JP2558349B2

JP2558349B2 - 複合偽装用シート

Info

Publication number: JP2558349B2
Application number: JP1141655A
Authority: JP
Inventors: 稔前川; 敏裕浜田; 信彰川崎; 文也有馬; 一郎花森
Original assignee: Kuraray Co Ltd
Current assignee: Kuraray Co Ltd
Priority date: 1989-06-02
Filing date: 1989-06-02
Publication date: 1996-11-27
Anticipated expiration: 2011-11-27
Also published as: JPH037895A

Description

【発明の詳細な説明】本発明は、対遠赤外線偽装効果と共に、他の光、波に
対しても偽装効果を有する複合シートに関する。

＜従来の技術＞近年の各種防衛技術の進歩と共に探知、偵察技術の進
歩にはめざましいものがあり、従来の可視光、近赤外
線、紫外線、レーダー波等を利用する方式に加え、遠赤
外線による方式が注目を集めている。

特にこの方式は、従来方式と異なり、探知・偵察対象
物自らが発する遠赤外線（一般には熱線と称されてい
る）をキヤツチ映像化するものであることより、日中、
夜間を問わず、探知・偵察が可能であり、また、遠赤外
線が長波長であるため、霧、煙等に影響されにくい特長
を有し、軍事対象物、例えば戦車、飛行機等に対する偵
察方式として極めて好ましい手段であると一般に言われ
ている。

探知・偵察技術とそれを隠蔽する偽装技術は関連があ
り、新しい探知・偵察手段が登場するとそれを偽装する
手段が強く求められる。

現在、遠赤外線探知・偵察より軍事対象物を有効に偽
装する手段としては、種々の方法が提案されており、一
般的な方法としては、断熱性に優れた比較的厚い不織
布、あるいは遠赤外線放射性が低いアルミ箔等を利用し
た偽装シートが知られているが、戦車等を短時間に該シ
ートで覆い偽装する操作性において該断熱布は問題があ
り、またアルミ箔等においては軽量で操作性には問題は
ないものの、他の偵察手段、例えば目視（可視光）手段
に対し、輝くため、好ましくない効果を与えている。

また従来、可視光線、紫外線、近赤外線等の光線、レ
ーダー波、遠赤外線のいずれかに対して偽装効果をもつ
偽装シートあるいは網状物については種々のものが開発
されているが、一枚のシートにより種々の光線またはレ
ーダー波のいずれかと遠赤外線（熱線）の両方に対して
一挙にカモフラージユできるものは知られていない。し
たがって車輌等から発する熱線に対するバリア効果を有
し、同時に他の探知波に対する偽装性を満足する一枚の
複合シートよりなる偽装材は知られていない。

＜発明が解決しようとする課題＞本発明は優れた遠赤外線バリア効果と他の偽装効果を
合せ持ち、かつ、軽量、柔軟性および適度な通風性を有
することにより取扱い作業性に優れた複合偽装シートを
提供することを目的とするものである。

＜課題を解決するための手段＞すなわち、本発明は、可視光線、近赤外線、紫外線お
よびレーダー波からなる群から選ばれる少なくとも一種
の光又は波に対する偽装効果を有するシートＡと畝構造
を有するテープ状物で構成された織編物であって、かつ
遠赤外線の直進透過率の平均値が20％以下であるシート
Ｂが一体化されている複合偽装シートである。特にシー
トＢが、表面に凹部または凸部（以下凹凸部と称す）と
して細かい畝を有しており、かつ隣り合う畝との間隔が
0.5mm未満である場合には、極めて優れた効果が得られ
る。

本発明におけるシートＡとしては、２次元的な面状の
シート、立体性を有する３次元的に加工された各種の従
来より用いられる偽装用シートが使用可能であり、例え
ば２次元的シートとしては編織された布帛・シートに対
し、可視、紫外および／また近赤外線領域の分光反射率
が天然自然界の植物、土および／または雪に近似する様
に塗料、着色剤等で無地あるいは迷彩状模様に着色さ
れ、必要に応じ、これに通風性等を与える目的でランダ
ムに又は規則的に穴あけしたシートであり、また３次元
シートとしてはネツト状の網地に対し、前記２次元的シ
ートを貼り付けたものあるいは着色樹脂シートに切り込
みを入れ、リボン状とし、これを一体化したもの等があ
る。さらに、レーダー波に対し乱反射性あるいは吸収性
を有し、その偽装がなされる様に設計された布帛・シー
トまたはそれを前記と同様な方法により３次元的シート
とした偽装シート等も利用可能である。レーダー波に対
する偽装性を得る手段としは公知の手段が適用可能であ
り、例えば導電性を有する金属糸、メツキ繊維が織編み
込まれたり、金属層が一体化された布帛・シートに、必
要により着色脱脂等で被覆し、ネツト状網地に立体的に
取り付け、レーダー波を乱反射する等の偽装材料が挙げ
られる。

次に本発明を構成するシートＢは、畝構造を有するテ
ープ状物で構成された織編物からなり、かつ、遠赤外線
の直進透過率が20％以下である必要があり、これは、車
輌等の熱源からの放射遠赤外線をシートＢにより、錯乱
透過あるいはシートＢ自体からの放射遠赤外線を広角放
射することとなり探知装置検知部へは低エネルギーしか
入力されず結果とし、探知されにくくするものである。
凹凸部の深さまたは高さが１μｍ未満ではその錯乱、広
角放射性の効果において、不充分であり、また、遠赤外
線の直進透過率が20％を越えると、熱源の対探知装置よ
りの偽装効果を満足しなくなるとの理由による。

また、凹凸構造が隣り合う畝の間隔を0.5mm未満とし
た畝により形成される場合が偽装効果の点でより好まし
く、これは、遠赤外線の錯乱透過および広角放射に、こ
の構造が優れるためで、畝幅が0.5mm以上となるとその
効果の発現性が減じる。

ここで、凹凸部の断面形状は厚さ斑が生じるものであ
ればよく、例えば三角、半円、四角等が適用可能であ
る。また、それ（畝の方向）は一方向でも多方向あるい
はあたかも迷彩模様のごとく向いていてもよく、凹凸密
度、方向、および構造をシートＢの各部位で変更するこ
とも本発明の効果を減じるものではない。

合成樹脂フイルムの表面に凹凸部を形成する方法とし
ては、フイルムを成形する際にノズル形状をノコギリ歯
状にする方法や、フイルム成形時または、成形後に凹凸
を有するロールに熱圧着（接触）する方法、あるいはレ
ーザー、プラズマ等のエネルギーを利用して凹凸を付与
する方法等の公知の手段が適用可能である。また、その
フイルム素材としては、加工性等よりポリオレフイン、
ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニ
ルアルコール系等が挙げられる。得られたフィルム状を
テープ状物とし、かかるテープ状物を用いて織編物を形
成することによりシートＢを得ることができる。

また、本発明のシートＢは好ましくはそれを構成する
合成樹脂フイルム素材が遠赤外線吸収率において、50％
以上である場合である。これは、50％未満では高温の被
偽装材料から放射される高エネルギー密度の遠赤外線が
Ｂシートを透過しやすく、凹凸構造による錯乱・広角放
射効果は期待できても偽装効果で必らずしも十分に満足
し得ない場合があり、50％以上の吸収率による謂ゆるカ
ーテン効果による補足が好ましいとの理由であり、具体
的にはポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリア
ミド系等に代表される遠赤外線吸収能を有する樹脂素材
の選択あるいは遠赤外線吸収剤例えば無機・有機顔料、
各種セラミツク材料、各種充填材料等を樹脂中に添加
し、その吸収率の確保が可能である。また表面にアルミ
蒸着することやアルミ箔を混入したりすることは、可視
光による探知を著しく招かない限り、採用することがで
きる。

また、本発明の合成樹脂のフイルムをテープ状とし、
このテープ状物を編織することも風合の柔軟化、適度の
通風性、および強度面より好ましい。具体的には、フイ
ルムをスリツト必要に応じて、延伸し、このテープを経
糸および緯糸として用いる方法、あるいは通常の糸と交
互に、あるいは一方向のみをテープで他方向を通常の糸
で構成する方法などが挙げられる。織編物としては例え
ばラツセル編、平織等が挙げられる。

また、シートＢは、その展収納作業性、風圧に対する
偽装用シート設置時の安定性確保のため部分的に開孔
し、通風性を確保することも好ましく、フイルム状シー
トの段階で開孔し、強度保持を目的に、それをネツト等
と接着剤等を用い一体化しても、あるいは前記の織編さ
れたシートを製造しその後に例えば、トムソン型の打抜
機等により開孔する方法等が利用可能である。

なお、その際の孔形状には注意を要し、穴径または穴
幅は20mm以下が遠赤外偽装性の点で好ましく、また開孔
は均一な密度より不均一の粗密の穴密度とすることが可
視光線等の種々の偽装性の点より好ましい。

このようなシートＡとシートＢを積層することが本発
明の一方の特長であり、この積層方法としては熱、接着
剤等により両シート間を部分的にあるいは全面を接合積
層する方法、クリツプ、ひもさらには雄と雌よりなるマ
ジツクテープにより積層する等のいかなる手段も可能で
ある。但し、熱等による方法は本考案の特長である凹凸
部構造を変える危険性があり、その条件設定には注意を
要する。

なお、シートＡが表裏でその色彩、迷彩模様パターン
等を異にし、季節、場所等により表裏をリバーシブル
使用する場合は、積層方法としては適宜その都度、シー
トＡの表あるいは裏面に積層できることが望まれ、その
ための積層方法としてはひも、マジツクテープ方式等が
適用可能である。

なお、本発明でいう凹凸部の平均深さまたは高さ、遠
赤外線の直進透過率、畝幅、および遠赤外線吸収率は以
下のように測定（定義）される。

・凹凸部の平均深さまたは高さフイルムの表面に一見して凸部のみしか存在しない場
合であつても隣り合う凸部の間には必ず凹部が存在して
おり、逆に隣り合う凹部との間には必ず凸部が存在して
いることとなる。本発明で言う凹部の深さおよび凸部の
高さとは、隣り合う凹凸の凸部の頂点と凹部の底点との
間の高度差を意味しており、したがつて凹部の深さと凸
部の高さは同じことを意味していることとなる。具体的
な測定方法としては、凹凸部の断面の多数個（通常はｎ
＞10）について光学顕微鏡、走査型顕微鏡等により、凹
部と凸部間のクリアランスを測定し、その平均クリアラ
ンスをミクロン単位で示す。

・遠赤外線の直進透過率シートＢについて、公知の赤外分光光度計を用い、波
長８〜13μｍの透過率を記録紙上に描かせ、透過部分の
積分面積値Ａを100％透過時の面積値Ｂで除した次式で
算出されるものである。

なお、部分的に透過率が異なるシートの場合はその多
数個所（通常n:5以上）について測定し、その平均値に
より定義されるものである。

・畝幅拡大鏡、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡等により、肉
眼、あるいは写真より畝の繰り返し長さを測定する（第
１、２図の５）。

・遠赤外線吸収率遠赤外線の吸収率と放射率は等しいという原理によ
り、第５図に示すごとく、約50℃の表面平滑なアルミ製
熱板上に、シートＢを構成する合成樹脂フイルムを密着
させ、かつ、このフイルム自体の温度を接触式の温度計
（熱伝対式他）で正確に測定後、これより100cm離れた
位置に、８〜13μｍに感知域を有する非接触法で物体の
温度測定可能な遠赤外線カメラ（例：日本電子工業KK製
工業用サーモグラフイー:JTG−3200）により温度測定
し、その温度が、測定済の接触法による温度と等しくな
る様に、遠赤外線カメラに付属の熱輻射率変更ダイアル
を操作し、温度が接触法の場合と等しくなる熱輻射率
（０〜１）を求める。この求めた輻射率に100を乗じた
値を遠赤外線吸収率とする。

＜作用＞本発明の複合偽装シートによれば、高温車輌等の被偽
装材により放射される遠赤外線（熱線）は被偽装材側
（内側）にあるシート（Ｂ）層を構成する凹凸表面構造
でのランダム反射、それぞれの入射角に応じた屈折透過
さらにはシート（Ｂ）層自体への吸収によりランダム方
向に分散、拡散あるいは吸収され、これにより直進透過
が阻止されることにより遠赤外探知装置への入力遠赤外
エネルギー量が大巾に低減され、良好な対遠赤外線偽装
性が得られると考えられる。

一方、可視光線、近赤外線、紫外線または、レーダー
波に対しては探知装置側（外側）にあるシート（Ａ）層
により、従来のシート（Ａ）のみの場合と全く同一の機
構で良好な偽装性が得られるものである。

以上により、積層された本発明の一枚の複合シートよ
りなる偽装用シートは、可視光線、近赤外線、紫外線ま
たはレーダー波に対し良好な偽装性が得られると共に遠
赤外線に対する偽装性をも有しているもので、かつ、軽
量、柔軟性および適度な通気性も兼備し得るため、展収
納時の作業性に優れ、偽装用シートを設置した場合、風
であおられにくく、設置安定性にも優れるものである。

実施例１ポリビニルアルコール（PVA）の濃厚水溶液より、歯
型状スリツト金型を用い、公知の乾式押出法により、フ
イルムに成形し、これをスリツト後熱延伸し、第１図に
示す畝構造を有する、畝幅0.1mm、畝を形成する谷部の
厚さ25μｍ、峰部の厚さ50μｍの表裏とも細い畝を有す
る3mmの幅のテープを作製し、これを経糸および緯糸と
し、平織組織で打込密度７本／インチの空隙率14％の本
発明のシートＢを作製した。

シートＡは80×80mmの網目構造を有する無結節のネツ
ト状物に対し、金型メツキ繊維打込みした布帛に、ライ
トグリーン、ダークグリーンおよびブラウンに着色した
軟質塩ビで被覆した３色よりなる可視光線、近赤外線と
レーダーに対する偽装性を有するリボン状物を接着剤に
より一体化して作製した。

このシートＡとシートＢをそれぞれ10×10m²のシート
とし、その周辺部に対し、それぞれに雄と雌よりなる巾
5cm、長さ10cmのマジツクテープの雄（シートＡ）およ
び雌（シートＢ）をミシン縫製により１ケ/mの密度で取
付けた。このシートＡとシートＢをマジツクテープを界
し、接合し本発明の複合偽装シートとした。

なお、比較例として、前記のシートＢ以外に細い畝を
有さない表面がフラツトな構造のポリビニルアルコール
よりなる巾3mm、厚さ50μｍのテープにより類似のシー
トＢを作製し、同様な方法により、前記シートＡと接合
した複合シートも作成した。

この両複合シートについて、第４図に示すように黒色
の水冷式乗用車を30分以上アイドリングし、これを被偽
装材とし、支柱を利用し、乗用車を被覆（シートは少な
くとも乗用車ボデイより10cm離す）し、森林を背景と
し、各種の偽装性を約50m離れた位置より評価した。

評価は可視光線、近赤外線に対する偽装性は公知の可
視、近赤外線写真により、レーダーに対しては漁船用レ
ーダーにより、また遠赤外線に対しては８〜13μｍの感
知域波長の市販の遠赤外カメラにより実施した。

この結果、遠赤外線以外の各種偽装性は本発明品と比
較例品との間には差がなかつたが、遠赤外線に対しては
明らかに差があり、比較例が熱源の存在が認められるの
に対し、本発明品はその存在が認められず、優れた偽装
性であることが判明した。さらに軽量で柔軟性を有して
いることより、取扱い性にも優れていた。

＜効果＞本発明の複合偽装シートは一枚の複合偽装用シートで
あるにもかかわらず遠赤外線の遮蔽効果が十分でかつ、
可視光線、近赤外線、紫外線および／またはレーダー波
に対しても優れた偽装性を発揮し、さらに軽量で柔軟性
があり、車輌等を偽装する目的でそれを被覆する際、作
業性がよく、風等によるあおりがなく安定した被覆設置
が可能である。

本発明の複合偽装用シートは以上のごとき効果がある
ため、例えば戦車等の軍事対照物の各種探知に対し使用
すれば高度な偽装が可能である。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は本発明を構成するシートＢの一例
の斜視図であり、特に第１図は畝が半円形状、第２図は
四角形状の断面構造を有する例であり、１はその断面、
２は側面、３は畝の峰、４は谷部を示し、また５は畝の
幅を示すものである。第３図は本発明を構成するシートＡとシートＢを積層し
た際の断面図を例示したもので６はシートＡ層、７はシ
ートＢ層、８は積層した部位を示す。第４図は本発明の
実施例で記載した乗用車に対し本発明の複合偽装用シー
トを支柱を利用し、被覆した場合の断面図を示し、９は
乗用車、10、11および12が本発明の複合シートであり、
このうち10はシートＡ層、11はシートＢ層、12は積層部
を、また13は支柱を示すものである。第５図は本発明の
遠赤外線吸収率の測定法を例示するもので、14はアルミ
製熱板、15は吸収率測定用試料、16は遠赤外線カメラ、
また17はカメラと試料間の距離を示す。

フロントページの続き (72)発明者花森一郎岡山県岡山市海岸通１丁目２番１号株式会社クラレ内審査官辻野安人 (56)参考文献米国特許4495239（ＵＳ，Ａ)

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】可視光線、近紫外線、紫外線およびレーダ
ー波からなる群から選ばれる少なくとも１種の光又は波
に対する偽装効果を有するシートＡと、畝構造を有する
テープ状物で構成された織編物であって、かつ遠赤外線
の直進透過率の平均値が20％以下であるシートＢが一体
化されている複合偽装シート。