JP2535772B2 - 逆光電子分光用狭帯域高感度光検出器 - Google Patents

逆光電子分光用狭帯域高感度光検出器

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  • Measurement Of Radiation (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は逆光電子分光用狭帯域高
感度光検出器に係り、本発明の属する技術分野は電子技
術、光技術であって、高分解能逆光電子分光装置に使用
されるものである。
【0002】
【従来の技術】逆光電子分光用帯域フィルター型光検出
器はロ−・カットフィルター及びハイ−・カットフィル
ターの単純な組み合わせで構成され、最近開発された最
も性能のよい検出器ではロ−・カットフィルターとして
KCl薄膜を表面に蒸着したCu−BeOを第1ダイノ
ードに持つ光電子倍増管が、またハイ−・カットフィル
ターとしてSrF2 単結晶窓が採用され、図1のような
特性(中心エネルギー9.40eV、半値幅0.47eV)が用
いられている。
【0003】この帯域フィルター型光検出器は、構造が
単純で動作の安定性も高いという特徴をもつ。しかし、
得られる分解能はせいぜい0.47eV程度であった。
【0004】光電子分光と逆光電子分光はそれぞれ物質
中の占有準位と非占有準位を直接観測する手段であり、
互いに相補的な関係にある。現在光電子分光の標準的な
分解能は0.3 eV程度である。逆光電子分光スぺクトル
と光電子スぺクトルを用い、占有準位と非占有準位を同
程度の精度で調べることは物質研究にとって極めて望ま
しいことである。このことを実現するためには、帯域フ
ィルター型光検出器の帯域幅を0.3 eV程度まで狭くす
る必要がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】一般的に、高分解能を行なおうとするとそ
れに伴って検出感度が低下する。この帯域フィルター型
光検出器の場合も同様である。測定試料の表面が真空中
で不安定なものの場合、長時間信号を積算するような実
験は不可能になる。この場合は、分解能を犠牲にして、
検出感度を高めることが要求される。従来の帯域フィル
ター型光検出器で、実験中に帯域幅を変化させることは
不可能である。従って、高分解能を実用化するために
は、検出感度がある程度低くても分解能の高い検出器
と、感度の高い検出器を2つ装置内に組み込んだものを
考える必要がある。本発明では感度の高い光検出器を提
供することを目的とする。
【0006】光電子分光と逆光電子分光は占有、非占有
電子状態に関する情報を提供し、両者の情報を合わせて
初めて物質の電子状態の全容が明らかにされる。通常の
光電子分光の分解能は約0.3 eVで逆光電子分光の分解
能は約0.5 eV程度である。従って、両者のデーターを
比較検討する上で、同等の分解能にする必要がある。逆
光電子分光は、単色化した電子線を試料に照射し、試料
表面から放出される光の中である単一のエネルギー成分
に着目し、電子線のエネルギーの関数としてその光の強
度を観測することで、試料の非占有電子状態を知る方法
である。電子線のエネルギー幅は、電子源の熱電子の広
がりで決まり、約0.25eVである。一方帯域フィルター
型光検出器の帯域幅は、従来の最小なもので約0.47eV
であり最近の技術開発により0.35eVにまで向上してき
た。しかし、光電子分光と同程度の分解能にするために
は、光検出器の帯域幅を、電子線の幅0.25eV程度まで
狭くする必要がある。
【0007】一般に、分解能を高めると、検出感度が低
下する。逆光電子分光用帯域フィルター型光検出器の場
合も同様で、半値幅を小さくすると検出器の感度は低下
し、測定に多くの時間を必要とする。一方、半値幅を大
きくすると感度は向上し、短時間で測定が終了できる。
一般に、分解能を優先するか感度を優先するかは、測定
に要する時間の制約と、測定する物質が、逆光電子分光
測定を行う超高真空中で安定か否かで決められる。
【0008】逆光電子分光装置の分解能を支配的に決め
ているものは、帯域フィルター型光検出器の帯域幅であ
る。現在実用化されている帯域フィルター型光検出器に
は、光電子増倍管を用いた型とガイガーミュラー管を用
いた型の2通りがある。安定性、超高真空との相性性の
点で、光電子増倍管を用いた型が圧倒的に有利であり、
世界の多くの研究グループでこのタイプの検出器を用い
ている。本発明の光検出器もこれと同じ光電子増倍管型
に属する。この型の光検出器は安定性、超高真空性等の
利点がある一方、分解能に関して劣っていた。現在実用
化されている同タイプの光検出器の帯域幅は、最小で約
0.47eVである。
【0009】本発明ではこの帯域幅をきわめて簡単な手
法で約0.35eV程度まで改善し、本来狭帯域化で感度が
低下するところを従来の約1.5 倍に高めることを目的と
する。また帯域フィルターの中心エネルギーを従来より
も0.5 eV程高エネルギー側に移動させたことで、従来
よりも高いエネルギーの電子を利用できるようになり、
性質のよい電子線を用いることを可能にした。従って本
発明は分解能、感度の改善の他に、電子銃を含めた装置
全体の性能向上に寄与するようにしたものである。
【0010】本発明は感度の高い光検出器を提供するこ
とを目的とするもので、逆光電子分光用帯域フィルター
型光検出器の半値幅を現在の0.47eVから0.3 eV程度
まで向上させると同時に、検出感度を向上させることを
目的としている。帯域フィルター型光検出器の分解能並
びに検出感度の向上は、高分解能逆光電子分光測定を可
能にし、あらゆる物質の評価に大いに貢献する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
【0012】本発明は、従来よりも高い分解能(通常の
光電子分光と同程度またはそれ以上)を実現しつつ、従
来よりも高い検出感度を実現する技術であり、実際の高
分解能実験で威力を発揮することが必要になる。
【0013】本発明によると、従来の光検出器をわずか
の改良により、従来の分解能より高い分解能を実現で
き、同時に検出感度を1.6 倍に向上させることが可能と
なる。本発明により従来よりも高い分解能での実験時間
を大幅に短縮でき、物性研究に大きいに貢献する。
【0014】本発明は、電子銃よりの電子線を試料に当
て、試料から放出された光を集光投射し、光検出を行う
逆光電子分光装置の光検出器において、前記光検出器の
光電子増倍管の前面にKCl薄膜を蒸着したCaF2
結晶窓を設け、前記光電子増倍管の第1ダイノードの表
面にKCl薄膜を蒸着したものより成り、前記光電子増
倍管の出力側を増幅器を介してパルス計数回路に接続
し、逆光電子分光用帯域フィルターとしての窓の透過
率、検出感度等の光吸収諸特性を測定するよう構成した
ことを特徴とする逆光電子分光用狭帯域高感度光検出器
にある。〔構成〕
【0015】本発明の具体例を以下図面について詳細に
説明する。図2は逆光電子分光装置の原理を示す概略図
であり、1は電子銃、2はそれより放射される電子線、
3は試料であり、電子銃1より放射された電子線2は試
料3に当り、試料から放出された光4が集光鏡5に当っ
て集光され、光検出器6に投射される。
【0016】図3は図2の光検出器6に組込まれる逆光
電子増倍管7の構成を示す。図3において、8はKCl
薄膜9を表面に150 Åの膜厚で蒸着したCaF2 単結晶
窓を示す。
【0017】図3に示す光4は図2の光検出器6に入射
される光と同じであり、KCl薄膜9及びCaF2 単結
晶窓8を通った光はソーラーブラインド型(HTV:R
−595 または相当品等)の光電子増幅管7のKCl薄膜
10を表面に1000Å蒸着した第1ダイノード11に入射す
る。
【0018】図2の光検出器6に入射した光4は、図3
に示すKCl薄膜9を被覆したCaF2 単結晶窓8を通
過する。CaF2 単結晶窓8の遮断エネルギーは10eV
(室温)であり、結局図4(b)に示すように、約10e
V以上の光は、通過できないことになる。図4(a)は
CaF2 単結晶窓の検出感度、図4(b)はその透過
率、図(c)は中心エネルギー9.8 eVにおける検出感
度を示す。
【0019】本発明の主要構成は、 (a)ソーラーブラインド型光電子増倍管7 (b)表面にKCl薄膜9を1000Åの膜厚で蒸着した第
1ダイノード11 (c)KCl薄膜9を表面に150 Åの膜厚で蒸着したC
aF2 単結晶窓8である。
【0020】
【作用】構成要素(a)光電子増倍管7、(b)その第
1ダイノード11及び(c)のCaF2 単結晶窓8の表面
に蒸着されたKCl薄膜9の組み合わせはローカットフ
ィルターとして機能し、(c)のCaF2 単結晶窓8の
部分はハイ−カットフィルターとして機能する(図4
(a),(b),(c)参照)。構成要素(a),
(b)及び(c)の組み合わせにより、図4(c)のよ
うな中心エネルギー9.8 eV、半値幅0.35eVの特性を
もつ帯域フィルター型光検出器の機能が実現される。感
度も従来のSrF2 を用いた検出器に比べ、約1.6 倍程
向上したことを示している。
【0021】本発明の考え方は、 (1)従来の光検出器のバンドパス特性は、ローパスフィ
ルター(SrF2 単結晶窓)とハイパスフィルター(光
電子倍増管の感度の立ち上がり)を組み合わせることで
実現している。 (2)分解能を悪くしているのは、カットオフのなだらか
なハイパスフィルターの特性による。 (3)ハイパスフィルターの特性を決定しているのは、光
電子倍増管の感度特性で、この部分を改善すれば、帯域
幅は小さくなる。 (4)そこでKCl薄膜を第1ダイオードに蒸着した光電
子倍増管を用いることで、感度の立ち上がりが鋭くなり
かつ光電子の放出効率が向上し、感度も増大する。 (5)さらに、帯域幅を小さくするためにはさらにハイパ
スフィルター(光電子倍増管の感度特性)のカットオフ
特性を改善する必要がある。 (6)そのために、カットオフ近傍に鋭い吸収特性をもつ
薄膜を導入する必要が生じる。しかし、薄膜とはいって
も有限の吸収をもつため全体的に感度が低下してしま
う。 (7)吸収薄膜を導入するにあたって高い感度を実現する
必要がある。そのためには、光電子倍増管の感度の高い
領域、即ち従来よりも高いエネルギー領域で動作すれば
よい。 (8)本発明では従来のSrF2 窓をCaF2 窓にするこ
とで、ローパスフィルターのカットオフエネルギーを0.
5 eV高エネルギー側に移動させた。 (9)CaF2 のカットオフに対応した鋭い吸収をもつ薄
膜を導入する。されはKCl薄膜が最適である。 (10) KCl薄膜とCaF2 窓とKClを1000Å蒸着し
た光電子倍増管を組み合わせることで、従来のSrF2
窓を用いた検出器に比べ帯域幅が0.47eVから0.35eV
に狭くなり、感度は約1.6 倍高くなった。
【0022】通常、逆光電子分光装置では図2のよう
に、10-10 Torr台の超高真空装置内部で、低速電子
線2を試料3に照射し、試料3から放出された光4を、
大立体角集光鏡5で検出器6に導く。本発明の光検出器
6は集光された光4のうち9.8±0.12eVの光のみを検
出するように構成される。
【0023】本発明の光検出器では、KCl薄膜10をC
u−BeOより成る第1ダイノード11に蒸着することで
感度が向上するとともに、ローカットフィルターの特性
が改善され、従来のSrF2 窓のハイ−カットフィルタ
ーとの組み合わせで、従来の分解能0.47eVが実現され
てきた。
【0024】光検出器に関しては、従来のSrF2 の遮
断エネルギー(9.5 eV)より高い遮断エネルギー(10
eV)をもつCaF2 の方が好ましい。しかし、ハイ−
カットフィルターの遮断エネルギーを高エネルギー側に
移すことで帯域幅が広くなり、分解能が低下する。
【0025】そこで本発明では、CaF2 単結晶窓8に
KCl薄膜9を蒸着し、KCl薄膜9の光吸収特性を利
用して、ローカットフィルターの遮断エネルギーを高エ
ネルギー側に移すとともに、遮断特性を向上させたので
ある。
【0026】本発明では、CaF2 単結晶窓8のハイ−
カットフィルターとKCl光吸収薄膜10を用いたローカ
ットフィルターとの組み合わせにより、帯域幅を0.35e
Vまで向上させることができ、さらに検出感度を従来の
約1.6 倍に向上させることに成功した。
【0027】従来はローカット特性を第1ダイノード
(通常、表面を感度向上のための物質でコートしてい
る)の感度特性のみで決めていたのに対し、本発明では
新たな遮断要素を導入してローカット特性を改善してい
る点が新規特徴で、これが重要な構成要素である。以上
の発想のもとに本発明では、上述のような理由でCaF
2単結晶窓8を導入し、CaF2 単結晶窓8のハイ−カ
ット特性に最もふさわしいローカット特性を実現するK
Cl薄膜9を用いている。このKCl薄膜9は、ハイ−
カットフィルターとして用いているCaF2 単結晶窓8
の表面に直接蒸着して作成される。KCl薄膜の他に同
様の光吸収特性をもつRbF薄膜も本発明の光検出器に
利用可能である。
【0028】本発明の狭帯域高感度光検出器によると、 (1)KCl薄膜を第1ダイノードに蒸着した光電子増倍
管の光検出特性 (2)KCl薄膜を蒸着したCaF2 単結晶窓の光の透過
特性 (3) (1)と (2)を組み合わせて得られる光検出器の感度
特性 等の諸特性を狭帯域で高感度に光検出できる工業上大な
る効果がある。
【0029】
【実施例】本発明の逆光電子分光用狭帯域高感度光検出
器を具体的実施例について説明する。光検出器の構造
は、図5の通りである。図5は図2の光検出器6の具体
的構成の一例を示すもので、4は図3に示す入射光、8
はKCl薄膜9を1000Åの膜厚に蒸着したCaF2 単結
晶窓8を示し、7は光電子増倍管、11はKCl薄膜10を
1000Åの膜厚で蒸着した第1ダイノード11を示す。12は
光電子増倍管7の出力側に接続した増幅器、13はパルス
計数回路を示す。14は光電子、15は電極、16はコレクタ
ーを示す。
【0030】CaF2 単結晶窓8の光の透過特性はロ−
パスフィルターの特性を示し、励起子吸収のはじまる10
eV近傍で図4(b)に示すように吸収係数が急激に大
きくなり、このカットオフエネルギー(約10eV)以上
では、光が透過しなくなる。一方このカットオフエネル
ギー以下のエネルギーをもつ光に対してCaF2 単結晶
窓8は透明であり、透過特性がほとんど平坦になってい
る。
【0031】次にKCl薄膜10を1000Å蒸着した第1ダ
イノード11を有する光電子増倍管7の光検出特性につい
て説明する。第1ダイノード11はCuBe−Oでできて
おり、この第1ダイノード11の光電子収量は約6eV付
近から有限な値を示し、光エネルギーの増大とともに急
激に増加する。この第1ダイノード11の表面にKCl薄
膜10を蒸着すると、この光電子収量特性が変化し、図6
に示すように9eV付近より光エネルギーに対してより
急激に増大するようになる。これは、KCl薄膜10の光
電子収量特性を反映しているためである。KCl薄膜10
はイオン結晶でそれ自身絶縁体である。したがって、光
電子を取り出すと帯電してしまい、あまり厚くKCl薄
膜を蒸着すると収量が減少してしまうことになる。一方
あまりに薄いとKCl薄膜10の収量に対する寄与が小さ
く、光電子収量は減ってしまう。したがって最適なKC
l薄膜10の膜厚を適当に選定する必要があるわけであ
る。
【0032】KCl薄膜の膜厚を増やして光電子収量を
測定すると、図6に示すように1000Å付近までほぼ単調
に収量が増大するのがわかった。それ以上の膜厚では飽
和の傾向を示す。光電子収量の膜厚依存性をさらに詳し
く観測すると、8eV付近の光電子収量が1000Å付近で
小さくなることがわかった。したがって、1000Å膜厚の
KCl薄膜10を蒸着することで8eV付近の光電子収量
を減らし9eV以降で急激に増大する特性を実現するこ
とができる(図6参照)。KCl薄膜10の膜厚が500 Å
以下でも9eV以降で急激に増大し、KCl薄膜10の膜
厚が薄すぎてもよくない結果を示している。
【0033】第1ダイノード11からの光電子14は複数段
の二次電子倍増用の電極15で106 程度に増幅されコレク
ター16に集められ、増幅器(プリアンプ)12で増幅した
のちパルス計数回路13でその強度を観測する。この光電
子増倍管7の特性は、光エネルギーに対してバイパスフ
ィルターになっている。したがって、そのカットオフエ
ネルギーは、KCl薄膜の光電子収量の立ち上がりで決
まり図6に示すように約9eV付近に位置する。
【0034】KCl薄膜9を蒸着したCaF2 単結晶窓
8とKCl薄膜10を蒸着した光電子増倍管7の第1ダイ
ノード11との組合せで(すなわち、ロ−パスフィルター
とハイパスフィルターの組み合わせで)バンドパスフィ
ルターが実現でき、両者のカットオフエネルギーの差が
バンド幅になる。実際の特性は理想的なステップ関数状
のフィルター特性を示さず、カットオフ付近でなだらか
に変化するので、得られるバンドパス特性は、両者の立
ち上がり特性を反映して非対称なピーク構造を示す。
【0035】ロ−パスフィルターのカットオフ特性はエ
キシトンの吸収を用いているため、良質なCaF2 単結
晶窓では、シャープであるが、ハイパスフィルターのカ
ットオフはKCl薄膜のバンド間の遷移を反映した光電
子収量特性で構成されているため比較的なだらかになっ
てしまう。バンドパスの半値幅を小さくするためには、
ハイパスフィルターの特性を改善する必要がでてくる。
【0036】KCl薄膜の透過特性は、図7に示すよう
に9.5 eV付近に鋭いエキシトンの吸収特性をもち、こ
の吸収位置はロ−パスフィルターのカットオフよりもわ
ずかに低エネルギーに位置し、ハイパスフィルターのカ
ットオフの位置にあたる。本発明では、前述の光電子増
倍管7の第1ダイノード11にKCl薄膜10を組み合わせ
ることでカットオフの改善されたハイパスフィルターが
実現される。
【0037】
【発明の効果】本発明の逆光電子分光用狭帯域高感度光
検出器は、ハイ−・カットフィルターとしてCaF2
結晶窓が用いられ、ロ−・カットフィルターとして真空
紫外線のエネルギー領域以上の領域で感度をもつ光電子
増倍管を用いている。この基本構成に加えて、性能の向
上のために、光の通過領域のCaF2 単結晶窓8にKC
l薄膜9を被着し、KCl薄膜9に固有の吸収特性を用
いて、帯域フィルターの低エネルギー側の特性を改善し
ている。また、光電子増倍管7の第1ダイオード11の光
電面には感度を高めるためKCl薄膜10が蒸着されてい
る。本発明では、ここで用いられている、CaF2 単結
晶窓8及びKCl薄膜9及び第1ダイオード11のKCl
薄膜10の光吸収特性の温度依存性に着目し、帯域幅を狭
くし、かつ、感度を改善できるようにしたのが特徴であ
る。
【0038】本発明の逆光電子分光用狭帯域高感度光検
出器は、ハイ−・カットフィルターとしてCaF2 他mm
結晶窓が用いられ、ロ−・カットフィルターとして真空
紫外線のエネルギー領域以上の領域で感度をもつ光電子
増倍管を用いている。この基本構成に加えて、性能向上
のために、光の通過領域のCaF2 単結晶窓8にKCl
薄膜9を蒸着し、KCl薄膜9の固有の吸収特性を用い
て、帯域フィルターの低エネルギー側の特性を改善して
いる。また、光電子増倍管7の第1ダイオード11の光電
面には感度を高めるためにKCl薄膜10が蒸着されてい
る。本発明では、従来光検出器で用いられたハイ−・カ
ットフィルターであるSrF2 単結晶窓をCaF2 単結
晶窓にすることで、光電子倍増管10のより感度の高い領
域で動作する光検出器を構成し、さらにCaF2 単結晶
窓のカットオフエネルギー近傍に鋭い吸収をもつKCl
薄膜を導入することで、ロ−・カットフィルターの特性
を改善している。これらの組み合せで得られる特性は、
従来のSrF2 単結晶窓を用いた光検出器よりも帯域幅
は小さくなり、感度は逆に向上した。従来の帯域フィル
ター型光検出器の単結晶窓をKCl薄膜を150 Å蒸着し
たCaF2 窓にする簡単の変更だけで、感度、帯域幅が
同時に向上させることができるのが本発明の特徴であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は従来の逆光電子分光用帯域フィルター型
光検出器の特性図である。
【図2】図2は本発明の逆光電子分光用帯域幅可変光検
出器の原理を示す概略図である。
【図3】図3は本発明の光検出器の光電子増倍管を用い
た実施の一例を示す原理説明用構成配置図である。
【図4】図4(a),(b),(c)は本発明光検出器
の窓の検出感度及び透過率のエネルギー依存性を示す特
性図である。
【図5】図5は本発明の光検出器の具体的構成を示す原
理説明用図である。
【図6】図6は本発明光検出器の500 Å,1000Å,1500
Åの各膜厚のKCl薄膜の蒸着による光電子収量特性図
である。
【図7】図7は本発明光検出器のCaF2 単結晶窓とK
Clを蒸着した光電子増倍管の第1ダイノードとを組み
合わせた非対称なピーク構造を示すバンドパスフィルタ
ー特性図である。
【符号の説明】
1 電子銃 2 電子線 3 試料 4 反射光 5 集光鏡 6 光検出器 7 光電子増倍管 8 KCl薄膜を被着したCaF2 窓 9,10 KCl薄膜 11 第1ダイノード 12 増幅器 13 パルス計数回路 14 光電子 15 電極 16 コレクター

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子銃よりの電子線を試料に当て、試料
    から放出された光を集光投射し、光検出を行う逆光電子
    分光装置の光検出器において、前記光検出器の光電子増
    倍管の前面にKCl薄膜を蒸着したCaF2 単結晶窓を
    設け、前記光電子増倍管の第1ダイノードの表面にKC
    l薄膜を蒸着したものより成り、前記光電子増倍管の出
    力側を増幅器を介してパルス計数回路に接続し、逆光電
    子分光用帯域フィルターとしての窓の透過率、検出感度
    等の光吸収諸特性を測定するよう構成したことを特徴と
    する逆光電子分光用狭帯域高感度光検出器。
JP6053822A 1994-03-24 1994-03-24 逆光電子分光用狭帯域高感度光検出器 Expired - Lifetime JP2535772B2 (ja)

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