JP2559633B2 - 密閉形鉛蓄電池 - Google Patents

密閉形鉛蓄電池

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は密閉形鉛蓄電池の改良に関するものである。
従来の技術とその課題 電池の充電中に発生する酸素ガスを負極で吸収させる
タイプの密閉形鉛蓄電池にはリテーナ式とゲル式の二種
類がある。リテーナ式は正極板と負極板との間に微細ガ
ラス繊維を素材とするマット状セパレータ(ガラスセパ
レータ)を挿入し、これによって放電に必要な硫酸電解
液の保持と両極の隔離を行っており、無保守、無漏液、
ポジションフリーなどの特徴を生かして、近年、ポータ
ブル機器やコンピューターのバックアップ電源として広
く用いられるようになってきた。しかし、反面ガラスセ
パレータが高価なことや極板群を強く圧迫する必要から
電槽の強度も大きくしなければならないなど電池の製造
コストが高くなる要因が多く、さらに従来の液式電池に
比べて低率放電性能が劣るなどの欠点があって、この種
の密閉電池の普及に障害となっている。
一方、ゲル式はリテーナ式よりも安価であるが、電池
性能が液式やリテーナ式に劣るという欠点があった。そ
こでこれらの欠点を解消するために、微細ガラス繊維を
用いるリテーナ式でもなくゲル式の電解液を用いるゲル
式でもない新規な密閉形鉛蓄電池が提案されている。こ
れは電解液の保持材としてシリカの微粉体[正確には含
水二酸化珪素(SiO2・nH2O)であるが、ここでは単にシ
リカ微粉体と略す]を使用するもので、正極板と負極板
との間隙および極板群の周囲に上記シリカ微粉体を充填
した構成の電池である。シリカ微粉体は大量に生産さ
れ、市販されている安価な材料であり、耐酸性や電解液
の保持力も優れているので、密閉形鉛蓄電池の電解液保
持材として優れた新素材である。ところがこの新規な密
閉形鉛蓄電池にも次のような問題点があった。すなわ
ち、シリカ微粉体は非常にバルキーな細かい粉体である
ため、極間や極板群の周囲に密に充填するのが困難なこ
とおよび充填した粉体層に電解液を注液するのに長時間
を要することである。
課題を解決するための手段 本発明は上述した従来の密閉形鉛蓄電池の欠点を除去
し、優れた放電性能を有する安価な密閉形鉛蓄電池を提
供するもので、シリカ微粉体は硫酸を非常によく吸収す
るという特性を利用することを発明の骨子とするもので
ある。シリカ微粉体は一次粒子が10〜40ミリミクロンと
細かく、比表面積も大きいので、多量の硫酸電解液を加
えても、粉体の状態を維持し、電槽内への粉体の充填が
容易になるばかりでなく、あらかじめ電池の放電に必要
な硫酸量を含浸させておけば、電池の充電の際に水を加
えるだけでよいので電池製造の工程上腐食性の硫酸を扱
う必要がなくなり非常にメリットが大きい。以下本発明
を実施に基づいて説明する。
実施例 本実施例では一次粒子径が10〜40ミリミクロンの市販
シリカ微粉体を用いた。この微粉体は一次粒子が凝集し
て50〜200ミクロンの二次または三次粒子を形成してお
り、比表面積が大きく、硫酸の吸収能も高いバルキーな
粉体である。珪酸ソーダと硫酸を反応させると Na2SiO3+H2SO4→SiO2・H2O+Na2SO4 のように含水二酸化珪素として簡単に製造できるので、
安価な工業材料として大量に生産されているものであ
る。そこで上記シリカ微粉体に電解液としての硫酸水溶
液を加え、硫酸を含浸させた状態での粉体を試作した。
その作り方は極めて簡単で、シリカ微粉体と硫酸を混合
するだけでよい。すなわち、シリカ微粉体に硫酸を加え
ると、加えた硫酸はシリカ微粉体に吸収されて塊状とな
るが、攪拌することによって容易にこわれ、均一な粉体
となる。ただし、ここで注意しなければならないこと
は、加えた硫酸量が多い場合攪拌が激しすぎると粉状と
はならずペースト状となってしまうことである。とくに
すりつぶすような力が働くと、粉体に吸収された硫酸が
にじみ出てきてペースト状となるので、このような撹拌
方法は避けなければならない。軽くかき混ぜる程度が最
も好ましい。
そこで上記の方法で作製した硫酸含浸シリカ微粉体を
電解液保持体とする密閉形鉛蓄電池を試作し、従来のリ
テーナ式およびゲル式密閉形鉛蓄電池とその放電性能を
比較した。試験電池は公称容量4.5Ahの2V電池で、この
電池は化成して乾燥した正極板3枚と負極板4枚から構
成されており、本発明品については、極間に幅2mm、厚
さ1.5mm耐酸性合成樹脂のスペサーを2本ずつ挿入し
た。極間および極板群周囲に充填する硫酸含浸シリカ微
粉体は次のものを用いた。すなわち、一次粒子が10〜40
ミリミクロンの含水二酸化珪素が凝集して50〜200ミク
ロンの二次または三次粒子を形成するシリカ微粉体100g
に対して比重1.61の硫酸を173ml加えて軽く攪拌し、均
一な粉体とした。硫酸を含浸させたこの粉体はさらさら
した性状で、極間や極板群の周囲に簡単に充填すること
ができる。上記粉体の充填量は電池の放電に必要かつ充
分な量として試験電池1個あたり50gとした。電槽内に
硫酸含浸シリカ微粉体を充填した後電槽フタを接着し
た。この試験電池の縦断面模式図を第1図に示す。図に
おいて1は正極板、2は負極板で、図には示していない
がこれらの極間にはスペーサーが挿入されている。3は
硫酸含浸粉体、4は電槽、5は液口である。
つぎにこの試験電池の初充電を行った。まず、電池の
液口から水を33ml注入し、液口にゴム弁を装着した後0.
8Aで18hの初充電を行った。シリカ微粉体に含浸した硫
酸が水を吸収するため水の浸透は速やかであった。初充
電終了後別の電池で電解液比重を確認したところほぼ1.
30になっていた。容量試験は0.2C(25℃)と30A(−15
℃)で行った。結果を第1表に示す。
第1表において、電池Aは本発明品、BとCはそれぞ
れリテーナ式およびゲル式の従来品である。
この試験結果より、リテーナ式とゲル式とを比較する
と、リテーナ式は電解液比重がやや高いためにゲル式よ
りも高率放電性能が優れていた。一方、本発明品はこれ
ら従来の密閉式鉛蓄電池に比べて低率放電、高率放電と
も10〜20%も性能が向上した。これは電解液量がリテー
ナ式よりも多いこと、液比重をゲル式より高くしたこ
と、酸の拡散がリテーナ式やゲル式に比べて優れていた
ことなどの相乗効果によるものと思われる。なお、本実
施例では極間にスペーサーを挿入したが、通常の鉛蓄電
池用セパレータ特にリブ付や波付セパレータを挿入して
もよい。
発明の効果 実施例から明らかなように、本発明による密閉形鉛蓄
電池は電解液の保持にシリカ微粉体を用いると共に、予
め放電に必要かつ充分な量の硫酸を含浸させることがで
きるので、初充電に際しては水を加えるだけでよく、電
池の製造工程が簡略化されるばかりでなく、腐食性の硫
酸を取り扱う必要がないなど工業上の価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明密閉形鉛蓄電池の縦断面模式図である。 1……正極板、2……負極板、3……硫酸含浸粉体、4
……電槽、5……液口

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電池の充電中に発生する酸素ガスを負極で
    吸収させる密閉形鉛蓄電池において、スペーサーまたは
    セパレータを介して組み合わせた正極板と負極板との間
    隙および極板群の周囲に、一次粒子が10〜40ミリミクロ
    ンの含水二酸化珪素の微粉体が凝集して50〜200ミクロ
    ンの二次または三次粒子を形成した粉体であって、かつ
    電池の充放電に必要な硫酸を含浸保持させた粉体を、充
    填、配置したことを特徴とする密閉形鉛蓄電池。
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