008B2 - 水素酸化細菌の大量培養法 - Google Patents

水素酸化細菌の大量培養法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は水素酸化細菌の大量培養法に関する。
(発明の背影及び従来の技術) 水素酸化細菌は水素の酸化によって発生するエネルギ
ーを利用して、炭酸ガスを唯一の炭素源として生育する
独立栄養微生物であり、その菌体は菌体内に高濃度のた
ん白質及び核酸を含み、飼料・食料として利用できる等
広い用途を有している。
しかし乍ら、この水素酸化細菌の工業的に大量培養す
るには次のような解決しなければならない大きな問題が
あり、現在のところまだ殆んど手がつけられていないの
が現況である。
さて、その解決しなければならない大きな問題とは、 第1に: 水素酸化細菌は水素,酸素を含む爆発性の混合ガス中
でないと良好な生育を示さない点である。
従って、水素,酸素,炭酸ガスだけからなる混合気で
の培養は極めて危険といわねばならず、安全に培養槽を
運転しうるかどうかの目途がたたない。
第2に: 原料ガスは培養液への溶解度が極めて低いため、原料
ガスの利用効率が非常に低い点である。
従って、水素ガスを主体とする未利用の可燃性原料ガ
スを大量に放出することになり、その原料ロスによる低
い経済性ばかりでなく、防炎安全上も重大な問題とな
る。
なお、原料ガスの利用効率を高めるためには、未利用
ガスを排出せず循環することにより再利用を行うことが
考えられるが、爆発範囲内の組成の混合ガスを循環する
ことはやはり多大な危険を伴う。
一方、これら爆発の危険及び原料ロスの不経済性と防
炎上の問題を解決するものとして、特開昭51−38480号
公報の方法が既に知られている。
この特開昭51−38480号公報の方法は、第2図に示す
装置を用いて、水素酸化細菌の培養液を入れた培養槽
(1)から培養液を、水素ガス吸着装置(7)を有する
循環系と酸素ガス吸着装置(8)を有する循環系を通じ
て循環し、水素ガス吸着装置(7)と酸素ガス吸着装置
(8)にそれぞれ導入した培養液に水素ガスと酸素ガス
を別個に溶解せしめたのち、これらを培養層(1)に戻
すことにより、系内に爆発範囲内の組成の混合ガスを形
成することなく、かつ水素ガス,酸素ガスの利用効率を
低下させることなく培養することを可能にしたものであ
る。
しかし乍ら、このような方法においては水素ガス及び
酸素ガス吸着装置に導入される培養液中の細菌は増殖に
不適当な水素リッチ,酸素リッチの条件下におかれ、増
殖速度が遅い状態となり、しかも培養液と共に培養層に
戻され、培養液の混合により増殖のための最適条件下に
おかれた後も直ちに充分な増殖速度が得られないことが
考えられ不安定となる惧れがあり、実用上十分でかつ安
定した生産性を期待し難い。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は上述した従来技術が有する問題点に鑑みてな
されたもので、その目的とするところは、原料の混合ガ
スを爆発範囲外に維持制御し得ると共に原料ガスを培養
系外に一切排出せず100%利用し得て安全かつ経済的で
あるのは勿論、実用上十分な生産性の得られる新規な水
素酸化細菌の大量培養法を提供することにある。
(課題を達成するための手段) 上記目的を達成するために、本発明の水素酸化細菌の
大量培養法にあっては、上部に空間を残して水素酸化細
菌の培養液を収容した培養槽に、基質となる水素と炭酸
ガスを予めガスチャンバーにおいて混合し混合ガスの状
態で供給する一方、100%酸素を単独で直接培養液中に
供給する。培養液に溶解しきれずに培養槽内の空間部に
溜る全て基質からなる未利用ガスは閉鎖循環系を介して
循環させ、培養液中に戻す。一方、培養液中の溶存酸素
量をモニターしながら酸素の供給量を制御して、培養槽
及び閉鎖循環系双方の混合ガス組成を爆発範囲外に維持
する。
培養液への原料ガスの溶解量は分圧が高いほど大き
い。ところが、上記のように100%酸素を単独で直接培
養液中に供給することにより、酸素の溶解量が大きくな
り、しかも、培養槽空間中の酸素分圧を低くすることが
できる。即ち培養槽内の水素混合ガス中の酸素濃度を爆
発範囲以下に維持することができる。
培養液中の溶存酸素量は、溶存酸素センサーを用いて
直接測定することもできるし、酸化還元電位を検出する
ことにより知ることもできる。
培養液への酸素供給は溶存酸素量をモニターしなが
ら、溶存酸素量が所定下限値以下になったら供給し、所
定の上限値以上になったら供給を停止するように制御す
る。
培養槽は所謂ジャーファーメンタで、撹拌型,エアリ
フト型等いかなるものも用いることができる。
ガスチャンバーは有水式のガスホルダーが最適であ
り、そのガス槽内に水素と炭酸ガスを所定割合で槽がほ
ぼ最大容量になるように充填する。このガスチャンバー
は閉鎖循環系中に介設する。
従って、閉鎖循環系はガスチャンバーを含み、その所
要の箇所にはポンプを設置する。
これによりガスチャンバーに導入され、該ガスチャン
バー内で混合された水素と炭酸ガスは閉鎖循環系を介し
て培養槽内に供給されるが、この際ガスチャンバー内に
おいて閉鎖循環系を循環流動する未利用ガスとも混合さ
れ、これら全てが混合された状態で供給されることにな
る。
この閉鎖循環系は混合ガス中に含まれる酸素の培養液
へのとけ込みを良好にするために、その培養槽への入口
側を培養液中に挿入する。これにより培養液中の酸素濃
度を高くする反面培養槽空間部の酸素分圧を多少なりと
も低くすることができる。
上記ガスチャンバーには混合ガスの組成を均一化する
ために組成均一化装置を設ける。
組成均一化装置としては撹拌式,強制循環式等を用い
ることができるが、安全性を考慮すればポンプを備える
閉鎖循環管路からなる強制循環式のものが好適である。
この組成均一化装置は、混合ガス中の酸素分圧が部分
的に高くなり、爆発範囲に入るのを防止する上で非常に
有効である。
なお、上記ガスチャンバーは閉鎖循環系外に設け、こ
の閉鎖循環系とは別の系により水素・炭酸ガスの混合ガ
スを培養槽に供給するようになすことも可能であるが、
この場合には、水素・炭酸ガスの供給が培養液への酸素
のとけ込みを阻害しないように水素・炭酸ガスを直接培
養中に供給せず、培養液上方の空間に供給するようにす
る必要がある。
本発明においては、多くの水素酸化細胞に使用するこ
とができる。例えば Hydragenomonas eutropha ATCC 17697 (Alcaligenes eutrophus) Hydrogenomonas facilis ATCC 11228 (Peeudomonas facilis) Peeudomonas saccharophila ATCC 17946 Brevtbacteium SP. FERM−P2234 Hycobacterium SP. FERM−P2235 Nocardia Opaca Streptomyces autorophica Micrococcus denitrificans ATCC 19367 (Paracoccus denitrificans) 培養液は通常のものでよく、アンモニウム塩あるいは
硝酸塩のような窒素源、またはリン酸イオン,カリウム
イオン,マグネシウムイオン,鉄イオン,マンガンイオ
ン,硫酸イオン,カルシウムイオン等の無機イオン類を
含有する。また場合によってはビタミン類,アミノ酸
類,核酸類等の微量栄養素あるいは、これらの微量栄養
素を含む天然栄養物質、例えば酵母エキス,麦芽エキス
等を加えることにより生育を促進することも可能であ
る。
培養の途中で、培養液のpHは微生物の生育に伴って低
下してくるが、培養槽でpH4からpH9になるように制御す
る。この中和にはガス状あるいは液状アンモニアを用い
ることがpHの調整とともに、消費された窒素源を補うこ
とになるので望ましい。
上記アンモニアは直接培養槽に供給する。
培養液のpHは培養槽に設置したpHセンサーにより測定
することができる。
[実施例] アルカリゲネスユートロファス(Alcaligenes eutrop
hus)ATCC17697を第1図に示す装置を用いて以下の方法
により培養した。
(NH42SO4 3g/、KH2PO4 0.5g/、MgSO4・7H2O
0.2/、CaSO4・2H2O 4mg/、FeSO4・7H2O 20mg/か
なる培養液1をpH7に調整して容量2の培養槽(ジ
ャーファーメンタ)(1)に入れた。
一方、有水式ガスホルダーからなる容量300の混合
ガスチャンバー(2)に水素ガスと炭酸ガスを水素ガス
87%,炭酸ガス13%となるように調整して入れ、組成均
一化装置(3)を構成する循環管路(31)のポンプ(3
2)を作動させ混合ガスを上記組成均一循環管路(31)
を介して循環させ混合ガスの組成を均一にした。
続いて、培養液中に純酸素を入れると共に、閉鎖循環
系(4)の混合ガス循環管路(41)に設けたポンプ(4
2)を作動させ、混合ガス循環管路(41)を介して培養
層(1),混合ガスチャンバー(2)間の混合ガスを循
環させながら、培養液中の酸素濃度を1.8ppmに調整した
後、アルカリゲネスユートロファスATCC 17697の種培養
液50ccを培養液に加えた。
そして、ポンプ(32)(42)の作動をつづけ、組成均
一化循環管路(31)による循環、混合ガス循環管路(4
1)による循環を継続しながら培養液中の溶存酸素量を
溶存酸素センサー(5)でモニターし、溶存酸素量が対
数増殖期において1.8ppm以下にならないように酸素供給
を制御すると共に、培養液のpHのpHセンサー(6)でモ
ニターし、pH7を保つようにアンモニアの供給を制御し
て30時間運転した。
定常状態において培養槽及びガスチャンバーを含む閉
鎖循環系の気相中の酸素濃度は水素混合ガスの爆発範囲
外である5%以下に押さえられた。また運転終了時、菌
量は17g/(乾燥菌体)であった。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明水素酸化細菌の大量培養法に用いる装置
の概略を示す説明図、第2図は従来の方法に用いる装置
の一例を示す説明図である。 図中 1:培養槽、2:ガスチャンバー 3:組成均一化装置、4:閉鎖循環系
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山田 茂 福岡県福岡市博多区千代1丁目17番1号 西部瓦斯株式会社内 (72)発明者 下司 卓 福岡県福岡市博多区千代1丁目17番1号 西部瓦斯株式会社内 (72)発明者 田中 賢二 福岡県福岡市東区箱崎6―10―1 九州 大学農学部内 (72)発明者 武下 俊宏 福岡県福岡市東区箱崎6―10―1 九州 大学農学部内

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】上部に空間を残して水素酸化細菌の培養液
    を収容した培養槽に、水素と炭酸ガスを予めガスチャン
    バーにおいて混合して混合ガスの状態で供給する一方、
    酸素を単独で直接培養液中に供給すると共に培養槽内の
    空間部に溜る未利用ガスを閉鎖循環系を介して循環させ
    つつ培養液中に供給しながら水素酸化細菌の培養を行
    い、その際、培養液中の溶存酸素量をモニターしながら
    酸素の供給量を制御して、培養槽及び閉鎖循環系双方の
    混合ガス組成を爆発範囲外に維持することを特徴とする
    水素酸化細菌の大量培養法。
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