JP2538448B2 - 横編機における編地引下げ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、横編機において、編成
された編地を編成位置から引き下げるための編地引下げ
装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】編機によって編成された編地は、ニード
ルベッド下部に設けられた巻き取り装置に巻き取られる
が、編地はニードルベッドから垂下されると、編地への
下方向への引張力と編地自体の有する編地幅方向の収縮
力とによって、編地端縁が湾曲状に歪み、編地端縁にカ
ールを生じ、編幅を縮小するという問題が生じた。編地
端縁が湾曲状に歪んだ場合、編地の収縮する性質のため
に編針に対して編地内側（横方向）に編地を引く力が働
くために、編地の旧ループが針上昇時に針に引きずられ
て上昇し、その結果、旧ループがクリアされずに編地不
良を引き起こす問題が生じた。

【０００３】そこで、横編機において、編成された編地
を幅の縮小を見ずに引き下げる編地引き下げ装置は、従
来種々開発されているが、その一つにローラを用いたも
のがある。即ち、山形に対向して設けたニードルベッド
の歯口部の下位に、ニードルベッドの針溝の幅よりも長
く、１つの軸に回転自在に支持された張力付与ロール
と、該ロールに対設した圧接ロールとによって編地をニ
ップし、張力付与ロールを回転することにより編地を徐
々に引き下げている（実公昭４８−９１７８号）。

【０００４】このように歯口部の下位に設けた張力付与
ロールによって編地の引き下げを行なった場合、編地は
ニードルから離れると直ちに該ロールにより引き下げ力
を受けることになるが、ローラを積極的に回転した場
合、ローラの周速が編地の編成長より大となる、即ち編
地の引き下げ量よりも速くなり、編地は無制限に引き伸
ばされてしまうという問題が生ずる恐れがある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の点に
鑑みて、編成された編地に歪みを生ずることなく安定し
て拡幅作用を与え、編成速度に合致した巻き下げを行な
うことの出来る、横編機における編地引下げ装置を得る
ことを目的とする。

【０００６】

【課題が解決するための手段】歯口部下部の編地垂下軌
跡にニップ面を位置させ、編地をその両側端においてニ
ップする両位置に、それぞれ、制御可能なモーターによ
り駆動される対のスクリュー型の拡幅ローラを、針床の
長手方向の任意の位置に移動可能に、かつ、各ローラの
螺旋の周回方向を逆にして凹凸部が嵌合するよう強さを
調整可能とした弾性手段により付勢して設けた。

【０００７】

【作用】歯口部から編み出された編地は、スクリュー型
の拡幅ローラの噛み合い面に降下する。噛み合い面で編
地はニップされるが、対向する対の拡幅ローラ表面の凹
凸部が互いに噛み合っているため、その間に導入された
編地は波状に屈折した状態で良好に安定して両ローラに
挟持されることになる。そして、ローラ表面の凹凸は編
地をその幅方向に引張るような方向に螺旋状に切ってあ
るので、ニップされた編地はローラの回転により、編地
幅方向への張力が付与され、編地が幅方向に縮少しカー
ルを生じようとする力に打ち勝って拡幅が行なわれる。
編地の組織によって厚さに変化が生じたときは、一方の
拡幅ローラを支持する可動アームを付勢しているスプリ
ングの支点を変えることによって接圧を適宜変化する。

【０００８】

【実施例】本発明の実施例を図面と共に次に説明する。
山形に先端を対向させて、サイドベッド１により支持さ
れたニードルベッド２，２先端の歯口部３の下位に編地
引下げロール装置４が設けられ、歯口部３から上記編地
引下げロール装置４へ向け垂下している編地５の下降軌
跡内に、本発明編地引下げ装置６が、サイドベッド１に
固定された支持部材７に固定アーム８を係止固定するこ
とにより設けられている。

【０００９】固定アーム８は上下方向に延び、下端には
回転数を適宜制御し得るモータ９を、上端にはローラ軸
１０を回転自在に支持する。また、中間部分には軸１１
によって可動アーム１２を揺動自在に支持する。可動ア
ーム１２の頂部にはローラ軸１３を支持し、下端部に植
設したピン１４と、固定アーム８に植設したピン１５の
間にスプリング１６を架け渡し、固定アーム８と可動ア
ーム１２の頂部同士接近するように付勢する。ローラ軸
１０，１３にはそれぞれスクリュー型の拡幅ローラ１
７，１８及びプーリ１９，２０を支持する。拡幅ローラ
１７，１８は共に螺旋状に凹部２１及び凸部２２を形成
し、両ローラ１７，１８の凹部２１と凸部２２とが少な
い間隙を有して対向するように位置させ、両ロール間に
編地５を挟持するニップ面２３を形成する。拡幅ローラ
１７，１８の表面は滑らかな表面とし、その間にニップ
した編地５を引き下げるのに所定値以上の張力を要する
ときは、編地５と拡幅ローラ１７，１８との間にスリッ
プを生じるようにしてある。

【００１０】ローラ軸１３に設けたプーリ２０と、固定
アーム８の中間に設けた軸２４に支持した幅広のプーリ
２５との間にベルト２６を架け渡す。また、固定アーム
８の下部に設けたモータ９の軸２８に設けたプーリ２９
と、固定アーム８の頂部に支持したローラ軸１０のプー
リ１９との間に両面ベルト３０を架け渡す。両面ベルト
３０はその中間で固定アーム８の軸２４に支持された幅
広のプーリ２５とも噛み合っており、モータ９の回転は
両面ベルト３０によりプーリ１９，ローラ軸１０を経て
拡幅ローラ１７に伝えられ、また、両面ベルト３０はプ
ーリ２５をも回転し、その回転はベルト２６，プーリ２
０，ローラ軸１３を経て拡幅ローラ１８をも回転する。
このとき両ローラ１７，１８は上方からそのニップ面２
３に編地５を取り込むような方向に互いに逆方向の回転
をする。

【００１１】モータ９は一定回転しているが、モータ９
の回転を制御することで編地５の拡幅の強弱を調整する
ことも可能になる。例えば、制御可能にすることで、柄
が替わる度にその都度編成前に適切な拡幅を得るように
調整しておき編成を行なうことが可能となる。同様の作
用はスプリング１６の調整をすることによっても得られ
るが、スプリング１６の調整は手間を要し不便である。
また、１ガーメントの編成中においても裾ゴム部は厚手
であり、身頃部、例えば平編部は薄手であるので、その
編成される部分毎に拡幅量を調整することもできる。編
地引下げロール装置４は、駆動ロール３１とそれに当節
するニップロール３２とよりなり、駆動ロール３１は編
地垂下軌跡に接している。

【００１２】今、編成が進み歯口部３から編地５が垂下
されると、編成が進むにつれ、該編地５は拡幅ローラ１
７，１８のニップ面２３に進入する。歯口部から編地が
送り出されて来る速度は編地の厚さ、組織等により異な
るため、それに応じた速度でニップ面２３も編地を送る
ようモータ９の回路数は決定されている。拡幅ローラ１
７，１８には垂下してくる編地の上下方向の弛みを取る
働きもするが編地の引き下げ量の制御は編地引下げロー
ル装置４で行なわれる。

【００１３】ニップ面２３に挟持された編地５は、拡幅
ローラ１７，１８の凹凸部２１，２２で波状に屈折され
た状態となるので、拡幅ローラ１７，１８による編地の
挟持力は高いが、挟持力は適宜スプリング１６を係止す
るピン１５の位置を変えることにより調整する。このと
き、拡幅ローラ１７，１８の凹凸部２１，２２はスクリ
ュー型に切ってあり、対向するローラ１７，１８の凹部
２１，凸部２２にニップされている編地５は、拡幅ロー
ラ１７，１８の回転につれて引き下げられると共に編地
５をその幅方向に拡げる方向に引張ることになり、幅を
縮少しようとする編地５はそれを阻止されて、編針列
（図示せず）の幅に相当する幅を有して垂下されること
になる。

【００１４】上記の如く、本発明の装置にあっては、前
後の拡幅ローラ１７，１８同志の押圧力はバネで調整さ
れているので、編地の薄厚に応じてバネを適切な位置に
セットすることで編地を適切な幅（ニードルベッド上の
編幅）以上は拡幅しないように、つまりローラの拡幅力
と編地の収縮量が相殺されるようにしており、それより
先はローラと編地間にはスリップが生じることになる。
このスリップを生じさせるために拡幅ローラの表面を編
地に対する摩擦係数の少ない表面としてる。拡幅ローラ
１７，１８のニップ面２３を、編地幅を縮少することな
く通過した編地５は、編地引下げロール装置４のロール
３１，３２により引き下げられ、図示しない巻取装置に
巻き取られる。

【００１５】このように本発明装置では、編地引下げロ
ール装置の上方に凹凸ロールを配置することにより編地
に均一に力がかかった状態で編成が行われるため、形成
される編目の大きさも均一となり編地の端部と中央部の
編地長が等しくなり、その結果編地が良好に安定する。

【００１６】編成される編地５の組織によって編地の厚
さに厚薄が生じたときは、ニップ面２３における編地の
ニップ圧を修正する必要があり、そのときは可動アーム
１２の端部に係止しているスプリング１６を係止するピ
ン１５の位置を適宜変更する。尚、本発明装置は、前述
の如く、機台の左右にそれぞれ設けられているが、編成
する編地の幅に応じて位置を変更しなければならない。
そのときは固定アーム８の一部に螺合し、支持部材７に
先端を当接しているロックボルト３３を緩め、支持部材
７のガイドレール３４に係止している固定アーム８の係
止片３５の位置をずらすことにより編地引下げ装置６を
編地幅方向に任意に移すことが出来る。

【００１７】

【発明の効果】本発明装置は、以上詳述した如く構成し
たために、編地をその両端で編地幅を拡幅する方向に引
きつつ引き下げることが出来、編地を歪みを生ずること
なく、安定した拡幅作用を与えることが可能となった。
一対の拡幅ローラのそれぞれを編地端縁に相当する位置
に移動可能に設けたため、編地端縁に生ずる編地のカー
ルに対し、どのような編幅の編地であっても、編成する
編地の編幅に応じて拡幅ローラを効果的に作用させるこ
とが可能になった。

【００１８】また、編地をニップするロールがスクリュ
ー型であるために、編地の挾持が安定しており、そのた
めにも拡幅と布送りが安定する。また、両ロールを強さ
を調整することの出来る弾性手段で挾持しているために
編地の厚薄によりその弾性を変化させ、編地に適したニ
ップ力で拡幅でき編地に負担がかかることがない。

【００１９】更に、本発明装置では凹凸が嵌合する状態
で配置している。このように配置することにより編地を
屈曲した状態でその凹凸間に保持するので螺旋溝により
編地を確実に拡幅を行うことが可能となる。その一方で
凹凸ロールの表面の摩擦係数を少なくしているので、編
地に一定以上の力がかかると凹凸ロールがスリップする
ので編地に無理な力がかからない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明装置の実施例を示す縦断面図である。

【図２】同じく一部省略した状態の正面図である。

【図３】拡幅ローラの平面図である。

【符号の説明】

３ 歯口部 ５ 編地 １６ スプリング １７，１８ 拡幅ローラ ２１ 凹部 ２２ 凸部 ２３ ニップ面

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 歯口部下部の編地垂下軌跡にニップ面を
   位置させ、編地をその両側端においてニップする両位置
   に、それぞれ、制御可能なモーターにより駆動される対
   のスクリュー型の拡幅ローラを、針床の長手方向の任意
   の位置に移動可能に、かつ、各ローラの螺旋の周回方向
   を逆にして凹凸部が嵌合するよう強さを調整可能とした
   弾性手段により付勢して設けてなる、横編機における編
   地引下げ装置。
2. 【請求項２】 拡幅ローラの表面を、編地に対する摩擦
   係数の少ない表面とした請求項１記載の横編機における
   編地引下げ装置。