JP2509396B2 - 赤外線撮像光学系 - Google Patents

赤外線撮像光学系

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は赤外線カメラに用いる赤
外線撮像光学系に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、周囲の温度が変化すると赤外線
撮像光学系の解像度に影響を及ぼす。温度が変化する
と、レンズ材料の屈折率変化、熱伸縮によるレンズ形状
変化、レンズ保持具の熱伸縮によるレンズ間隔変化等に
より、赤外線撮像光学系の結像位置が移動して、解像度
が劣化する(以下、これを熱収差と呼ぶ)。この熱収差
を抑制するためには、結像位置の移動を何等かの方法で
補正する必要がある。
【0003】例えば、レンズA及びレンズBから成る2
枚組の薄肉近接レンズを例にとって色収差及び熱収差の
補正について説明する。良く知られるように、薄肉近接
レンズの軸上色収差Δfは次式で与えられる。 Δf=f2 {1/(fAA )+1/(fBB )} (1) 但し、fA :レンズAの焦点距離 fB :レンズBの焦点距離 f :レンズAとレンズBの合成焦点距離 VA :レンズAの材料のアッベ数 VB :レンズBの材料のアッベ数
【0004】従って、色収差を補正する条件は、Δf=
0より、 fA ={(VA −VB )/VA }・f (2) fB ={(VB −VA )/VB }・f (3) となる。
【0005】次に熱収差について説明する。合成焦点距
離は次式で与えられる。 1/f=1/fA +1/fB =(nA −1)(1/RA1−1/RA2)+ (nB −1)(1/RB1−1/RB2) (4) 但し、nA :レンズAの材料の屈折率 nB :レンズBの材料の屈折率 RA1:レンズAの第1面の曲率半径 RA2:レンズAの第2面の曲率半径 RB1:レンズBの第1面の曲率半径 RB2:レンズBの第2面の曲率半径
【0006】温度変化による焦点距離の変化は、式
(4)を温度Tで微分して求められる。 ∂f/∂T=(f/fA2 (∂fA /∂T)+(f/fB2 ・ (∂fB /∂T) =(f/fA2 {−fA 2 (1/RA1−1/RA2) (∂nA /∂T)+fA αA}+ (f/fB2 {−fB 2(1/RB1−1/RB2) (∂nB /∂T)+fB αB } =−f2 [1/fA {(∂nA /∂T)/(nA −1)−αA }+ 1/fB {(∂nB /∂T)/(nB −1)−αB }] (5) 但し、αA :レンズAの材料の線膨張率 αB :レンズBの材料の線膨張率
【0007】ここで、色収差におけるアッベ数と同様に
熱アッベ数を VT =1/{(∂n/∂T)/(n−1)−α (6) と定義すると、式(1)と類似した式を得る。 ∂f/∂T=−f2 {1/(fATA)+1/(fBTB)} (7) 但し、VTA:レンズAの材料の熱アッベ数 VTB:レンズBの材料の熱アッベ数
【0008】従って、熱収差を補正する条件は、色収差
と同様に、 fA ={(VTA−VTB)/VTA}・f (8) fB ={(VTB−VTA)/VTB}・f (9) となる。
【0009】以上により、式(2)と式(3)、式
(8)と式(9)により、色収差と熱収差を同時に補正
する条件 VA /VTA=VB /VTB (10) が求まる。
【0010】図15は式(10)を満足する材料の組み
合わせを説明する図である。横軸をアッベ数、縦軸を熱
アッベ数としている。色収差と熱収差を同時に補正する
条件は、図15において、原点を通る直線上にある材料
の組み合わせを意味する。この場合、アッベ数の方が大
きい材料のレンズAは正の屈折力をもつレンズとなり、
レンズBは負の屈折力をもつレンズとなる。
【0011】また、図16は8〜12μm付近の波長に
おける代表的な赤外線透過材料のアッベ数と熱アッベ数
を示す図である。図からわかるように、式(10)を満
足すするような理想的な材料の組み合わせは存在しな
い。したがって、2種類の材料のレンズでは色収差と熱
収差とを十分に補正することは困難であり、3種類の材
料のレンズでこれを補正する必要が生じる。
【0012】図17は3種類の材料のレンズで構成され
た従来のこの種の赤外線撮像光学系を示すもので、この
図は、UNITED STATES PATENTS NO.4,679,891に示された
ものである。図において、1はセレン化亜鉛(ZnS
e)から成る第1レンズ、2は硫化亜鉛(ZnS)から
成る第2レンズ、3はゲルマニウム(Ge)から成る第
3レンズ、4は第1レンズ1、第2レンズ2、第3レン
ズ3を保持するレンズ保持具である。
【0013】上記第1レンズ1、第2レンズ2、第3レ
ンズ3及びレンズ保持具4から成るこの赤外線撮像光学
系は、撮像対象物から放射された8〜12μmの近辺の
波長の赤外線を集光して、上記撮像対象物の赤外線画像
を結像する。その後、ここでは図示していないが、上記
赤外線撮像光学系の結像位置に置かれた光電変換器で電
気信号に変換されて信号処理回路を会して表示装置に表
示されるようになされている。
【0014】硫化亜鉛に比べアッベ数が大きいセレン化
亜鉛から成る第1レンズ1は正の屈折力、第2レンズ2
は負の屈折力を持ち、各々の屈折力は一対のレンズの色
収差を補正すするように定められた組み合わせになって
いて、一対のレンズとしては正の屈折力を持つ。しか
し、温度が変化すると、この一対のレンズの屈折力が変
化する。その方向は、温度が上昇すると屈折力が大きく
なる方向である。
【0015】他方、第3レンズ3の材料であるゲルマニ
ウムは、熱アッベ数が小さく、上記第1レンズ及び第2
レンズ2の材料に比べて極めてアッベ数が大きい。従っ
て、色収差が無視できるほど小さいので、赤外線撮像光
学系全系での色収差は、上記一対のレンズの色収差を補
正するのみで十分に補正されている。また、第3レンズ
3の屈折力は上記一対のレンズの屈折力の温度変化を打
ち消すような負の屈折力に定められており、赤外線撮像
光学系全系での熱収差を補正している。以上のように、
この赤外線撮像光学系は色収差と熱収差が補正されてお
り、温度が変化しても結像位置がほとんど移動しないの
で、解像度が劣化しないようになっている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】従来の赤外線撮像光学
系は以上のように構成されているので、第3レンズ3の
材料として、色収差が無視できるほどアッベ数が大き
く、かつ熱アッベ数が小さい特殊な材料を用いなければ
ならなかった。しかし、このような材料は、赤外線波長
域では8〜12μm付近におけるゲルマニウム等限られ
た材料しかなく、材料の選択範囲が制限されるという問
題点があった。
【0017】また、2つの材料のレンズが正の屈折力、
残る1つの材料のレンズが負の屈折力という構成にしな
ければならないので、設計上の制約があるという問題点
があった。
【0018】第1発明は、上記のような問題点を解決す
るためになされたもので、上記のような特殊な極めて低
分散の材料を用いることなく、それぞれ異なる一般的な
比較的に高分散の材料から赤外線撮像光学系を構成する
ことにより、設計の自由度を大きくすることを目的とす
る。
【0019】また、第2発明は、上記のような問題点を
解決するためになされたもので、第1レンズ及び第3レ
ンズを正の屈折力、第2レンズを負の屈折力という構成
とすることにより、赤外線撮像光学系の設計の自由度を
大きくすることを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】第1発明に係る赤外線撮
像光学系は、色収差と熱収差を補正する赤外線撮像光学
系において、比較的高分散のそれぞれ異なる赤外線透過
材料のレンズから成り、上記材料のアッベ数と熱アッベ
数との比が、最も小さい材料の負の屈折力をもつ第1レ
ンズと、上記比が上記第1レンズに次いで小さい材料の
正の屈折力をもつ第2レンズと、上記比が最も大きい材
料の負の屈折力をもつ第3レンズとを備えたものであ
る。
【0021】また、第2発明に係る赤外線撮像光学系
は、色収差と熱収差を補正する赤外線撮像光学系におい
て、それぞれ異なる赤外線透過材料のレンズから成り、
上記材料のアッベ数と熱アッベ数との比が最も小さい材
料の正の屈折力をもつ第1レンズと、上記比が上記第1
レンズに次いで小さい材料の負の屈折力をもつ第2レン
ズと、上記比が最も大きい材料の正の屈折力をもつ第3
レンズとを備えたものである。
【0022】
【作用】第1と第2発明においては、それぞれ異なる赤
外線透過材料から成る第1ないし第3レンズの組み合わ
せにより、色収差を補正するとともに熱収差を補正す
る。
【0023】
【実施例】図1は第1発明の一実施例を示す断面図であ
り、図において、4は図17に示した従来の赤外線撮像
光学系と同様なレンズ保持具であり、また、11は硫化
亜鉛(Zns)からなる第1レンズ、12はセレン化ヒ
素(AsSe)から成る第2レンズ、13はテルル化カ
ドミウム(CdTe)から成る第3レンズであり、上記
第1レンズ11、第2レンズ12、第3レンズ13及び
レンズ保持具4から成るこの赤外線撮像光学系は例えば
8〜12μmの波長の赤外線を集光する。
【0024】ここで、各々の材料の各波長光に対する屈
折率、アッベ数、屈折率の温度変化、線膨張率、熱アッ
ベ数は表1の通りである。
【表1】
【0025】アッベ数と熱アッベ数の比は、硫化亜鉛、
セレン化ヒ素、テルル化カドミウムの順に小さい。いず
れの材料もアッベ数が小さく、色収差が無視できないほ
ど高分散である。例えば、これらのうちの1つの材料だ
けで赤外線撮像光学系を構成した場合、色収差が大きく
良好な結像性能が得られない。これに対し、従来の赤外
線撮像光学系で用いられるゲルマニウムのようなアッベ
数が大きく、低分散な材料だけで赤外線撮像光学系を構
成した場合、色収差が小さいので、回折限界に近い良好
な結像性能が得ることができる。
【0026】図2は各々のレンズ材料の特性を示す図で
ある。横軸をアッベ数の逆数、縦軸を熱アッベ数の逆数
としている。アッベ数と熱アッベ数の比が最も小さい第
1レンズ11を負の屈折力、次いで小さい第2レンズ1
2を正の屈折力、最も大きい第3レンズ13を負の屈折
力としており、赤外線撮像光学系全系では正の屈折力に
なっている。第1レンズ11と第3レンズ13の合成ア
ッベ数V13及び合成熱アッベ数VT1 3 を次のように定義
する。 V13=f13/Δf13 (11) VT13 =−f13/(∂f13/∂T) (12) 但し、 f13:第1レンズ11と第3レンズ13の合成
焦点距離 Δf13:第1レンズ11と第3レンズ13の軸上色収差
【0027】簡単のため、レンズ厚及び間隔を無視する
と、式(1)と式(11)及び式(7)と式(12)よ
り、 1/V13=(f13/f1 )(1/V1 )+(f13/f3 )(1/V3 )(13) 1/VT13 =(f13/f1 )(1/VT1)+(f13/f3 )(1/VT3) (14) 但し、f1 :第1レンズ11の焦点距離 f3 :第3レンズ13の焦点距離 V1 ,VT1:第1レンズ11の材料のアッベ数、熱アッ
ベ数 V3 ,VT3:第3レンズ13の材料のアッベ数、熱アッ
ベ数 となる。焦点距離の合成より、 f13/f1 +f13/f3 =1 (15) である。
【0028】また、 f13/f1 >0,f13/f3 >0 (16) であるので、点(1/V13,1/VT13 )はf1とf3
の組み合わせにより図2に実線で示した線分上を変化す
ることがわかる。点(1/V13,1/VT13 )が上記線
分と、原点と点(1/V2 ,1/VT2)を結ぶ直線の交
点Pになるようにf1 とf3 組み合わせれば。 V13/VT13 =V2 /VT2 (17) となり、式(10)で示したように色収差と熱収差を同
時に補正する条件を満たすことになる。
【0029】以上のように、正の屈折力である第2レン
ズ12と、負の屈折力である第1レンズ11と第3レン
ズ13により、撮像対象物から放射された波長の異なる
赤外線がほぼ同じ結像位置に結像するので色収差による
劣化が抑えられており、温度が変化しても上記結像位置
がほとんど移動しないので温度変化による解像度の劣化
が抑えられている。
【0030】以上では簡単のためレンズ厚及び間隔を無
視して説明した。しかし、実際の光学系では両者を考慮
しなければならないので、必ずしも上記等式を満足しな
いが、概ね以上の説明に従う。表2に、図1で示した第
1発明に係る赤外線撮像光学系の数値実施例を、焦点距
離を20として規格化して示す。そして、図3の(a)
〜(c)に諸収差を、(d)に温度に対する結像位置の
移動量を示す。
【0031】
【表2】
【0032】また、図4は第1発明の他の実施例を示す
もので、11硫化亜鉛(Zns)から成る第1レンズ、
12はセレン化亜鉛(ZnSe)から成る第2レンズ、
13はテルル化カドミウム(CdTe)から成る第3レ
ンズである。セレン化亜鉛(ZnSe)の各波長光に対
する屈折率、アッベ数、屈折率の温度変化、線膨張率、
熱アッベ数は表3の通りである。
【0033】
【表3】
【0034】アッベ数と熱アッベ数の比が2番目に小さ
い第2レンズ12を正の屈折力、最も小さい第1レンズ
11及び最も大きい第3レンズ13を負の屈折力として
おり、上記実施例と同様に赤外線撮像光学系で色収差及
び熱収差が補正されている。このように、レンズの材料
及び配置が異なっても同様の効果が得られる。表4に、
図4で示した赤外線撮像光学系の数値実施例を、焦点距
離を20として規格化して示す。そして、図5の(a)
〜(c)に諸収差を、(d)に温度に対する結像位置の
移動量を示す。
【0035】
【表4】
【0036】さらに、図6は第1発明のさらに他の実施
例を示すもので、11は硫化亜鉛(ZnS)から成る第
1レンズ、12はセレン化亜鉛(ZnSe)から成る第
2レンズ、13a及び13bはテルル化カドミウム(C
dTe)から成る第3aレンズ及び第3bレンズで、ア
ッベ数と熱アッベ数の比が最も大きい材料のレンズを2
つに分割したものであり、この2枚の組み合わせで負の
屈折力になっている。上記実施例と同様に赤外線撮像光
学系全系で色収差及び熱収差が補正されている。このよ
うに、いずれかのレンズを2枚以上に分割しても同様の
効果が得られる。表5に、図6で示した赤外線撮像光学
系の数値実施例を、焦点距離を20として規格化して示
す。そして、図7の(a)〜(b)に諸収差を、(d)
に温度に対する結像位置の移動量を示す。
【0037】
【表5】
【0038】なお、上記第1発明の各実施例では8〜1
2μm近辺の波長に赤外線を集光する赤外線撮像光学系
について説明したが、他の波長帯域に用いる撮像光学系
についても同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【0039】また、第1発明においては、次の態様の赤
外線撮像光学系を実施できる。 ・第1レンズまたは第2レンズまたは第3レンズの少な
くとも1つを2枚以上に分割した赤外線撮像光学系。 ・上記第2レンズと上記第3レンズから成るレンズ群の
温度による屈折力の変化と波長による屈折力の変化との
比が、上記第1レンズの上記比と概ね等しくなるように
した赤外線撮像光学系。 ・上記第1レンズと上記第2レンズから成るレンズ群の
上記比が、上記第3レンズの上記比と概ね等しくなるよ
うにした赤外線撮像光学系。 ・上記第1レンズと上記第3レンズから成るレンズ群の
上記比が、上記第2レンズの上記比と概ね等しくなるよ
うにした赤外線撮像光学系。
【0040】次に、図8は第2発明の一実施例を示す断
面図であり、図において、21はセレン化ヒ素(AsS
e)から成る第1レンズ、22はヒ化ガリウム(GaA
s)から成る第2レンズ、23はゲルマニウム(Ge)
から成る第3レンズであり、上記第1レンズ21、第2
レンズ22、第3レンズ23、レンズ保持具4から成る
この赤外線撮像光学系は例えば8〜12μmの波長の赤
外線を集光する。各々の材料の各波長に対する屈折率、
アッベ数、屈折率の温度変化、線膨張率、熱アッベ数は
表6の通りである。アッベ数と熱アッベ数の比は、セレ
ン化ヒ素、ヒ化ガリウム、ゲルマニウムの順に小さい。
【0041】
【表6】
【0042】図9は各々の材料の特性を示す図である。
横軸をアッベ数の逆数、縦軸を熱アッベ数の逆数として
いる。アッベ数と熱アッベ数の比が最も小さい第1レン
ズ21を正の屈折力、次いで小さい第2レンズ22を負
の屈折力、最も大きい第3レンズ23を正の屈折力とし
ており、赤外線撮像光学系全系では正の屈折力になって
いる。
【0043】ここで、簡単のため、レンズ厚及びレンズ
間隔を無視して、第1レンズ21と第3レンズ23の合
成アッベ数V13及び合成熱アッベ数VT13 について考え
る。点(1/V13,1/VT13 )は、第1発明と同様
に、f1 とf3 の組み合わせにより図9に実線で示した
線分上を変化する。点(1/V13,1/VT13 )が上記
線分と、原点と点(1/V2 ,1/VT2)を結ぶ直線の
交点Pになるようにf1 とf3 を組み合わせれば、正の
レンズである第1レンズ21と第3レンズ23と、負の
レンズである第2レンズ22により、色収差と熱収差が
同時に補正される。以上のように、この赤外線撮像光学
系では、撮像対象物から放射された波長の異なる赤外線
がほぼ同じ結像位置に結像するので色収差による劣化が
抑えられており、温度が変化しても上記結像位置がほと
んど移動しないので温度変化による解像度の劣化が抑え
られている。
【0044】以上では簡単のためレンズ厚及び間隔を無
視して説明したが、これらを考慮した場合も概ね以上の
説明に従う。表7に、図8で示した第2発明に係る赤外
線撮像光学系の数値実施例を、焦点距離を100として
規格化して示す。図10の(a)〜(b)に諸収差を、
(d)に温度に対する結像位置の移動量を示す。
【0045】
【表7】
【0046】また、図11は第2発明の他の実施例を示
すもので、21はセレン化亜鉛(ZnSe)から成る第
1レンズ、22はヒ化ガリウム(GaAs)から成る第
2レンズ、23はテルル化カドミウム(CdTe)から
成る第3レンズである。セレン化亜鉛、テルル化カドミ
ウムの各波長光に対する屈折率、アッベ数、屈折率の温
度変化、線膨張率、熱アッベ数は表8の通りである。
【0047】
【表8】
【0048】アッベ数と熱アッベ数の比が最も小さい第
1レンズ21と正の屈折力、次いで小さい第2レンズ2
2を負の屈折力、最も大きい第3レンズを正の屈折力と
しており、上記実施例と同様に赤外線撮像光学系全系で
色収差及び熱収差が補正されている。この様に、レンズ
の材料及び配置が異なっても同様の効果が得られる。表
9に、図11で示した赤外線撮像光学系の数値実施例
を、焦点距離20として規格化して示す。図12の
(a)〜(c)に諸収差を、(d)に温度に対する結像
位置の移動量を示す。
【0049】
【表9】
【0050】さらに、図13は第2発明のさらに他の実
施例を示すもので、21はセレン化亜鉛(ZnSe)か
ら成る第1レンズ、22a及び22bはヒ化ガリウム
(GaAs)から成る第2aレンズ及び第2bレンズ、
23はテルル化カドミウム(CdTe)から成る第3レ
ンズである。第2レンズ22a及び第2レンズ22bは
アッベ数と熱アッベ数の比が2番目に小さい材料のレン
ズを2つに分割したものであり、この2枚の組み合わせ
で負の屈折力に成っている。上記実施例と同様に赤外線
撮像光学系全系で色収差及び熱収差が補正されている。
この様に、いずれかのレンズを2枚以上に分割しても同
様の効果が得られる。表10に、図13で示した赤外線
撮像光学系の数値実施例を、焦点距離を20として規格
化して示す。図14の(a)〜(c)に諸収差を、
(d)に温度に対する結像位置の移動量を示す。
【0051】
【表10】
【0052】なお、上記第2発明の各実施例では8〜1
2μm近辺の波長に赤外線を集光する赤外線撮像光学系
について説明したが、他の波長帯域に用いる撮像光学系
についても同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【0053】また、第2発明においては、次の態様の赤
外線撮像光学系を実施できる。 ・第1レンズまたは第2レンズまたは第3レンズの少な
くとも1つを2枚以上に分割した赤外線撮像光学系。 ・上記第2レンズと上記第3レンズから成るレンズ群の
温度による屈折力の変化と波長による屈折力の変化との
比が、上記第1レンズの上記比と概ね等しくなるように
した赤外線撮像光学系。 ・上記第1レンズと上記第2レンズから成るレンズ群の
上記比が、上記第3レンズの上記比と概ね等しくなるよ
うにした赤外線撮像光学系。 ・上記第1レンズと上記第3レンズから成るレンズ群の
上記比が、上記第2レンズの上記比と概ね等しくなるよ
うにした赤外線撮像光学系。
【0054】
【発明の効果】以上のように、第1発明の赤外線撮像光
学系によれば、それぞれ異なる高分散の赤外線透過材料
のレンズから成り、上記材料のアッベ数と熱アッベ数と
の比が最も小さい材料の負の屈折力をもつ第1レンズ
と、上記比が第1レンズに次いで小さい材料の正の屈折
力をもつ第2レンズと、上記比が最も大きい材料の負の
屈折力をもつ第3レンズとにより、色収差と熱収差を同
時に補正するので、赤外線撮像光学系の材料選択の自由
度が大きくなると言う効果がある。
【0055】また、第2発明の赤外線撮像光学系によれ
ば、それぞれ異なる赤外線透過材料のレンズから成り、
上記材料のアッベ数と熱アッベ数との比が最も小さい材
料の正の屈折力をもつ第1レンズと、上記比が第1レン
ズに次いで小さい材料の負の屈折力をもつ第2レンズ
と、上記比が最も大きい材料の正の屈折力をもつ第3レ
ンズとにより、色収差と熱収差を同時に補正するので、
第1及び第3レンズを正の屈折力、第2レンズと負の屈
折力という構成とすることにより、赤外線撮像光学系の
設計の自由度が大きくなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1発明の実施例1を示す赤外線撮像光学系の
断面図である。
【図2】第1発明の実施例1を説明する特性図である。
【図3】図1の赤外線撮像光学系の諸収差(a)〜
(c)と温度に対する結像位置の移動量(d)を示す特
性図である。
【図4】第1発明の実施例2を示す赤外線撮像光学系の
断面図である。
【図5】図4の赤外線撮像光学系の諸収差(a)〜
(c)と温度に対する結像位置の移動量(d)を示す特
性図である。
【図6】第1発明の実施例3を示す赤外線撮像光学系の
断面図である。
【図7】図6の赤外線撮像光学系の諸収差(a)〜
(c)と温度に対する結像位置の移動量(d)を示す特
性図である。
【図8】第2発明の実施例4を示す赤外線撮像光学系の
断面図である。
【図9】第2発明の実施例4を説明する特性図である。
【図10】図8の赤外線撮像光学系の諸収差(a)〜
(c)と温度に対する結像位置の移動量(d)を示す特
性図である。
【図11】第2発明の実施例5を示す赤外線撮像光学系
の断面図である。
【図12】図11の赤外線撮像光学系の諸収差(a)〜
(c)と温度に対する結像位置の移動量(d)を示す特
性図である。
【図13】第2発明の実施例6を示す赤外線撮像光学系
の断面図である。
【図14】図13の赤外線撮像光学系の諸収差(a)〜
(c)と温度に対する結像位置の移動量(d)を示す特
性図である。
【図15】従来の赤外線撮像光学系を説明する説明図で
ある。
【図16】代表的な赤外線透過材料の特性図である。
【図17】従来のな赤外線撮像光学系の断面図である。
【符号の説明】
11、21 第1レンズ 12、22 第2レンズ 13、23 第3レンズ

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 色収差と熱収差を補正する赤外線撮像光
    学系において、比較的高分散のそれぞれ異なる赤外線透
    過材料のレンズから成り、上記材料のアッベ数と熱アッ
    ベ数との比が、最も小さい材料の負の屈折力をもつ第1
    レンズと、上記比が上記第1レンズに次いで小さい材料
    の正の屈折力をもつ第2レンズと、上記比が最も大きい
    材料の負の屈折力をもつ第3レンズとを備えたことを特
    徴とする赤外線撮像光学系。
  2. 【請求項2】 色収差と熱収差を補正する赤外線撮像光
    学系において、それぞれ異なる赤外線透過材料のレンズ
    から成り、上記材料のアッベ数と熱アッベ数との比が最
    も小さい材料の正の屈折力をもつ第1レンズと、上記比
    が上記第1レンズに次いで小さい材料の負の屈折力をも
    つ第2レンズと、上記比が最も大きい材料の正の屈折力
    をもつ第3レンズとを備えたことを特徴とする赤外線撮
    像光学系。
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