JP2516543Y2 - 偏心チャック - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は基準穴を有する非対称形状物（以下ワークと
称す）において、旋盤等を用いて上記基準穴に対し直角
な面の切削加工を行なう際に使用される偏心チャックに
関するものである。

従来、上述したワークの面加工を行なう場合、外周を
偏心量が出来る限り少なくなるようにチャッキングする
とか、又は保持用の専用治具を用いてチャッキングする
方法が一般的に採られていた。

しかし、前者の方法では、チャッキングの段取り時間
が長くなるばかりでなく、かなりの熟練を要する。ま
た、後者の方法では、取付治具がワーク毎に異なり経済
的でない。更に、両者とも非対称形状物のため、加工時
にダイナミックバランスが崩れたり、ワークの回転中心
から離れた部分の線速度が大きくなってビビリが発生
し、面精度が粗くなったりする欠点を有している。

尚、ワーク固定のフライス加工による場合は、取付治
具が高価となり、加工費が旋盤に比して相当高くなって
実用的でない。

本考案は、このような欠点を解消し、経済的で段取り
時間も短く、生産性の高い偏心チャックを提供するもの
である。

以下、本考案の実施例を第１図〜第４図に基づいて説
明する。

本考案は説明を容易にするため、２個使いの内拡式チ
ャックについて述べる。

第１図は、本考案に係る偏心チャックの正面図で、AF
線より上の半分は面板10を取り除いた内部を示してい
る。第２図は、第１図のABCDEF断面のAF視断面図、第３
図は、第１図のGH視断面図である。第４図は、ワーク取
付状態を示す正面図である。

図中、１はドローバーで、このドローバー軸端にボル
ト等によって固着されるチャック作動盤４は、第２図に
示すように、その前端フランジ部分において、ピストン
リング６と多数の取付ボルトを介して一体に固定されて
いる。このピストンリング６はホルダー２の端面に連結
した筐体３内に摺動自在に収納されている。従って、ド
ローバー１の軸方向（第２図上下方向）への変位に対
し、ピストンリング６はチャック作動盤４と一体となっ
て筐体３内を、こじられることなく円滑に連動動作す
る。一方、上記ピストンリング６の尾端には、第３図示
のようにチャックレール５が取付けられている。このチ
ャックレール５には、その長手方向（第２図示、紙面の
表裏の方向）に案内溝Ｍが刻設されていて、この案内溝
Ｍには後述する円錐形マンドレル９に螺合した引き金具
11の段付部分が摺動可能に係合している。また上記引き
金具11の段付部分には、クッション材７が固定ボルト12
により配置されている。前記筐体３の前端面には、面板
10が固定され、この面板には長穴Ｌが上記案内溝Ｍと平
行して刻設されている。そして、この長穴Ｌには、前記
円錐形マンドレル９を受嵌し、円錐形マンドレル９の軸
方向移動により強制的に拡開させられるチャック片を備
えたチャック本体８の後端小径軸部分が摺動可能に臨ん
でいる。尚、チャック本体８は面板10上の所望位置にボ
ルト13により全体の回転中心Ｐに対し、或る所定量だけ
偏心した状態で固着される。尚、チャック本体８が、面
板10の長穴Ｌに案内されて面板上の任意の位置へ移動さ
れる時には、このチャック本体８の動きに追従して、前
記引き金具11もチャックレール５の案内溝Ｍに案内され
て一緒に移動することになる。

今、図示しない駆動源によってドローバー１が第２図
示の状態から下方に引っ張られると、その移動量に応じ
て、チャック作動盤４、ピストンリング６およびチャッ
クレール５はそれぞれ一体となって下動する。この移動
によって円錐形マンドレル９はクッション材７を介して
引き金具11によって引っ張られるため、チャック本体８
のチャック片が押し拡げられることになる。

本考案は、上記拡開力を利用してワークＷをその基準
穴Ｎの内側から保持せんとしたものである。

第４図は２個の同種ワークW,W面の面加工を同時に行
なわんとした代表例を示すもので、この場合面板10上に
おけるチャック本体８の取付位置は、本装置全体の回転
中心Ｐに対し、所定の等間隔位置に予め配置されてい
る。従って、各ワークＷは、各チャック本体８のチャッ
ク片を介して、その基準穴N,Nが点Ｐに対し対称位置、
即ち、等間隔位置に必然的に来るようローディングされ
ることになる。そして、各ワークW,Wの一部を相手側ワ
ークの一部に互いに当接Q,Q′させながらドローバー１
を作動すれば、前述した態様のもとにチャック本体８の
チャック片がクッション材７を介して押し拡げられ、各
ワークは確実にチャッキングされることになる。

本考案は、上述したように、チャッキングのための基
準穴N,Nが回転中心Ｐに対し対称位置にくるため、重量
バランスが良く、且つ断続切削が少ないことや、ワーク
剛性が高められる結果、旋削によるビビリ発生が少なく
精度の高い加工が期待できるばかりでなく、バイトの送
りストロークも少なくて済み、生産性の面でも大きなメ
リットを有する。

また、ワークＷの着脱は、ドローバーを引っ張るため
の駆動源（図示せず）を、例えば油圧等で作動させるた
めに押しボタン等の簡単な操作で出来るので、チャック
本体８の位置を１回セットしておけば、着脱以外の段取
り時間は全く不要となり、経済的効果は非常に大きい。

また、基準穴Ｎの加工精度には必ずムラがあり、更
に、チャック本体８にも製作精度にバラツキがある。こ
のため、仮に片方のワークのチャッキング力が正常値で
も、他方のワークのチャッキング力が不足するケースが
通常では起こり得るけれども、本考案によれば、円錐形
マンドレル９を引っ張るのにクッション材７を介在させ
たため、このクッション材７の圧縮による反力がチャッ
キング力にプラスされる結果、複数のチャック本体８を
備えた偏心チャックにおいて、各チャック片が確実にワ
ークを保持し、チャッキング力不足によるビビリの発生
を解消することが出来る。

尚、ワークＷの基準穴Ｎの大きさが変わった場合は、
チャック本体８の大きさを適宜変更すれば良く、またチ
ャック本体８の面板10上の位置は連続的に任意に設定で
きるので、いかなる形状のワークにも対応することがで
きる。

本実施例は、２個のチャック本体８を有する場合につ
いて述べたが、全く同様の考え方で、放射状に円を等分
割した半径上に３個またはそれ以上の複数個のチャック
本体８を装備できることは云うまでもない。

更に、非対称形状物で１個ずつ加工する場合にも、本
考案では任意の位置でワークを保持することができ、バ
イトのストロークを最小限に抑えることができる。この
場合、不要のチャック本体にはダミーのリングをはめて
おけば良い。

上記のように、本考案は、面板に対するチャック本体
の取付位置を自在に移動できるようにしたから、非対称
形状物を複数個同時にチャッキングでき、且つ品質を向
上させて経済的に加工し得ることができ、産業上有益な
効果がある。

また、本考案によれば、チャック片を拡開させるチャ
ック本体の円錐形マンドレルの引き金具と案内溝間にク
ッション材を介在させたから、複数のチャック本体を備
えた偏心チャックにおいて、ワークやチャック本体のバ
ラツキがあってもクッション材の圧縮による反力がチャ
ッキング力にプラスされ、チャッキング力不足によるビ
ビリの発生を解消することが出来る効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る偏心チャックの正面図で、AF線よ
り上は面板を取り除いた内部構造を示しており、第２図
は第１図のABCDEF断面のAF視側面図、第３図は第１図の
GH視断面の側面図、第４図は本考案のチャックにワーク
を取付けた正面図である。 １……ドローバー、２……ホルダー、３……筐体、４…
…チャック作動盤、５……チャックレール、６……ピス
トンリング、７……クッション材、８……チャック本
体、９……円錐形マンドレル、10……面板、11……引き
金具、12……固定ボルト、13……ボルト、Ｌ……長穴、
Ｍ……案内溝

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】筐体の前端面に装着される面板に長穴を刻
   設すると共に、上記筐体内に摺動自在に納めたピストン
   リングにチャック作動盤を備え、上記チャック作動盤は
   これに固設したドローバーによって筐体内をその軸方向
   に連動され、上記ピストンリングの尾端に取付けたチャ
   ックレールに、上記長穴と平行して走る案内溝を刻設す
   る一方、円錐形マンドレルを受嵌するチャック本体は、
   上記長穴に案内される面板上の任意の位置で固定できる
   ように形成すると同時に、上記円錐形マンドレルと一体
   に結合される引き金具は、上記案内溝に係合され且つチ
   ャック本体の移動位置に追従して移動出来るようにした
   ことを特徴とする偏心チャック。
2. 【請求項２】実用新案登録請求の範囲第１項記載の偏心
   チャックにおいて、円錐形マンドレルを受嵌するチャッ
   ク本体を面板の長穴上に複数個設け、上記各円錐形マン
   ドレルの各引き金具は、チャック作動盤に備えた案内溝
   にクッション材を介在させて係合したことを特徴とする
   偏心チャック。