JP2536334B2 - パイプの円周溶接方法 - Google Patents

パイプの円周溶接方法

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JP2536334B2
JP2536334B2 JP3184766A JP18476691A JP2536334B2 JP 2536334 B2 JP2536334 B2 JP 2536334B2 JP 3184766 A JP3184766 A JP 3184766A JP 18476691 A JP18476691 A JP 18476691A JP 2536334 B2 JP2536334 B2 JP 2536334B2
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祐司 杉谷
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼管等の全姿勢溶接に
おいて、溶込み深さを一定に制御するパイプの円周溶接
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アーク溶接において、溶融池の形状は溶
接状態、溶接条件の適否を判断するうえで好個の判断材
料を提供するものであるから、カメラで溶融池形状を撮
影し、画像処理によってその溶融池形状の寸法を計測す
れば溶接状態、溶接条件を制御することが可能である
(特開平1−116404号)。しかし、同公報の技術
は全姿勢溶接に関するものではなく、また溶融池形状特
にその長さと溶込み深さとの関係については言及してい
ない。
【0003】一般に下向き、横向き等の溶接姿勢のとき
は比較的容易に溶融池形状を調整することができる。し
たがって、溶込み深さも一定に制御できる。しかしなが
ら、パイプラインや圧力容器等の全姿勢溶接では溶融池
形状の変化も大きいので調整が難しい。そのため通常
は、あらかじめ予備実験を行ってあらゆる溶接姿勢にお
ける溶接条件と溶込み深さの関係を求めておく必要があ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】溶接条件は母材の材質
・厚さ、開先の形状・状態など諸々の要因によって変化
するものであるから、予備実験で溶接条件と溶込み深さ
の関係を求めておくといっても容易なことではない。そ
こで、本発明者らはより簡単に上記の関係を把握するべ
く実験を行った結果、溶融池の長さ特に電極中心から溶
融池後端までの距離(溶融池後部長さと呼ぶ)が溶込み
深さと良好な相関関係を有していることを知見した。
【0005】本発明は、かかる知見に基づいてなされた
もので、全姿勢溶接において高精度の溶込み深さ制御
可能にしたパイプの円周溶接方法を提供することを目的
とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明に係るパイプの円周溶接方法は、パイプの円
アーク溶接において、溶融池をカメラにて撮像し、そ
の画像処理によって溶融池後部長さを計測し、その計測
値があらかじめ設定された基準値と等しくなるようにフ
ィラーワイヤまたは溶接ワイヤの溶着量を制御すること
により溶込み深さを一定に制御するものである。
【0007】
【作用】本発明者らの実験によると、溶接姿勢(時刻表
示で表している)と溶融池長さL,溶融池後部長さL2
,溶融池前部長さL1 ,溶融池幅W,溶込み深さPと
の関係は図4に示すようになっている。この図は図5に
示すパイプ(材質:SS41,外径300mm,肉厚6.
9mm)を全姿勢でTIG溶接をしたとき(溶接条件:電
流120A,電圧10V,溶接速度75mm/min )の溶
融池形状をビデオカメラで撮影し、その録画したビデオ
画面より実測した結果を示したものである。また、図6
に溶融池長さL,溶融池後部長さL2 ,溶融池前部長さ
L1 ,溶融池幅Wの定義を示す。すなわち、溶融池後部
長さL2 は当該溶接姿勢時における溶接トーチ1の電極
2の中心から溶融池3の後端までの距離である。溶融池
前部長さL1 は溶融池3の全長Lから溶融池後部長さL
2 を引いた値である。溶融池幅Wは当該溶接姿勢時にお
ける溶融池3の最大幅を示す。また図7に溶込み深さP
の定義を示す。図中、5は溶接ビードである。溶込み深
さPは溶接後パイプを各角度位置で切断し、母材の最大
溶込み深さを実測した値である。図4に見られるよう
に、溶融池長さLは溶接の全姿勢においてほぼ一定であ
るが、中でも溶融池後部長さL2 と溶込み深さPが非常
に近似した波形曲線の傾向を示していることがわかる。
これは、重力の作用により溶融池が0時から6時までは
下方へ前進し、6時から12時までは下方へ後退するか
らであり、これにともない入熱分布が変動するためと考
えられる。この実験結果より、溶融池後部長さL2を常
時把握しておけば、全姿勢溶接においても溶込み深さP
を常に一定に制御することが可能である。そこで、溶接
中溶融池をカメラで検出し、画像処理により溶融池後部
長さL2を計測し、それが基準値と等しくなるようにフ
ィラーワイヤまたは溶接ワイヤの送給速度を調整し、フ
ィラーワイヤまたは溶接ワイヤの溶着量を制御すれば、
溶込み深さを常に一定に制御することができる。
【0008】
【実施例】図1は本発明のパイプの円周溶接方法に適用
する制御系の一実施例を示すブロック図である。この実
施例はTIG溶接の場合を示しており、図において、1
は溶接トーチ、2は電極、3は溶融池、4はフィラーワ
イヤ、5は溶接ビード、10は溶融池3を撮像するCC
Dカメラで、溶接トーチ1の支持部材(図示せず)に取
り付けられている。11は画像処理装置、12は適性溶
融池後部長さL0 (基準値)を設定する設定器、13は
溶融池後部長さL2 の計測値と基準値との偏差を求める
比較器、14はフィラーワイヤ送給装置である。
【0009】この実施例においては、まず、溶融池3の
形状を常時CCDカメラ10により撮像する。この像は
画像処理装置11に送られ、画像処理によって溶融池長
さLを検出する。例えば、図2の(a)に示すような溶
融池画像の輝度分布21を得、これを微分することによ
り同図の(b)に示すように両端及び電極位置にピーク
波形22,23,24が出るので、電極位置のピーク波
形23から後端のピーク波形24の間の画素数を計測す
ることにより溶融池後部長さL2を求めることができ
る。同様に溶融池長さL及び溶融池前部長さL1 も計測
できる。しかし、ここでは溶融池後部長さL2 が重要で
あるので、溶接の全姿勢についてこの長さL2 のみを特
に正確に計測すればよい。このようにして計測された溶
融池後部長さL2 の計測値は比較器13に送られ、この
比較器13において設定器12からの基準値と比較され
る。そして、溶融池後部長さL2 の計測値が基準値より
大きい場合は、比較器13はその偏差を零にするように
フィラーワイヤ送給装置14へ出力し、フィラーワイヤ
送給装置14の送給速度を上げ、フィラーワイヤ4の添
加量を多くすることによって母材の溶込み量を下げる。
逆に後部長さL2 の計測値が基準値より小さい場合は、
フィラーワイヤ送給装置14の送給速度を下げ、フィラ
ーワイヤ4の添加量を少なくすることによって母材の溶
込み量を上げる。このようにフィードバック制御によっ
て溶接の全姿勢について常に溶融池後部長さL2 の計測
値が基準値と等しくなるようにように制御し、溶込み深
さPを常に一定に制御する。
【0010】本発明は、溶接トーチ1の形式が上記実施
例のように非消耗式電極の場合に限らず、消耗式電極の
場合(図3参照)にも適用できるものであり、この場合
には溶融池後部長さL2 に応じて溶接ワイヤ6の溶着量
を調整するものである。なお、図中、7はシールドガス
ノズルである。また、フィラーワイヤ4や溶接ワイヤ6
の溶着量を制御するには、通常は溶接電流を一定にして
ワイヤ送給速度のみを調整するが、溶接電流及びワイヤ
送給速度の双方を制御するようにしてもよい。
【0011】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、溶接の全
姿勢について溶込み深さとの間に良い相関関係を持つ溶
融池後部長さを知見し、この溶融池後部長さを計測する
ことにより溶込み深さを常に一定に制御するようにした
ものであるから、全姿勢溶接を伴うパイプの円周溶接に
おいて溶込み深さ制御を簡単かつ高精度に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパイプの円周溶接方法における溶込み
深さ制御系の一実施例を示すブロック図である。
【図2】溶融池後部長さの計測のための信号処理方法を
示す説明図である。
【図3】消耗式電極の場合の説明図である。
【図4】溶接姿勢と溶融池長さ、溶融池後部長さ、溶融
池前部長さ、溶融池幅、及び溶込み深さとの関係を示す
線図である。
【図5】溶接姿勢の定義を示す説明図である。
【図6】溶融池長さ、溶融池後部長さ、溶融池前部長さ
及び溶融池幅の定義を示す説明図である。
【図7】溶込み深さの定義を示す説明図である。
【符号の説明】
1 溶接トーチ 2 電極 3 溶融池 4 フィラーワイヤ 5 溶接ビード 6 溶接ワイヤ 10 CCDカメラ 11 画像処理装置 12 設定器 13 比較器 14 フィラーワイヤ送給装置

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パイプの円周アーク溶接において、溶融
    池をカメラにて撮像し、その画像処理によって電極中心
    から溶融池後端までの距離を計測し、その計測値が基準
    値と等しくなるようにフィラーワイヤまたは溶接ワイヤ
    の溶着量を制御することにより溶込み深さを一定に制御
    することを特徴とするパイプの円周溶接方法。
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