JP2518074B2 - スクロ―ル形圧縮機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、冷凍装置等に使用されるスクロール形圧縮
機に関する。

（従来の技術） 一般に、この種スクロール形圧縮機は、スクロール同
士の摺動動作を円滑にすると共に渦巻体間に画成される
圧縮室をシールして機密性を保持するため、軸受部のみ
ならず、スクロールにも、油膜形成に必要な所定量の油
を供給してやる必要がある。

このため、従来、特開昭63−173888号公報に開示され
且つ第８図に示すように、駆動軸（Ｄ）の下端部に油ポ
ンプ（図示せず）を設けて、該油ポンプにより給油通路
（Ｔ）に汲上げる油を、横穴（Ｓ）を介して軸受部
（Ｂ）に供給すると共に、モータ（Ｍ）の上部に開口す
る給油口（Ｊ）を介してエアギャップ（Ｇ）を上昇する
吸入ガスに油を供給して、吸入ガスの流速にのせて油を
持ち上げ、油混入状態の吸入ガスをスクロールに吸入さ
せるようにしている。

（発明が解決しようとする課題） しかし、上記従来構造では、まず第１に、軸受部
（Ｂ）への給油と、吸入ガス即ちスクロールへの給油と
は一つの油ポンプに頼っているため、軸受部（Ｂ）への
給油を確保しながら、なおかつ吸入ガスに安定した所定
量の油を供給するのは困難で、スクロールひいては圧縮
室への給油量を精密に管理しがたい問題がある。

又、第２に、吸入ガスの流速にのせて油を持ち上げる
ようにしているため、例えば小容量機での運転やインバ
ータ対応機種で低速運転を行うような場合、吸入ガスの
流速が小さいため、圧縮室をシールするのに十分な油量
を確保することができず、漏れによる圧縮性能の低下を
招く問題があり、逆に大容量機での運転やインバータ対
応機種で高速運転を行うような場合、吸入ガスの流速が
大きいため、圧縮室に過剰に油が供給され、システム側
に過剰に油が流出する所謂油上がりが起こる問題があ
る。

本発明の目的は、軸受部と別にスクロール給油用の油
ポンプを独立して設けると共に、そのスクロールへの給
油口の位置を工夫することにより、精密で、しかも、吸
入ガスの流速にほぼ無関係に、圧縮室に所定油量を供給
できるスクロール形圧縮機を提供することにある。

（課題を解決するための手段） そこで、本発明では、上記目的を達成するため、吸入
ガスが開放される密閉ケーシング（４）の内部に、鏡板
（A,B）に渦巻体（a,b）を各々突設した第１及び第２ス
クロール（1,2）を配設して、前記各渦巻体（a,b）間に
圧縮室（３）を画成したスクロール形圧縮機において、
駆動軸（５）に、軸受部に油を汲上げる定容積型の第１
油ポンプ（８）と該第１油ポンプ（８）と独立した油吸
入路（66）と油吐出路（68）をもつ定容積型の第２油ポ
ンプ（９）とを設けて、前記圧縮室（３）における吸入
完了位置付近に給油口（７）を開口させ、この給油口
（７）を前記第２ポンプ（２）に連通させたのである。

（作用） 第２油ポンプ（９）から給油口（７）を介して圧縮室
（３）に油が供給される。この場合、前記第２油ポンプ
（９）は、軸受部を給油する第１油ポンプ（８）と独立
させて設けたため、軸受部への給油量にかかわらず、
又、軸受部の給油を阻害することなく、前記第２油ポン
プ（９）により汲上げられる油量を圧縮室（３）に供給
でき、しかも、供給油量は定容積型の第２油ポンプ
（９）の能力に依存しているため、吸入ガスの流速に依
存せず、かつ適量の油を安定的に供給することができ
る。

（実施例） 第１図に示すものは、吸入管（41）により吸入ガスが
開放される密閉ケーシング（４）の内部上方に、鏡板
（Ａ）に渦巻体（ａ）を突設した固定側の第１スクロー
ル（１）と、鏡板（Ｂ）に渦巻体（ｂ）を突設した可動
側の第２スクロール（２）とを配設して、前記各渦巻体
（a,b）間に複数の圧縮室（３）を画成すると共に、前
記密閉ケーシング（４）の下方に、駆動軸（５）を結合
するモータ（50）を配設したものである。

前記駆動軸（５）は上部ハウジング（45）及び下部ハ
ウジング（46）に各々介装する上部軸受（47）及び下部
軸受（48）に回転自由に支持される。又、上端に設ける
ピン部（51）を第２スクロール（２）のボス部軸受（2
1）に嵌合し、更に、下端を後述する第１及び第２油ポ
ンプ（８）（９）を介してプレート形のスラスト軸受
（49）に支持している。

尚、前記第２スクロール（２）の裏面は、前記上部ハ
ウジング（45）の端面に形成されるスラスト受面（45
a）に支持され、上部軸受（47）と油通路（45b）を介し
て接続される油プール（45c）から給油するようにして
いる。

こうして、前記駆動軸（５）の回転に伴い、吸入管
（41）から密閉ケーシング（４）内に取入れた吸入ガス
を、各渦巻体（a,b）の外周に位置する吸入ポート（3
1）から圧縮室（３）内に吸入し、圧縮ガスを、第１ス
クロール（１）の中心部に設ける吐出穴（32）から隔壁
（33）で区画される上部吐出チャンバー（34）に吐出
し、吐出管（35）から外部に吐出するようにしている。

以上の構成で、前記駆動軸（５）の下部に、前記各軸
受（21）（47）（48）（49）等に底部油溜（42）から油
を汲上げる第１油ポンプ（８）と、該第１油ポンプ
（８）と独立した第２油ポンプ（９）とを設けると共
に、前記圧縮室（３）における吸入完了位置に給油口
（７）を開口させて、該給油口（７）を送油管（71）を
介して第２油ポンプ（９）の油流出口（95）に連通させ
る。

具体的には、前記第１油ポンプ（８）及び第２油ポン
プ（９）は、第２図に明示するように、２連式の定容積
型ポンプで構成する。

すなわち、上部に駆動軸（５）に圧入するボス部（6
1）を中間部に鍔部（62）を下部に駆動軸（５）に対し
偏心する偏心部（63）をもつローラ（６）を形成し、前
記偏心部（63）に、第３図に示すように、リング（89
a）の中心部に半円弧２つを直線で結んだ長穴（89b）
を、又、その短軸側外方に下部ハウジング（46）に設け
る摺動溝（46c,46c）に係合する一対のキー（89c,89c）
を各々備える第１及び第２ヨーク（81）（91）を嵌合
し、かつ、これら２つのヨーク間にローラ（６）に圧入
した円環形の仕切板（64）を設けて、下部に第１ポンプ
室（80）を上部に第２ポンプ室（90）をそれぞれ画成す
る。そして、スラスト軸受（49）の中央に開口する連通
穴（49a）を介して底部油溜（42）に臨むローラ下面（6
0）と、第１ポンプ室（80）との間にこれらを連通する
第１油吸入路（65）を、又、前記下面（60）と第２ポン
プ室（90）との間に同第２油吸入路（66）をそれぞれ形
成する。又、第１ポンプ室（80）における反油吸入路開
口側を、駆動軸（５）内に形成する給油通路（51）に開
放する第１油吐出路（67）を形成すると共に、前記第２
ポンプ室（90）における反油吸入路開口側を、駆動軸
（５）に形成する横穴（55）並びに下部軸受（48）に形
成する環状溝（48a）及び横穴（48b）を介して油流出口
（95）に接続する第２油吐出路（68）を形成する。

こうして、前記駆動軸（５）の回転により、第１及び
第２ポンプ室（80）（90）に、一回転中これらポンプ室
容積に相当する定量の油を吸入し、第１図に示すように
第１ポンプ室（80）から前記給油通路（51）を経てこれ
に連続する偏心給油通路（52）及び横穴（53）（54）を
介して、前記各軸受（21）（47）（48）（49）等に油を
供給すると共に、第２ポンプ室（90）から前記前記送油
管（71）に油を供給するようにしている。

一方、前記圧縮室（３）における吸入完了位置付近、
即ち第４図に示すように第２スクロール（２）の矢示の
動きで最外周部側の圧縮室（３）が吸入ポート（31）に
遮断されて吸入動作が完了される位置の近くに、第１ス
クロール（１）の鏡板（Ａ）に形成する貫通穴（70）の
端部となる給油口（７）を開口し、この給油口（７）に
前記給油管（71）を接続する。

以上のように、スクロールに油を供給する第２油ポン
プ（９）を、軸受（21）（47）‥‥に油を供給する第１
ポンプ（８）とは独立して設けたから、送油管（71）を
介して給油口（７）には、軸受部に供給される油量にか
かわらず、又軸受部への給油量を阻害することなく安定
した油量を供給できることになる。しかも、この第２油
ポンプ（９）は、第１油ポンプ（８）と同様、駆動軸
（５）の一回転に汲上げられる油量がポンプ室容積に相
当する一定量となるから、更に安定的な給油が可能とな
る。

又、前記各スクロール（１）（２）への給油口（７）
が、圧縮室（３）の吸入完了位置付近に開口されている
ため、第２油ポンプ（９）で汲上げられた油は速やかに
圧縮室内に入る。すなわち、第４図に示す状態前は、最
外周部の圧縮室（３）は給油口（７）に開かれて、該給
油口（７）から油の供給を受け、第４図の状態以降は、
油混入状態のガスが閉じ込められて各渦巻体（ａ）
（ｂ）の側面や端面を油で濡らしながら圧縮動作が行わ
れるのであり、この場合、供給油量は第２油ポンプ
（９）の能力に依存し、しかも該第２油ポンプは一回転
に汲上げられる油量がポンプ室容積に依存する定容積型
であるため、吸入ガスの流速に依存せず、かつ、適量の
油を圧縮室に供給できるのである。

尚、前記給油口（７）は、第４図中想像線で示すよう
に、およそ180゜変位した状態にもう一つ設けて、これ
ら一対の給油口（７）（７′）を第２油ポンプ（９）に
連通するようにしてもよい。

また、第１スクロール（１）側に給油口を設ける他、
第５図に示すように第４図の関係と同様の位置で、可動
側の第２スクロール（２）側に給油口（７）（７′）を
設けてもよい。この場合、第６図にも示すように、前記
給油口（７）（７′）は第２スクロール（２）の裏面を
支持するスラスト受面（45a）に設けられた油プール（4
5c）に第２スクロール（２）の旋回運動中、連続的に或
は間欠的に連通させると共に、油プール（45c）へは油
通路（45b）を介して上部軸受部に連通させて給油を行
う。又、給油口（７）（７′）と油プール（45c）の連
通方法としては、油給油口（７）（７′）を形成する貫
通穴（700）（700′）に連続させて径大な座グリ部（7
5）（75′）を設け、これを前記油プール（45c）に連通
し、より効率よく給油を行うことも可能である。

このように、給油口（７）（７′）を第２スクロール
（２）側に設ける場合、圧縮室（３）への給油経路が、
第２スクロール（２）のスラスト受面（45a）への給油
経路を兼ねることになるが、このスラスト受面（45a）
への油循環量は比較的小さく、駆動軸（５）側の軸受
（21）（47）（48）（49）とは独立とされるため、上記
同様、圧縮室（３）に安定した給油が行えるのである。

更に、給油口は、２つのスクロール（１）（２）の両
方に設けてもよい。

又、前記給油口（７）は、第１又は第２スクロールの
鏡板（Ａ）（Ｂ）に設ける他、第７図に示すように、第
１スクロール（１）の外周部に突設する突起（11）に、
前記送油管（71）を固定して、該送油管（71）の先端部
である給油口（７″）を上記同様、前記圧縮室（３）の
吸入完了位置付近に開口するようにしてもよい。

又、第１スクロール（１）を固定側、第２スクロール
（２）を可動側としたが、両方が可動し、相対的に公転
動作を行う形式の圧縮機にも適用できるのことは云うま
でもない。

（発明の効果） 以上、本発明では、駆動軸（５）に、軸受部に油を汲
上げる定容積型の第１油ポンプ（８）と該第１油ポンプ
（８）と独立した油吸入路（66）と油吐出路（68）をも
つ定容積型の第２油ポンプ（９）とを設けて、圧縮室
（３）における吸入完了位置付近に給油口（７）を開口
させ、この給油口（７）を前記第２ポンプ（２）に連通
させたから、軸受部への給油量とは無関係で、しかも、
吸入ガスの流速とはほぼ無関係に、前記第２油ポンプ
（９）で汲上げられる量の安定した給油が行え、スクロ
ール（１）（２）への給油量を精密に管理できると共
に、小容量機や低速機での給油不足や大容量機や高速機
での過剰給油が防止できるのである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明圧縮機の第１実施例を示す断面図、第２
図は同油ポンプ部分の要部断面図、第３図はそのIII−I
II端面図、第４図は給油口周りの要部平面図、第５図及
び第６図は第２実施例を示す図面、第７図は第３実施例
を示す要部断面図、第８図は従来例の断面図である。 （１）……第１スクロール （２）……第２スクロール （３）……圧縮室 （４）……密閉ケーシング （５）……駆動軸 （66）……油吸入路 （68）……油吐出路 （７）……給油口 （８）……第１油ポンプ （９）……第２油ポンプ （Ａ）（Ｂ）……鏡板 （ａ）（ｂ）……渦巻体

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】吸入ガスが開放される密閉ケーシング
   （４）の内部に、鏡板（A,B）に渦巻体（a,b）を各々突
   設した第１及び第２スクロール（1,2）を配設して、前
   記各渦巻体（a,b）間に圧縮室（３）を画成したスクロ
   ール形圧縮機において、駆動軸（５）に、軸受部に油を
   汲上げる定容積型の第１油ポンプ（８）と該第１油ポン
   プ（８）と独立した油吸入路（66）と油吐出路（68）を
   もつ定容積型の第２油ポンプ（９）とを設けて、前記圧
   縮室（３）における吸入完了位置付近に給油口（７）を
   開口させ、この給油口（７）を前記第２ポンプ（２）に
   連通させたことを特徴とするスクロール形圧縮機。