JP2559664Y2 - 外部油圧によって解除されるロック機構を具えたテンショナ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、外部油圧によって解除
されるロック機構を具えたテンショナに関する。

【０００２】

【従来の技術】テンショナには種々のものがある。テン
ショナの中には、エンジン等で発生する外部油圧を利用
して、そのエンジンのカムシャフト等を駆動するチェー
ンやベルトに緊張力を与えるテンショナがある。この種
のテンショナは、図４のように実開昭６３−５７８５２
号公報に開示され、また図５のように実開平１−１１１
８５５号公報に開示され、さらに図６のように特開平１
−２２９１５２号公報に開示されたものがある。

【０００３】いずれのテンショナ５０，６０，７０も、
外部油圧が消滅したときに、プランジャ５２，６２，７
２の後退を阻止するためのロック機構５４，６４，７４
を有する。ロック機構５４，６４，７４は、テンショナ
５０，６０，７０に外部油圧が作用したとき、その油圧
によって強制的に解除されるように構成されている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】図４及び図５に示され
たテンショナ５０，６０は、プランジャ５２，６２に形
成されたラック５６，６６に、回動可能なラチェット５
８，６８が噛合するタイプのものである。そのため、外
部油圧が作用しても、プランジャ５２，６２がある程度
前進するまでは、ラチェット５８，６８は回動すること
ができず、ロック機構５４，６４は解除されない。最悪
の場合、ラチェット５８，６８が破損することがある。

【０００５】図６に示されたテンショナ７０では、前２
者のように、プランジャ７２がある程度前進しなくても
ロック機構７４は解除される。従って、エンジン始動直
後からチェーンやベルトの緊張力に応答するようにプラ
ンジャ７２を自由に進退動させることができ、プランジ
ャ７２に過負荷が生じることもない点で優れている。し
かし、ロック機構７４を作動させる油圧とプランジャ７
２を作動させる油圧は、同一の油室７６に作用する油圧
であり、いずれかを独立して作動させることができな
い。また、ロック機構７４が設けられた部位で油漏れや
空気の吸引が生じやすく、テンショナのダンパ機能を低
下させるという問題があった。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案は、ハウジングに
摺動可能に嵌挿され前記ハウジングとの間で油室を形成
するプランジャに、スプリングと外部油圧による突出力
を作用させるようにしたテンショナにおいて、前記ハウ
ジングに前記プランジャの摺動方向と直交する方向に摺
動可能に嵌挿され前記ハウジングとの間で副油室を形成
するピストンと、該副油室に前記外部油圧を作用させる
ための油路と、前記ピストンを前記副油室に向って付勢
する第２のスプリングを内装し前記副油室の反対側にお
いて前記ハウジングとピストンにより区画形成された大
気室と、を有し、該大気室に大気と連通し前記副油室に
前記外部油圧が作用して前記ピストンが前記第２のスプ
リングの付勢力に抗して移動したときに前記ピストンに
よって閉塞される大気連通孔を設け、前記プランジャの
前記ハウジングに囲繞される部分にラックを刻設し、前
記ピストンのロッドの先端に前記ラックに噛合可能な複
数の噛合歯を設け、該噛合歯とラックのプランジャ後退
阻止歯面をプランジャの進退方向に直角な歯面に形成
し、たテンショナにより、前記課題を解決した。

【０００７】

【作用】エンジンが始動すると外部油圧が発生し、油室
及び副油室にはその外部油圧が作用する。外部油圧が上
昇すると、ピストンが移動してラックと噛合歯とはロッ
クを解かれ、チェーンやベルトには適正な緊張力が付与
される。

【０００８】テンショナの作動中、ピストンは副油室か
ら油圧を受けているので、ラックと噛合歯は解除された
状態にある。しかし、ハウジングとピストンとの間から
油漏れを生じることがある。

【０００９】そのため、前記副油室の反対側において前
記ハウジングと前記ピストンにより区画形成された大気
室と、前記大気室を外部と連通させる大気連通孔と、を
設け、前記副油室に前記外部油圧が作用して前記ピスト
ンが第２のスプリングの付勢力に抗して移動したときに
前記孔がピストンによって塞がれるようにテンショナを
構成すると、大気室への油漏れが生じたとしてもテンシ
ョナ全体としては油漏れが生ぜず、プランジャを突出さ
せるための油室内の油圧の低下を防ぎ、外部油圧を有効
に利用することができる。

【００１０】

【実施例】図１は、本考案によるテンショナの断面図を
示している。テンショナ１０は、外部油圧を利用するも
のである。テンショナ１０は、ハウジング１２と、この
ハウジング１２に摺動可能に嵌挿されたプランジャ１４
とを有してなる。油室１６はハウジング１２とプランジ
ャ１４により形成される。プランジャ１４は、スプリン
グ１８と外部油圧によって突出力を付与される。

【００１１】テンショナ１０は、ハウジング１２に一体
に形成された副油室２０を有する。副油室２０は、ハウ
ジング１２とこのハウジング１２に前記プランジャ１４
の摺動方向と直交する方向に摺動可能に嵌挿されたピス
トン２２とにより区画形成されている。ピストン２２
は、ロッド２４とピストン本体２６を有してなる。ピス
トン本体２６の下側が副油室２０で、ピストン本体２６
の上側が大気室２８である。ハウジング１２には、大気
室２８においてキャップ３０が嵌合されている。キャッ
プ３０は大気と連通する大気連通孔３２を有する。キャ
ップ３０とピストン本体２６の間には第２のスプリング
３４が設けられている。第２のスプリング３４は、ピス
トン２２を副油室２０に向って付勢する。上記の副油室
２０、ピストン２２及び第２スプリング３４がプランジ
ャ１４の後退阻止ロック機構を構成している。

【００１２】ロッド２４はハウジング１２の壁の一部を
貫通しでプランジャ１４に向ってプランジャの進退動方
向と直交する方向に進退動可能である。その先端には複
数の噛合歯３６が形成されている。プランジャ１４は、
ハウジング１２に囲繞され、且つ、ロッド２４の噛合歯
３６と対応するようにラック３８が刻設されている。噛
合歯３６及びラック３８は、プランジャ１４の前進を許
し且つプランジャ１４の後退を阻止するように、プラン
ジャ１４の進退方向に直角なプランジャ後退阻止歯面
と、ラック３８の谷部からラック３８の山部へプランジ
ャ１４の後退方向に傾斜する面からなる。

【００１３】ハウジング１２は油溜り４０を有する。油
溜り４０と油室１６はチェックバルブ４２を介して連通
している。油溜り４０と副油室２０は油路４４を介して
連通している。チェックバルブ４２はボールシート４６
を有する。ボールシート４６は油溜り４０と油室１６と
を連通する油路４８を有する。油溜り４０と副油室２０
とを連通する油路４４の断面積は、ボールシート４６の
油路４８の断面積より小さい。

【００１４】図３は、テンショナ１０の装着例を示して
いる。外部油圧は、通常、テンショナ１０が装備される
べきエンジンＥにおいて発生する。エンジン停止時、外
部油圧は０である。従って、図１に示されるように、噛
合歯３６とラック３８が噛合しているので、プランジャ
１４は後退できない。

【００１５】エンジンＥが始動すると、外部油圧が発生
する。油溜り４０、及び油路４４，４８を通じて油室１
６及び副油室２０に油圧が作用する。断面積の相違によ
り、外部油圧はまず油室１６に作用し、少し遅れて副油
室２０に作用することになる。

【００１６】プランジャ１４の先端には後退方向にチェ
ーンＣの緊張力が作用している。外部油圧が徐々に上昇
すると噛合歯３６とラック３８はロックを解かれる。プ
ランジャ１４はチェーンＣの緊張力に対応して自由に進
退動できるようになる。

【００１７】図２は、外部油圧が正常に作用していると
きのテンショナ１０を示している。ピストン２２は副油
室２０から油圧を受けて上動し、ロッド２４が大気連通
孔３２を塞ぐ。このように、ピストン２２はチェックバ
ルブとして機能する。副油室２０内の油は、ピストン本
体２６とハウジング１２の壁との間を通じて大気室２８
に少しだけ漏洩する。また、ロッド２４とハウジング１
２との間を通じてラック３８が形成された部分に少しだ
け漏洩する。

【００１８】大気室２８は大気連通孔３２がロッド２４
で塞がれているので、一定量以上の油は流入しない。従
って、油室１６に作用する外部油圧にロスが生じない。

【００１９】また、副油室２０を通じてラック３８の部
分に漏れた油は、ハウジング１２とプランジャ１４との
間に供給される。従って、ハウジング１２とプランジャ
１４との間において空気の吸引は防止される。

【００２０】エンジンＥが停止して外部油圧が消滅する
と、チェックバルブ４２が設けられていない副油室２０
において油が減少する。第２のスプリング３４がピスト
ン２２を付勢し、噛合歯３６がラック３８に噛合する。
その後に、油室１６内の油圧が低下しても、プランジャ
１４は後退することができない。

【００２１】本実施例では、外部油圧を油溜り４０を介
して油室１６及び副油室２０に供給している。しかし、
副油室２０への油圧については、ソレノイドバルブを介
して作用させたり、別個の外部油圧源から作用させたり
して、コントロールすることができる。

【００２２】

【考案の効果】本考案では、外部油圧がないときプラン
ジャが後退しないように構成されていることは勿論のこ
と、このようなテンショナを構成する上で、油室からの
油漏れ及び油室への空気の吸引を防止することができ
る。

【００２３】すなわち、本考案では、プランジャのラッ
クがハウジングに囲繞された部分に形成されており、こ
のラックにハウジング壁をプランジャの進退方向と直交
する方向に進退動可能に貫通するピストンロッドの先端
に形成された複数の噛合歯が噛合し、該噛合歯とラック
のプランジャ後退阻止歯面をプランジャの進退方向に直
角な歯面に形成したので、プランジャ後退阻止力が増大
するとともに該阻止力がプランジャの進退方向に略々平
行に作用してプランジャをハウジングの囲繞内周面に押
圧させる分力の発生を生じさせないから、プランジャ外
周面とハウジング囲繞内周面との間が付着固定されるお
それもなく、外部油圧が発生したときは、噛合歯がプラ
ンジャ後退阻止歯面に平行に進退動するので歯ばなれが
よく、且つプランジャの突出即動性も向上するものであ
る。また、複数歯で噛合するから、夫々の歯に負荷され
る荷重が分散して噛合歯の耐久性を向上させることがで
きる。さらに、副油室内から洩れた油の一部は、ハウジ
ング壁とピストンとの間を通じてプランジャのラックま
で達し、ラックが形成された部分に供給されるから、ハ
ウジングとプランジャとの間における油漏れや空気の吸
引を阻止することができる。

【００２４】また、油室と副油室に連通する油路を別個
に設けたので、ロックを解除するための油圧を油室に作
用する油圧と別個に調節を行うことができる。例えば、
油路の断面積を異ならせることにより、副油室に作用す
る油圧の伝播を遅延させ、外部油圧発生直後にロックが
解除されることを防止することができる。

【００２５】そして、大気室の大気連通孔は、外部油圧
が正常に作用しているときにピストンによって閉塞さ
れ、大気室は実質的に密室となる。従って、副油室から
大気室への油漏れは一定以上生じることがなくなり、油
室に外部油圧を有効に作用させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案によるテンショナの実施例を示す断面
図であり、外部油圧作用前における状態を示している。

【図２】 図１のテンショナに外部油圧が作用している
ときの断面図である。

【図３】 図１のテンショナの装着例を示す説明図であ
る。

【図４】 従来のテンショナの断面図である。

【図５】 従来のテンショナの断面図である。

【図６】 従来のテンショナの断面図である。

【符号の説明】

１０ テンショナ １２ ハウジング １４ プランジャ １６ 油室 １８ スプリング ２０ 副油室（ロッ
ク機構） ２２ ピストン（ロック機構） ２４ ロッド ２６ ピストン本体 ２８ 大気室 ３２ 大気連通孔 ３４ 第２のスプリ
ング（ロック機構） ３６ 噛合歯 ３８ ラック ４４ 油路 ４８ 油路

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハウジングに摺動可能に嵌挿され前記ハ
   ウジングとの間で油室を形成するプランジャに、スプリ
   ングと外部油圧による突出力を作用させるようにしたテ
   ンショナにおいて、 前記ハウジングに前記プランジャの摺動方向と直交する
   方向に摺動可能に嵌挿され前記ハウジングとの間で副油
   室を形成するピストンと、該副油室に前記外部油圧を作
   用させるための油路と、前記ピストンを前記副油室に向
   って付勢する第２のスプリングを内装し前記副油室の反
   対側において前記ハウジングと前記ピストンにより区画
   形成された大気室と、を有し、該大気室に大気と連通し
   前記副油室に前記外部油圧が作用して前記ピストンが前
   記第２のスプリングの付勢力に抗して移動したときに前
   記ピストンによって閉塞される大気連通孔を設け、 前記プランジャの前記ハウジングに囲繞される部分にラ
   ックを刻設し、前記ピストンのロッドの先端に前記ラッ
   クに噛合可能な複数の噛合歯を設け、該噛合歯とラック
   のプランジャ後退阻止歯面をプランジャの進退方向に直
   角な歯面に形成し、たことを特徴とする、テンンョナ。