JP2529856B2 - 光半導体素子 - Google Patents

光半導体素子

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Description

【発明の詳細な説明】 (発明の技術分野) 本発明は、光の進行方向に沿って光強度分布が不均一
な光半導体素子に関するものである。
(従来技術とその問題点) 通常、半導体レーザ,光増幅素子等の光半導体素子は
光の進行方向に均一な密度で活性層に電流が供給されて
いるが、動作時の活性層内部の光強度は光の進行方向に
不均一な分布をもっている。この光の進行方向における
光強度分布の不均一性は、特に、レーザ内部に波長選択
性に優れた位相シフト付回折格子を内蔵している位相シ
フト型分布帰還形半導体レーザ(以下「位相シフトDFB
レーザ」と称す)や両端面の反射率をほぼ零にした進行
波形光増幅素子において、顕著である。
第1図(a)は、従来の非対称4分の1波長シフトDF
Bレーザの断面模式図である。
この従来例では、n型In P基板1上に、n型InGaAs P
導波路層2,InGaAs P発光層3,p型InGaAs Pバッファ層4,p
型In Pクラッド層5が積層され、n型InGaAs P導波路層
2の膜厚を周期的に変化せさた4分の1波長分の位相シ
フト9を有する回折格子8で、光の進行方向に沿う実効
的な周期的屈折率変化を設けることによってレーザ領域
30を形成している。4分の1波長シフト9は、前方出力
100を後方出力102に比べて大きくなるように、レーザ領
域30の中心よりも若干前方出力100側に偏移してある。
一方、発光層3の両端側には発光層3の禁制帯幅より大
なる半導体層であるp型In Pクラッド層5、およびn型
In P層6で埋め込まれており、窓領域31が形成されてい
る。さらに、レーザ領域30及び窓領域31上に電極とのオ
ーミック接触形成用のp型InGaAs Pキャップ層7があ
る。20,21は電極であり、50,51はレーザ領域30用の電源
と抵抗を示す。100は前方出力のレーザ出力光(以下
「前方出力光」と称す)、101は後方出力のレーザ出力
光(以下「後方出力光」と称す)である。10は電極との
接触抵抗を軽減するための亜鉛拡散領域である。
第1図(b)は、同図(a)の発光層の光の進行方向
における光強度分布を示したもので、4分の1波長シフ
ト9部で、光強度は最大となり、前方出力光100側の端
面でも大きな値となっている。
このように、光強度に不均一な分布をもつ場合、発光
層に注入されるキャリア密度は光の進行方向に均一であ
るが、光強度の強い部分では、より多くのキャリアが誘
導放出により消費されるため、その部分でのキャリア密
度が相対的に減少し、その結果キャリア密度は光の進行
方向に沿って光強度分布とは逆の不均一な分布をもつこ
とになる。一方半導体の屈折率は内部のキャリア密度に
よって変動し、キャリア密度が高い(低い)と屈折率は
減少(増大)する。従って、不均一なキャリア密度分布
によって、屈折率も分布をもつことになる。第1図
(c)は、同図(a)の光の進行方向におけるキャリア
密度分布(実線)および屈折率分布(破線)をそれぞれ
示したものである。この現象は軸方向空間的ホールバー
ニングによる屈折率変動の呼ばれ理論的検討がすでに行
われている(電子情報通信学会研究会OQE86−7)。そ
れによれば光の進行方向に屈折率分布があると、単一波
長動作の指標となる発振しきい利得差が、注入電流の増
加するに伴って変化することが報告されている。この問
題を避けるために、光の進行方向における光強度分布が
平坦となるような最適な導波路構造が提案されている。
具体的には、シフト位置が中央にある4分の1波長シフ
トDFBレーザの場合、回折格子8による光のフィードバ
ック量を表わす規格化結合係数κLを1.25程度とする
と、光の進行方向の光強度分布は最も平坦となる。しか
し、素子製作上、回折格子8の深さや形状によって定ま
る規格化結合係数κLを再現性良く制御することが難し
いことや、規格化結合係数κLを規定されることによっ
てレーザ設計の自由度が減るという問題があった。
さらに、非対称4分の1波長シフトDFBレーザのよう
に、光強度分布が非対称である場合には、どのような規
格化結合係数κLにおいても光強度分布は、平坦にはな
らないため、注入電流を増加させていくと、光強度の強
い前方出力光100がホールバーニングのために飽和し易
く、かつ単一波長性が劣化するという問題があった。
第2図は、従来の非対称4分の1波長シフトDFBレー
ザの前方出力光および後方出力光と注入電流の関係であ
る。同図から明らかなように、高電流注入時には、後方
出力光(破線)は飽和していないのにもかかわらず、前
方出力光(実線)が飽和している。
以上のように、従来の光強度分布が光の進行方向によ
って不均一のDFBレーザではキャリア密度の変動によっ
て屈折率も変化するため、DFBレーザの主出力光が高出
力動作時に飽和し、かつ単一波長性が劣化してしまうた
め安定なレーザ出力が得られないという問題があった。
また、第3図(a)は従来の進行波形光増幅素子の断
面模式図である。この従来例では、n型In P基板1上
に、n型InGaAs P導波路層2,InGaAs P活性層3′,p型In
GaAs Pバッファ層、p型In Pクラッド層5および電極と
のオーミック接触形成用のp型InGaAs Pキャップ層7が
積層されており、20,21は電極であり、50,51は電源と抵
抗である。10は電極との接触抵抗を軽減するための亜鉛
拡散領域であり、両端面には、無反射コーティング膜22
が形成されている。102は入力光、103は出力光を示す。
第3図(b)は同図(a)の素子の低レベル入力時
と、高レベル入力時における活性層の光の進行方向に
おける光強度分布を示したもので、低レベル入力時に
は、光強度は光の進行方向に沿って、同一の利得で直線
的に増幅されていくが、高入力時には出力端面付近で利
得飽和を示す。これは、従来例では注入電流密度が光の
進行方向で一定であるため、光強度の大きい出力端面付
近で、キャリア密度が相対的に減少し、その部分の利得
が低下するためである。一方、光増幅素子に注入する電
流レベルは発振しきい値以下でなければならないため、
出力飽和を避けるために、むやみに注入電流を大きくす
ることはできない。
このように、従来の進行波形光増幅素子では軸方向空
間的ホールバーニングのため高レベル入力時に利得飽和
が生じ易いという問題があった。
上述のように、従来の光半導体素子は高出力動作時に
出力光が飽和してしまい、安定な出力特性が得られない
という欠点があった。
(発明の目的及び特徴) 本発明は上述した従来技術の欠点を解決するためにな
されたもので、高出力動作時にも出力光が飽和しにく
く、安定な出力特性を有する光半導体素子を提供するこ
とを目的とする。
本発明の特徴は光の進行方向に沿って不均一な光強度
分布特性のうち少なくとも最大の光強度分布を有する部
分における単位体積当たりの電気抵抗(以下、「電気抵
抗率」と称す)を予め変化させて構成したことにある。
(発明の構成及び作用) 以下に図面を用いて本発明を詳細に説明する。
なお、以下の説明では従来例と同一構成部分には同一
番号を付し、説明の重複を省く。
(実施例1) 第4図(a)は本発明による第1の実施例であり、第
1図と異なる点はn型In Pクラッド層5及びp型InGaAs
Pキャップ層7内に、光の進行方向に沿って不均一な密
度の亜鉛拡散領域11を設けて電気抵抗率を変化させたこ
とにある。
第4図(b)は、同図(a)の発光層3の光の進行方
向における光強度分布を示したもので、従来例と同一の
分布(第1図(b))をもつ。すなわち、4分の1波長
シフト9位置が、中央から前方出力光100側に偏移して
いるので、光強度は4分の1波長シフト9付近で最大と
なると同時に、全体の分布は、前方出力光100側の光強
度が増加している。第4図(c)の実線は本発明の特徴
である光の進行方向の亜鉛拡散密度分布を示したもの
で、亜鉛拡散分布は、光強度分布と類似の分布形状を有
している。亜鉛拡散密度をこのような空間的に制御する
には、拡散用マスク材(SiO2膜等)に適当なマスクパタ
ーン(点状,ストライプ,格子状等)で適当な密度の拡
散窓を形成することによって、簡単に実現できる。第4
図(c)の破線は、亜鉛拡散密度に対応した電気抵抗率
を示したものであり、亜鉛拡散密度と反比例の関係にあ
ることがわかる。すなわち、同図(b)の光強度分布と
同図(c)の電気抵抗率も反比例の関係となる。第4図
(d)の実線は、活性層3に注入される電流密度分布で
あり、電気抵抗率に応じた分布をもつ。従って、電気抵
抗率を光強度分布に対して反比例の関係となるように亜
鉛拡散密度を制御することにより、破線で示すように、
キャリア密度の光の進行方向の分布はほぼ均一となり、
空間的なホールバーニング現象は起きない。
第5図は、本実施例の前方および後方出力光と注入電
流の関係である。本発明により、高電流注入(高出力動
作)時においても前方出力光(高出力側)は飽和せず、
また、単一波長性が劣化することもなく、安定なレーザ
特性を実現できる。
(実施例2) 第6図(a)は本発明による第2の実施例である。実
施例1と異なるところは回折格子12には、4分の1波長
位相シフトがないこと及び発光層3の両端に窓領域はな
く、前方出力光100の端面側には無反射コーティング膜2
2、後方出力光101の端面側には高反射コーティング膜23
が形成されていること及び亜鉛拡散領域11′の亜鉛拡散
密度分布が異なっていることである。このようなDFBレ
ーザは、端面における回折格子8の位相によっては、必
ずしも単一波長発振をしない場合があるが、前方出力光
100と後方出力光101との比が大きくとれるため高出力の
主出力を取り出す場合に用いれば有望である。
第6図(b)は、同図(a)の光の進行方向における
光強度分布の一例であり、不均一な分布となっている。
第6図(c)は本発明の特徴である亜鉛拡散の密度分布
(実線)と、電気抵抗率分布(点線)を示したものであ
り、その結果、第6図(d)に示すような電流密度分布
(実線)となり、内部のキャリア密度分布(点線)をほ
ぼ均一にすることができ、ホールバーニングは起きな
い。その結果は、実施例1と同様に、高電流注入時にお
いても、前方出力光100が飽和することなく、安定なレ
ーザ動作が得られる。
(実施例3) 第7図は本発明による第3の実施例であり、電極20と
オーミック接触形成用のp型InGaAs Pキャップ層7との
接触面積を光の進行方向で不均一とした非対称4分の1
波長シフトDFBレーザの断面模式図である。実施例1と
異なるところは、電極20とp型InGaAs Pキャップ層7と
の間に部分的に大きさの異なる絶縁体膜24を複数個形成
し、電極20とp型InGaAs Pキャップ層との接触面積を光
の進行方向で変化させることによって、電気抵抗率を不
均一にしたことである。電気抵抗率の分布は、実施例1
の第4図(c)に示したのと同じ分布となるように接触
面積を部分的に制御している。本実施例の作用は第4図
の場合と同じである。
(実施例4) 第8図は本発明による第4の実施例であり、第3図
(a)の従来例の進行波形光増幅素子と異なる点は、p
型In Pクラッド層5及びp型InGaAs Pキャップ層7内
に、光の進行方向に沿って密度を変化させた亜鉛拡散領
域11″を設けて、電気抵抗率を変化させたことにある。
第8図(b)は、同図(a)の光の進行方向における亜
鉛拡散密度分布,電気抵抗率分布および電流密度分
布を示したもので、電流密度分布が、光強度分布と
類似の分布形状となるように亜鉛拡散密度を制御してい
る。
本実施例の効果は、実施例1と同様に軸方向ホールバ
ーニングの防止にあり、その結果第8図(c)に示すよ
うに、ある程度高レベル入力時′においても、出力端
面付近での利得の飽和を起こすことなく、広い入力レベ
ル範囲において直線性の良い利得を持つ光半導体増幅素
子の実現が可能となる。
以上のように本発明は光強度分布が光の進行方向に沿
って不均一なDFBレーザや光増幅素子等の光半導体素子
に対して、光強度分布と反比例の関係となるように電気
抵抗率を異ならしめることにより、キャリア密度分布を
ほぼ均一にし、高出力動作時においても出力光が飽和し
ない安定な出力特性を可能としたものである。
なお、上述の実施例1,2及び4では不純物濃度の分布
を変化させる手段として亜鉛拡散を用いて説明したが、
イオン注入を用いても良く、不純物も亜鉛に限定される
ことなくカドミウム,イオウ,シリコン等他の不純物を
用いても良い。また、不純物濃度の不均一分布はIn P基
板1内に形成しても良い。
また、上述の実施例1〜3では、回折格子8の形状が
一定なDFBレーザを例に取り説明したが、回折格子8の
深さ及び周期を連続的に変化させたDFBレーザ及びDBRレ
ーザ、あるいは実施例4の如く回折格子を用いない光増
幅素子等光の進行方向に沿って不均一な光強度分布を有
する光半導体素子全てに適用できる。
さらに、実施例1から3ではレーザ領域30の全領域に
わたりキャリア密度をほぼ均一にしなくとも、光強度分
布の特に強いところである4分の1波長シフト9の付近
またはレーザ領域30の端面部分の電気抵抗率を制御する
だけでかなりのレーザ出力特性の改善が図られる。同様
なことは実施例4についても言える。半導体材料として
InGaAs P/In P系を用いて説明したが、Al InGaAs/In P
系,Al GaAs/GaAs系などの他の半導体材料にも容易に適
用することができる。
(発明の効果) 以上説明したように、本発明は光半導体素子における
電気抵抗率を光の進行方向に対して変化させることによ
り、軸方向空間的ホールバーニングが起こるのを防ぎ、
高出力動作時にも出力飽和の少ない安定な出力特性を示
す光半導体素子が容易に実現できる効果がある。
従って、本発明による安定な高出力光半導体素子は、
光通信や光情報処理の分野で幅広く使用することがで
き、その効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)(b)(c)は従来の4分の1波長DFBレ
ーザの断面模式図と内部の光強度分布図及びキャリア密
度分布および屈折率分布図、第2図は従来のDFBレーザ
を用いて測定したレーザ出力レーザ電流特性図、第3図
(a)(b)は従来の光増幅素子の断面模式図及び光強
度分布特性図、第4図(a)(b)(c)(d)は本発
明による4分の1波長DFBレーザの断面模式図と内部の
光強度分布図,亜鉛拡散密度分布図,電気抵抗率分布
図,電気密度分布図およびキャリア密度分布図、第5図
は本発明の4分の1波長DFBレーザを用いて測定したレ
ーザ出力電流特性図、第6図(a)(b)(c)(d)
は本発明による第2の実施例によるDFBレーザの断面模
式図と光強度分布図,亜鉛拡散密度分布図,電気抵抗率
分布図,電流密度分布図およびキャリア密度分布図、第
7図は本発明による第3の実施例による4分の1波長DF
Bレーザの断面模式図、第8図(a)(b)(c)は本
発明による光増幅素子の断面模式図及び光強度分布特性
図である。 1……n型In P基板、2……n型InGaAs P導波路層、3
……InGaAs P発光層、3′……InGaAs P活性層、4……
p型InGaAs Pバッファ層、5……p型In P層、6……n
型In P層、7……p型InGaAs Pキャップ層、8,12……回
折格子、9……4分の1波長位相シフト、10,11,11′,1
1″……亜鉛拡散領域、20,21……電極、22……無反射コ
ーティング、23……高反射コーティング、24……絶縁体
膜、30……レーザ領域、31……窓領域、50……電源、51
……抵抗、100,101……光出力、102……入力光、103…
…出力光。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松島 裕一 東京都目黒区中目黒2丁目1番23号 国 際電信電話株式会社研究所内 (56)参考文献 特開 昭58−4995(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】活性層の光強度分布が光の進行方向に沿っ
    て不均一な光半導体素子において、該光半導体素子内部
    の電気抵抗率を該光強度分布特性のうち少なくとも最大
    の光強度分布を有する部分で低減し、光の進行方向に沿
    う注入電流密度が不均一にして内部のキャリア密度分布
    がほぼ均一になるように構成されたことを特徴とする光
    半導体素子。
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